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カキのムニエル


 カキのムニエルです。鮭やタラなど白身魚がよく素材に使われますが、カキでやってもおいしいです。
 夏に食べるカキもありますが、やはり寒い時期のカキはおいしいです。では、さっそく調理していきましょう。
 まず、カキをよく洗います。カキはへんな臭いがするからイヤだという人もいますが、あれはカキの汚れである場合が多いです。塩水で洗います。大根おろしで洗えばいいという人もいますが、私は塩水で充分だと思います。カキのヒダヒダの部分もていねいに洗いましょう。
 洗ったカキは白ワインに漬けておきます。こうすることでカキ独特の臭いがぬけて、カキが苦手の人にもおいしくいただけます。そうですね。30分もつけておけばいいでしょう。カキのクセが気にならない人はこんなことをする必要はないですね。
 キッチンペーパーでカキをよく拭いてやります。塩こしょうして、小麦粉をまぶします。
 フライパンにオリーブ油とバターを入れて加熱します。バターだけだと焦げます。焦げないよう充分気をつける自身のある人はバターだけでいいでしょう。
 バターが溶けたらカキを投入します。カキに火が入るとぷっくりとしてきます。ときどき、溶けたバターをカキにかけてやります。これをアロゼといいます。いかにもフランス料理をしてるみたいでカッコいいじゃないですか。
 カキにいい具合に火が入ったらお皿に盛り付けます。ちょっとレモンを絞っていただきましょう。
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イカと豚の煮物


海の勇者と陸の王者、こんな所であいまみえることとなりました。さあ、いかなることにあいなりまするやら。究極の異種格闘技戦ここに開幕。
 おおっと。イカ、いきなり先制攻撃だ。足を引っ張って内臓を引きずり出しました。早くも凄惨な展開です。ああ、まな板が真っ黒になった。スミ袋を破った模様です。
 イカの掟破りの先制攻撃に、一瞬ひるんだ豚ですが、さすがブター級王者のバラ肉。体制を立て直しました。かたまり肉だから立ち直りが早い。家伝の名刀藤原有次でひと口大に切りました。さすがの切れ味です。豚、そのままの勢いでフライパンにに飛び込みました。すかさずレンジに点火。流れるよう動きです。豚、こんがりといい色に焼けました。
 イカも負けてません。足のツブツブを取って、1本づつバラバラにしました。返す刀で甲を引き抜き胴をタンザクに切った。剣技ではイカも負けてません。
 ここでレフリーが入場です。主審の長ネギと副審の生姜がやってきました。主審の長ネギ両者を呼びます。
 焼けた豚とタンザクになったイカが鍋に上がりました。さあ、いよいよ世紀の一戦です。カーン。試合開始のゴングが鳴りました。ここで水と酒が鍋に入りました。鍋がぐつぐついっております。ああ、双方のセコンドについていた選手が乱入です。イカのセコンド砂糖と、豚のセコンド醬油が鍋に暴れこみました。鍋の中は4者入り乱れて収集がつかなくなりました。こと、ここにいたってはコミッショナーの裁定が下されました。落し蓋です。コミッショナー伝家の宝刀、落し蓋が双方にかぶせられました。30分の試合延長です。
 さて、30分経過。煮汁はいい具合に煮詰まっております。豚もイカも反省したのか柔らかくなってしまいました。究極の異種格闘技戦はじつにおいしい結果とあいなりました。
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とつぜんSFノート 第75回

 三代目桂春団治師匠が亡くなった。昨年、桂米朝師匠が亡くなり、これで上方落語四天王全員鬼籍に入られた。三代目桂春団治師匠、桂米朝師匠、先代桂文枝師匠、六代目笑福亭松鶴師匠。この4人の師匠がいなければ、小生は少しさみしい人生となっていただろう。
 小生の四大趣味といえば、SF、上方落語、料理、阪神タイガースということになるだろうか。
小生は兵庫県は西宮で生まれた。甲子園がある街だ。生誕の地は西宮市川添町。東からの風が吹けば甲子園の歓声が聞こえる所。だから阪神タイガースは生まれた瞬間にDNAに刷り込まれたかもしれないが、他の三つは後天的なモノだ。   
 料理歴は25年になるが、SFと上方落語はそれ以前、子供のころからだ。だからこの二つの趣味はけっこう長い。
小生の母親は、漫才や新喜劇といったお笑いが好き。そういうわけで、小生が子供のころには、ウチのテレビには、松竹新喜劇や吉本新喜劇、寄席番組がよく映っていた。今はすっかりなくなったが、昔は大阪は道頓堀の角座からの中継があったりして、寄席番組がけっこうあった。関西の寄席だから、漫才が中心。中田ダイマル、ラケット、若井はんじ、けんじ、海原お浜、小浜、平和ラッパ、日佐丸、なんかの漫才をよく見た。
 漫才の合間に、ごくたまに落語が放送されることもあった。小生は、漫才よりも、この落語により強く興味を引かれた。そのころの落語家で印象に残っているのが林家染丸。今の染丸師匠は4代目だが、ここでいう染丸師匠は3代目。丸顔でいつもニコニコした、エビス顔とはこういう顔をいうんだという顔をした噺家さんだった。この3代目染丸師匠のお弟子さんで林家小染という人がいた。今の小染さんは5代目で先代4代目林家小染である。「ヤング・オーオー」というテレビ番組があった。その番組で4人の若手落語家を「ザ・パンダ」という名前でセットで売り出した。桂きん枝、桂文珍、月亭八方、林家小染の4人である。きん枝、文珍、八方の3人は今も活躍しているのはご承知のとおり。あとの一人小染さんは、師匠の先代染丸をそのまま若くしたような人だった。丸顔でエビス顔。「おこりないなー」というギャグを持っていた。この先代小染さん、たいへん酒クセが悪い人だったとのこと。酒の上のエピソードには事欠かない人だった。飲んでいて、「車と相撲とる」といって、おもてに飛び出し、車にはねられて亡くなった。はねた車の運転手こそ災難だと思うが。大酒飲みで酒で命を落とした噺家だった。この先代小染さんが生きていたら、どんなに面白い噺家になったことか。
 小生は落語ファンであるが、個人的にお会いしてお話した落語家は一人だけだ。桂春輔師匠だ。ものすごくけったいな噺をする噺家さんだったが、ご本人もものすごくけったいな人だった。
小生が始めて生の落語に接したのは1975年神戸で行われた、第14回日本SF大会でだった。寄席や落語会ではない。SF大会だったというのがSFファンならではだと自分でも思う。初めての生落語が桂米朝師匠の「地獄八景亡者戯」なんだから、とても贅沢な体験をしたわけ。
 もとろん、小生はこの時の前から、落語好きだった。確か、高校生のころ、東芝EMIから桂米朝落語全集というレコードが出ていた。このレコードを小遣いで買った。全集全部はさすがに買えなかった。何枚か買った。その中に「地獄八景」もあった。そのレコード版「地獄八景」はテープに移し変えて今も持っている。このテープが小生の上方落語コレクションの第1号である。その後、テレビやラジオで上方落語が放送されるたんびにせっせと録音録画している。もちろんDVDやCDも買っているし、機会があれば、せっせと落語会にも足を運んでいる。上方落語は小生の大切な趣味だ。
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そんなことを客に聞くな

 先日、某スーパーで買物したときのこと。カゴに一杯の商品を入れて、レジに並ぶ。するとレジのおばさんが、こんなことをいった。
「袋、なん枚いりますか?」
 カゴ一杯の商品を収容するのに、なん枚のレジ袋が必要か、客である小生に判断せえということだろうか。
「ワシはわからん。おまかせする」といった。
 このおばさんもお金を取ってレジをやっているのだからプロだろう。小生、プロがプロらしいことをやらないのが大嫌い。プロらしきことをやらないのなら金を取るな。
 カゴの商品を入れるのになん枚袋が必要か判断するには、まず袋の容量を知る必要がある。それに加えて、カゴの中の商品の容量も判断しなくてはならない。そういうことを総合的に勘案して、なん枚のレジ袋が必要か判断しなくてはならない。
 こっちは客である。そんなこと考えて買物しているわけではない。こっちはアマチュアだ。それに比べて、レジのおばさんは、毎日、カゴの中の商品を処理し、レジ袋を扱っているプロだろう。プロならカゴの中をひと目見て、瞬時になん枚の袋が必要か判断できるはずだ。
プロがアマに聞くな。
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甲賀忍法帖


  山田風太郎    角川書店

 風太郎忍法帳の第1作である。映画、漫画、小説などの日本のエンタティメントの定番ともいえる集団バトルものの原点ともいうべき小説といってもいいだろう。
 甲賀10人VS伊賀10人の団体戦である。甲賀と伊賀、おたがい憎しみあっている。服部半蔵の命によって、なんとか戦いをがまんしていた。それが、このたび半蔵によって、その禁が解かれた。竹千代か国千代か。三代将軍をどっちにするか決めかねている。それを伊賀、甲賀の戦いで決めようというわけ。三代将軍家光の幼名は竹千代だから、勝敗は判っているが、この小説の興味は伊賀、甲賀の勝敗ではない。
 10人VS10人。20人の忍者が登場するが、一人一つづつ忍法を持っている。20の忍法。問題はこれをどう見せるかだ。このあたりはプロレスといっしょ。プロレスラーは一人一つづつ必殺技を持っている。力道山の空手チョップ、ジャイアント馬場の16文キック、アントニオ猪木の卍固めなどなど。これらの技が出れば試合は終わる。で、双方の必殺技をいかに見せるかが大切だ。梶原一騎原作の漫画「紅の挑戦者」では、間違ってレフリーに技をかけてしまうという反則をやっていたが。
 忍法帳も同じ。忍法を出せば必ず相手は死ぬ。だったら、その相手の忍法は見れない。20人の忍者が出ているのに、10の忍法しか見られないわけ。これでは、読者としては不満が残り。山田はこのあたりの処理は見事なもので、きっちり20の忍法を見せてくれた。中には掟破り的な忍者もいたが、どいう具合にそれぞれの忍法を見せてくれたかは、もちろん、ここではいえない。どうか本書をお読みいただきたい。
 風太郎忍法帳としては最適の入門書である。さて、これを読んで、奇奇怪怪、奇想天外、奇絶怪絶、玄妙幽玄、法悦快楽な風太郎忍法帳の世界に遊びにいこうではないか。
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三代目桂春団治師匠のCDを衝動買いする

さんちかで古本市をやっていた。会社の帰りにのぞいてみた。大藪春彦か西村寿行はたまた山田風太郎でもないかいな。有ったが、いずれも小生が持っている本であった。早川の銀背もいくらかあったが、もひとつピンと来る本はなかった。
 本は収穫がなかった。中古のCDも売っていた。「おかげ様ブラザース」で、小生の持ってない曲はないかいなと思って見たが、なかった。で、落語のCDをたくさん発見。ほとんどが江戸落語。小生は江戸落語には興味はない。よくよく見ると、6代目笑福亭松鶴師匠が5枚と、先日亡くなった3代目桂春団治師匠のが1枚あった。即、6枚とも衝動買い。桂米朝師匠や枝雀師匠のCDは比較的入手しやすが、ほかの上方落語家のCDはあまりない。
 春団治師匠の1枚は珍品といえる。収録されている演目が「寿限無」「平林」「有馬小便」春団治師匠は厳選された演目を演じる噺家だった。師匠の高座で良く知られているのが「代書」「いかけ屋」「祝いのし」「野崎参り」などだが、師匠がこんな、いわば大学のオチ研がやるような前座噺を演じられているのは、小生はあまり知らない。それに「有馬小便」あまり高座にかけられることがない噺だ。小生は演じられているのを聞いたことがない。バレ噺といっていい。      
有馬温泉で珍商売をやる噺。2階にいる人。小便するのに降りるの面倒。フシを抜いた竹竿もって、2階から小便させる商売。
「2階から小便さしょう」「ちょっと、オシッコ屋さん」「ヘイ」「上みんように」
「ああ、顔にかかってもた」「あ、おなごの人でっかいな」「こんなんやったらジョウゴ持ってくるんやった」
 こんな噺である。テレビではあまり放送できない噺である。
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寒い日のインテグラ

うう、さむ。今朝の神戸の気温は-3度。ことし一番の寒さである。北国の人にとって-3度なんてなんともないかも知れないが、温暖な瀬戸内気候の神戸にとってはものすごく寒いのである。ほんと、おはようが凍る寒さだ。
 ホンダ・インテグラ。小生の愛車だった。たいへん、気に入った車だった。カッコいいし、室内は広い、よく走る、それでいてガソリンはあまり食わない、たいへんいい車だった。
 ところが大きな欠点があった。寒い日限定の欠点だが。この車、ご覧のようにリトラクタブル・ヘッドランプである。昼間はヘッドランプはかくれている。必要な時にパカッとヘッドランプが出てくる。
 寒い早朝や夜間、車で出かけるとき、ヘッドランプのスイッチを入れても出てこない。ランプが凍りついているわけ。こんな時、無理すればランプを駆動させるモーターがダメになる。車庫から家まで帰って、ヤカンにお湯を入れて持ってきて、ヘッドランプ部分にかけて溶かしてやるわけ。
 寒い日のリトラクタブル・ヘッドランプ車はめんどうなのだ。だから、最近はリトラクタブル・ヘッドランプの車はなくなったのかな。
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黒い罠


監督 オーソン・ウェルズ
出演 チャールトン・ヘストン、オーソン・ウェルズ、ジャネット・リー


 いきなり車に時限爆弾を仕掛けるところから映画は始まる。タイマーを回しトランクに爆弾を入れる。手しか映らない。犯人は判らない。その車に男と女が乗り込む。車は走りだす。しばらくして爆発。
 この冒頭のシーンの演出が見事。よどみなく流れる映像で、演出の冴えがよく判る。なんか、黒澤明を見ているようだ。
 この爆発を目撃したのが、新婚旅行中のメキシコの麻薬捜査官バルデスと妻のスーザン。この場所はメキシコとアメリカの国境の街だが、爆発現場がアメリカ側だったのでアメリカの警察が捜査することに。出てきたのは、でっぷりとふとった大男で、足が悪く杖を持った警部クインラン。
 このクインランを演じているのがウェルズ。検挙率100%というすご腕の警部だが、なんか横柄な男。犯罪者を何人も電気椅子送りにしている。
 なりゆきから、爆破犯の捜査に当たったバルデス。そうこうしているうちにスーザンが誘拐され、さらに麻薬使用の嫌疑で留置される。クインラン警部もなにかいわく有りげ。そしてバルデスはクインランと決定的な対決をする。
 バルデスを演じているのが若いころのヘストンで、いちおう彼が主役だが、この映画の眼目はなんといってもウェルズのクインラン警部。足が悪く杖をついて歩く大男。横柄でエラそう。常に苦虫をかみつぶしたような顔をしている。彼は本当に名警部か、はたまた悪徳警部か。オーソン・ウェルズの演出と演技を楽しむ映画である。
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フィッシュバーガー


 小生、マクドやモスバーガーといったハンバーガー屋はあまり入らない。かような店に入ったのは、生まれてから今まで両手もないだろう。そんなわけでハンバーバーなるものはあまり食したことはない。
 でも、まあ、たまにはかようなメリケンの食い物を食うのも一興じゃわい。で、普通のハンバーガーじゃ面白くないから、魚のハンバーガーにした。フィッシュバーガーである。
 魚はタラを使った。まず、タルタルソースを作ろうぞ。玉ねぎをみじん切りにする。新調の有次の包丁でやれば実に快適。まず涙が出ない。玉ねぎを切って涙がでるのは包丁が切れないからだ。良く切れる包丁で切ると、玉ねぎの細胞膜が破壊されないから、ガスが出ない。
 ゆで卵とピクルスもみじん切り。玉ねぎは塩して少し水にさらして絞る。これにマヨネーズをいれて混ぜる。
 タラは小麦粉、卵、パン粉をつけてフライに揚げる。そうしているうちにハンバーガーバンズにバターを塗ってレタスをしく。タラのフライを乗っけて、タルタルソースをかけてパンではさむ。これをオーブントースターで加熱する。できあがりである。なかなかのボリュームあるフィッシュバーガーとなった。2個も食べればおなか一杯。でも、おいしい。
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マシュマロの粕漬け


 というわけで、マシュマロの粕漬けを作った。結論からいう。NHKの「ためしてガッテン」にだまされた。あの番組でマシュマロの粕漬けを絶賛していた。出てくる人出てくる人、みんなものすごくおいしいという。
 マシュマロだけではさみしいので、クリームチーズとうずら卵も粕漬けにした。
 酒粕は桜正宗の醸造元まで買いに行ったもの。酒をまぜて40度ほどに加熱して粕床を作った。そこにマシュマロ、クリームチーズ、ゆでたうずら卵を漬けて二日おいた。
 食べた。へんにアルコールっ気が強調されて、食べ物としてのバランスを失っている。ガッテンいちおしのマシュマロは、甘みが嫌な形で残って、まったくおいしくない。と、いうかまずい。1個か2個食べただけでもうたくさん。クリームチーズとうずら卵はそのまま食べた方がおいしいだろう。
 そういうことで、粕漬けは魚か肉はよろしいようで。
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散歩計画

 きのうは東へ歩いたから、きょうは西だ。家内は親戚の用事で夜まで帰らない。夕食はデパ地下でお惣菜でも買って帰るから、昼食は適当に食べてねとのご下命である。
 午前の散歩は、退職後の日課。在職中は、会社からの帰りは、一駅ぶんは必ず歩いていた。毎日、一駅ぶんづつ。なん日かしたら会社から家まで歩いて帰ったことになる。
 散歩は健康のために続けたい。退職後は、家を起点に東西南北をローテーションで歩いている。だいたい11時ごろ家を出て、昼食までには帰宅する。ときどき、家内の都合で昼食は外食ということになる。
 退職して半年。散歩ルートはひと通り歩いた。それでも新しい発見がある。それが散歩の楽しみでもある。
 さて、きょうは外で昼食だ。それはそれで楽しい。西か。西方面で昼食を食
べるのは初めてだ。たしか、あっちにはあまり店はない。東に行けば駅があり、駅前にはたくさんの店がある。だからといって東へ散歩するつもりはない。きょうは西へ行くことに決めてある。レストランや食堂は記憶にないが、コンビニならある。なんだったら弁当を買って、家で食べてもいい。
 私鉄の線路に沿って西へ歩く。住宅街だ。古いお屋敷と、新しい家が混在している。マンションやアパートは少ない。商店は目につかない。道は線路から離れて、斜めに北のほうへ行く。上り坂になった。小さな公園がある。この公園の向こうにコンビニがあったはずだ。そこで弁当でも買おう。
 コンビニに入ろうとしたら、その裏に暖簾がかけてある店が目についた。どうも食べ物屋らしい。蕎麦屋だ。入り口に「生そば」と小さく書いてあるだけで店名らしきモノはどこにもない。
 店の横に竹が何本か生えている。日差しが竹で隠れて、建物が隠れ家のようだ。こんなところにそば屋があったのか。入ってみよう。
 カウンターだけの店だ。イスが五つ。カウンターの向こうに女性が一人。店主だろうか。中年、といっていい年齢と見える。美人かと聞かれれば美人ではない。かといって不美人でもない。これといって特徴のない女性だ。この店を出れば、家に帰るまでに忘れてしまうだろう。
 そば屋の店主というと男性という固定観念がある。店主の奥方で亭主は奥にいるのだろうか。
 カウンターに座る。女性がおしぼりを出してくれた。メニューらしきものはどこにもない。
「この店はあんた一人か」
「はい」
「あんたがあるじか」
「はい」
 彼女が店主だ。
「メニューがないが」
「うちはそばはもりだけです」
「ほかに」
「お酒とお酒のアテです」
「酒はなにがある」
灘正宗です」
 一度飲みたいと思っていた酒だ。
「アテは」
「板わさ、焼きのり、卵焼きです」
 昼間だが、そば屋でなら昼酒もいいだろう。
「じゃあ、そばと酒と、アテはその三つを」
「はい」
「この店はあんたが一人でやっているのかね」
「はい」
 酒が出た。徳利は備前だ。すばらしい酒器だ。
「いい備前の徳利だな」
藤原雄です」
 人間国宝の焼き物を店で使っているのか。灘正宗もすっきりと澄んだ味わいで、軽快な飲み口の酒だ。アテの三つもおいしい。とくに板わさの蒲鉾がすばらしい。メーカーが作る蒲鉾は工業製品だが、これは違う。
「この蒲鉾、ものすごくおいしい。どこの製品だ」
「わたしが、グチとカワハギで作ったのです」
 手作りの蒲鉾か。そばが出てきた。ところがつゆがない。
「そばつゆがないが」
「うちはつゆは出しません」
「つゆなしでそばを食えというんか」
「お試しください」
 そばを食べる。私もそば好きで、いろんなところでそばを食べたが、これをそばというのなら、今までそばと思って食べてきたものはなんだったんだ。
 陶然とする素晴らしい香りだ。つゆなしで口にいれると、そば自身が意志を持ってのどに流れ込んでいくようだ。
 そば好きは、つゆにどっぷりとつけないで、先にちょっと浸すだけというが、本当にうまいそばにとっては、つゆはのどを通す潤滑油みたいなもので、つゆの味に頼らなくてもそばだけでうまいのである。このそばはその究極の形だ。われを忘れて一枚たいらげた。
「おかわり」
「うちのそばは1枚だけしかお出しできません。どうか余韻をお楽しみください」

「すみません。三田のおじさんが具合が悪いらしいの。あたし、お見舞いにいってきます。すみませんけどお昼は外で食べてね」
「ワシも行こうか」
「まだ、いいわ。今度行く時いっしょに行って」
「晩はどうする」
「待ち合わせて外食しましょ」
「どこがいい」
「元町の別館牡丹園はどう」
「賛成」
 昼も夜も外食となった。夜は中華と決まった。昼はさっぱりしたものがいいな。きょうの散歩計画は北方面か。あっちにはうまいラーメン屋がある。しかし、夜は中華なのに昼にラーメンを食うのはいかがなものか。そうだ。あのそば屋に行こう。散歩計画を変更して西へ行こう。散歩計画を変えるのは初めてだ。
 上り坂を上った公園の横の竹林に隠れている店だ。西の方に散歩する時は、その店の前を通る。またあのそばを食べたいと思ったが、家内が昼食を作って待っているので入らない。こういう機会を待っていた。
 西へ歩く。坂を上る。公園が見えてきた。竹林がある。ところが店がない。そこには古い歯医者がある。おかしい。場所は間違いない。ここにはそば屋があるはずだ。歯医者なんかではない。コンビニはあった。
「すみません。ここの裏手にそば屋がありましたね」
「いいえ。そば屋なんてないですよ。ウチの裏は閉院した歯医者さんですよ」
「そんなはずはない」
「疑うんなら自分で確認したらどうですか」
 歯医者を見た。ずいぶん古い建物で、雑草におおわれている。かなり以前に歯科医院は閉じられて、そのまま放置されているようだ。しかたがない。コンビニで弁当を買って帰ろう。それにしても合点がゆかぬ。
「確かに歯医者だったよ。これを」
 おにぎりとそばを買った。頭にいっぱい?を飛ばしながら家に帰った。まず、そばを食おう。コンビニのそばだ。期待はできない。おや、海苔もわさびもない。それに肝心のつゆがない。ペラペラのプラスチックの箱にはそばだけが入っている。不良商品か。いやいや、ひょっとすると。期待しつつそばを口に入れる。
コンビニのそばだった。
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阪神 千船


 阪神電車の千船駅である。いまでは、とんと無縁の駅だが、昔は毎日のようにこの駅で乗り降りしていた。
 小生をリストラしたK電気には27年いた。リストラされる直前は機工課で板金の外注管理をしていたが、K電気在籍中のほとんどを資材部で過ごした。電子部品の購買仕入れが主な仕事で、工程管理生産管理の仕事をした。
 ところが、K電気に入社直後はプリント基板の仕事をしていた。プリント基板。テレビやパソコンの裏ブタを開けると、プラスチックの板にハンダの線が引いてあって、コンデンサーやトランジスター、ダイオード、ICなんか小さな電子部品がくっつけてある板があるだろう。あれがプリント基板である。
 設計が回路設計をする。その設計図をもとにアートワークというものを作る。これはいわば印刷の版下のようなモノで、特殊なフィルムにテープとシールで回路が描いてある。このアートワークは専門の人に外注していた。この仕事が小生の仕事。アートワークが出来上がると、設計にチェックしてもらう。手直しが出ることもある。これはアートワーク制作のミスではなく、ほとんどが、客先の回路変更指示ということ。設計の設計ミスもあるかと思うが、彼らの言によれば客先の変更指示だそうだ。ほんとかな。
 大きな手直しだと外注の人にやってもらうが、簡単なものならば、小生が手直ししていた。そのうち簡単なアートワークなら小生が作っていた。そのまま技術を磨いていくと、フリーのアートワーク職人として独立することもできたかもしれない。小生が外注に出していた人は1人でフリーでやっている人だった。
 で、アートワークが完成すると、それを元にプリント基板を製作しなければならない。そのプリント基板製作会社が、この駅の近くにあった。車で行くこともあったが、電車で行くことの方が多かった。
 この駅で降りて、完成したアートワークをかかえて、神崎川の橋を渡って、よくその基板屋へ通ったものだ。
 
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SFマガジン2016年2月号


SFマガジン2016年2月号 №713

雫石鉄也ひとり人気カウンター

1位 有機素子板の中 早瀬耕
2位 契約義務    ジェイムズ・L・キャンビアス 中原尚哉訳

連載

小角の城(第36回)         夢枕獏
椎名誠のニュートラル・コーナー(第49回)
怒りや汚れは水に流せるけれど、流してはいけないモノもある 椎名誠
マルドゥック・アノニマス(第7回) 冲方丁
青い海の宇宙港(第7回)      川端裕人
ウルトラマンF(第2回)      小林泰三
近代日本奇想小説史[大正・昭和篇](第25回) 横田順彌
SFのある文学誌(第44回)     長山靖生
にゅうもん!西田藍の海外SF再入門(第8回) 西田藍
アニメもんのSF散歩(第8回)    藤津亮太
現代日本演劇のSF的諸相(第17回) 山崎健太

2015年シチェス・ファンタ・レポート 友成純一

特集・「スター・ウォーズ」
J・J・エイブラムス監督インタビュー
カウントダウンSW-その時代のSF界    高橋良平
「スター・ウォーズ」のヒーローたちを考える 鏡明
「スター・ウォーズ」と現代のスペース・オペラ映画(前篇) 添野知生

「オデッセイ」と火星SFの系譜
アンディ・ウィアー・インタビュー
「オデッセイ」レビュー
火星SFガイド

冲方丁PRESENTS新人クリエイター発掘企画
「冲方塾」小説部門マルドゥック・コース優秀作10篇一挙掲載!

生頼範義追悼

 冒頭には生頼範義のイラストが。昨年10月に亡くなった生頼範義の追悼企画。それはいいんだが、いつもの場所に目次がない。なんやこの雑誌、目次もないんかいなと思ったら、一番うしろにあった。びっくりするじゃないの。
 読み切り短編は2編とも面白かった。「有機素子板の中」二重構造。小説の中の人物が小説を創っている人物。「契約義務」士官は人間、兵士は機械。士官のスペアは可能。戦場に人間の出る幕はない。 
「冲方塾」小説部門マルドゥック・コース優秀作10篇。面白いのもあったしつまらんのもあった。この企画に多くのページをさいているが、どういう意図でこういうことをしたのか判らぬ。読者にショートショートを書かせて、新人発掘するつもりなら、昔、やっていた「リーダーズ・ストーリー」を復活すればいいだろう。こんなことをやって冲方丁のニセ者を量産するつもりか。
 さて、特集は映画ネタ。「スター・ウォーズ」と「オデッセイ」「スター・ウォーズ フォースの覚醒」の公開と近日公開の「火星の人」の映画版にひっかけた、またまたちょうちん企画である。SFマガジンは映画雑誌ではなく、文芸雑誌だろう。いつまでこんなバカをやっているのか。SFマガジンはあくまでSFマガジンであって「スターログ」じゃないんだろ。
 早川はコンテストをやっているから、新人作家を発掘する意志はあるのだろう。しかし、SFマガジンのこのていたらくを見ると、発掘だけして育てる意志はないらしい。前号のレビューでもチラと書いたが、コンテスト出身の作家に誌面をさいてどんどん新作を書かせるべき。山田正紀、田中光二、かんべむさしといった人たちは、デビューしてから毎号のように作品を書いていた/書かせていた/掲載していたぞ。新人作家の育て方を知らないのか。
 ところで、話は変るが、椎名誠の連載は、面白く、愛読している。しらない国の話など、興味深く読んでいる。この椎名の連載は、普通の旅のエッセイや旅行記ではない。椎名が旅した国の本当の姿が見えるわけ。
谷甲州は小生の友人だが、彼が国際協力事業団の仕事で、海外に行っていて帰国すると、たいてい酒宴となるのだが、その時「で、どうやった」とかの国の話を聞く。すると実際に行って来て見て来た者ならではの話を聞かせてくれる。例えば彼は1986年のマルコス追放アキノ大統領誕生の騒ぎのときマニラにいた。その時の話も聞いた。 
 椎名の連載は、そのように、かの国に行った友人から直接話を聞いているような面白さだ。   
 
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うう寒い

 うう。さむ。さむおまんな。なんでも今年一番の寒さなそうな。ワシ、さむいのんはあかんねん。暑いのは40度ちこうなっても平気やけど、さむいのはいたって弱い。
 小寒を過ぎて大寒までのこの時期が一年中で一番寒い日や。ワシは毎年、この時期は小そうなって生きとる。家出るときは、セーター、ブルゾン、マフラー、パッチ、それにカイロといった最強耐寒装備で出かける。それでも寒い。きょうは、寒いうえに風が強いから、よけいに寒い。
 ワシはJRと地下鉄で通勤しとるけど、地下鉄はありがたいな。地下はあったかい。地上から地下へ降りるとホッとする。電車の中はもっとあったかいから、ずっと地下鉄に乗っていたいけど、必ず目的の駅には着く。そうなれば地下鉄から降りて、地上へ上がらなければならない。地上へ出ると寒い。いつまでも地下鉄に乗っていたいな。地下鉄の環状線なんかあると、こんな日は会社さぼって一日中乗ってるやろな。
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仁義なき戦い 頂上作戦


監督 深作欣二
出演 菅原文太、金子信雄、加藤武、小林旭、梅宮辰夫、松方弘樹、小池朝雄

 シリーズ四作目である。このシリーズの主役は菅原演じる広能昌三だが、この四作目での広能は影が薄い。本作で異彩を放っていたのは、二人の親分さんだ。金子の山守組長と加藤の打本組長。この二人の怪演が、この本作を実に可笑しい映画としている。
 山守は5作全作に出ているが、この組長の存在が広島と呉に血の雨を降らせることになる。いわば「仁義なき戦い」シリーズの諸悪の根源ともいう人物。じつにこすっからく、ずるく、ケチで、それでいて小心者。でも能力はあるらしく、広島の極道の頂点に立っている。この山守組長は、全5作を貫いている、いわば串カツの串の役割を果たしている。「仁義なき戦い」を具現化するキャラクターではないか。山守には仁義もクソもない。このシリーズの真の主人公は広能ではなく山守ではないか。
 もう1人、特筆すべき組長さんが出てくる。加藤演じる打本組長だ。臆病、優柔不断、どっちつかず、脅しに弱い。とても暴力団の組長とは思えぬ人物。それでも何人かの組員をかかえる組のボス。この組長のキャラクターが実にいい。常に困った顔をしていて、ぼやき言葉を吐く。実に滑稽。打本組長にとってはなにより大切なのは自分。組でも組員でもなく自分が大切。
「ウチの若いもんがあんたんとこにカチこみに行く」なんて敵対する組に電話したりする。こんな組長どこにいる?
 別に暴力団の抗争だけではないが、組のエライさんはコソコソしてるのに、はねっかえりの若いもんが血気にはやって殺し合いをする。この映画のサブタイトルの「頂上作戦」は、一般市民が抗争の犠牲になって、警察が本気になって取り締まりをはじめた。組のトップ組長クラスをびしびし逮捕する。だから「頂上作戦」というわけ。山守も打本も逮捕された。山守は1年と少しの刑期という軽い刑。打本は刑務所に入れられて安心する。
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