雫石鉄也の
とつぜんブログ
とつぜんSFノート 第107回
と、いうわけで、長い旅路の果て、やっと関西にたどり着いた。この時点では第25回日本SF大会DAICN5の実行委員会は小生も入れて3人だった。一番の年長でSFファン歴が最も長いのが小生である。
新大阪で新幹線を降りて、在来線で大阪まで来て、やっと関西へ帰って来たと実感する。とりあえずどっかで一休みしようということで、確か、阪急三番街の喫茶店に入ったと記憶する。
コーヒーを飲みながら、これからやるべきことを再確認する。なによりも最優先すべきは人集めである。これは年長者でSFファンに知り合いも多い小生がメインで行わなければならない。
喫茶店を出た、そこにあった公衆電話(もちろん当時は携帯電話はなかった)で、小生は3人の人物に電話した。小浜徹也(現東京創元社編集部)、高橋章子(現三村美衣)そして清水宏祐の3人である。小浜は当時星群の会員であり京大SF研にも所属している大変に活動的なSFファンであった。高橋は菅浩江と同じく幼くして星群に入会、活発な女性SFファンであった。清水宏祐は1975年の第14回日本SF大会SHICONの実行委員長を務めた。SF大会を実行した経験者である。
3人とも、唐突な話であるとびっくりしたが、とりあえず、この3人はわれわれの企てを聞いてくれた。もちろん、ただ2年後にSF大会をやるということしか、なんにも決まっていない。当然、賛同も賛成もしていない。当然である。とりあえず、今月中(1984年8月)に、どっかで集まろうということになった。
清水はSHICON終了後SFファンダムから離れていた。当時はVOC(ビデオ・オーナーズ・クラブ)という映像関係の同好会を主宰していた。当時はビデオデッキを所有している人たちで、かような会をやっていたのだ。それだけビデオデッキを持っている人は多くなかったということ。
思えば、この小生の電話で清水を9年ぶりにSFファンダムに引き戻したわけだ。その清水に相談する。ホワイトローズという喫茶店がいいと推奨してくれた。
星群の会ホームページ連載の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞご覧になってください。
新大阪で新幹線を降りて、在来線で大阪まで来て、やっと関西へ帰って来たと実感する。とりあえずどっかで一休みしようということで、確か、阪急三番街の喫茶店に入ったと記憶する。
コーヒーを飲みながら、これからやるべきことを再確認する。なによりも最優先すべきは人集めである。これは年長者でSFファンに知り合いも多い小生がメインで行わなければならない。
喫茶店を出た、そこにあった公衆電話(もちろん当時は携帯電話はなかった)で、小生は3人の人物に電話した。小浜徹也(現東京創元社編集部)、高橋章子(現三村美衣)そして清水宏祐の3人である。小浜は当時星群の会員であり京大SF研にも所属している大変に活動的なSFファンであった。高橋は菅浩江と同じく幼くして星群に入会、活発な女性SFファンであった。清水宏祐は1975年の第14回日本SF大会SHICONの実行委員長を務めた。SF大会を実行した経験者である。
3人とも、唐突な話であるとびっくりしたが、とりあえず、この3人はわれわれの企てを聞いてくれた。もちろん、ただ2年後にSF大会をやるということしか、なんにも決まっていない。当然、賛同も賛成もしていない。当然である。とりあえず、今月中(1984年8月)に、どっかで集まろうということになった。
清水はSHICON終了後SFファンダムから離れていた。当時はVOC(ビデオ・オーナーズ・クラブ)という映像関係の同好会を主宰していた。当時はビデオデッキを所有している人たちで、かような会をやっていたのだ。それだけビデオデッキを持っている人は多くなかったということ。
思えば、この小生の電話で清水を9年ぶりにSFファンダムに引き戻したわけだ。その清水に相談する。ホワイトローズという喫茶店がいいと推奨してくれた。
星群の会ホームページ連載の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞご覧になってください。
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だんぜんエスカレーター
建物を上下に移動するのにエレベーターを使うかエスカレーターを使うかを分ければ、小生はだんぜんエスカレーター派。小生、イラチである。エレベーターは待たなくてはいけない。これがイヤなのだ。なんせ、小生、じっと待つのがなにより嫌い。1階にいて15階ぐらいにエレベーターがおれば、ボタンを押してエレベーターの箱が降りてくるのを待つあいだ、イライラする。こういう性格が胃潰瘍という持病を持った(過去形である。ピロリ菌を退治してから再発してない)要因と思われる。
エスカレーターなら待つ必要はない。ほんとはいけないんだが、すいていれば歩いて登り降りする。イラチはいけませんなあ。
エスカレーターなら待つ必要はない。ほんとはいけないんだが、すいていれば歩いて登り降りする。イラチはいけませんなあ。
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万博ふたたび
また大阪で万博がある。小生、こう見えても博覧会が好きである。さすがに愛知や筑波、沖縄にまで遠征はしなかったが、関西で行われた三つの博覧会、1970年の日本万国博覧会、1981年の神戸ポートアイランド博覧会、1990年の国際花と緑の博覧会には複数回行った。
いちばん熱心に行ったのはやはり、70年の万博だ。夏休みに日参した。ほとんど全部のパビリオンに入った。ソ連館とアメリカ館に入るだけで1日を費やした。アメリカ館では月の石を見た。ソ連館ではSFイラストのソコロフの画集を買った。ガイドブックは保管してある。写真はその見開きのページだ。入ったパビリオンにしるしをつけてある。
ケンタッキーフライドチキンを初めて食べたのも万博会場でだった。あまりのおいしさにびっくりした。今では、小生のフライドチキンの方がうまいが。
70年の万博はテーマ館のプロデューサーを岡本太郎と小松左京が勤めた。この二人ほど強烈な個性とカリスマ性を持った人が現在にはいるだろうか。山中伸弥先生あたりが引っ張り出されるのではないだろうか。
7年後か。70年万博の時は会場内を歩き回ったが、今は足を痛めているから、25年の万博は歩き回るのはちとしんどいな。どうしよう。
その時は日本の首相はだれだろう。アメリカの大統領は?阪神タイガースの監督は?前の万博の15年後1985年に阪神タイガースは日本一になった。次は2025年の15年後2040年に阪神タイガース日本一か。ずいぶん先だな。
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モリのいる場所
監督 沖田修一
出演 山崎努、樹木希林、加瀬亮、光石研、池谷のぶえ
主人公は画家である。でも、この映画に絵筆を持つシーンはない。毛筆で書をしたためるシーンはあるが。
オープニングが秀逸である。昭和天皇がある絵を見て「この絵を描いたのは..何歳の子ですか」とご下問。その絵を描いたのは、この映画の主人公熊谷守一94歳である。このオープニングで熊谷守一画伯がどんな絵を描いた絵描きか良く判る設定だ。とはいいつつも、映画の画面に熊谷画伯の絵は映らない。
熊谷守一=モリの晩年の絵のモデルは自宅の庭にいくらでもいる。アリ、猫、魚、蝶、なんでもない石ころまで。モリはそれを飽きもせず仔細に観察。アリが歩いているところをじっと見る。見る。ただただ見る。アリは歩き出すときは左足から歩き出す。なんてことを発見したり。また、庭に落ちていた石を手にとってじっと見る。
この庭にいるモリ。家族は妻の秀子。それにお手伝いおばさん。家にいるのはこの3人だが、来客は多数おしかける。モリを撮るカメラマンとそのアシスタント。旅館の看板を書いて欲しい旅館の主人。近所のマンション建設現場の関係者。大勢やって来て大さわぎ。でもモリはそんなこと気にしない。ひたすら庭を観察するだけ。さしたる出来事は起こらない。
電話が鳴る。妻が取る。「国が文化勲章をやるといってますけど」「そんなもんはいらん」「いらないそうです」ガチャ。
と、こういう映画である。人によっては退屈するかも知れない。でも、小生はとても面白く観た。ほんとの豊かとは何かがよく判る映画である。モリの庭。さして広くない、手も加えられてない。ただの草ぼうぼうの場所であるが、この庭はものすごく豊かな宝の山だ。ただしその宝はモリのような人にしか見えない。山崎努と樹木希林が実にいい。この二人の演技を観るだけでも満足する。
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ホタテ丼
ホタテはうまいな。このうまいホタテをほかほかご飯の上に乗っけて食べたらさぞかしうまいやろ。ちゅうこって、きょうの昼めしはホタテの丼や。
ホタテに塩コショウする。フライパンに油をとってにんにくを入れて香りをだす。気つけなにんにくは焦げやすいで。ホタテ投入。表面が白くなるぐらいに加熱すんねん。バターを入れる。続いて醤油味醂を入れてホタテにからめる。
丼にほかほかご飯をよそう。フライパンにある汁をご飯にかける。海苔をちぎってご飯の上に。ホタテを乗っけて三つ葉をのせればできあがりや。うまいで。
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七人のイヴⅢ
ニール・スティーヴンスン 日暮雅通訳 早川書房
と、いうわけで、第3巻を読んだ。うれしかった。なにがって?この本を読み終わった時。ああ、これで、この苦痛から解放される。もう退屈なつまらん本を読まなくていい。別の本が読める。
月が壊れて破片が地球に降り注ぎ、人類は宇宙に出ている人たち以外は全滅。それから5000年後、生き残った人たちは、人口も増え、不毛の星の地球の復活も成されようといている。人類は新しい文明を築き始めた。
と、こう書くとSFファンなら食指が動くだろう。小生も動いた。だから1巻2巻だけで止めときゃいいのに3巻まで読んだわけ。大失敗であった。面白くない。まず、モイラン、テクラン、レッド、ブルーなどのカタカナ言葉がなんの説明もなく出てくる。これは翻訳者の不親切でもあると思うが、なんのことやらさっぱり判らぬ。
壮大なスペクタクルな話であるのに、細かい描写ばかりで、肝心のストーリーがいっこも動かん。ま、いわば、小津安二郎に「日本沈没」「ゴジラ」「ベン・ハー」「十戒」などのスペクタクル映画を監督させたよう。
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とつぜん上方落語 第30回 片棒
大阪は船場へんの、さる大店のだんさん。しまつして財産をたくわえた金満家でございます。ワシ1代で築いたこの財産、ワシの目の黒いうちにだれに継がそうか決めておこう。この家には3人の息子がおります。この3人に、ワシが死んだらどんな葬式を出すか聞いて決めよう。と、いうことになりまして、3人の息子、それぞれ葬式の企画をおやだんさんにプレゼンするわけですな。
一方、こちらはSFの大コレクター。公にはアメリカのF・J・アッカーマン氏が世界一のSFのコレクターといわれておりますが、まったく無名の人ですが、アッカーマンに優るとも劣らないコレクターです。
アメージング・ストーリーズ、アナログ、アスタウンジング、スリリング・ワンダー、ギャラクシー、ウィアード・テールズ、などのアメリカのSF雑誌はすべてコンプリート、SFのハードカバーにソフトカバーの単行本すべて。もちろん日本のSF関係では、SFマガジン、奇想天外、SFアドベンチャー、SF宝石、幻想と怪奇などの雑誌類はすべて全巻揃い。ハヤカワSFシリーズ、ハヤカワSF文庫、東京創元社の文庫、サンリオSF文庫などは全巻、他の出版社のSFはいうに及ばず、宇宙塵、星群、イスカーチェリ、科学魔界といったファンジン同人誌もすべて。しかも、なんとおどろくことに、それらの雑誌書籍類をそれぞれ100セットづつ保有しているのです。アッカーマンと野田昌宏大元帥と石原藤夫博士の3人分のコレクションを合わせて100倍したぐらいのコレクションです。
そのコレクター氏、もうずいぶんのお年で、自分の死後、この膨大なコレクションをどうするか決めかねてます。まず長男にどうするか聞きました。
これだけのコレクション。散在してしまうのはもったいない。記念館を作ります。おとうさんの、この偉業、記念館を作って、SFに興味のある人はだれでも自由に閲覧できるようにします。
長男は熱心なSFファンです。では次に次男。次男は作家です。でも、SF作家ではありません。
おとうさんはなんで、こんな具にもつかない本をバカみたいにたくさん集めたのか判りませんな。ぼくの書く小説のネタにも資料にもならないし。こんな紙クズの山は要りません。
3男は古書店を経営しています。自分で引き取るといいました。おとうさんは、古書店主なら本の扱いを熟知しているだろうと判断して、結局、この大コレクションは3男が継ぐことになりました。
3男は、おとうさんの遺産のコレクションをぜんぶ焼却してしまいました。
ぼくは古本屋です、こんなコレクションが世に出ると、SF関係の市場価格に大きな影響がでます。そんなことは古本屋としてできません。
大コレクター氏が亡くなって3年。3回忌の法事で久しぶりに3兄弟がそろいました。そこで3男がいいました。「お兄さん、実は」
一方、こちらはSFの大コレクター。公にはアメリカのF・J・アッカーマン氏が世界一のSFのコレクターといわれておりますが、まったく無名の人ですが、アッカーマンに優るとも劣らないコレクターです。
アメージング・ストーリーズ、アナログ、アスタウンジング、スリリング・ワンダー、ギャラクシー、ウィアード・テールズ、などのアメリカのSF雑誌はすべてコンプリート、SFのハードカバーにソフトカバーの単行本すべて。もちろん日本のSF関係では、SFマガジン、奇想天外、SFアドベンチャー、SF宝石、幻想と怪奇などの雑誌類はすべて全巻揃い。ハヤカワSFシリーズ、ハヤカワSF文庫、東京創元社の文庫、サンリオSF文庫などは全巻、他の出版社のSFはいうに及ばず、宇宙塵、星群、イスカーチェリ、科学魔界といったファンジン同人誌もすべて。しかも、なんとおどろくことに、それらの雑誌書籍類をそれぞれ100セットづつ保有しているのです。アッカーマンと野田昌宏大元帥と石原藤夫博士の3人分のコレクションを合わせて100倍したぐらいのコレクションです。
そのコレクター氏、もうずいぶんのお年で、自分の死後、この膨大なコレクションをどうするか決めかねてます。まず長男にどうするか聞きました。
これだけのコレクション。散在してしまうのはもったいない。記念館を作ります。おとうさんの、この偉業、記念館を作って、SFに興味のある人はだれでも自由に閲覧できるようにします。
長男は熱心なSFファンです。では次に次男。次男は作家です。でも、SF作家ではありません。
おとうさんはなんで、こんな具にもつかない本をバカみたいにたくさん集めたのか判りませんな。ぼくの書く小説のネタにも資料にもならないし。こんな紙クズの山は要りません。
3男は古書店を経営しています。自分で引き取るといいました。おとうさんは、古書店主なら本の扱いを熟知しているだろうと判断して、結局、この大コレクションは3男が継ぐことになりました。
3男は、おとうさんの遺産のコレクションをぜんぶ焼却してしまいました。
ぼくは古本屋です、こんなコレクションが世に出ると、SF関係の市場価格に大きな影響がでます。そんなことは古本屋としてできません。
大コレクター氏が亡くなって3年。3回忌の法事で久しぶりに3兄弟がそろいました。そこで3男がいいました。「お兄さん、実は」
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サンタクロース誘拐事件
「サンタクロースのおじいさん、今年はどうしたのかしら」
ベンテンが海洋学者のエビスに聞いた。
「そやな毎年この宙域で会うのにな」
地球まで4光年。地球の暦で12月の20日。ベンテンたち7人を乗せた恒星間巡回船タカラブネ。この宙域で毎年地球に向かうサンタクロースと出会う。サンタクロースはしばしタカラブネに立ち寄り、ホテイがたてた茶を一服飲んで、情報交換をして地球に急ぐ。12月24日には地球の子供たちにプレゼントを配らなければいけない。それが今年はサンタクロースがこの宙域にいない。
「艦長、超空間通信を傍受しました」フクロクジュが長い頭を振りたてていった。
「読んでくれ」艦長ダイコクに命じられてフクロクジュが通信文を読んだ。
「サンタクロースを誘拐した」
「なんだと」
軍人のビシャモンが声をあげた。
「メッセージが添付されています。読みます。『南の島に雪を降らしてください』」
「どういうことだ」
ペットの惑星クァールの四足生物イクストルの毛並みをなでながらジュロージンが聞いた。
「ぼくたちは南の島国の子供です。一度でいいから雪を見てみたいです。願いを叶えてくれたらサンタクロースのおじいさんを解放します」
「ほんとに子供のしわざか。極悪非道のテロ組織汎銀河聖解放戦線のしわざだろう。ワシが特殊部隊を率いて救出する」
「まあ、待てビシャモン。ことを荒立てるでない。南の島に雪を降らせばいいんだろう。ベンテン、タキオン通信でユキオンナに連絡をとれ」
「アイアイサー」
「はあい。ベンテン、なんの用?」
「艦長、ユキオンナが出ました」
「ダイコクだ。いまからいう地点に雪を降らせてくれ」
「おやすいごよう」
「ユキオンナ、手かげんせえよ。雪を降らせるだけでいい。気温を下げて南の島の子供たちを凍えさせるんじゃないぞ」
「判ってるわよ」
「艦長、南の島の子供たちからお礼のメールが来ました」
「雪をありがとう。できたらぼくたちの友だちの願いも聞いて」
「東の国から通信です」
「ぼくたちの国は桜の国です。でも気候変動で桜が咲かなくなりました」
「判った。花咲かじじいを呼べ」
白いヒゲのおじいさんが転送装置にワープしてきた。
「ダイコク、久しぶりじゃ。お、ジュロージン、あとで一杯やろう。肴はエビスが採集したもんがええな」
「サンタクロースが誘拐された」
「なんじゃとあいつとワシは白いヒゲ友だちじゃ。それでワシにどうしろと」
「この座標にワープして桜の枯れ木に花を咲かせてくれ」
東の国のとある川。川端の桜並木はみんな枯れている。
「枯れ木に花を咲かせましょう」
おじいさんが灰をまくと、桜の枯れ木につぼみが出て、みるみるうちに花が咲き満開になった。
「これでサンタのじいさんは解放されるのか」
「艦長、さらに要求が」
「なんだ。ついでだ。みんな聞いてやれ」
「ぼくの国の大気汚染をどうにかしてください」
「風神を呼べ」
「電気がずっと停電なんです」
「雷神だ」
「日照りで雨が降らないのです」
「竜神をやって雨を降らせろ」
「これが最後です」
「ぼくの国から戦争をなくしてください」
「う~む。これはワシら7人が行かなきゃならないな」
7人が仲裁に入り政府と反政府武装勢力の間で和平交渉がまとった。その時、ちょうど12月24日。地球方面からサンタクロースの宇宙船が飛んできた。太陽光発電の集光パネルがトナカイの角のように見える。船内のサンタの様子がタカラブネのモニターに映る。サンタは地球に向かってVサインを出している。
「どうじゃ。今年のクリスマスプレゼントは」
全地球の子供たちがいった。
「ありがとうサンタのおじいさん」
「あいつめ。あいつの計略だったのか」
「おこるな。7人のみなさん。こんどまたなんかおごるよ」
サンタクロースの宇宙船は太陽系を離れていった。タカラブネは地球に向かった。お正月に福を授けるために。
ベンテンが海洋学者のエビスに聞いた。
「そやな毎年この宙域で会うのにな」
地球まで4光年。地球の暦で12月の20日。ベンテンたち7人を乗せた恒星間巡回船タカラブネ。この宙域で毎年地球に向かうサンタクロースと出会う。サンタクロースはしばしタカラブネに立ち寄り、ホテイがたてた茶を一服飲んで、情報交換をして地球に急ぐ。12月24日には地球の子供たちにプレゼントを配らなければいけない。それが今年はサンタクロースがこの宙域にいない。
「艦長、超空間通信を傍受しました」フクロクジュが長い頭を振りたてていった。
「読んでくれ」艦長ダイコクに命じられてフクロクジュが通信文を読んだ。
「サンタクロースを誘拐した」
「なんだと」
軍人のビシャモンが声をあげた。
「メッセージが添付されています。読みます。『南の島に雪を降らしてください』」
「どういうことだ」
ペットの惑星クァールの四足生物イクストルの毛並みをなでながらジュロージンが聞いた。
「ぼくたちは南の島国の子供です。一度でいいから雪を見てみたいです。願いを叶えてくれたらサンタクロースのおじいさんを解放します」
「ほんとに子供のしわざか。極悪非道のテロ組織汎銀河聖解放戦線のしわざだろう。ワシが特殊部隊を率いて救出する」
「まあ、待てビシャモン。ことを荒立てるでない。南の島に雪を降らせばいいんだろう。ベンテン、タキオン通信でユキオンナに連絡をとれ」
「アイアイサー」
「はあい。ベンテン、なんの用?」
「艦長、ユキオンナが出ました」
「ダイコクだ。いまからいう地点に雪を降らせてくれ」
「おやすいごよう」
「ユキオンナ、手かげんせえよ。雪を降らせるだけでいい。気温を下げて南の島の子供たちを凍えさせるんじゃないぞ」
「判ってるわよ」
「艦長、南の島の子供たちからお礼のメールが来ました」
「雪をありがとう。できたらぼくたちの友だちの願いも聞いて」
「東の国から通信です」
「ぼくたちの国は桜の国です。でも気候変動で桜が咲かなくなりました」
「判った。花咲かじじいを呼べ」
白いヒゲのおじいさんが転送装置にワープしてきた。
「ダイコク、久しぶりじゃ。お、ジュロージン、あとで一杯やろう。肴はエビスが採集したもんがええな」
「サンタクロースが誘拐された」
「なんじゃとあいつとワシは白いヒゲ友だちじゃ。それでワシにどうしろと」
「この座標にワープして桜の枯れ木に花を咲かせてくれ」
東の国のとある川。川端の桜並木はみんな枯れている。
「枯れ木に花を咲かせましょう」
おじいさんが灰をまくと、桜の枯れ木につぼみが出て、みるみるうちに花が咲き満開になった。
「これでサンタのじいさんは解放されるのか」
「艦長、さらに要求が」
「なんだ。ついでだ。みんな聞いてやれ」
「ぼくの国の大気汚染をどうにかしてください」
「風神を呼べ」
「電気がずっと停電なんです」
「雷神だ」
「日照りで雨が降らないのです」
「竜神をやって雨を降らせろ」
「これが最後です」
「ぼくの国から戦争をなくしてください」
「う~む。これはワシら7人が行かなきゃならないな」
7人が仲裁に入り政府と反政府武装勢力の間で和平交渉がまとった。その時、ちょうど12月24日。地球方面からサンタクロースの宇宙船が飛んできた。太陽光発電の集光パネルがトナカイの角のように見える。船内のサンタの様子がタカラブネのモニターに映る。サンタは地球に向かってVサインを出している。
「どうじゃ。今年のクリスマスプレゼントは」
全地球の子供たちがいった。
「ありがとうサンタのおじいさん」
「あいつめ。あいつの計略だったのか」
「おこるな。7人のみなさん。こんどまたなんかおごるよ」
サンタクロースの宇宙船は太陽系を離れていった。タカラブネは地球に向かった。お正月に福を授けるために。
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ポートタワーの夜景
健康のため、毎日散歩をしている。きょうは、地下鉄ハーバーランドからJR元町までを歩いた。このルートはいくつかコースがある。まず、一番北。下山手通りを歩く。JRの線路の北側を歩く。元町商店街を通る。栄通り。国道2号線沿い。そして一番南がわ。ハーバーランドからモザイクの前を通って、観光船の船着場を横目で見ながら、ホートタワーから海洋博物館の前を通って、JR元町まで。きょうは、この一番南側のルートを通った。この写真はその散歩の途中で撮った写真である。ポートタワーと海洋博物館の夜景だ。
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妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ
監督 山田洋次
出演 夏川結衣、西村まさ彦、橋爪功、吉行和子、中島朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優
SFにIF(もし)を扱うSFがある。筒井康隆の「東海道戦争」はもし、関東と関西が戦争を始めたら、フィリップ・K・ディックの「高い城の男」は、もし第2次世界大戦でドイツが勝っていたら、という話。という見かたをするのなら、この映画もSFかもしれない。かなりムリがあるが。
もし、一家の家事を一手に行っていた主婦が、とつぜんいなくなったら。というのがこの映画である。
平田家の長男の嫁、史枝が居眠りしている間に泥棒に入った。被害は史枝のへそくり40万円。夫の幸之助、史枝をなじる。俺が稼いだ金をピンはねしてへそりをしてたのか。俺が一生懸命働いてた時に昼寝してたのか。
あまりに心ない言葉。史枝、きれて家出。どこに行ったか知っているのは次男の嫁だけ。
祖母の富子は体調をくずして動けない。さあ、えらいこっちゃ、平田家の家事は男どもの手でやる必要ができてきた。
典型的な亭主関白な祖父の周造がメインで動かなくてはならない。周造は友だちや行きつけの飲み屋の女将の手まで借りて家事をするがままにならない。そのうち、とうとうボヤまで出す始末。みんな主婦史枝のありがたさを身にしみて思い知るのであった。
第一作で熟年離婚。第二作で高齢者運転と老と死。そしてこの第三作では、主婦の労働の価値。うん、四作目も作られそうだ。今度はなにを描くのか山田監督。楽しみである。
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きのこのおかいさん
おかいさんや。関西では、食べ物に「お」や「さん」「ちゃん」をつけることがある。かゆ、なんて無愛想ないいかたではなく、親しみをこめて「おかいさん」というねん。ほかに、「おいもさん」「あめちゃん」「おうどん」「おじや」なんて、食べ物にはていねいなんや。
そのおかいさんに、きのこをのっけて食べたで。きのこは、ひらたけ、しめじ、えのき。これらのきのこを、砂糖。醬油、味醂でじっくりたくねん。きのこのつくだ煮を作るんやな。ワシは昔、昆布屋に奉公しとったことがあった。そこでつくだ煮をよう作らされた。そやから、ワシ、つくだ煮煮るのんうまいで。で、でけたきのこのつくだ煮をおかいさんの上にのっけて食べる。うまいで。残ったきのこのつくだ煮は置いといて、めしの友にええで。もちろん酒の友にもええ。
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天津ラーメン
天津丼。めしの上に中華風オムレツであるフヨウハイを乗っけたもの。こんな料理は中国にはないそうだ。日本独特の中華料理だとか。
で、めしに乗っけてうまいんだから、やはり日本発祥の中華風料理の代表たるラーメンに乗っけてもうまいだろうと思って作ったのがこれ。
スープは鶏ガラで取った。スープの味は醤油味。麺は細めのモノを用意した。
フヨウハイの具はカニ身と干し椎茸。卵は2個、さっと具を混ぜた卵を焼く。フヨウハイもオムレツと同じでさっさと手早く焼くのがよろしい。
ラーメンの上に乗っければできあがり。スープを吸ったフヨウハイがうまいぞ。
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とつぜん対談 第118回 穴あけパンチとの対談
この会社だ。今回の対談の相手は、ここの社員さんです。女性です。この会社、戦前からある会社で、小さいけれど歴史のある会社です。その人は事務員さんだそうです。さて、入っていきましょう。うわっ木の廊下だ。ギシギシ音がします。ずいぶんと年季の入ったオフィスです。ええと、あ、おられました。なんかこわそうなおばさんです。
穴あけパンチ
堀川くん、この伝票ダメ。課長のハンがないでしょ。
雫石
あのう。
穴あけパンチ
あ、ちょっと待って。天野くん、出張の精算まだでしょう。早くしなさい。
雫石
すみません。
穴あけパンチ
ちょっと待ちなさい。金谷くん。年末調整の書類は?税金の払い戻しいらないの。
雫石
あのう。
穴あけパンチ
ちょっと待ちなさいっていってるでしょう。椿さん。なんですか、この納品書は。単価のない納品書は納品書ではありません。ただの送り状です。送り状を私に回さないでよ。大洋産業に電話してとっとと納品書を出させなさい。今日中に納品書を出さないと、支払いは来月回しになるといいなさい。これ、なに泣いてるんですか。
雫石
こまったな。お忙しいようなんで、こんどにしましょうか。
穴あけパンチ。
うん、あんただれ。
雫石
お電話をさしあげた雫石といいますが。
穴あけパンチ
ああ、そうだったわ。で、なんの用?
雫石
お話をうかがいたいのです。お時間はいいですか?
穴あけパンチ
いいわ。ここではなんだから応接室に行きましょう。
雫石
お忙しいところをすみません。
穴あけパンチ
いいのよ。ほんと、わたしがいないとここの総務は回らないのよ。
雫石
あなたは大ベテランの事務員さんですね。
穴あけパンチ
そうなるかしらね。ずいぶんこの会社で働いているけど。
雫石
あのう、失礼ですが、いあゆる「お局さん」ですね。
穴あけパンチ
別に失礼ではないわ。じっさい、わたし、お局なんだから。
雫石
ずいぶん長いこと事務仕事やってるんですね。
穴あけパンチ
そうねえ。わたし、書類に穴を開けてとじるのがメインで、穴あけ仕事を20年やってきたけど、最近は総務の仕事全般をやらされているの、疲れたわ。
雫石
最近は穴あけ仕事はあまりやらないのですか。
穴あけパンチ
なんか知らないけど、ペーパーレスとかで、なんでも必要なことは電子化するから、書類に穴を開けてファイルにとじるなんてことはあまりしないの。
雫石
これからどうするんですか。
穴あけパンチ
どうしましょうかねえ。なんだかんだで気がつけば40半ばの大年増。事務の大ベテランとなったけど、独身の大ベテランにもなったわ。どっかにいい男いないかしら。
雫石
私の友人で50を遥かに超えているのに独身の男が何人かいますが。
穴あけパンチ
ちょうだい。どれでもいいから、ちょうだい。わたしが穴を開けたげる。
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