goo

トラキチ酒場せんべろ屋 5月31日

「あきまへんな」
「そうでんな。3連敗でんな。貯金をもって交流戦に臨んだのに、もう借金生活やないの」
「ま、実力やな。いまの阪神の実力ってこんなもんやないんかな」
「そうでんな」
「その弱い阪神でなんとか頼りになる二人の先発ピッチャー、メッセンジャー、秋山、二人とも見殺しにしてしもたな」
「うん。秋山を信頼してやれよ。なんで8回で替えんねん」
「そやな。8回に阪神2点取ってんねんから秋山続投なら勝っとったかも知れん」
「メッセンジャーと秋山を信頼でけへんねんやったら阪神のピッチャーでだれが信頼でけんねん」
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

とつぜんSFノート 第101回

 第9回星群祭は星群の会創立10周年の記念で、2日間の拡大バージョンであった。その翌年1983年第10回星群祭は通常の1日バージョンの星群祭であった。日時は1983年7月24日(日曜)会場は京大会館。
 例によって真夏のイベントである。それでなくても暑い7月下旬。場所が京都。京都の真夏は底意地の悪い暑さである。
 第10回星群祭のテーマは「ジュヴィナイルというもの」ゲストは、新井素子、荒巻義雄、風見潤、柴野拓美、巽孝之、豊田有恒、堀晃、眉村卓、安田均の各氏。あいかわずの多彩なゲスト陣である。
 24日の本会に先立って、オープン制の合宿が行われた。宿は祇園のきのえ。ここは星群祭の定宿である。風見潤氏の創作教室、柴野拓美氏のフリートーク。そして当時は星群の同人であった山本弘氏による大ロールプレイングゲーム大会が行われた。もちろん酒つきである。星群の、というか小生の知ってる限り、しらふのSFファンの合宿は寡聞にして知らない。
 さて翌朝、いささか二日酔いぎみの頭をかかえつつ京大会館へ向かう。実行委員長の開会あいさつ。この時の実行委員長はアマチュア時代の水野良が務めた。
 午前の最初の講演者は豊田有恒氏。福島正実氏をはじめ、第一期のSF作家たちが情熱をそそいだ、昔の児童向けSFはあまり良い環境ではなかった、俗悪な「大衆児童文学」と「純児童文学」サイドから白眼視されていた。その昔のSFジュビナイルを支えたのが学習誌であった。また、アニメのノベライズもあまり良い条件ではなかった。
 柴野拓美氏。アメリカのSFにはジュビナイルというカテゴリーはなかった。なぜならSF全部がジュビナイルであったから。SFがジュビナイルでなくなったのは60年代ニューウェーブの洗礼を受けてからだ。
 午前中の最後は風見潤氏。翻訳、翻案の発想の話を交えつつ、ジュビナイルのお話。最近のジュビナイルは、決してSF入門とは同義語ではない。
 昼食。昼休みはファンジン即売が行われた。
 午後の最初は新井素子氏。ある意味新井氏の登場が日本のSFジュビナイルの本格的夜明けであったといえる。その新井氏の講演。話し相手は堀晃氏が務めた。
「いまやジュビナイルというコバルトの新井さんというイメージですが」
「ジュビナイルと意識して書いたことはない。自分と同世代の女の子に読まれたいと思って書いてきた」
 安田均氏。従来の「大人が与えるもの」「大人もの」の、「子供だまし」でもない。生物的にいうと「幼形成体」というイメージではないか。
 辻真先氏が一般参加者として参加されていた。ごあいさつをいただく。 
 荒巻義雄氏は「時代に敏感たれ」とおっしゃった。子供にも判り、なおかつ大人が読んでも面白いもの。なんど読んでも新しい発見があるモノが名作だ。「宝島」が好例。ジュビナイルを書く人は「宝島」を座右の書とすべし。
 巽孝之氏。「子供/大人」を直線と並列でとらえる読み方が必要。
 さて、この星群祭最後の講演は眉村卓氏。ジュビナイルを書く時は、自分の子供時代に頼るが、昔の子供と今の子供は違う。児童文学は、読む側の心理を考えて書かれるが、ジュビナイルはマーケティングを考慮して書かれがちだが、読者の新しい方向性を打ち出す必要がある。
 最後に全員参加のパネルディスカッションを行って、第10回星群祭は無事終了した。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

トラキチ酒場せんべろ屋 5月30日

「負けたな」
「そやな」
「きょう見てて、なんか勝つ気がせんな」
「そやな」
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

深夜食堂×dancyu


 dancyuは創刊号以来愛読している。「深夜食堂」は原作の漫画は未読だが、テレビ映画は観た。そのdancyuと深夜食堂のコラボ本である。
 取り上げてある料理は、ウィンナー、マカロニサラダ、ハムカツ、ソース焼きそば、ゆでたまご、唐揚げ、タコぶつ、目玉焼き、やっこ、などなど、いずれもシンプルな料理ばかり。
 これらシンプルな料理を紹介しつつ、それぞれに関するうんちくが書いてる。それが料理好きとしては実に楽しい。例えば、ゆでたまご。ただ卵をゆでるだけと思うなかれ。卵の選び方からゆでる湯温からゆで時間などなど、おいしいゆでたまごを調理するためにはさまざまなうんちくがあるのだ。
 夜おそくまで自宅で仕事。さて寝ようか。その前にちょっと一杯ひっかけて寝よう。軽くアテを欲しい。そんなときに開きたい本だ。
 
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

トラキチ酒場せんべろ屋 5月29日

「お、きーこ、ひさしぶりやな」
「そやな。お前もここ来んのはひさしぶりちゃうんか。せーやん」
「そや、わてもや」
「お、おもやん。あいかわらずべっぴんやな。ビールや」
 阪神電車今津駅のほど近くに居酒屋せんべろ屋がある。甲子園から二駅西。夜な夜な阪神ファンがあつまる居酒屋である。安い居酒屋だ。1000円札1枚持って行けば、べろべろに酔える。だからせんべろ屋という。
 気さくな大将とかわいいアルバイトの女の子おもやんが、客の相手をする。
「大将、きょうはアテなにがええねん」
「これや」
「おお、きれいなスナップえんどうやな」
「知り合いからもろてん。塩ゆでと天ぷらにしよう」
「きょうから交流戦やな」
「相手はソフトバンクや。打撃戦になってボコボコにされるかと思ってたけど1対0の投手戦やったな」
「ま、メッセンジャーやからわてはそんなことはない思ってたけどな」
「うん。メッセンジャーは8回まで投げて3安打0点に押さえたから大合格やで」
「打たれたんはドリスやけど、打ったんは強いパリーグの首位打者柳田やから、しゃあないわな」
「阪神打線がソフトバンクが繰り出す6人のピッチャーにおさえこまれたな」
「それはそうと鳥谷の記録が途切れたな」
「ま、ええんちゃうか。これで憑きもんが落ちたやろ」
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

スナップえんどうをもらいました


 スナップえんどうを知り合いからどっさりいただきました、収穫したばかりの新鮮なスナップえんどうです。農家からのいただきモノのおすそわけです。
 さて、どう料理しましょうか。きぬさや、うすい、そら豆、いんげん、これから夏に向かおうかという、この時期、あおい豆類はいずれもおいしいです。スナップえんどうは、日本では新顔の豆ですが、たべでがあって、おいしく、わたしも大好きな野菜です。
 天ぷら、バターソテー、和えモノ、サラダ、いかように調理してもおいしくいただけます。さて、ウデをふるいましょうか。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

蠢動 しゅんどう


監督 三上康雄
出演 脇崎智史、平岳大、若林豪、目黒祐樹、中原丈雄、さとう珠緒、栗塚旭

 久しぶりの時代劇映画である。映画がはじまったとき、あれ、モノクロ映画かなと思った。淡い色がついているからモノクロではない。鮮やかな色彩はいっさい使わず、墨絵を思わせる色調の画面である。ラストは雪原の大殺陣であるが、真っ白い雪の原に真っ赤な鮮血がほとばしる、という演出は三上監督はしなかった。雪の上での大チャンバラではあるが、赤い色はいっさいない。この色彩使いは良かった。黒澤流リアルな画面もいいが、これは映画であるからして、現実とは違う演出をしてもいいだろう。
 山陰の小藩因幡藩はご公儀に多摩川上水の工事費の拠出を命じられた。このままでは苦心して貯めた藩の余剰金がなくなる。藩の財政は大ピンチ。また余剰金を隠していることがばれれば、改易、お取りつぶしは必定。城代家老たちは対策に苦慮する。
 藩内の情報が漏れている。どうもご公儀から派遣された剣術指南役があやしい。近日中にご公儀から使者が来る。派遣指南役と使者を会わせてはいけない。なんとしても藩を守らなければならない。ご城代は重大な決意をする。  
 これは時代劇であるから、主人公は武士。精神的バックボーンは武士道となる。だから藩のために死ねという理屈であるかも知れないが、この映画のテーマは普遍的なモノではないだろうか。組織と個人。この映画の場合、組織=藩と主人公の若い藩士と藩剣術指南役=個人という構図だろう。この構図の葛藤を描いた作品は多くある。SFでいえば、眉村卓は、「司政官」をはじめこのテーマの数多の作品がある。
 また、ご公儀を本家の上部団体の組、藩を下部の小さい組とすると、「仁義なき戦い」風ヤクザ映画となる。ご公儀=親企業、藩=下請けの中小企業とすると、サラリーマン風となるだろう。
 終わりは続編を期待させる終わり方である。続編は本作とはうって変わって、血で画面がべとべとのホラーで大スプラッターとなりそうな終わり方である。その続編の監督はぜひ三池崇史監督にやってもらいたい。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

西宮八園虎日記 5月27日

「女将、ビール」
「いやあ、気持ち良かったですな」
「そうですな。快勝ですな」
「先発才木がこの前の中日戦とはうってかわって快投。打線もロサリオを7番に下げた効果かようつながった」
「そうですな。阪神打線、一足早い梅雨明けですな」
「ま、これで4月の対巨人3連敗のお返しをしましたな」
「交流戦に貯金を持って臨めますな」
「しかし、巨人、どないしたんでしょうな。ちぐはぐな攻撃、守備でミスするし」
「さあ、どっかネジ外れたんとちがいますか」
「阪神打線のネジはつながったみたいですな」
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

イワシのさつまあげ


 さつまあげです。ここ関西では、てんぷらといいます。最近はどこもスーパーばかりになりましたが、昔は市場があちこちにありました。中央市場のような業者あいての卸売り市場ではありません。一般消費者相手の市場です。神戸では、東山市場、大安亭市場、春日野道商店街などが代表的な市場です。私の住まいおる神戸は東灘でも、三和市場、森市場、稲荷市場など小規模な市場がありました。森市場は甲南山手駅前のセルバとなりました。東灘の市場の多くは阪神大震災で壊滅してしまいました。その稲荷市場に、おいしいてんぷら屋さんがありました。さつまあげの専門店です。わたしは、こどものころてんぷらのことを「どんどん」といっていました。母が夕食のおかずは何がいいと聞くと、よく「稲荷市場のどんどん」とリクエストしたものです。
 さて、「稲荷市場のどんどん」にかないませんが、わたしもてんぷらを作りました。いわしのさつまあげです。
 いわしをさばきます。いわしは軟らかい魚ですから、包丁を使わずさばけます。手びらきにします。骨も取ります。
 いわしの身、味噌、卵黄、塩、しょうが汁、片栗粉をフードプロセッサにいれてすり身にします。フードプロセッサのない人は包丁で刻んですり鉢でゴリゴリしてください。あとは、これを油で揚げるだけです。
 黒っぽいてんぷらになりましたが、イワシだからです。白身の魚を使うと黒っぽくなりません。
 これはおいしいです。お酒は桜正宗の大吟醸を花冷えにしていただきました。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

西宮八園虎日記 5月26日

「勝ちましたな」
「そうですな。きのうといい、きょうといい薄氷を踏む思いの試合ばっかりですね」
「ま、これで巨人と入れ替わって3位浮上。巨人ファンの諸賢はさぞかしくやしいでしょうな」
「しかし、阪神、貧打が少しづつ解消されてれきましたな」
「そうですな。大山、中谷、梅野、江越といった連中が、ちょこちょこ打つようになりましたな」
「あ、女将。ビールもう1本」
「あの人は相変わらずで、とうとう代打だされてしまいましたな」
「4番バッターに代打。あきませんな。これは」
「暖かくなったら打ち出す。金本監督がゆうてたけど、きょうなんか30℃でしたで。充分、暖かくなったけど」
「もう、そろそろ限界ちゃいますか」
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

白州を飲む


 サントリーの白州です。白州は山崎とともにサントリーを代表するシングルモルトです。白州、山崎両エースといったところでしょうか。昔の阪神タイガースでいえば村山、小山の両エースといったところです。
 さっそく飲んでみましょう。例によって最初の一杯はストレートで。テイスティンググラスに注ぎます。色はごらんのように美しいうすい金色。山崎がこいめの琥珀色です。山崎が黄昏の色だとするのなら、この白州は明け方の色といえましょう。
 香りはたいへんにフルーティで清々しい香りです。鼻にツンとくるアルコール臭はまったくありません。口にふくみます。スムーズです。ひっかかるとことがありません。たいへんにおいしいウィスキーです。
 この白州、このニュースが流れる以前にネットで入手したモノです。酒屋を探したのですがどこも売ってません。ネットで8000円ほどしました。いまは1万円を軽くこえています。販売休止になった白州は12年モノです。この白州はノンエイジです。ノンエイジのウィスキーで1万円をこえる。昔ならありえないことです。
 最近の日本のウィスキー事情はえらいことになっています。山崎、白州、響、竹鶴といった高級ウィスキーはめったに酒屋の店頭でみかけません。絶滅危惧種といっていいでしょう。ニホンオオカミ、ニホンカワウソ、イリオモテヤマネコみたいなものです。
 原因として、NHKの朝ドラ「マッサン」で日本のウィスキーが見直されたから。ところがファミリア、大同生命、吉本興業などの創業者も朝ドラの主人公になりましたが、子供服、生命保険、新喜劇がウィスキーのような異常な事態になったとは寡聞にして聞きません。
 また、昨今のハイボール人気がワザしているとのことですが、かような高級ウィスキーはハイボールにしてもおいしいですが、ほんとうの魅力を味わいたいのならストレートで飲むべきです。
 昨今、山崎、響、イチローズモルトなど日本のウィスキーが世界一と評価されたこともあり輸出も増えているそうです。
 ま、いろんな要素が有機的に絡み合って、このウィスキー不足となっているのでしょうが、なんとも不思議な現象です。このような事態はスコッチにまで波及しているようです。先日、近所の酒屋にラフロイグを買いに行ったら、そこのお兄さんが、最近はスコッチも品薄ぎみですといってました。
 ただ、この事態はすぐには解決できません。12年モノのウィスキーを仕込んだのは12年前です。12年前にはかような事態は予想できなかったわけです。ですから、今から大あわてで仕込んでも12年モノのウィスキーが潤沢に市場に出回るのは12年後です。18年モノなら18年後です。ウィスキーは時間がつくるお酒です。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

西宮八園虎日記 5月25日

「はい。こんばんのアテはこれです」
「おお。天ぷらか」
「お。おいしい。スナックえんどうの天ぷらですな。女将」
「はい。知り合いからスナックえんどうをたくさんいただきました」
「お酒をいただきます」
「はい。こんやは道潅です」
「それにしても甚兵衛さん。おもしろい試合でしたな」
「そうですな。玄白さん」
「岩貞VS菅野。投手戦の醍醐味をたっぷりと味わいましたな」
「きょうなんか岩貞に完投せさせてもよかったんでは」
「鳥谷の記録がワザしましたな」
「鳥谷の連続試合出場もそろそろ考えなあきませんな」
「そうですな。鳥谷は代打じゃなくスタメンで試合に出るべき選手ですな。それがダメなら記録はあきらめるべきですな」
「あ、女将。こないだいってた熱帯魚さんな。近々きます」
「はい。楽しみです」
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

釣られた

「それでは二週間後に納品させていただきます」
 基盤用ディップスイッチ三百個の注文である。このK電子工業は、私が電子部品の営業を始めた当初からのお得意だ。そんなに大きな会社ではないが、確実に月に八十万以上の売り上げを私にもたらしてくれる。
 この会社から車で十分も走ればT電機。配電盤を造っている会社だ。ここには主にリレー、端子盤、コネクタを納品している。世界的なコネクタメーカーのH電機のコネクタを最も多く購入してくれるのがT電機である。
 このT電機の道の向かい側がI精機。計測機器のメーカーでダイオードやトランジスタ、ICなど半導体を買ってもらっている。
 JRの快速停車駅の駅前商店街を北の方に抜ける。そこは、ところどころに畑があり、いくつかの工場が点在している。大きな工場はない。いわゆる工業団地といっていい。行政が主導して、この地域に工場を集めたわけではない。自然発生的にできた工業団地である。
 電子部品専門商社に途中入社して五年。それ以前はデパートの外商にいた。紳士服を三年間売っていた。デパートの前は食品会社の営業。とろろ昆布、塩昆布など昆布食品を関西いちえんのスーパーへ納品していた。
 私は営業職以外は知らない。モノを売る仕事をずっとやってきた。その経験で得た営業の極意がある。
「お得意は近くでまとめろ」
 移動時間ほどムダな時間はない。一軒で営業して、移動に一時間。また一軒。この移動の時間は何も生み出さない。もっと効率の良い営業活動ができないか。常に考えていた。
 今の会社に入って、この工業団地を見つけた。最初は飛び込みでK電子工業に売り込みをかけ小口の注文を取った。その後だんだんとK電子工業の売り上げを育てて、この工業団地の会社を順々に開拓していった。
ここでの売り上げが、私の取扱いの九五パーセントを占める。
 ディップスイッチ三〇〇個。基盤用の小型スイッチである。一〇〇個入りの箱が三つ。両手でかかえて持てる。それを持ってK電子工業の事務所に入る。
「まいど。関西電商です」
「はい」
 事務所で入り口に一番近いところの女子社員が返事をしてくれた。
「川添さん、お願いします」
 購買担当者を呼ぶ。
「少しお待ちください」
 女子社員が席を立って奥へ行った。川添がいる資材部は、この建屋の奥、倉庫に隣接するところにある。外部の者は資材部には入れない。資材部の持つ数字は企業秘密だ。部品部材の仕入れ単価は外部に漏れてはいけない。
 おかしい。いつもは、すぐ応接室に呼ばれるのだが。なかなか呼ばれない。
 女子社員が戻ってきた。
「川添は来客中です。お待ちください」
 しばらく待つ。奥から知らない男が出てきた。この会社の社員ではない。初めて見る顔だ。そのすぐ後ろから川添が来た。
「それじゃ。川添さん、よろしくお願いします」
 知らない男が川添に手を振った。
「失礼」私の横を通って出て行った。
「お待たせしました」
 川添が応接室に招き入れてくれた。ディップスイッチを納品書といっしょに渡す。受領書にサインをもらう。
「こないだ見積もり出してもらったICソケットですが、今回はちょっと単価があいませんでした」
「え、すると、あれより安い見積もりを出した所があるんですね。信じられません」
「まあ、そうです。また今度なんかで埋め合わせしますから」 
 そういうと川添はそそくさと自分のデスクに戻っていった。次に行ったT電機でも同じようなことがあった。また、あの男とすれ違い、注文をよそに取られている。あいつだ、あいつが私のお得意を侵食している。
あいつとI精機の駐車場でばたったりハチ会わせした。こっちから先に仁義をきってやろう。
「すこしお話しませんか」

「まいど。近畿電子です。川添さんお願いします」
 釣られてしまった。「あいつ」今の私の上司。近畿電子商会の購買課長だ。この工業団地に目をつけていた近畿電子商会に私は、お得意ごと釣られたというわけだ。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

西宮八園虎日記 5月24日

「いやあ勝ちましたな」
「そうですね」
「ヤクルト相手なら勝てますな」
「勝ったとゆうても例によって2点しか取れませんでしたね」
「そうですねん。今日はたまたまロサリオが打って点はいったけど、貧打はあいかわらずですな」
「そうですねん。たまたまだれぞが打たな勝てませんな」
「お、もうないぞ」
「女将、お銚子おかわり」
「はい。呉春でいいですね」
「いや、こんどは大黒正宗で」
「はい。ところでわたし、熱帯魚飼いたいと思うてます」
「そやな。あそこの壁のところに水槽置いたらええな」
「うん。ワシの元患者さんで熱帯魚屋がおる。こんど連れてくるわ」
「お願いします」
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

とつぜん上方落語 第24回 試し酒

 NHK「日本の話芸」で桂塩鯛さんの「試し酒」を観る。絶品であった。塩鯛さんの「試し酒」はなんども観た。落語会で生で観た事も何度かある。そのうちでも、昨夜観た「試し酒」は特に良かった。
 商家近江屋のだんさんが、別の商家のだんさんを訪問する。用があるという近江屋を当家のだんさんがムリいって酒の相手をしてもらうことに。おもてに供の者がいるというと、お供の人にも入ってもらえとなる。この近江屋のお供久蔵がとんでもない大酒のみだという話。
 なんぼ大酒のみでも5升も飲めんやろ。いや久蔵なら飲める。と、いいあらそいに。で、賭けをすることになった。だんさん、久蔵に聞く。どや5升飲むか。ちょっと外で考えさせてくれと久蔵外にでる。
 帰って来た久蔵。おらやりますだ。5升の酒を飲み始める。1升入りの大杯で5杯久蔵が飲めば近江屋のだんさんの勝ち。
 大酒豪久蔵がひたすら大杯で酒を飲んでいるだけの噺だが、ヘタな落語家がやると退屈な話である。塩鯛さんは、5杯の酒、1杯1杯に違う演出をほどこしてあきさせない。また、久蔵は飲みながら双方のだんさんに話しかけるわけだが、この久蔵、田舎者ではあるが、なかなかの教養人で話題も豊富。塩鯛さん演じる、この久蔵の人物造詣が見事。田舎者で言葉はぞんざいだが、二人のだんさんには、それなりの敬意を払っているようでもある。実に魅力的なキャラである。
 上方落語の噺家さんには極めつけというべき噺がある。例えば四天王なら、桂米朝師匠なら「百年目」笑福亭松鶴師匠なら「らくだ」三代目桂春団治師匠「いかけや」5代目桂文枝師匠「たちきれ線香」また、現役の第一線の噺家なら桂南光「初天神」桂雀々「手水まわし」桂ざこば「子はかすがい」など。これらの中に桂塩鯛「試し酒」はまちがいなく入るだろう。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ