おおががりな雪あそびじゃのう

　なにげにテレビを点けたら、ええ歳した大人（子供も何人か混じっているようじゃが）が雪遊びや氷滑りに興じておる。ナニをしているんだか、ご苦労なこってす。わしゃ、よう判らんから人に聞くと、なんでも「おりんぴっく」とやらの運動会のでっかいのの冬バージョンだとか。
　少し前は、この運動会に出る雪遊びが上手な小僧の服の着方が気にくわんとかで、雪遊びの元締めに抗議の電話をしたご仁がようけおったとか。世の中にはヒマなご仁が多いと見える。
　わしはあまりテレビは観ないが、そのわしが観る少ない番組が、中止になったり再放送でお茶をにごしたりで、まったく迷惑なことじゃわい。でも、ま、おかげで本がようけ読めるけど。
　で、この冬の運動会で日本はメダルがなん個とれるか、と、かまびすしいことですじゃ。正直いうとわしは「日本のメダルより阪神の優勝」が望みでな、日本人選手が雪遊びで金メダルを取るよりも、金本がホームラン打つ藤川がセーブする方がよっぽどうれしんじゃ。
　この、「おりんぴっく」になると気になることがある。「日本のため」「日本の代表として恥ずかしくない」みょうなナショナリズムが湧き上がるのに違和感を感じるのじゃが。なんで、金メダルを取る事が「日本の名誉」で予選で敗退するのが「日本の恥」なのじゃ。わしゃ判らん。運動会でしか存在を主張するしかない国なら、メダルの数に一喜一憂するのも致し方なきことじゃ。でも日本はそんな国ではないじゃろう。他にも誇るべき点もあるし、また恥ずかしい点もあろうぞ。あんまりメダルの数や色に目の色を変えるのはいかがなものか。
　わしは雪遊び氷滑りに興味はないが、興味のあるムキもおられるだろう。特に人気のあるのが、ほれ、なんといったかな、若い女の子が氷の上をクルクル回るやつ、「ふぃぎあすけーと」というのかな。これで特に上手な娘が日本の浅田真央と韓国のキムヨナ。どっちかが一等賞になるのじゃろうて。これで、もし、もしじゃぞ、韓国人で浅田真央を応援し、日本人でキムヨナを応援するご仁がおれば、その人らは非国民あつかいされかねんじゃろう。おかしな話じゃ。韓国人でも浅田の演技が好きな人もおるじゃろう。日本人でもキムヨナの演技が好きな人もおろうに。妙なナショナリズムにおちいらずに、国籍に関わらず好きな選手を応援すれば良いと思うのじゃが。
　こうしたらどうじゃろうか。そのおりんぴっくに参加する全選手を、抽選か何かで不作為に選別して、適当なグループに分けて、それを選手団として、その選手団で競技する。こうすれば、妙なナショナリズムにとらわれずに純粋に選手のスポーツだけを観れるじゃろうが。

　星群の会ホームページ掲載の雫石鉄也「ＳＦマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞご覧になってください。