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神戸の地酒 道灌

 
 小生の住まいおる神戸市東部から西宮にかけては酒どころ。灘の生一本で知られる日本一の日本酒生産地である。量は。質は人によって好みがあるが、灘の酒より越後や土佐の酒のほうが好きな人もいるだろう。小生は魚崎郷の桜正宗、池田の呉春、丹波の小鼓、金沢の天狗舞などが好きだ。
 いわゆる灘五郷。東から今津郷、西宮郷、魚崎郷、御影郷、西郷。西宮市と神戸市東灘区、灘区。これらの地域にある醸造元は、大関、日本盛、菊正宗、白鶴といった大手の酒造メーカー。メジャーな酒である。これらの有名銘柄の酒も、神戸の地酒といえば地酒である。
 神戸には、この灘五郷に属さずあまり知られていない酒もある。例えばこの道灌。醸造地は神戸市東灘区深江南町。灘五郷ではない。酒造会社は太田酒造。名前から推察される通り太田道灌とゆかりのある酒造会社だそうだ。もともと滋賀県の会社だったが、昭和30年代に神戸に進出。五郷以外のこの深江の地で酒造りをはじめた。
 場所は海のきわ。西に神戸大学海事科学部がある。新明和の工場の近く。カミックスという船会社の隣り。このカミックスは元は東神戸造船所といって、造船をやっていたが、今はプレジャーボートやクルーザーといったレジャー用船舶の係留場やメンテナンス修理をしている。
 そのカミックスの隣りに太田酒造灘千代田蔵がある。道灌はここで醸されている。造船所の隣りの蔵元。いかにも神戸の地酒である。
 このあたり、深江南町周辺は深江文化村といって、かっては、細雪でおなじみの戦前の阪神間モダニズムの一翼を担った土地。革命を逃れてきたロシアの文化人や、日本の有名な文化人もこの地に住んでいた。阪神大震災で被害を受けたが、今でも当時のハイカラな建物が残っていて往時をしのぶことができる。
 さて、道灌をさっそく飲んだ。うまい。五郷の酒より澄んだ感じ。重厚ではないが腰は据わっている。それでいて軽快で飲みやすい。肴は天ぷらや焼き物よりも、お刺身が合うかもしれない。お気に入りの酒がひとつ増えた。また酒量が増える。困ったもんだ。まったく。
 
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