雫石鉄也の
とつぜんブログ
ハイカラ神戸幻視行
西秋生 神戸新聞総合出版センター
日本の都市の中で、神戸のイメージは非常に良い。おしゃれ、ハイカラ、あか抜けてる。その神戸の印象が形作られたのは、大正末期から昭和初期にかけて。正確には、イナガキ・タルホが短編小説「星を造る人」を発表した大正11年を「神戸モダニズム」の幕開けとし、谷崎潤一郎の「細雪」が大団円を迎えた昭和16年を終焉と、著者はしている。
この時期に神戸に縁のあった文化人。稲垣足穂、谷崎潤一郎、竹中郁、江戸川乱歩、横溝正史、小松益喜、中山岩太、西東三鬼たち。いずれも神戸の魅力に触発されて創作活動を行ない、後世に名作を残している。
なぜ、この時期の神戸が、かような藝術家たちを魅了したのか。それは神戸が外に開かれた街だから。
当時の神戸は、明治に開港され、外国人のビジネスマンたちが、海沿いに会社を作っていた。これが旧居留地。神戸市営地下鉄海岸線に「旧居留地・大丸前」との駅名にその名残が残っている。彼ら外国人は会社は海岸で、住宅は山手、今の北野町、山本通りあたりに、いわゆる「異人館」建てて暮らしていた。そして北野から居留地に南北に通る道を通って通勤した。その道が今のトアロード。この海外の風が神戸に吹き込んだのが「神戸モダニズム」の時代というわけ。
神戸ゆかりの藝術家たちの業績を紹介しつつ、その業績に神戸がどうかかわったのか、西氏はディッタントな筆使いで紹介していく。古い、小生が生まれる前(西氏も生まれる前)のことを記述しながら、西氏の足は21世紀にある。たんなる懐古趣味に終らず、「神戸モダニズム」を冷徹に分析しているわけだ.
神戸→タルホ、谷崎たち→西秋生→読者と、神戸の魅力が順繰りに伝わってくる。
小生は、著者の西秋生氏と知己を得て40年になるが、西氏も、若い頃東京に勤務されたことがあるが、きっすいの神戸人である。その西氏自身も創作活動されているが、神戸人の創作者であるがゆえに、神戸が創作活動に及ぼした影響がよく理解できるのだろう。
神戸を愛する人に強くお勧めする、神戸愛に満ちた本だ。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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愛にみちた論評をありがとうございます。私も神戸モダニズムに興味が出てきました。
神戸というブランドのイメージ戦略が確立していく様子は、広告の手法ですね。
神戸だけてなく、他の地域にも深い洞察がある、素晴しい小説です。
幻想小説やホラーは、キングのように、しっかり足を着けた普通の人の思考と、ぶっ飛び発想の二刀流ができる人でないと傑作は産まれません!!
西秋生さんは、それができる稀有な作家です。
絶対に損はしないから、読んで!
こんな才人を忘れてはいけません!!
一時、現し世から離れて幽玄の地に彷徨いこむ経験ができます。損はさせません!!
近日中にこのブログで紹介します。
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