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とつぜんSFノート 第59回


「チャチャヤング・ショートショート・マガジン」の第2号が出た。同人誌である。もともと、このファンジンは眉村卓さんの作家デビュー50周年を記念して、大熊宏俊さんを中心に、かって眉村さんに薫陶をうけた、チャチャヤング・ショートショートコーナーの常連投稿者たちが企画したもの。発行は「チャチャヤング・ショートショートの会」編集実務は大熊さんが担当した。大熊さん、どうもご苦労さまでした。
 このファンジンの横長のかたちは、かって毎日放送でチャチャヤングが放送されていた時に、出された作品集のかたちを忠実に踏襲している。小生の作品も末席に載せていただいた。だから、当時を知る元常連としては、実になつかしい。
 さて、あれから40年以上の歳月が流れた。で、この2号のラインナップだが、次の通り。

ガラスの向こうの魚たち
1 窓       和田宜久
2 標本棚     和田宜久
騒霊祭       西秋生
光の夜、暗闇の街  深田亨
欅         服部誕
空がある。
階段の靴      柊たんぽぽ
美貌        柊たんぽぽ
同空会       柊たんぽぽ
百万年ピクニック  岡本俊弥
鏡面球体      大熊宏俊
ふたりのメイジュン 和田宜久
BAR 海神
めぐりあわせ    雫石鉄也
20年目のお雛さま 雫石鉄也
「じょう崎」    篁はるか

 もし、昔、チャチャヤングのリスナーだった方なら、この中の何人かは名前をご記憶かもしれない。
 さて、なかなかバラエティ豊かな作品集となった。このうち神戸ネタが2編、阪神大震災関連が2編。作者のうち3人が神戸人だから、神戸ローカル色が出て良かった。
 思えば、この人たちとは長いつき合いだ。ラジオの深夜番組の常連投稿者であったのが、いまだにこうして交友を続けている。それに、小生も含めて、いまだに書き続けている。これはひょっとしたらすごいことなのかもしれない。
 この人たちとは、年に数回は合って酒席を共にしている。また、眉村さんを交えて集まる予定だ。

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男たちの挽歌


監督 ジョン・ウー
出演 ティ・ロン、チョウ・ユンファ、レスリー・チャン、レイ・チーホン

 香港のアクション映画というと、ブルース・リーやジャッキー・チェンのクンフーアクションであった。武器を持たず、肉体だけで闘って観客のご機嫌をうかがう。それが、この映画はガンアクションである。それも、かの名作「ワイルド・バンチ」をほうふつとさせる、壮絶なガンアクションを見せてくれる。
 ヤクザ映画である。アジアのヤクザ映画だ。「ゴッドファーザー」もヤクザ映画だが、あれは西洋のヤクザ映画だ。ところが、この映画はアジア、東洋のヤクザ映画である。だから、60年代の「昭和残侠伝」などの健さん映画、あるいは70年代の深作欣二映画を想い起こさせる。
 ウェットなのである。損得勘定よりも感情で動くのである。兄弟愛、親友との絆、そんなモノに命を賭けて銃弾の雨に飛び込み、銃弾の雨を降らせるのである。
 贋札製造をなりわいとする、香港マフィアの大物ホーは病気の父親と、警官志望の弟キットがいる。兄弟分で親友にマークがいる。
 病気の父の頼み、警官志望の弟のことを思いホーは足を洗うつもりだ。ところが最後の取引は失敗。警官隊に包囲される。弟分シンを逃し、自分は自首する。
 その間、父は殺害され、マークは一人でホーをはめた組織になぐりこんだが、足に重傷を負う。弟キットは兄がヤクザ者であることを知る。
 刑期を終えて出て来たホーはタクシー会社に就職する。弟キットは兄がヤクザだから昇進できない。捜査からも外される。足が不自由になったマークは雑用係に落ちぶれている。ところがシンはいっぱしの幹部に出世してでかい顔。親分まで殺して組織のトップに。
 おとなしくタクシー会社で働いていたホーを組織がほっておかない。世話になっている会社にまで嫌がらせ。がまんにがまんを重ねたホーはマークを逃がし、一人で殴りこむ。
 と、まったく東映のヤクザ映画である。逃げたマークも、もちろん戻ってきてホーとともに闘う。そこに警官の弟キットも単身やってくる。
 ホー、マーク、キット、このうちだれか死なないと収まりが悪いが、だれが死ぬかは映画を観てのお楽しみ。
「昭和残侠伝」でいえば、ホーが高倉健の花田秀次郎で、マークが池辺良の風間重吉といったところか。
 
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阪神の4番をなめたらあかん。犠牲フライぐらい打てるぞ

岩田VS久保という先週の火曜日と同じ先発ピッチャーの投げ合い。両先発、譲らずスコアボードにゼロを並べる。
 で、先週は4番とクローザーの失敗によって負けたけど、きょうは呉昇桓が2イニングを完璧におさえて、ゴメスがサヨナラ犠牲フライで勝った。しかしな、中畑はん、打点王の阪神の4番をなめたらあかん。なんぼここ数試合調子わるいちゅうても、腐っても阪神の4番。たびたび3番鳥谷敬遠で勝負されたら、犠牲フライぐらいは打てるわいな。
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ねぎ豚丼


 雑誌「dancyu」は愛読している。それの「日本一のレシピ」という企画に載っていた川津幸子さんのレシピである。
 実際に作ってみたぞ。小生はこれを丼物に仕立てた。作り方は極めて簡単。鍋の底に長ネギを敷いて、そこに切った豚バラ肉を置いて、醤油、酒、水を入れてことことと1時間ほど煮るだけ。これは中華料理だから、酒は紹興酒を使ったほうがいいだろう。それに小生は八角を2個ほど入れて香りを付けた。
 煮えたら、丼によそったご飯に乗っけて食べる。おいしい。肉はもちろんだが、とろとろのネギがおいしい。
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肉眼菜


 これは肉眼菜(ローガンツアイ)といいます。ご飯のおかずにもビールのアテにもぴったりです。
 調理はとても簡単です。材料は豚ひれ肉とにんにくとしょうがと青ネギ。調味料は醤油と砂糖だけ。安く手間もかからずおかずができます。
 豚ひれ肉はかたまりで求めましょう。この肉を1cmぐらいの厚さに切ります。青ネギはみじんぎり。にんにくとしょうがはすりおろしておきます。
 お皿にすりおろしたにんにくとしょうが、醤油と砂糖を入れておきます。肉に片栗粉をまぶして180度の油で揚げます。揚げた肉はお皿に入れ、そこに熱湯をそそぎいれます。フタをしてしばし蒸らします。肉がふっくらしたら青ネギを散らしていただきます。簡単ですがびっくりするほどおいしいです。
 
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阪神、たまたまホームランが打てて勝った

 阪神、きょうも流れでいうと負けとった試合ちゃうやろ。3対1で負けとる試合やで。それが、ここに来て帳尻あわせで仕事しだした福留のスリーランで勝つ。確かにホームランでひっくり返して勝つのんは痛快やけど、ほんまの強さとちゃうで。やっぱ、タイムリーヒットを連ねて勝つのんが、ほんまの強さちゃうやろか。ホームランなんてもんはそんなしょっちゅう出るもんちゃうからな。
 それはそうとして、巨人が優勝した。おめでとう。
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皆勤の徒


 酉島伝法     東京創元社

「ケムにまく」という言葉があるやんか。相手の知らんことや、大げさなことを、ワーといいたててて、なんや判らんうちにいいくるめてしまうこと。ワシらSFもんは、ある意味、ケムに巻かれたくてSFを読むという一面があるわけで、グレッグ・イーガンのハードSFなんてよう判らん理系の言葉がようけ出てきて、わけわからんうちに、ごまかされてしまったりするわけや。若いころの筒井康隆もようワシらをケムに巻いたもんや。
 ワシはなんでSFなんぞというもんを読んどるんか。これは、もう、ワシらがようしっとるこの世界から全く遊離した世界を垣間見たいという欲望があるわけや。SF作家諸氏も読者をケムにまいて、別世界を見せたくてSFをかいているわけやろ。もちろん、そういうSFではなく、しっかり現実に根ざしたことを表現して、「世界」とか「人間」とかを風刺するなり賞賛するなりしてるSFもあるけどな。
 別世界を見せるSFの場合、作家の想像力の勝負となるわけや。どれだけ現実と遊離した世界を創造できるかだ。確かにものすごく異様な世界を描いてはいるが、そこでうごめく人間は、隣のおっちゃんやったり、幼なじみのミヨちゃんやったりする。また、その逆も。とても人間とは思えんユニークな化けもんを創り上げたけど、舞台がなんかどっかで見たような町やったりする。これは、ま、人間が小説を書いているわけやから、しゃあないとこもある。
 さて、この「皆勤の徒」やけどな、ワシが今まで読んだ中で、現実という地べたから離れているという点では最右翼な作品やろな。
「皆勤の徒」「洞の街」「泥海の浮き城」「百々似隊商」の4篇の作品と、序章と終章、作品間をつなぐ断章という構成の作品集や。この本をレビューするのに、これはどういうことが書いてあって、こういうわけ、なんてゆうたって、あまり意味ないやん。正直、ワシもこの本読んで、よう判らんかった。けんどな、ごっついおもろかったことはほんまや。作者の想像力だけで創り上げた、現実とはまったくかけ離れた世界で遊ぶ。これこそSFを読む醍醐味とちゃうやろか。そういう意味からも、この本は今の日本のSFが産んだ、最もSFらしいSFとちゃうやろか。確かにこの本には、ロボットだとか宇宙船だとか、SFらしいガジェットは出てこん。それでもこれはSFらしいSFだ。SFとはなんぞや。その回答のヒントがこの本にはある。ま、なんでもええから、読んでみなはれ。確かにわけ判らんけど、異様な世界を「体感」でけるで。
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阪神勝った。3位が4位に勝っただけ

阪神、きのうのおかえしで、4番が相手のクローザーにツーランを浴びせて勝った。ま、負けるよりは気分はええけど。もうええんちゃうん。とても2位になれそうにない3位と、とても3位になれそうにない4位との試合や。どうでもええやん。蛇足シリーズを2位でやるのも3位でやるのもさして変わらへん。球団は甲子園でやった方がもうかるらしいけど、そんなんワシらファンには関係あらへん。優勝でけへんねんから、ケガせんように適当にやったらええんちゃうん。
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お彼岸ですから、お墓参りに行ってきました


 今日は秋分の日です。お彼岸です。お墓参りに行きました。9時まで会社で仕事して、それから出かけました。
 阪神の西宮から、ウチのお墓がある満池谷までタクシーで行きます。阪神電車の前のタクシー乗り場なので阪神タクシーがいます。だから運が良いと7台しか走ってないタイガースキャブに乗れるかも知れません。わたしは今まで3回タイガースキャブに乗りました。今日は残念ながら普通のタクシーでした。
 お墓参りをしました。良いお天気で気持ちがいいです。写真奥の丸いかわいらしい山は甲山です。西宮市のシンボルです。わたしは今は神戸市民ですが、うまれは西宮です。ですからこの山はわたしのふるさとの山です。
 エビスタでおはぎを買って帰りました。お昼は家で食べました。おはぎがデザートです。少し昼寝して、1時からテレビで阪神VSDeNAの試合を見ました。
 岩田と久保のすばらしい投手戦でした。1点取って岩田に10勝目がつくかと思いましたが、呉昇桓がブランコにサヨナラ逆転ホームランを打たれて阪神は負けました。1点先取点とったけど、こりゃ2点とられて逆転負けするかなと、不吉な予感が頭をよぎりましたが、そのとおりになりました。いかにも阪神でした。
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ジュッショーへの扉

写真は「夏への扉」所載の世界SF全集12巻 ハインラインの巻
 

類似書 ロバート・A・ハインライン「夏への扉」

 猫のキュージはもういない。ダニエル・イワタは素晴らしき新世界「ジュッショー」への道を探していた。イワタはコネチカットの古い農家に住んでいる。その家には扉が11ある。猫のキュージはどの扉が「ジュッショー」への道か知っている。でも猫のキュージはもういない。
 悪漢クボーがイワタの会社の営業を激しく阻害した。イワタは多くのロボットを発明して会社の業績をあげた。業界トップのハラ・タケゾノ・カンパニーには追いつけないが、2位のカップ・コイ・インダストリーを抜いて2位になったかもしれなかった。でも、イワタの会社トラ・ワダ株式会社は2位になれない。
 今年入社した、マウロ・ジェントリーと秘書ベル・スンファンの失敗によってイワタは「ジュッショーへの扉」を失った。絶望したイワタは冷凍睡眠に入って未来への旅に出た。未来には、あの伝説のJFKがいるかもしれない。
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小さいおうち


監督 山田洋次
出演 倍賞千恵子、黒木華、松たか子、吉岡秀隆

 この映画、なにを描いているかといえば「不倫」を描いた映画であろう。ところが。道ならぬ恋にもだえる人妻。上司の若く美しい妻との不義密通を働く若い社員。その関係を密かに垣間見ている少女。こう書くとぐちゃぐちゃどろどろの官能映画と思うかも知れないが、そんなことは全くない。この映画はポルノではない。その手のシーンは全くない。人妻と若い社員が軽くキスするぐらいである。和服で出かけた人妻が。帰宅した時には帯の付け方が違っている。外出先で着物を脱いだと連想させる。その程度である。
 ぐちゃぐちゃどころか、全く正反対の、透明感のある、ファンタジー映画のような印象を受ける。ジブリっぽい感じも少しした。これは山田監督の演出力、倍賞、黒木、松たちの演技力のたまものだろう。
 映画は一人の老女の死から始る。布宮タキが一人で死んだ。タキはノートに自叙伝を書いていた。
 昭和11年。雪深い山形から東京に出てきた少女タキは、赤い三角屋根の小さくかわいい家に女中奉公に雇われる。タキの奉公先平井家は、玩具メーカーの重役雅樹、若く美しい妻時子、小児まひを患っている息子恭一の三人家族。時子はタキをかわいがってくれる。恭一もタキになつく。タキは恭一の看病に励む。タキはずっとこの家にいたいと思う。
 雅樹は重役だから、社長をはじめ会社の人がよく家に来る。これらの社員の中にデザインを担当する若い社員板倉がいた。板倉に、お見合いをさせるべく、時子が説得に何度も板倉の下宿へ行く。そうこうしているうちに時子と板倉は・・・。
 と、こんな話しだが、映画は老境のトキの平成パートと少女トキの昭和パートが繰り返し描かれる。戦前、戦中、戦後。そして老境のトキは「私は長く生きすぎた」と泣く。
 息苦しい戦前、空襲にさらされる戦中、孤独な老人となったトキ。昭和から平成へと時代が流れる。その時代で禁じられた愛を語らう時子と板倉。それらの時代と男女のスクロールを、指標するカーソルがトキだったのだろう。ひとつのアプリは終了した。でもカーソルたる私はまだここにいる。だからトキは泣いたのだろう。  
 
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鶏もも肉のトマトソーススパゲッティ


 きょうのお昼はスパゲッティを食べました。鶏肉のスパゲッティです。鶏肉はもも肉を用意しました。まず、鶏もも肉は皮目をあぶって焦げ目をつけておきます。鶏もも肉は、煮るにしても蒸すにしても炒めるにしても、とりあえず皮目に焦げ目をつけておくといいですよ。おいしさがだんぜん違います。
 鶏肉の処理と同時に、トマトソースを作ります。玉ねぎ、にんにくのみじん切りを炒めて香りと甘みを出します。そこにカットトマトを入れて、しばし煮ます。
 焦げ目をつけた鶏肉を食べやすい大きさに切って、フライパンで炒めます。鶏肉の相方はズッキーニに務めてもらいました。そこにゆでたスパゲッティを入れて、具とソースをからめます。お皿に盛って、パルミジャーノレッジャーノを振って、バジルを手でちぎって乗っければできあがりです。
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阪神、中日のへたな攻めとミスに助けられて勝った

今年、抜けられてえらい損こいた選手は、阪神は久保、中日は井端ではないやろか。中日ってあんなエラーミスするチームやったやろか。
 メッセンジャーががんばったゆうより、中日がヘタな攻めで点よう取らんかったちゅうことやろ。なんで中日の方がヒット多いねんで。それで7対3で阪神が勝った。こりゃ阪神が強いちゅうより中日が弱いねんな。選手兼任監督ちゅうのんはやっぱあかんねんで。成功した人おらんのんちゃうん、もうどっちか辞めたら谷繁はん。
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クスめし


 台所の戸棚の中を整理していたら、あ~ら、こんなところにクスクスが。どうも、5月にクスクスをしたときに残ったらしい。
 さて、これを使わなもったいない。どうしよう。考える。ここは神戸。神戸のB級グルメといえばソバめしがある。うん、クスクスを使って、ソバめしを作ってみよう。クスめしだ。
 ソバめしは焼きソバ麺とご飯を合わせたもの。なかなかうまいものだ。その焼きソバ麺の代わりにクスクスを使った。レシピはソバめしとまったく同じ。 
 豚バラ肉を炒めて、小さく切ったキャベツ、もどしたクスクス、ご飯を入れて炒め合わせる。あと、カツオ粉、天かす、青ネギを混ぜる。ウースターソースととんかつソースで味付けしたらできあがり。
 うん、まずくはないが、やっぱり焼きソバ麺の方があうかな。
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オロチくんの新しい仕事

 確かにぼくは数ヶ月前は超がつく有名人だった。ぼくがテレビ出ない日はなかったといってもいい。しょっちゅうどこかの番組に呼ばれて出演していた。それと同時に新聞や雑誌のインタビューがたくさん。さらには複数の出版社から手記を書いてくれないかといわれていた。
 ぼくがそんなに注目を集めるのも当然だ。なにせぼくは、ものすごく珍しい人間だからだ。今後、ぼくの同類は増えるかも知れない。でも、いまのところ、世界中でぼくみたいな人間はぼく一人なのだ。
 ぼくはどんな人間かって?見てくれはごく普通の人間だ。25歳の日本人男性。身長171cm体重67キロ。中肉中背。顔は別にイケメンではないが、人が避ける凶悪顔でも、見ただけでプッと噴き出す珍妙な面でもない。ごく普通の日本人の青年男子の顔だ。
 芸能人かって。市立高校を卒業して、私大の経済を出て、電子部品販売会社で営業をやっていた。カリスマなトップ営業マンでは決してなかった。毎月のノルマをかつかつクリアーしているサラリーマン。ときどき、領収書をごまかして出張旅費を浮かせてババしてる。だから、大河ドラマの主役をやるわけではない。
 営業マンは午前中だけで、午後は仕事免除でトレーニングに励むスポーツマンでオリンピックでメダルでも取ったか。いやいや。ぼくは腹の足しにならないスポーツなんてやらない主義だ。ぼくはデブでもガリでもないが、ものすごく足が遅い。運動神経も悪い。
小学校のころ同じクラスに100キロはいこうかという超デブがいた。リレーで、だれもそいつの組がべったと予想した。ところがぼくの組がべっただった。ぼくの番までぼくの組はトップだった。ぼくがバトンを受け、ずっと後にデブがバトンを受けた。ところがぼくはデブに見る見るうちに追い抜かれて、ぼくの組はべったになった。
バレーボールやサッカーといった球技はボールがなぜかぼくの顔面を強打する。だから、ぼくはボールから逃げ回るのにいそがしい。
身の危険をかえりみず人を助けたかって?ぼくにはそんな勇気はない。どんくさいぼくが人に助けてもらうことならあるかもしれない。
ようするにぼくは、少々どんくさい、決して有能とはいえないサラリーマンの、ごく普通の男なのだ。そんなぼくがなぜ、有名人だったのかって。いや、ま、それはまたあとで話す。
そんな、何のとりえもないぼくだが、ひとつだけ人に負けないモノがある。それはモテ男ということだ。信じられないかも知れないが、ぼくはものすごく女にもてる。こんなぼくのどこがいいのか知らないが、鉄粉が磁石に吸い寄せられるように、女がぼくのところに寄ってくる。だから、ぼくには常に複数の彼女がいる。週末休日ともなるとデートでいそがしい。こんなぼくのニックネームはオロチくん。二股どころか三股四股、いや八股だ。あいつはヤマタノオロチ。オロチくんというわけだ。
もちろん、ぼくも健康な成人男子だから、彼女と手つないで歩いてご飯食べて、ではお休みなさい。と別れるわけではない。とうぜんながら男女の営みにおよぶ。アレには充分気をつけているつもりだが、ついうっかりということもある。 
「あたし、セイリないの」てなことをのたまう彼女もいる。もちろん結婚する気もないし、子供を認知するつもりもない。
「おろせ。費用は出してやる」というが、貧乏人のぼくにそんな金はない。だから、ぼくはつね日ごろから、なんだかんだといって女から金をせびり取って、その時のお金は常に準備している。で、ハラのふくれた女はポイ。女から見れば、ぼくは冷酷非情な男だろう。
きょうも金をせびり取って、抱き飽きた女を捨てた。
「あなたって血も涙もない人ね」
 そう、そうなんだ。ぼくはそのことで超がつく有名人になったのだ。まさしくぼくは血も涙もない男なのだ。
 昨年、ぼくは会社の健康診断の血液検査で妙な結果が出たと、健康診断を実施した病院から連絡を受けた。それから大きな病院や大学病院と、連れまわされて、ぼくは世界でただ一人の人間であることが判った。
 ぼくには血も涙もない。確かにぼくの身体には赤い液体が充満しているが、それはただの赤い塩水で血液ではない。ぼくの身体を構成する細胞は一個一個が自己完結している。
 そこの細胞が自ら、必要な栄養を取り込み、必要な酸素を吸収して、ぼくの生命を維持し、活動するエネルギーを作り出している。と、いうことが判った。だから、ぼくには身体中に栄養と酸素を循環させる血液が必要ないのだ。眼の細胞も同じ。細胞自身が必要な水分を補給するから涙も必要ない。だから、ぼくはさっきの彼女がいったとおり「血も涙もない男」だ。
 珍しい人間ということで、一時、マスコミに追いかけまわされたが、人のウワサもなんとやらで、今ではぼくなんかより、若干30歳でノーベル賞を取ったべっぴんのリケジョが注目を集めている。
 で、ぼくはどうしてるかって?ぼくのガールフレンドのうちで、いちばん、したたかで頭の良い娘がいた。その子に取り込まれ結婚して、子供が3人。今は嫁さんがマネージャーになって新しい仕事を始めたんだ。その仕事が大当たり。
 ぼくの仕事は「ドナー屋」なんせぼくの細胞は一個一個が自己完結できる、いわば究極の万能細胞。ぼくの細胞はどんな臓器にでも変身できる。ぼくの細胞一個あれば、心臓でも肝臓でも胃で腸でも自由自在。
 細胞を取られるのは痛いだろうって?そんなことはない。髪の毛でも爪でもなんでもいい。こないだはぼくの鼻クソ一個が500万で売れた。荒稼ぎさ。なんせぼくは「血も涙もない男」なんだから。
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