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11月30日(金) 明日から師走

 11月もきょうで終わり。明日から12月。師走だ。月日の流れは年々早くなっていくような気がする。筒井康隆の「急流」という短編を思い起こさせる。
 そろそろ年賀状の準備をしなくては。デザインは考えてある。喪中ハガキが何通か来ているので「筆王」の住所録のメンテナンスをしなくては。
 昔は友人の親御さんが亡くなったという喪中ハガキがほとんどだったが、最近は友人ご本人が亡くなることもある。今年は二人も友人を亡くした。非常にさみしいことだ。二人とも機会を得て追悼文を書かせて頂いた。追悼文などという哀しい文章はあまり書きたくない。
 年賀状といえば今年の年賀状。郵便局のミスが多かったようだ。小生宛に毎年来ている人から来ていない。また、知人宅には誤配の年賀ハガキが大量に配達されていた。年賀状がくるはずで来ていない人にうち、ごく親しい人に来ていないむねをいうと、送ったという。
 郵便局の関係部署に電話でクレームを付けると、誤配先まで追跡不可能とのこと。「どうしてくれる」というと「申し訳ございません」と繰る返すだけ。どうも普通郵便で出して事故が発生するとあきらめるしかない。年賀状でも、確実に配達してもらおうと思ったら書留にしないといけないらしい。
 郵政が民営化して初めての年賀状シーズン。メールなどの普及によってかなり減っているとはいえ、年賀状の仕事は郵便事業最大の仕事ではないだろうか。
民間企業になった郵政がこの仕事をどうやるか注目したい、官営時代と同じように誤配があれば、今までより利用者からの非難は大きいだろう。なにせ相手は金儲けで郵便をやっている会社。「申し訳ございません」ではすまされない。
 さあ、お手並み拝見。西川さん。 

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11月29日(木) 情熱の17期

 小生は若いころ広告の勉強をしたことがある。趣味でSFのショートショートなんかを書いていたが、どうしてもモノを書く仕事がしたくてコピーライターを志した。
そのころは食品会社に勤めていた。昼間は会社で仕事。夜コピーの勉強に行っていた。小生が通ったコピーライター養成所は久保田宣伝研究所コピーライター養成講座の大阪校。久保田宣伝研究所は今は宣伝会議という社名になっている。
 大阪市北区梅が枝町の電子会館に教室があった。ここに1年間通った。最初の半年は一般コース。これは大きな講堂での講義。現役のコピーライター、アートディレクター、デザイナー、プランナーなどの広告業界のクリエイターやイラストレーターやカメラマンといったマスコミ関係者が講義してくれた。
 あとの半年は専門コースといって少人数のゼミ形式の教室。小生たちの先生は松下電工の田原晋さんとダイエーの間瀬英作さん。この田原間瀬教室は20人ほどの人数だった。この教室、両先生を中心に大変にまとまっていて、みんな仲が良かった。教室が終わると近くの居酒屋やスナックで2次会を開いて交流を深めた。また、半年間に何度かみんなで一泊旅行をした。
 教室が終了してからも、おりにふれて集まり交流は続いた。このグループ、ハラマセ会という名前で、また大阪校の17期目だったので「情熱の17期」と呼ばれて、久保田宣伝研究所コピーライター養成講座大阪校でちょっと有名になり、しばらくのあいだ伝説のグループとなったのである。と、自分たちでは思っている。 
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11月28日(水) 食べる人の立場に立ってモノを作る


 鍋物のシーズン。鍋のシメは雑炊かうどんかラーメン。ラーメンの場合、ちびまるこちゃんの絵が描いてある、東洋水産の鍋用ラーメンを使っている。これがけっこうおいしい。
 このラーメンで感心していることがある。写真のように袋の中に品質保持のための脱酸素材をいれてあるが、この脱酸素材が袋の内側に貼り付けてある。他の商品では、このような場合は中身といっしょにそのまま入れてあることが多い。
 うどんのダシを取る時は、昆布を水に入れ沸騰寸前で昆布を取り出し、鰹節を熱湯に入れるのだが、気をつけないと鰹節といっしょに脱酸素材が熱湯に入ってしまう。害は無いかも知れないが、化学物質が熱湯に入り、それを口にするのだから、あまり気持ちの良いものではない。
 このラーメンの場合、鍋の上で袋を開け、そのままラーメンを入れても脱酸素材が鍋に入らない。実に細やかな心遣いで製品作りをしていることがうかがい知れる。
 10月18日の日記でも書いたが、熔接材料の場合は現場の職人さんの立場、作業する時点に立って、また、このような食品の場合、食べる人の立場、今から食べようとする時点に立った製品作りをすることが大切。昨今盛んに問題になっている食品の表示のごまかしは、食品を送り出す側作る側に立った発想でモノ作りをしているから、あのような問題を起すわけ。食べる人、使う人の立場に立ったモノ作りをする必要がある。
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11月27日(火) 小生はどうしてタバコをやめられたのか

 小生はタバコは吸わない。昔は吸っていた。やめて15年ほどになるかな。吸っていたころはマイルドセブンを1日に3箱吸っていた。今なら1箱300円。1ヶ月27000円。1年で324000円。結構な大金を煙にしていたわけ。
 禁煙の必要性を強く感じていた。何度も禁煙に挑戦しては挫折を繰り返していた。それがどうして止められたか。カリフォルニアに旅行した時、飛行機の座席が禁煙席しか取れなかった。9時間タバコが吸えなかった。向こうに着いても、ご承知の通りあっちは喫煙は大幅に制限されている。9時間吸わずにすんだのだから、もう少しがまんしようと思った。結局、カリフォルニア滞在中は1本のタバコも吸わなかった。日本に帰ってきたらタバコを吸わなくてもよい身体になっていた。
 今は人が吸っているタバコの煙が大変に煙たい。どうも、元々吸わない人よりも、小生のように止めた人間の方がタバコの煙に対する拒否反応が強いようだ。
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ザ・シューター

監督 アントワーン・フークワ
出演 マーク・ウォールバーグ、マイケル・ペーニャ、ダニー・グローヴァー

 原作は2000年度「このミステリーがすごい!」海外部門第1位の「極大射程」。この作品は原作者スティーブン・ハンターによる、「ダーティホワイトボーイズ」「ブラック・ライト」「狩のとき」の4部作のうちの1作。番外編の「ダーティホワイトボーイズ」は別として、いずれも稀代の名狙撃手ボブ・リー・スワガーを主人公としたもの。ハンターはこのシリーズがよほど気に入ったのか、4部作完結後にボブの父アール・リー・スワガーを主人公とした作品も書いている。
 小生もこのシリーズのファンで4部作全部と、アール編の「悪徳の都」を読んだ。このように愛読している小説を映画化する時は小説の主人公が、いかに映像化されているかが大切。小説のイメージと映像がかけ離れていれば、ほとんどの場合がっかりする。ごくまれに、映画の主人公の方が良くて、原作の小説を凌駕することもあるが。
 小生は同じく狙撃手を主人公とした劇画「ゴルゴ13」もファンで愛読している。ゴルゴも高倉健と千葉真一で2度映画化された。いずれも原作のゴルゴとはイメージが違いがっかりした記憶がある。この映画はマーク・ウォールバーグ演ずるスワガーは、不満もあるが、ほぼ原作のイメージに近く合格。
 アフリカの戦地で国に見捨てられ、戦友を亡くしたスワガーは帰還後、ワイオミングの山の中で隠遁生活を送っていた。そのスワガーに大統領暗殺阻止の依頼。依頼を受けたスワガーは、陰謀により狙撃犯に仕立てられ、巨大な敵と戦う。味方は死んだ戦友の妻と新米FBIエージェントの二人だけ。
 緊迫感がただよう演出はシャープでアクション映画としては楽しめた。ただ、原作と違う点が気になった。まず、冒頭の戦友を亡くす戦争は、原作はベトナム戦争となっていた。映画はアフリカの架空の国。ベトナムだからこそスワガーの悩みが深いのだ。そう、ボブ・リー・スワガーはベトナムでの戦いで大きなトラウマを負い悩み苦しむ。このあたりがゴルゴと違う。ゴルゴは悩まない狙撃機械だが、スワガーは血の通った人間。
 映画もスワガーを血の通った人間として描いていた。映画版スワガーの戦いの原動力は「怒り」だが小説版は「哀しみ」だ。従って、映画の後半はスーパーヒーローになっていたが、それならばシュワちゃんの「コマンドー」の方が能天気に突き抜けたアクションで爽快だ。この作品は中途半端な感じを否めない。ラストなどはあれでは「必殺仕事人」だ。とはいえ、面白かったことは面白かった。

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11月26日(月) 夕焼け

 
昨日の夕方、ウチのベランダから西の空を望む。夕焼けが大変にきれいだった。思わず写真を撮った。
 マグリットの絵で「光の帝国」という作品がある。その絵を思わせる風景だ。
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11月25日(日) ワタリガニのスパゲッティ


 なかなか良いワタリガニが手に入りました。韓国料理のケジャンにしてもおいしいし、スパゲッティにしてもおししいです。
 ホールトマトと生クリームがあるのでスパゲッティにしましょう。
 まず、トマトソースを作ります。オリーブオイルでにんにくを熱して油に香りをつけておきます。みじん切りをした玉ねぎを炒めてホールトマトを投入。しばらく煮ます。ある程度、煮詰まったら塩こしょうで味を調え、裏ごししておきます。
 カニをさばきましょう。お腹の蓋、いわゆるカニのふんどしという部分を取ります。中に赤いトロッとしたものが見えますね。これがカニ味噌です。カニで一番おいしい所です。スプーンでていねいにかき取ります。間違っても捨てないように。
 お腹の左右にビラビラがついています。これがカニのえらです。「カニは食ってもガニは食うな」ということわざがありますが、ガニとはここのことです。
カニに限らず魚も同じですが、えらは呼吸するところで水が一番多く流れる所です。だから一番汚れています。えらを食べてはいけません。
 あとは足を取りぶつ切りにします。カニの甲羅は硬いし出刃包丁を使うのでケガをしないように充分に注意してください。軍手をはめて作業をしましょう。
 フライパンにオリーブオイル、にんにくと赤とうがらしを少し入れて炒め、カニを入れます。カニが赤くなるまで加熱したらトマトソースと生クリームを加えます。カニ味噌を入れるのを忘れないように。7分程度煮ます。カニのうまみをソースにしっかり移しましょう.
 アルデンテに茹でたスパゲッティを入れてソースをからめます。スパゲッティとソースにカニのうまみが移って大変おいしいです。もちろんカニそのものも身をホジホジしていただきましょう。ワタリガニはタラバガニや松葉ガニに負けないおいしいカニです。

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11月24日(土) かき揚げ天茶

 
今朝はかき揚げ天茶を食す。パリッと揚がったかき揚げを熱々のお茶漬けに仕立てる。これがうまい。
 まずは、かき揚げを揚げる。材料はみつば、えのき、桜えび。桜えびは空炒りして酒を振っておくと香りがたってうまい。
 ボールに材料3種を入れて薄力粉を軽くまぶしておく。たっぷりの油を170度ぐらいに熱しておく。薄力粉を冷水で溶いて、ごく薄い衣を作っておく。
 薄力粉をまぶした材料に薄衣をつけて油に投入。かき揚げで一番肝要なことはあわてないこと。油に入れた直後にパッと散ることがあるが、あわてず箸でまとめれば必ずまとまる。
 かき揚げが揚がったら、あつあつご飯にのせ、わさびをちょっと添え、のり、ぶぶあられを散らして、熱いお茶をかける。サクサク、サラサラ。うまい。
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11月23日(金) 星五つのお店

 大阪の梅田で食事をする時は、泉の広場にある中華料理店をよく使う。庶民的な料金で味もおいしい。特にグリーン炒飯がお勧め。小生がまねしようとするが、あの炒飯はまねできない。この店で感動させられたことがあった。
 この店で食事をした時にシャープペンシルを店に忘れた。その後、そう、半年ぐらいあとだったかな、またこの店で食事をした。その時、店の人がシャープペンシルを差し出して「これ、お忘れではありませんか」
 小生はそんなものを紛失したことをすっかり忘れていたが、そういわれて思い出した。
 そんなに高価なものではない。ごく普通のシャープペンシルである。それを店は半年もの間保管してくれていた。その間、これはと思われる客に「これ、お忘れではありませんか」と聞いていたのだろう。何人もの何人もの客に聞き、違う、知らん、といわれて、それでもあきらめずに、聞き続けて、小生にであった。なんと誠実で親切な行いであることか。
 この店、別にミシュランガイドに載るような店ではないが、星三つどころか、星を五つでも六つでもつけてもいいお店だ。
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11月22日(木) 探偵ナイトスクープ

 民放のバラエティ番組はめったに観ない。観ているのは「探偵ナイトスクープ」と「なんでも鑑定団」ぐらいかな。
「探偵ナイトスクープ」は関西のテレビ局制作の番組としては、異例の長寿番組で、なおかつ人気番組である。人気があるのはうなずける。非常におもしろい。毎週楽しみにしている。
 この番組に登場するのは探偵と依頼者、そして取材先で知り合った街の人たち。この中でプロのタレントは探偵だけ。あとは一般の人たち。この一般の人たちが面白い。ただすれ違っただけのおじさん、おばさんたちですら面白い。
 関西のテレビは、かって「夜はくねくね」「パンチDEデート」「ただいま恋愛中」「おやじばんざい」といった素人参加番組が多数あって、いずれも人気をはくしていた。この「探偵ナイトスクープ」はその伝統を受け継いでいるといえよう。
 出演する一般の人たちがいずれも自然でいい。探偵役のタレントと、となりのおっちゃん、にいちゃんと接するように接している。また探偵役もごく自然な姿勢で一般の人たちと接触している。ところが探偵たちも地のままでやっているように見えるが、しっかりプロの芸を見せてくれる。特に間寛平や桂小枝は、さすがにプロの芸人。こっちからあっちへ移動するだけでも、視聴者を飽きさせないように間をもたす。
 時にはハズレの企画やすべった企画もある。この番組のえらいところはハズレはハズレのまま放送する。へんに手を入れて面白く加工しようとはしない。面白くないものは面白くないまま放送する。だから信頼が置けて好感が持てる。
 ベスト3は
「マネキンに恋した女」
アブないというほど病的ではなかったが、ともかくヘンな女の人だった。周囲の人たちも彼女のヘンにまじめにつきあっていた。
「大和川を川下りで通勤」
 実にバカバカしいことにおおまじめに取り組んでいるのが面白い。壮大な大冒険ドラマのおもむきさえある。
「アホバカ分布図」
 知的好奇心をそそられる内容。学術的にも注目すべきとの評価が各方面からなされたのも納得がいく。
 他に小枝さんの持ち芸ともいえる「パラダイス」パラダイスも面白いがそれをやっているおじいさんが面白い。たいていおじいさんかおじさん。女性がやっているパラダイスは記憶に無いなあ。

  
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11月21日(水) メイド・イン USA?

 九州の宇佐市が特産品をアメリカに輸出した。なんだったか忘れた。みかんだったかな。で、メイド・イン・USA(うさ)と銘打って輸出したところアメリカ商務省から宇佐市にクレームが来た。アメリカ製でないのにメイド・イン・USAというなというわけ。宇佐市はこれはUSA(ユー・エス・エー)ではなく「ウサ」だと釈明。するとアメリカはうちはずっと前からUSAだといった。何年前からUSAかと聞くと200年前からとのこと。これを聞いた宇佐市はうちは2000年前から「ウサ」だと答えた。
邪馬台国の有力候補地にたかだか建国200年程度の底の浅い国が何をいう。ちゃんちゃらおかしいわ。バーボンで顔洗って出直して来い。
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不思議な集団

「あいつら何者だろ」
「さあ、おれもよく知らない」
 そいつらはいつも二〇人ぐらいの集団でいる。常にひとかたまり。乗客ではない。おれたちと同じ船員でもない。
 決して他のグループと交わろうとはしない。不思議な集団だ。
 部屋はA船室を使っている。食事をしているのを見たことはないが、ファーストクラスの乗客と同じ待遇だ。しかしおれたちと同じく船のスタッフの制服を着ている。
 船内で仕事をしている様子はない。寝ている時以外は、談話室で静かに談笑している。談話室の利用者が増えてきたら、他の場所に移動して座席を空ける。乗客や船員の邪魔は絶対にしない。そして何もしない。物を食べているのを見たことがないのが不思議だが。
 おれが火星定期航路のこの船の船員になって五年経った。この航路の船はヨツバ・ボーグルソン社のスペースバスA7000がシェア95パーセントを占めている。この船はバランスが良く操船しやすい。ランニングコストも従来のタイプより安くつく。重力圏脱出の時も再突入の時もショックが少なく乗り心地が良い。その上ユーティリティスペースが広く取れるので乗船定員も多くとれる。要するに船主にとっても船員にとっても乗客にとっても良い船ということになる。
 ところがこの船には大きな欠点がある。電気系統が弱く燃料電池のトラブルを頻発している。船中の電気がダウンして予備電源でなんとか生き延びて、救援に駆けつけた時は乗客乗員全員死亡一歩手前ということもたびたび。ところが最近はその手のトラブルはあまり聞かない。船がモデルチェンジされたわけでもなさそう。どうもわれわれの知らないうちに何らかの対策が取られたようだ。
 偶然というのか、二〇年ぶりの再会だった。同期入社だったあいつが例のグループにいた。おれの方から声をかけたがあいつは軽く手を振っただけで仲間といっしょに展望デッキへ行った。そこは接客担当のスタッフ以外は乗員は立ち入り禁止。おれのような機関員は入れない。
 おれの欠点は好奇心が強すぎること。分からないことがあると知らずにはおられない。奴らが何者かどうしても知りたかった。で、あいつを見つけたわけだ。こんな幸運を見逃す手はない。なんとか捕まえようとするが逃げられる。どうも彼らは他の乗客、乗員との接触を禁じられているらしい。
 電気系統の弱点は克服されていなかった。燃料電池がダウンした。船の中枢制御と人間の生存を司る系統以外の電気系統はすべて閉鎖された。
 最近このタイプの船のトラブルを聞かなかったのは、たまたま偶然が重なってトラブルが発生しなかっただけ。その偶然もおれの船で途切れたわけだ。
 昨日からおれは燃料電池室にこもりっきり。いまは予備電源で持っているが、いつまでも頼りにならない。もし、救援が来るまでに予備電源もストップしたら、乗客乗員全員の命が危ない。大急ぎで修復可能な電池を選別して修復しなくてはならない。OKに選別できる電池が一個もなければ、あとはもう運を天に任せるしかない。
 突然、機関長から作業中止の命令が出た。選別作業が終わってない。もちろん修復した電池はまだ一個もない。
 おれたち機関員はみんなで機関長にくってかかった。機関長の説明は船長からの絶対命令だ、直ちに全員電池室から退去すべし、というものだった。
 おれたちと入れ替わりに電池室に入った連中がいる。例の連中だ。
 電気が回復した。連中はみんな凄腕の電気技師だ。賞賛の声をかけようと思って電池室に行ったがもぬけの空だった。
 思わぬ所で彼らと再会した。一番船底の倉庫。彼らは全員死体となって横たわっていた。「彼らの体内に消化器官はない。その代わり生体電池が埋設されている。この船を別の機種に変更するするより彼らを電源として使用した方が大幅にコストが安い」
「彼らはどういう人たちですか」
「わが社やメーカーのヨツバ・ボーグルソンをリストラされた連中だ。彼らのような中高年は再就職は無理だ。この仕事に就けば船に乗っているだけで、船長の私の3倍の月収が支給される。今回ように電源としての仕事をすれば遺族全員は生涯生活は保証される」
「そんなに出しても船を替えるより安いのですか」
「そうだ。ところで会社の人事からさっき連絡があった。君はこの航海で解雇となる。で、どうする君は」

 
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ロック・ラモーラの優雅なたくらみ

スコット・リンチ 原島文世訳        早川書房

 586頁。二段組。かなり長い長編である。こういう長編を読ませるにはスピード感が大切。読み始めたらすぐに読者をトロッコに乗せること。乗せたら一気に加速して、出来るだけ速やかに巡航速度に達すること。巡航速度に達したら、後は速度を速めたり緩めたり、上げたり下げたり、周りの風景を見せたり、読者を楽しませればいい。読者がわれに帰って、トロッコから降りようと思ったらダメ。
 そういう観点からこの作品を見れば合格。小生はトロッコから降りずに楽しんでこの長編の最後まで到着した。
 物語の舞台は中世ヨーロッパを思わせる架空の町カモール。縦横に運河が張り巡らされた美しい水の都カモールは、表の社会はニコヴァンテ公爵、裏社会は犯罪組織のボス、カパ・バルサヴィによって支配されていた。秘密協定によってバルサヴィ支配下の犯罪集団は、表社会の貴族には手を出さないことになっていた。ところが最近、「カモールの刺」と呼ばれる詐欺師が貴族をペテンにかけて大金をだまし取っている。
 主人公は若き詐欺師ロック・ラモーラ。ロックは武術はだめだが天才的な頭脳の持ち主にして変装の名人でもある。このロックをリーダーとする詐欺集団が「悪党紳士団」メンバーは商人出身で計算に強く武術格闘技にも秀でたジャン。一卵性双生児のカーロとガルド。すばしっこい少年バグ。
 ロックはバルサヴィにかわいがられ、娘との結婚を求められるほどの信頼を得ていた。そのころ「灰色王」と呼ばれる謎の暗殺者が裏社会に出没。バルサヴィ配下の犯罪集団のリーダーを次々と殺していく。
 「灰色王」とは何者。「カモールの刺」とは誰。犯罪を摘発する公爵の手の者「蜘蛛」の正体は。ロックと「灰色王」は対決するのか。謎の船「疫病船」の目的は。読者を飽きさせない工夫は充分にあり、エンタティメントとしてたっぷりと楽しめる。
 こういう小説は悪役の造形が大切。こちらも合格。「灰色王」もさることながら、灰色王が雇った契約魔術師「鷹使い」がいい。十分に憎たらしく強い。彼が使う殺人鷹、猛毒の爪を持つ鷹というアイデアが秀逸であった。
 世界の構築もきちんとなされているし、登場するキャラクターも立っている。なかなか読みでのあるファンタジーであった。
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11月20日(火) ガイドブックはミシュランだけでいいのか

 レストランのガイドブックとして世界的に有名な「ミシュランガイド」東京版が11月22日に発売される
 このガイドブック、タイヤメーカーのミシュラン社が顧客向けのノベルティとしてレストランのガイドブックを作ったのが始まり。この手のガイドブックとしては世界で最も権威があるとされる。星の数で権威付けを行ない、最高ランクの星三つの店の料理人は、賞賛と尊敬を集める。もちろん客も集める。
 ランクを下げられることは料理人にとっては、大変なショックで自殺した料理人もいたほど。
 このようなガイドブックの必要性を小生は認める。しかし、この「ミシュランガイド」のように権威を持ってしまうのはいささか抵抗を覚える。ミシュランといえども、あまた有るガイドブックの一つにすぎない。いくら格式と伝統を誇っていてもしょせんはガイドブック。
 良いお店の判定はそのようなガイドブックに頼らずに、自分の舌と目で判断すべきとの意見もあるが、これは現実離れした意見だろう。それこそ星の数ほどある飲食店のすべてを一人でチェックするのは不可能。おいしいお店に遭遇するのは運まかせとなる。そういう時はガイドブックは目安となり存在意義がある。ミシュランガイドはそのようなガイドブックに中で最も信頼を集めているガイドブックとされている。
 ミシュランガイドが日本でも発行されるようになれば、この本に掲載されることを目標に努力する料理人もいるだろう。星一つの店は二つに、二つの店は最高の星三つをもらうため一生懸命がんばる人もいるだろう。このような状態は一見、励みになり日本の料理界にとって良いように見えるかもしれない。しかしこれは危険なことである。
 ミシュランのガイドブックに掲載されている店は、ミシュランの覆面調査員が調査してミシュランが掲載に値するとして判断した店である。厳正で公正な調査がなされているからこそミシュランガイドは世界中の食通たちに信頼されている。しかし、これはミシュランのものさしで計って判断されたものだ。このものさしから外れている店は当然掲載されない。
 このミシュランのものさしから外れているけれど、非常においしい店もあるだろう。ミシュランガイドを金科玉条のごとく信頼し鵜呑みにすれば、そのような店を見逃すことになる。この広い世界にはミシュランとは全く違う価値観を持ち、なおかつ非常に優れた料理人もいるだろう。
 たった一つの価値観しか選択肢がないことは非常に良くないことだ。レストランのガイドブックにしても、ミシュランに勝るとも劣らないガイドブックが複数必要である。

 阪神タイガースの上園啓史投手がセリーグの新人王になった。阪神ファンとしてこんなにうれしいことはない。上園くんおめでとう。
 
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11月19日(月) 伯父を見舞った少女

 伯父から聞いた話。小生の伯父は戦時中満州にいた。関東軍の少尉として駐留していたが、現地で病気になった。高熱を発して数日間うなされていたら、窓から10歳前後の少女が顔をだした。中国人の少女か日本人の少女かよく憶えていないとのこと。会話を交わしたのだから日本人と思われる。
 少女は心配そうな顔で、病室の窓のワクを両手で持ちその上にあごをのせて「だいじょうぶ」と伯父の病状を気遣った。伯父は「だいじょうぶだよ」と答えた。伯父のよく知らない少女だが実に優しそうな少女だったそうだ。
 少女が去ったあと伯父は、その病室は4階で、少女が顔を出した窓は廊下側ではなく庭に面した窓だったことに気がついた。窓の外には足場になるようなものはなく、すぐ4階下の地面が見えた。
 その直後ソ連軍が侵攻してきて、伯父は病み上がりの身体でからくも逃げて、なんとか日本に帰ってきた。
 その少女は誰だったのか、実在の少女か、高熱のために見た幻影か、生前の伯父に、小生は聞き出すことはしなかった。
  
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