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日日是好日


監督 大森立嗣
出演 黒木華、樹木希林、多部未華子、鶴見辰吾、鶴田真由

 茶道映画である。お茶のお手前の練習。袱紗の扱い方、茶杓の持ち方、茶室への入り方と歩き方、そのようなことをひたすら、延々と描いている。
 お茶はまず、形から入る。お手前の形を、ひたすら反復練習する。なぜそうするかはいずれわかる。とにかく形をつくる。形ができれば、中に心がおのずと出来てくる。お茶とはそういうものだ。
 20歳の女子大生典子はお茶を習い始める。先生は武田先生というおばあさん。毎週土曜日、武田先生のもとへ、典子はいとこの美智子といっしょにお手前のお稽古。棗を持ち上げる、茶杓で水をすくう。茶釜の湯をすくう。同じ茶室で同じことのくり返し。
 お稽古をする茶室は、同じように見えるが、少しづつ違っている。床の軸が変わる、活けてある花が変る。季節が変わる。そして典子自身が変わる。毎日毎週毎年、一日一日はやってくる。同じように見えて同じ日は二度とやってこない。一日一日が好い日なのだ。
 お茶はただ、お茶を淹れて飲むだけ。それだけのことに、おおきな精神性を見出し、日本の文化の重要な背骨となる。そのことをこの映画を観て理解できるかできないかが、この映画の評価に大きく関わるのではないか。理解できなければ、これほど退屈な映画はないだろう。理解できればお茶の面白さが理解できるだろう。この映画を観てお茶を習いたいと思う人もいるだろう。
 典子はお茶を習い始めて24年経った。40を超える中年になった。いろいろあった。就職失敗、失恋、独立、肉親との別れ。典子は変わった、世界も変わった。
 典子役の黒木がさすがにうまい。キャピキャピの女子大生からしっとりとした中年まで、見事演じわけている。実に見事である。その典子をあたたかく指導する武田先生の樹木ももちろんいいし、いとこの多部も黒木の典子と正反対のキャラで主人公の典子を引き立たせていた。
 

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未来のミライ


監督 細田守
出演(声) 上白石萌歌、黒木華、星野源、宮崎美子、役所広司、福山雅治

 この映画はアニメである。ところが実写作品としてもいいぐらい豪華な配役。まったくもって、贅沢な声の出演陣である。
 一人っ子で両親の愛情をひとりじめしていた子に、下の子ができた。生まれてすぐの下の子にお母さんやお父さんはかかりっきりになる。上の子は下の子に両親の愛情を取られたと、嫉妬し、わがままをいい、なんとか親を自分に向けようとする。と、いう話である。それだけの話で、これだけみせる映像を創り上げる細田監督の手腕に敬服する。
 くんちゃんに妹ができた。「未来」と命名された。それからくんちゃんは機嫌が悪くなって、わがまま放題。そんなくんちゃんの前にセーラー服をきた女の子が現れた。くんちゃんより、ずっと年上のはずなのに、彼女はくんちゃんのことを「お兄ちゃん」と呼ぶ。それから、くんちゃんの時空を超える冒険が始る。いろんな人と出会う。そしてくんちゃんは成長していく。
 くんちゃんのいうこと聞かないわがままぶりが、少しひどかった。このおとうさん優しすぎ。小生なら何度か手が出ていたかもしれない。

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故郷


監督 山田洋次
出演 倍賞千恵子、井川比佐志、渥美清、笠智衆、前田吟

 広島は倉橋島の石崎家は代々石船で生計を立てていた。精一、民子夫婦も石船で砂利砕石を運ぶ仕事をする。精一が船長で民子が機関長。島に小さな段々畑を持っているが、石崎家の家計は石船が稼いでいる。
 石船。ガット船というほどの船ではない。20トン足らずの小さな木造船である。彼らの船大和丸はかなりの老朽船。船体は傷んでいるしエンジンは不調。精一は大和丸を建造した船大工の頭領に相談。大和丸は船としての寿命が来ている。新造船を造る金はない。修理しても100万以上かかる。
 精一は悩む。弟はすでに船から降りて会社勤め。悩んだすえ、精一は尾道の造船所に面接に行く。
 石船の仕事は危険で重労働である。採石場から小さな老朽船いっぱいに石を満載して運ぶ。目的地に着いたら船を大きく傾けて石を海に落とす。海のダンプカーである。燃料代もかさむ。もうけはごくわずか。会社勤めの方が月収はいい。でも、精一はこの仕事を続けたい。先祖代々の仕事だし、海の仕事が大好き。そしてなにより倉橋島という美しい生まれ故郷を愛している。船を降りたくない。倉橋島を離れたくない。仲間には500トンの鋼船を新造して者もいる。石崎家はそんな大きな石船業者ではない。
 大和丸最後の日、精一は民子に聞く。「大きいでなんだろう。なんで大きなモノには勝てないんだ」「時代の流れってなんだろう」
 石崎家と仲の良い魚屋の松下が問う。「なんでこんないい島に住み続けることができなんだろう」
 精一の父が孫娘にいう「よく見ておくんだ。お前の生まれた島はこんなにきれいなところなんだ」 
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シェーン


監督 ジョージ・スティーヴンス
出演 アラン・ラッド、ヴァン・ヘフリン、ブランドン・デ・ワイルド

 名作西部劇である。あまたある西部劇の中でも日本での人気は高いのではないか。お話そのものは股旅モノであり、また高倉健の昭和残侠伝ともいえる。旅の渡世人がふらりとやってきて悪いヤツをやっつけて去っていく。主人公は腕は立つがはじめはそれをかくしている。悪いヤツにいじめられ、屈辱を与えられバカにされる。ええ方の人物も殺される。そして最後、悪い親分に殴りこみ、やっつけてしまう。日本人の感性にあっているのではないか。
 ただっぴろい荒野である。開拓農民の家がポツンとある。流れ者がやってきて水をもらう。そこの主人に気に入られ、奥さんや子供にも良く思われる。その家の息子ジョーイには特になつかれる。流れ者シェーンはこの家に滞在する。      
牧場主ライカーはこの土地が欲しい。しかし主人ジョーは立ち退かない。ライカーさまざまな嫌がらせ。ジョーの仲間の農民たちはこの地を立ち去ろうとする。そしてとうとう仲間の一人が殺される。ライカーはすご腕のガンマンウィルスンを用心棒に雇う。あとはご想像の通りシェーンとウィルスンの対決となる。
 いろんな西部劇で早撃ちというワザをいろんな俳優がやっているが、この時にラッドが見せた早撃ちが一番早いといわれる。確かにすごい早撃ちであった。「荒野の用心棒」のクリント・イーストウッドもすごかったが、この時のラッドの方が早いようだ。
 ともかく風景が美しい。はるかに山を望むワイオミングの風景が美しい。できれば映画館の大きなスクリーンで観たかった。
 名作であるが気にくわないところもある。一番の見せ場である、シェーンとウィルソンの決闘から、「シェーン、カムバック」というジョーイ少年との別れのシーン、これらの名場面がすべて夜の場面だ。暗くてよく見えない。スティーヴンスン監督はなぜ夜の設定にしたのか納得がいかない。
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華麗なるヒコーキ野郎


監督 ジョージ・ロイ・ヒル
出演 ロバート・レッドフォード、ボー・スヴェンソン

 好敵手との友情。これは男のドラマの重要なテーマではないか。例えば、「巨人の星」星飛雄馬と花形満、「あしたのジョー」矢吹丈と力石徹、漫画だけではない。戦争映画でも「眼下の敵」ではドイツのUボートとアメリカの駆逐艦、ラストでの双方の艦長同士の友情が熱く描かれる。
 お互い死力を尽くして戦ってきた者だけが判る好敵手への尊敬。また、これらの作品の主人公とその好敵手に共通する特性がある。
 彼らはその事でしか生きられない。生きるすべを知らない。星と花形は野球しか知らない。矢吹と力石はボクシングしか知らない。「眼下の敵」のシュトルベルグ艦長とマレル艦長は海の上でしか生きられない。
 この映画の主人公ウォルド・ペッパーも上記の人物たちと同じである。元空軍のパイロットであった。第一次世界大戦は終わった。空で戦う必要はなくなった。しかし、彼は飛行機を降りない/降りられない。今も飛んでいる。遊覧飛行や曲芸飛行をして日銭を稼いでいる。
 客の要求はエスカレート。うんと過激で危険な曲芸飛行をしなくてはならなくなる。あげくにペッパーは取り返しのつかない事故を起こす。飛行禁止。でもペッパーはめげない。偽名を使いハリウッドでスタント飛行の仕事にありつく。
 ペッパーには自慢話がある。大戦中ドイツ空軍の撃墜王エルンスト・ケスラーと遭遇。空戦中機関銃が故障。ケスラーには殺すのは惜しい男だと思われ、彼の敬礼を受けて別れた。と、いうもの。ケスラーは尊敬すべき好敵手だ。いつか決着をつけたい。
 そのケスラーの映画がハリウッドで造られる。ケスラー本人が映画に出る。ペッパーは念願のケスラーと会う。お互い、飛行機乗り同士合い通じる。
 ケスラーは本人役で当時そのままの戦闘機に乗る。相手はペッパー。二人は思う存分ドッグファイトを繰り広げる。世界中でオレのことを一番理解しているのはお前だ。と、思いながら。ドッグファイトを続ける。
 
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泥棒成金


監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 ケーリー・グラント、グレース・ケリー

 この世はこわいモノ、汚いもので満ちている。こわいモノ見たさなどというが、できればこわいモノや汚いものは見たくない。ところが渡世を生きてたらそうはいかん。で、せめて映画の中でもいっぱいきれいなモノを見たいものである。
 きれいな映画である。ずいぶん昔の映画であるが、たいへんに美しいカラーだ。お話は泥棒モノ。もちろん強盗なんてガサツな泥棒ではない。だれも殺さず傷つけず、お金持ちの宝石だけを盗む泥棒が主人公。その手口実にあざやか。
 ジョン・ロビーはかって「猫」と呼ばれた大泥棒。一度捕まって刑務所に入ったが脱獄してレジスタントとなり英雄となる。その功により恩赦を受け、高級リゾート地リヴィエラで悠々自適。
 最近、かっての「猫」の手口そのままの宝石盗難事件が頻発。ジョンは見に覚えがない。ぬれぎぬを晴らすために上流階級の社交界へ潜入する。そこで金持ち母娘と知り合う。特に美しい娘といい仲に。
 美しい南仏のリヴィエラ、華やかな社交界、盗みのターゲットは宝石のみ。きれいなモノ美しいモノがいっぱい出てくるが、なんといっても一番美しいのはグレース・ケリー。モナコの王様と結婚する前の美しい絶頂だろう。グレース・ケリーの美しさを堪能できる。そのうえカーアクションまでご披露してくださる。
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響 HIBIKI


監督 月川翔
出演 平手友梨奈、アヤカ・ウィルソン、北川景子、柳楽優弥、高嶋政伸

 なんたらいうアイドルグループの女の子が主演の映画。アイドル人気におぶさったミーハー映画であろうとの予断と偏見で観た。ところが、とんでもないぶっ飛んだホラー映画となっておった。なかなかの拾いモノであった。
黒い家」「後妻業の女」「告白」「」など化けもんみたいな女が主人公の映画がいろいろあったが、その化けもん女映画に1本佳作が加わった。
 最強無敵の存在は人間の命をへとも思わんやつだろう。うむをいわせぬ圧倒的な力を持っているやつ。この映画の主人公鮎喰響はその両方を持っている。
 響。ナリは15歳の女子高生だが、こやつとんでもない化けもん。書いた小説「御伽の庭」応募規定を無視して新人賞に応募。ゴミ箱に捨てられていたのをたまたま編集者が目にとめ読み始める。やめられなくなる。この編集者、響の呪いにかかったかのように、この作品を世に出そうと必死になる。そして新人賞受賞。活字化。あれよあれよという間に芥川賞直木賞同時ノミネート。
 ことほど左様に圧倒的な才能を持っているが、ぶっ壊れた性格。からんできた不良の指を平然とへし折る。新人賞同時受賞した作家をパイプ椅子でどつき倒す。先輩作家に蹴りを入れる。記者会見場で気にくわん質問をした記者にマイクを投げつけ殴りかかる。見た目はか弱い女子高生であるが、切れたら何をするか判らん暴力女。さいわい、今まで人死には出なかったが、こんな調子じゃいつか人殺しをしそう。自分の命もなんとも思わん。校舎の屋上から飛び降りる。電車が来るのに踏切内に平気で立つ。
 主演の平手が化けもん女子高生を好演/怪演していた。なかなかの化けもん映画であった。
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鋼の錬金術師


監督 曽利文彦
出演 山田涼介、水石亜飛夢、本田翼、ディーン・フジオカ、松雪泰子

 原作の漫画は傑作である。あの傑作漫画をいかに映像化するか興味を持って観た。結論。ぜんぜんダメ。脚本がどうのとか俳優の演技がどうのという以前の問題である。
 イタリアかどっかにロケに行ったのか、はたまたCGか判らぬが、かようなヨーロッパの風景街なみに日本人はまったくそぐわない。確かにCGは迫力があった。しかし、風景と人物にものすごい違和感を感じる。いったん違和感を感じると、それが気になってまったく映画を楽しめなかった。
 これがアニメならいい。ジブリの「魔女の宅急便」もヨーロッパ風の風景にアジア人風の人物であったが違和感はなかった。どうしても実写で撮りたいのなら、原作を大幅に変えて、アジア風の風景にすればいい。日本人はヨーロッパの街なみには似合わないということ。弟のアルは鎧人間だから違和感はなかった。こんなダメ映画でもひとつだけ良い点。松雪泰子のラストがなかなか良かった。 
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ボヘミアン・ラプソディ


監督 ブライアン・シンガー
出演 ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン、グウィリム・リー

 ロックバンドクイーンのボーカリストが主人公である。小生はとくだんロックファンではなくクイーンにも特に思い入れはない。でも、この映画、評判が良く大ヒットなので観た。退屈もせず普通に観れた。で、観たあとの感想は、しごく真っ当な伝記映画であったというもの。奇もてらわず、ひねりもせず、伝記映画としては教科書どおりの映画であった。
 アジア系移民のフレディ・バルサラは根っからの音楽好き。地元のロックバンドのメンバーとなる。フレディの加入でバンドはヒットを連発。これを契機にバンド名を「クイーン」と改め、フレディもフレディ・マーキュリーと名のる。自主制作したアルバムが大物プロデューサーの目にとまり、世界的なロックバンドへとのぼりつめる。
 フレディの独立さわぎ、女性の恋人との葛藤、仲間との別れと和解、そしてゲイであることと、男性の恋人との出会い。そしてエイズ発病。ラストはチャリティーコンサート、ライブエイドへの出演。クイーン入魂の演奏。コンサートは大成功をおさめ、その後、フレディは45歳で亡くなる。
 ラスト20分のライブエイドのシーンは圧巻である。大観衆を前に熱唱するフレディは鳥肌モノの大熱演だ。
 こういう音楽映画はラストの演奏でいかに盛り上げて映画が終わるかが大切だ。「スウィング・ガールズ」「ジャズ大名」「オーケストラ」「アンコール」などいろいろあるが、いずれもラストは大感激でカタルシスを味わうことができる。で、そこにいたるまでの紆余曲折をいかに描くかが腕の見せ所である。その観点からいうとこの映画は「スウィング・ガールズ」や「ジャズ大名」に負けているかな。
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ハンターキラー 潜航せよ


監督 ドノヴァン・マーシュ
出演 ジェラルド・バトラー、ゲイリー・オールドマン

眼下の敵」「Uボート」など、潜水艦映画には名作が多い。その潜水艦映画名作列伝に1本名作が加わった。
 映画が始まっていきなりロシアの潜水艦が撃沈。それを追跡していたアメリカの原潜が消息不明。映画が始まって数分で強力なツカミである。つかまれた観客はつかまれっぱなしで最後まで映画につきあわされる。緊張、緊迫、ハラハラドキドキの2時間を経験できる。
 ロシアの領海近辺でアメリカの原潜が消えた。捜索に向かったのは、攻撃型原子力潜水艦(ハンターキラー)アーカンソー。人生のほとんどを水中で過ごしてきたベテラン潜水艦乗りのグラス艦長ひきいるアーカンソーはロシア近海に向かう。
 そのころ、ロシアの基地を訪れていたロシア大統領が拉致監禁される。国防相がクーデターを起こした。しかも戦争準備をしている。放置すれば第3次世界大戦。アメリカはロシア大統領の救出を決断。特殊部隊をロシア領に送りこんだ。さらに原潜アーカンソーを、ロシア大統領を救出した特殊部隊回収のため、ロシア領海に向かわせる。
 待ち受けるは、機雷原、ソナー網、駆逐艦、地上発射の対艦ミサイル。原潜アーカンソーは絶体絶命の危機に何度も襲われる。艦長グラスは鉄の意志で任務を遂行する。
 絶対に任務は成功すると判っていても、非常に緊張しながら観させられる。それに、こういう映画では不可欠の敵艦の艦長との男と男の熱い友情もしっかりある。ラストはもちろんロシア艦長とアメリカ艦長との握手で終わる。いやあ、面白かった。あっという間の2時間であった。
 

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花とアリス


監督 岩井俊二
出演 鈴木杏、蒼井優、郭智博、平泉成、木村多江、相田祥子、広末涼子

 花とアリスは仲良し。同じ高校に進学してうれしい。通学する電車も同じ。花は電車で見かけた男子高校生にひとめぼれ。彼、宮本くんも同じ高校。いっっしょうけんめい落語の「寿限無」を暗記している。花は宮本くんめあてに落語部に入る。
 花、宮本くんのあとをつける。宮本くん頭をシャッターで強打。介抱した花、どさくさにまぎれ、宮本くんに「先輩、あたしに告白しましたね」ウソをいう。宮本くんが記憶喪失になったのをいいことに、宮本くんの彼女になる。ところが宮本くんはどうもアリスが好きらしい。
 こうして花のウソと宮本くんの記憶喪失によって、花とアリス、宮本くんという、あいまいもことした三角関係が始る。
 岩井俊二が自らの映画技法を駆使して創った映画だと思う。セリフのしゃべり方がアレと思う。映画のセリフではない。ニュース番組でそのへんの女子高にインタビューして、その女子高生がしゃべっているようだ。脚本、映像とも凝ったもので、その岩井演出に応えた、鈴木、蒼井、二人の女優の演技力も見事なものであった。2時間を超す長い映画だったが、長く感じなかった。
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万引き家族


監督 是枝裕和
主演 リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡栞優、城桧吏、佐々木みゆ、樹木希林 

誰も知らない」「そして父になる」「海よりもまだ深く」など、是枝裕和は「家族とはなんぞや」と問いかけて来た映画作家である。この作品は、その是枝監督の「家族なんぞや」映画の集大成ともいうべき映画だ。
 東京の下町に暮らす5人家族。夫婦と子供二人。夫の母。夫=父は日雇い労働者、妻=母はクリーニング工場の従業員。夫婦の収入は不安定。老母の年金が頼り。それとこの家族の生活の糧を入手する手段が少し異常。彼らは万引きを生業としている。父治と息子祥太がコンビを組んでスーパーからいろんなモノを万引きする。
 この5人は貧しいがたいへんに仲の良い家族である。この家族にもう一人メンバーが加わった。冬の寒い晩、団地のバルコニーで震えている幼い少女ゆりを治が家に連れてきた。身体にアザやキズがある。どうも親から虐待されているようだ。不憫に思ったこの家族はゆりを家に置く。祥太はゆりに万引きのやり方を伝授する。
 6人家族となった一家は海水浴に行ったりして楽しく暮らす。そして老母が死ぬ。そのあたりからこの家族が瓦解していく。
 後半、この家族の正体が明らかになっていくのだが。ジグソーパズルのピースがはまるべきところにはまっていく。頭の上に?をいっぱい飛ばしながらこの映画を観ていたのだが、なるほど、と、納得されられる。納得すれば、重い印象が残る。ほんとうの家族とはなんだ。ラスト、幼女ゆり(そのころには別の名前だ)の外を見る目が哀しい。
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座頭市血笑旅


監督 三隅研次
出演 勝新太郎、高千穂ひずる、石黒達也、金子信雄、加藤嘉

 映画で、主人公のいい人やさしい人をきわだたせる手段として、なにか/だれかを助ける/かわいがるという手法がよく使われる。どんな凶暴凶悪なヤツでも、小動物や子供にやさしい、となれば、ああ、この人はほんとはいい人なんだ、やさしい人だ。と、なる。
 このシリーズのファンならよくご存知だが、主人公座頭市はヤクザな流れ者で渡世の裏街道を歩むアウトローで居合いの達人で人斬り。容赦なく人を斬り殺す人殺し。でも市は人情に厚くやさしい男であることを知っている。
 間違いで自分の代わりに殺された女は赤ん坊連れであった。女は夫の借金を返すため働いていた。借金を完済して夫のもとに帰る道中であった。責任を感じた市は赤ん坊を夫=赤ん坊の父親に届ける旅をする。
 つけねら狙う殺し屋集団を撃退しながら市は旅を続ける。途中、スリで女郎の女お香と知り合い、赤ん坊のベビーシッターに雇う。そして目的地に着いた。赤ん坊の父親とも会った。
 三隅監督の映像がたいへんに美しく、叙情的である。市、赤ん坊、お香。この三人が旅するロードムービーともいえるが、この3人、口ではいわないが、魅かれあっているのが判る。赤ん坊は何を考えているか判らないが、市はかわいく思っている。責任感だけで赤ん坊のめんどうを見ているのではない。お香も市に金で雇われて赤ん坊のせわをしているのだが、金めあてだけではない。
 市とお香、これは「男はつらいよ」の寅さんとリリーをほうふつとさせる。ケンカしながらも、お互いひかれあっている。できればずっと二人でいたい。でも、二人は流れ者。旅を続ける。いっしょにいることはできない。このシリーズ屈指の名作だと思う。
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青いパパイヤの香り


監督 トラン・アン・ユン
出演 リュ・マン・サン、トラン・ヌー・イェン・ケー

 ベトナムの映画である。1951年のサイゴン。外出禁止令は出るがまだアメリカとのベトナム戦争は始ってなかった。
 サイゴンのお屋敷に田舎から貧乏な女の子が女中奉公にやってきた。10歳のムイという。
そのお屋敷には、日がな一日なにもせず琵琶(かな?)をひいているオヤジ。奥様、オヤジの母の大奥様。長男、次男、三男。それに先輩の女中の7人がムイを迎え受け入れる。
オヤジはときどき家の有り金全部持って家出する。大奥様はオヤジの家出はあんたが悪いと奥様を責める。長男はあまり家にいない。次男は屈折している。三男は悪ガキ。ろくなヤツはいないが、奥様と先輩女中はムイに良くしてくれる。
聡明で勤勉なムイは奥様にかわいがられ、先輩に料理や家事を教えてもらいながら成長する。
そして10年。美しく成長したムイは、この屋敷を離れ、長男の友人で新進の作曲家の家に奉公する。
1人の女の子の成長物語である。背景となるサイゴンの風物が美しい。1950年代のベトナムはサイゴン。決して物質的に豊ではないが、この映画を観ていて、真に豊穣とはどういうことかがよく判る。主人公のムイをはじめ、心はたいへんに豊かな人たちだ。立ち振る舞いが優雅でバタバタしない。イラチの小生は大いに見習いたい。
少女時代のムイを演じた子役のリュ・マン・サンがたいへんにかわいい。ゆったりとした気分にさせてくれる名画といえる。このせちがらい日本でアクセク働いている人にとってはひとときの安らぎを与えてくれる映画である。    
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ミッドナイト・ラン


監督 マーティン・ブレスト
出演 ロバート・デ・ニーロ、チャールス・グローディン

 ロバート・デ・ニーロ。ハリウッドを代表する名優といっていいだろう。どっちかというとハードな重い役のイメージが強いデ・ニーロだが、この映画では実に軽快に軽く楽しげに仕事をしている。
 主人公ジャックは賞金稼ぎ。とはいってもこの映画は西部劇ではない。現代の話。アメリカでは賞金稼ぎが現代もいるとか。留置所に入れられた容疑者が保釈で出る。その時保釈金をたてかえるのが保釈保証業者。容疑者に逃げられると大損するから保釈保証業者から依頼を受けて逃げた容疑者を捕まえて報酬を得る。元警官のジャックはその仕事をしている。
 マフィアの金を横領して逃げた会計士のデュークを捕まえロサンゼルスまで護送する依頼を受けた。デュークをニューヨークで確保。5日以内にロサンゼルスへ。一晩で片づくちょろい仕事(ミッドナイト・ランの意味)と思われたが、デュークが飛行機恐怖症。離陸前の飛行機の中で大さわぎ。しかたなく陸路でロスまでの旅をすることに。
 と、この映画ロードムービーである。男二人の珍道中。デ・ニーロのジャックとグローディンのデュークが実におもしろい。特に会計士デューク。マフィアの金をババしたというから大それた大悪党と思うがそうではない。なんということのない中年のおっさん。ババした金は自分では使わず慈善団体へ寄付した。このデューク実にいい人。自分を捕まえたジャックの健康まで気づかう。肉を食べすぎるとコレステロールがたまる。タバコは身体に良くない。やめた方がいい。古女房みたいにこちゃこちゃといちいち口うるさい。
 この二人をマフィアがほっとくはずがない。二人のヤクザが追いかけてくる。ところが、こいつらアホ1とアホ2。デュークはFBIにも追われている。マフィアの親分をあげたいFBIにとってデュークは強力な武器となる。ところがFBIの現場責任者のモーズリーはジャックに身分証を盗まれるがしばらく気がつかない。ジャックはまんまとモーズリーと名乗りFBIになりすます。
 デュークを追うもう一人の賞金稼ぎのマービン。なんどもジャックに出し抜かれ、ジャックより安い金額で仕事を請け負ったことに気がつかない。
 ジャックとデューク以外出てくる人物がみんなまぬけ。アホバカまぬけ図鑑というような映画である。
 で、コメディであるが、しっかりアクションもあってあきさせない。最後は男の友情で泣かせる。いい映画であった。
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