トシの旅

小さな旅で学んだことや感じたことを、
まとめるつもりで綴っています。

国の重要文化財のトイレ、東福寺東司

2011年09月02日 | 日記

嘉禎2(1236)年、九条道家によって建立され、奈良の東大寺と興福寺から一字ずつを取って名付けられた、京都市東区の慧日山東福寺。
 
応永32(1425)年に再建されて、現存する禅寺として日本最古の三門(国宝)や、貞和3(1347)年に再建された、最古で最大の禅堂(国指定重要文化財)で知られています。足利氏の時代には「京都五山」の禅寺として、第4位に位置づけられていました。
私がこの寺に行ってみようと思ったのは、「東司(とうす)」を見たかったからです。
 
「東司」は、「西浄」とともに、禅宗寺院の「トイレ」を表しています。禅宗では、トイレも大切な修行の一つであり、七堂伽藍の一つでした。
 
東福寺の三門の南西、禅堂の南に、「東司」はあります。東福寺では、多くの修行僧が一斉に用を足すため、「百雪隠(ひゃくせっちん)」とも呼ばれていたそうです。室町時代につくられた日本で最古の、そして最大のトイレの遺構です。国の重要文化財に指定されています。

妻入りの扉は閉鎖されていて、今は中には入ることはできませんが、建物の両側には、外からのぞけないところに、格子がついた窓がありました。向かって左側には、その窓の下に木製の2段階段がついていて、その上にあがれば、背伸びをしなくても内部が見えるような配慮がなされています。
私は、その段に上って中を覗くことにしました。内部の写真は、その段の上で格子の中にカメラを入れて撮影したものです。

妻入りの扉から入った中央に通路が着いています。手前が入り口から見ると左側の方になります。

目の下に九つの小便用の壺が埋め込まれていました。

東司の中にある案内板には、「もとの設備は、どのようなものであったか、今少し定かではないが、便壺・・・を辿り、腰貫のほぞ穴も多少の入組の乱れはあるが、浄厠、手洗の間・・・画面とし旧に復元してみた」と書かれています(・・・は読み取れなかったところです)。もちろん、小便用の壺はすっきりしており使われた形跡はありません。

9つの小便壺の先(写真の手前)には、手洗い用の壺が1つ埋め込まれています。

これも、近くで見ると、まったく使われた痕跡はありません。

中央の通路の向こうには、少し大きめの大便用の壺が9個並んでいます。通路より少し低くなっていて、はっきりとは見えませんが、その先には、6カ所の手洗い用の壺が埋められているそうです。
   
中には、かつては公開されていた頃に使用されたと思われる、説明板や絵が残っていました。

中の説明板には、「東司使用の作法」が説明されています。遠いのと暗いのとで、中の文字は肉眼では読み取れません。

撮影した写真には、説明板の上下が一部写っていなくて、残念ながら、やはり完全に読み取ることができませんでした。読み取れる範囲では、「手洗いの作法」について、次のように書かれていました。

「(前略)右手に灰匙をとり瓦石・手をとぎ洗う具で、魚形のものも・・・におきて、滴水、とぎ洗うこと三度、つぎに土をおいて水を点じて三度洗・・夾(たちばな実を粉にしたもの)をとり、水に浸してもみ洗う。大桶の水を小桶にうつし腕に至らんとするまでよく洗う。洗い終わると公界の手巾を用いて拭い洗浄が終る。」(・・・は写っていない部分です)

まず、法衣を脱いできちんとたたんで、黄色の土団子を用意しておく。水桶をとって右手にさげて厠の前で「蒲鞋」(わらじ風のもの?)に履き替える。厠の上に「蹲踞(そんきょ)」して、排便をする。あたりを汚したり、笑ったり、つばをはいたりしてはいけない。用が済んだら、へらで拭く。右手で水を散らさないで、小便と大便をよく洗う。手洗い所で、水で手を三度洗い、灰で三度、土団子で三度、「夾」で三度もみ洗いする。(その後は、上の作法のとおりとなります) なお、この「へら」は、24cmぐらいの木製のもので「ちょうぎ」というそうです。

厳しい修行に明け暮れる禅宗の僧たち、まさに世間を超越したような生活の連続ですが、食事と排便は、人間である限り避けては通れない営みです。きわめて人間的な営みを、厳しい作法を決めて修行に転化することで、「通常の人間の行為を越えるもの」にしていったのでしょう。

東福寺からでる排泄物は、京の野菜づくりに携わる人々に売られ、おいしい京野菜をつくる肥料として使われ、お寺にとっても、貴重な現金収入をもたらしたと、「東司」の外にあった説明には書かれていました。





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1 コメント

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トイレとは!! (山田)
2011-09-03 09:34:10
 京都に行かれたんですね。「トイレを見たい」とはすごい発想です。「古いトイレがある」ということも知らなければいけませんが。とても興味深く読ませていただきました。
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