トシの旅

小さな旅で学んだことや感じたことを、
まとめるつもりで綴っています。

旧井笠鉄道神辺線跡を歩く

2013年06月11日 | 日記

これは、岡山県西部を走る第3セクターの井原鉄道のディーゼルカーです。JR伯備線清音(きよね)駅から西に向かい、矢掛・井原を経由して広島県東部のJR福塩線神辺駅までの高架上を、江戸時代の西国街道(山陽道)に沿って走っています。

井原線の神辺駅です。ここは、井原線が開通する以前に、旧井笠鉄道神辺線(以下「神辺線」と書きます)の神辺駅があったところです。この日は「旧井笠鉄道神辺線の跡地を歩く」イベントに参加して、神辺駅跡から井原線井原駅までを歩くことにしていました。

JR神辺駅です。神辺線神辺駅は、JR福塩線神辺駅の東隣にありました。神辺線は神辺駅を出るとJR福塩線と並走します。

線路に沿った道がないので、迂回して、駅前を東に向かって歩きます。 さて、明治時代、岡山県西部の井原町(現井原市)は紡績業で、その西にある高屋町(現井原市高屋町)は機業で知られていました。この二つの町は神辺町や福山市との結びつきが強かったため、交通の整備が期待されていました。

通りに出ると右折します。前の分岐を左側に進みます。福山と高屋を結ぶ鉄道建設をめざして創建された両備軽便鉄道は、大正3(1914)年、福山・神辺・府中(現福塩線)間を完成させ営業を開始しました。一方で、井笠鉄道本線(笠岡・井原間)は、大正2(1913)年営業を開始していました。

しばらく歩くと、高屋川にかかる橋に向かいます。 両備軽便鉄道は、さらに大正11(1922)年神辺・高屋間(高屋線)の7.8kmを開業させます。また、井笠鉄道は、大正14(1925)年井原・高屋間4.0kmの営業を開始しました。こうして、井原と神辺の間は、井原・高屋間が井笠鉄道線、高屋・神辺間が両備軽便鉄道でつながることになりました。軌間はどちらも762ミリでした。

高屋川にかかる橋を渡ります。西には、JR福塩線と井原鉄道の鉄橋が見えます。昭和8(1933)年、国(鉄道省)は両備軽便鉄道の福山・府中間を買収します。後に1067ミリに改造され、国鉄福塩線になります。残った神辺・高屋間は新会社(神高鉄道株式会社)を設立して営業しましたが、昭和15(1940)年井笠鉄道が買収しました。こうして、神辺・高屋間の11.8kmが、井笠鉄道神辺線となりました。
これは、いただいた資料に載っていた写真を転載しました。神辺線もここを走っていました。「客車はまさにマッチ箱」と書かれていましたが、ほんとにそう感じます。写真の左にある樹木が同じ場所に見えています。
その先で、右折して井原鉄道の高架をくぐります。ここからは井原鉄道に沿って進みます。井笠鉄道は、その後、27年に渡って営業を続けますが、モータリゼーションの進展による乗客の減少のため、昭和42(1967)年神辺線は廃止されます。その路線は、平成11(1999)年1月11日、井原鉄道の開業によって復活します。

高架下に、神辺線の橋の跡がありました。かつての用水路にかかる橋の跡でした。井笠鉄道は、一日13~15往復、40~50分の運行間隔(閑散時の昼の最大間隔は1時間50分程度)で出発しており、神辺・井原間を29分ぐらいでつないでいました。

歩き始めて30分ぐらいで、井原鉄道湯野駅に着きました。この手前に、神辺線の湯野駅がありました。

お世話をしてくださっていた方にお聞きしますと、神辺線の湯野駅は白いガードロープの手前にあったようです。痕跡はまったく残っていませんでした。

写真は、湯野駅のすぐ東にあった神辺線のコンクリート橋の跡です。かつては橋の上に枕木が並んでいたとお聞きしましたが、今は何も残っていませんでした。神辺線には、このような、用水路にかかる小さな橋が多かったようです。

井笠鉄道神辺線には9駅が設置されていました。神辺・湯野・国分寺・御領・両備金光・高屋・下出部・出部・井原の9駅でした。現在の井原鉄道は、神辺線の線路跡に建設されていますが、神辺線は湯野駅と国分寺駅の間は少し南を走っていました。私たちも、湯野駅の東の橋跡から南に迂回します。神辺線の跡
はたどることができません。迂回して10分ぐらいで、右手に「美の鶴酒造」の白壁の土蔵と煙突が見えてきました。さらに進みます。

少し北に進むと、右側に神辺線の線路の路盤跡が残っていました。
反対の左側には橋脚が残っています。雑草がおおっていて以前の姿がよくわかりませんでした。

さらに進みます。

住宅地の中にある線路跡を10分ぐらい進むと、神辺線の国分寺駅跡に着きました。神辺線でホームの跡が残っているのはここだけだそうです。花こう岩の敷石の上にうすくコンクリートが流してありました。

再び、井原鉄道の高架下に出て先に進みます。10分ぐらいで、井原鉄道御領駅に着きます。この駅舎の北側に神辺線の御領駅がありました。

御領駅から先も、神辺線は井原鉄道の高架の下になっています。高架に沿って東に進みます。かつてのコンクリート橋の跡が残っていました。用水路で分断されていました。

これも、コンクリート橋跡です。

レールで補強されたコンクリート橋跡です。
御領駅から30分ぐらい歩くと、かつての両備金光駅の跡に着きました。進行方向左側に駅舎があったそうです。「両備」はかつての両備軽便鉄道の名残でついているのでしょうか?「金光」は近くに金光教の教会があったからだといわれています。

周囲を見渡すと、金光教の教会のマークが見えました。神辺線では通常ディーゼルカーに木造客車が1両をつないで運行していましたが、彼岸の中日の「ひのしり参り」のお祭りには客車を1両増結して3両で運行されていたそうです。

両備金光駅を出ます。高架下の道が続きます。高架下は駐車場や物置など様々に使われていました。ここは、町内会のごみの収集場所になっていました。

高架下を利用するときの標示。高架の橋脚に貼り付けてありました。

何気なく歩いていてはっとしました。左側のビルの屋上に「井原第一クリニック」と書いてあるのに気がついたからです。県境をいつのまにか越えて岡山県に入っていました。湯野駅のあたりで、県境をまたいで家を建てている方のお話を地元の方がしておられましたが、確認できませんでした。

また、高架に沿って進みます。両備金光から15分ぐらいで、井原鉄道「子守唄の里高屋」駅に着きました。神辺線の高屋駅もここにありました。かつて井笠鉄道が買収する以前は、神辺からここまでが両備軽便鉄道、ここから東の井原までが井笠鉄道が運行していました。 昼食になりました。

このあたりの代表的な企業タカヤ。かつて、井笠鉄道の大株主がタカヤの小会社だったようですね。ここの先代社長が集めた絵画500点を展示したのが華鴒(はなとり)美術館だそうです。神辺出身の日本画家金島桂華の作品を中心に展示しています。

「子守唄の里高屋」駅の南にあった華鴒美術館です。中に、華道上田宗箇15代家元の設計という日本庭園の華鴒園もあります。

「中国地方の子守唄の発祥の地」の碑です。

「子守唄の里高屋」駅を出てさらに高架に沿って進みます。
これはいただいた資料の中にあった写真です。残念ながら、この場所を特定することができませんでしたが、神辺線に二カ所あった比較的大きな鉄橋です。高屋・下出部間にあった鉄橋を渡る神辺線の列車です。こちらの川も高屋川と呼ばれていました。

「子守唄の里高屋」駅跡から25分ぐらいで、お世話をしてくださっている方が待っておられました。出部(いずえ)駅跡に着きました。その前に下出部(しもいずえ)駅もあったばずなのですが、気がつきませんでした。説明もありませんでしたので、位置が特定できないのでしょうか。

これは、世話をしてくださっている方が持っていた写真集ですが、そこに書かれていた駅舎です。進行方向の左側にあったようです。

こちらは、駅への道を示す道標です。旧西国街道(山陽道)からの駅に入るところにある道標でした。横にお酒のケースが並んでいます。

駅跡から、左(北)に50メートルぐらい進むと右角に建っていました。これが実際の道標です。右の道が駅に向かう道。手前が旧西国街道(山陽道)です。裏に「昭 十 七 建」と刻まれていました。昭和10(1935)年7月に建てられたもの(?)のようです。

旧西国街道(山陽道)です。ほとんど人通りがありませんでした。

出部駅を出ても、同じ高架の下を歩きます。

出部駅を出るとすぐ岩山神社の中を横切ります。

解散地点の井原鉄道の井原駅に向かいます。岩山神社では高架でしたが、いつのまにか道路上を井原鉄道が走っています。

そして、井原駅に着きました。出部駅から10分ぐらいでした。

旧井笠鉄道神辺線(ここでは「神辺線」と書きました)は、廃線になって47年目を迎えます。今回は、神辺から井原まで11,8kmを50人ぐらいの人と一緒に歩きました。残念ながら、当時の面影を残しているところはほとんどありませんでした。井笠鉄道という企業自体も、平成24(2012)年11月12日に経営破綻して現在破産手続き中です。すべてが過去のものになってしまった印象です。一緒に歩いた井原鉄道を愛する人たちのためにも、ほんのわずか残っている橋梁やホームを、今しばらくこのまま残しておいてほしいと思ったものでした。

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1 コメント

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見ました (山田)
2013-06-15 08:19:44
 井原から高屋へは何度か行ったことがあります。いつも車なので、新しい発見です。「○○探訪」の情報が入るんですね。興味が違えば入らない情報です。新しい発見ありがとうございます。
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