All Photos by Chishima,J.
(ケリ 2008年5月 北海道中川郡豊頃町)
ケリは、日本では近畿以東の本州で繁殖し、本州中部以南で越冬する中型のチドリ科鳥類である。分布域よりも北に位置する北海道では、迷鳥として長万部町(年不詳5月)、むかわ町(年不詳10月)、名寄町(1984年6月)、別海町(2000年6~7月)、標津町(1978年6月)などで少数の記録があるにすぎない。この度豊頃町で本種を観察したが、いくつかある十勝地方の鳥類目録には本種の記載は無く、初記録である可能性もあり、日没間際の遠距離という悪条件ではあるが、かろうじて本種と判別できる画像も撮影できたので、ここに紹介しておく。
本種(1羽)を観察・撮影したのは2008年5月30日の17時過ぎ、場所は中川郡豊頃町にある内陸湿地である。ただし、同日朝からその湿地で「キリッ、キリッ」という聞き慣れない声を聞いており、早朝から滞在していた可能性が高い(その湿地では少し前にセイタカシギが出現していて、同種も「キッ、キッ」と似たような声で鳴くため、姿を確認するまではセイタカシギかと思っていた。セイタカシギは十勝地方では、少数ながら春を中心に毎年記録される旅鳥である)。
ケリの繁殖地は、前述のように近畿以東の本州、ならびに国外では中国東北部などで北海道より北に繁殖地は無いが、寒地の個体群は渡りをするため、春期に北上する個体が本来の分布域を越えて北上しすぎたものと考えられる。道内での従来の記録の大部分が春~初夏に集中しているのも、そのためであろう。
ケリ
2008年5月 北海道中川郡豊頃町
ケリの飛翔
2008年5月 北海道中川郡豊頃町
セイタカシギ
2008年5月 北海道十勝郡浦幌町
今回ケリが出現したのとは別の干潟にしばらく滞在していた個体。メスか若鳥であろう。
(2008年6月10日 千嶋 淳)
ケリですか! 数年前の秋にそちらでタゲリを見てそれも珍しいな~と思っていました。あの辺は色んなのが出て面白いですね。それに広くてヒトが少ない!
「北上し過ぎた」とはちょっと興味深い異変かも知れませんね。
こちらは、日本海側のような大陸系の珍鳥はあまり出ませんが、時々このようなのがふらっと現れることがあり、驚かされます。人の少なさ=平和さはいいですね(ワシやコミミズクの時期を除いて)。
シラサギ類なんかも、本来は本州北限のはずなのに毎年現れます。ただ、数が多いのと、長期滞在するものもいることから、迷ったというよりは繁殖しなかった、あるいは途中で失敗した個体がふらふらと彷徨っているのかもしれません、迷ったというよりは。