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All Photos by Chishima,J.
(ヤツメウナギ類を捕えたカワウとそれを追いかける他の個体 2009年9月 北海道十勝川中流域)
(日本野鳥の会十勝・会報「十勝野鳥だより172号」(2010年9月発行)より転載 一部を加筆・修正)
十勝川中・下流域でカワウが普通の夏鳥となった現在、同地域の各所で観察は可能です。川面を見渡せる場所にじっとしていれば小群が上空を通過して行く、あるいは1~数羽が泳いでいる姿を見ることは難しくありません。ですが折角ですので、カワウをめぐるいろいろな事象を垣間見られる場所として、十勝川中流域の幕別町にある千代田新水路周辺を紹介しておきましょう。
千代田新水路は、言わずと知れた冬のオオワシ、オジロワシですっかり有名になった、2007年通水の人工水路です。帯広からは車で20分程度。冬のみならず一年を通して様々な野鳥を見ることができ、これまでに周辺で記録された鳥類は140種以上に上ります。カワウは春~秋に見られますが、数が多いのはやはり夏の終わりから秋にかけて。新水路内でも数~10羽程度見られることでしょう。水面を泳ぎながら活発に潜水を繰り返すのは、採餌中の個体です。ウ類は大きな魚を捕えた時には水面まで持って来て、苦心しながら食べるのですが、新水路内でそのような光景を見たことはありません。小さめの魚を主に食べているのでしょうか?陽射しの降り注ぐ日中には、河原で羽を広げて日光浴に興じる個体もいるはずです。実は、ウ類は多くの水鳥と違って尾羽付け根近くの尾脂腺から油を出しません。そのため水と羽毛の親和性が高く、水中を効率よく泳ぐことができるかわりに、定期的に羽毛を乾かす必要があるのです。
千代田新水路
2010年8月 北海道中川郡幕別町
最下流部の、本流との合流点付近。中州より右は本流だ。対岸の十勝ヶ丘では、猛禽類や小鳥の渡りが観察できる(詳しくは「十勝ヶ丘・主に秋」(前編)、(後編)の記事を参照)。
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カワウの数が多いのは、新水路内よりも千代田堰堤下流など十勝川本流です。日によっては数十から100羽を超える群れが中州や水面に見られます。2009年9月には200羽を超える大群が飛来しましたが、この原稿を書くに当たって当時の写真を見返していたところ、少なからぬウミウも混じっていることがわかり、驚きました。ウミウがカワウとともに内陸部まで飛来しているという現象は大変面白い半面、識別により手間をかけなければならないかと思うと気分は複雑です。
ところで、その200羽強の群れが飛来した時は、数十羽が常に千代田堰堤下流で採餌していました。何を食べているのか観察したところ、大部分はヤツメウナギの類でした。30cmを超えるヤツメは、カワウにとって余程魅力的な餌資源だったのでしょう。1羽がヤツメをくわえて浮上すると、すかさず1~数(最大で7)羽の他のウが集まって来て、それを奪おうと大乱闘を繰り広げました。「盗賊行為」の大部分は、魚を捕えたウが慌てて飲み込むことによって失敗に終わりましたが、中には引きちぎったり奪ったりして、思いを遂げたウもいました。そして、この大型魚に目を付けたのは仲間のウだけではありませんでした。ヤツメをくわえたウを、上空からオジロワシが襲撃してせしめようとする姿が、何回も観察されました。もっとも、成功率は半分程度だったので決して効率の良い狩りとはいえませんが。川底にいてワシには捕ることのできないヤツメが、物珍しかったのでしょうか。
ヤツメウナギ類を飲み込もうとするカワウ
2009年9月 北海道十勝川中流域
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他個体に追われ、ヤツメウナギ類を吐き出すカワウ
2009年9月 北海道十勝川中流域
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カワウからヤツメウナギ類を奪ったオジロワシ
2009年9月 北海道十勝川中流域
![25 25](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/c1/efde08fe209b9b84c8a87184ec9e77dc.jpg)
こうして眼前で展開されるカワウの、様々なドラマを目の当たりにしていると時が経つのもつい忘れてしまいます。季節は秋の渡り真っ只中。水位が適切なら、新水路内にはアオアシシギなど何種類かのシギチドリ類も見られるはずです。遡上を始めたシロザケを追って、オジロワシやカモメ類が河原に降りているかもしれません。ここでこのまま探鳥を続けるも良し、秋を告げに舞い降りたヒシクイの姿を訪ねて下流域へ脚を伸ばすのも良いでしょう。下流域でも各地の河原や湖沼でカワウの姿を見ることができます。十勝川河口近くには集団ねぐらもありますので、夕刻そっと訪れてみるのもまた楽しいひと時です。ただし、集団ねぐらというデリケートな場所ですので、大人数では行かない、大声や明かりを発しない、長時間滞在しないなど鳥への配慮もよろしくお願いします。
ヤツメウナギ類を引っ張り合う2羽のカワウ
2009年9月 北海道十勝川中流域
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(2010年9月20日 千嶋 淳)
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