鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

ウミガラス(その2) <em>Uria aalge</em> 2

2012-03-07 22:29:45 | 海鳥写真・チドリ目
1
All Photos by Chishima,J.
(以下すべて ウミガラス冬羽の飛翔 2012年1月18日 北海道厚岸郡浜中町)


 ヨーロッパの個体群では全長38~46cm、翼開長61~73cmで、北方の個体群ほど大型である。極東の個体群について、このようなサイズの地理的変異があるかは不明。ハシブトウミガラスと並んで日本で見られるウミスズメ類中最大で、全長や翼開長はウミバト、ケイマフリともオーバーラップするが、体型のせいかウミガラス類の方が大型に見える。北海道の繁殖個体群はほぼ消滅したが、比較的普通の冬鳥として主に11月後半以降渡来し、沿岸の海上や時に漁港でも観察される。

2


 冒頭の写真を切り抜いたもの。体は前端が尖った流線型で、ペンギン類のようでもある。近距離で見る冬羽は顔の白い部分が広く、目から後方に向かって白色部を分割する細い黒線の存在によってハシブトウミガラスと容易に識別できる。ハシブトウミガラスは冬羽でも総じて顔の黒色部は広く、狭い個体でも目の下部までは達し、目の後方にウミガラスのような線が出ることはない。後頚下部から前頚に向かって、首輪状に細く伸びる黒線の広さ、長さには個体差があり、左側の個体では後頚と前頚の中間くらいで途切れているように見える(写真からわかるように実際にはうっすらあるが、野外ではまず見えないだろう)。右の個体は前方に向けて細くなりながらも、連続した明瞭な黒線として前頚まで到達し、そこだけ見るとツノメドリのようでもある。


3


 飛翔は直線的で、翼の拍動は速い。小・中型のウミスズメ類と比べて飛翔高度は高めで、このようにしばしば陸地を背に飛び、時にそれらより上、青空を背にして飛ぶこともある。1~数羽の飛翔を見る機会が多いが、渡り時や餌の密集した海域では数十~100羽以上の大群でも飛ぶ。単一種群でも他種との混群でも出現し、夏の道東ではウトウとよく一緒に飛んでいる。他種とともに出現した時、識別の手がかりとなるのは、大きさ、形、色合い等。


4


 脚は短い尾の先端を大きく超えて突出する。やや上方に向けられることが多く、独特のシルエットを作り出す。翼は体の中央より少し前方に位置し、そのため体の後半に重心があるように見える。翼下面は風切や腋羽周辺を除いて白色で、広範囲の白色部は遠距離からもよく目立つ。


5


 左の個体は首をやや下げている。このような姿勢では、特に背中が弓なりに曲がっている印象を与える。アビの飛翔シルエットに少し似るが、首がずっと短く、羽ばたきも一層速い。次列風切の先端は白く、翼後縁に白線を形成するが、中距離以上だと気付くのは難しい。上面の色は一年を通じてハシブトウミガラスより褐色みが強く、距離や光線の条件が良ければ有用な特徴となる。


(2012年3月7日   千嶋 淳)

*一連の写真は、NPO法人エトピリカ基金の調査での撮影。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿