All Photos by Chishima,J.
(オオセグロカモメと黄金道路 2007年12月 北海道幌泉郡えりも町)
(日本野鳥の会十勝支部報「十勝野鳥だより161号」(2007年12月発行)より転載 一部に加筆・修正)
帯広から車で約80分、右手に日高山脈の勇壮な山並みを見ながら十勝平野を南下すると、広尾の市街地に入る直前で左側に海が開けてくる。ここまで砂浜が中心だった海岸線は、岩礁を主体とした磯へと姿を変え、えりも町百人浜まで続く。この一帯は海ガモ類やカモメ類をはじめとした海鳥の、絶好の観察スポットでもある。
ビロードキンクロ(オス)
2007年3月 北海道幌泉郡えりも町
広尾市街の直前で楽古川を渡ってすぐに左折すると、そこはもう十勝港である。楽古川の河口や河岸段丘上にはオオワシやオジロワシの姿を見ることもあるので、注意しよう。港の北側は立ち入りが禁止されているエリアが多いので、少し南下して旧フェリーターミナルのある第3ふ頭から、港の入り口付近を見てみよう。外海とつながっているだけにオオハムなどのアビ類やハシブトウミガラスなどのウミスズメ類を目にすることも多い。数~十羽ほどのヒメウやウミウは、海面や防波堤上にほぼ確実にみることができる。ここでは、鳥までの距離が遠いので、望遠鏡があると便利だ。
ひとしきり観察したら、岸壁沿いに第2ふ頭まで移動してみよう。釣り人が多いが、シノリガモやクロガモがすぐ下に浮かんでいることもあるし、ホオジロガモのオスが数羽、メスを取り囲んで頭を反り返すディスプレイに興じるのを眺めるのも楽しい。また、所々草の生えた空き地があるが、このような場所にはハギマシコやツメナガホオジロがいることもあるので、是非のぞいてみたい。沖の防波堤やテトラポッドには、たいていオジロワシが羽を休めている。
スズガモの雌雄
2007年12月 北海道広尾郡広尾町
手前がメス。港の奥部では最も数の多いカモ類。
ハギマシコ
2007年2月 北海道広尾郡広尾町
本種はこのように崖地で餌を取っていることも多い。
港の最奥部にある漁業ふ頭は、この港で一番鳥影の濃い場所である。外洋性の海鳥は少なくなるが、スズガモやホオジロガモが群れをなし、魚介の水揚げの行われている岸壁ではカモメ類が、こぼれた魚を奪おうと乱舞する。カモメ類で多いのはオオセグロカモメだが、多い時で数十羽のワシカモメも見られるのが、ここの特筆すべき点だ。ワシカモメは、十勝地方では稀な鳥とされているが、これはワシカモメが越冬環境として好む岩礁海岸が十勝に少ないためで、広尾からえりもにかけての海岸線では、オオセグロカモメに次ぐ普通種である。せっかくなのでじっくり観察したい。最初はどれも同じに見えるかもしれないが、背中や風切の灰色が薄い成鳥を探し出すことができればしめたもの。そのまま観察を続ければ色は違うが、同じような特徴を持った幼鳥もいることがわかってくるだろう。そうなればあとはディープなカモメの世界にどっぷり…、閑話休題。ほかにもカモメやシロカモメ、また春先にはミミカイツブリなども見られるだろう。
争奪戦(オオセグロカモメほか)
2007年1月 北海道広尾郡広尾町
魚(チゴダラ科の一種?)を咥えた幼鳥を、数羽が追いかける。
ワシカモメ(成鳥)
2007年1月 北海道広尾郡広尾町
カモメ(第1回冬羽)の飛翔
2007年1月 北海道幌泉郡えりも町
外港地区は鳥は少ないが、一応チェックしておこう。また、この部分に隣接する岩にはウミウ、ヒメウが多く、周辺にはシノリガモが多い。
こうして十勝港を一巡りすると、鳥の出方によっては半日を費やしているかもしれない。このまま引き上げても、あるいは広尾市街で買い物や観光を楽しむのもよいが、よりエキサイティングな海鳥たちとの出会いを求めて、黄金道路を南下してみるのもよいだろう。
シノリガモの雌雄
2007年12月 北海道広尾郡広尾町
手前がオス。荒波の打ち寄せる岩礁帯に多いが、港内でも見ることができる。オスの顔の不思議な模様に見入りたい。
(後半へ続く)
(2007年12月23日 千嶋 淳)
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