鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

140317 十勝沖海鳥・海獣調査

2014-03-18 22:47:40 | 海鳥
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エトロフウミスズメの群れ 以下すべて 2014年3月 北海道十勝沖)


 十勝川沿いに霧が出ており、海も同様かと心配しましたが、川から離れるにつれ青空が広がりました。どうやら川霧だったようです。午前6時半、すっかり明るくなった港から沖を目指します。多少風浪があったものの、この時期としては穏やかでツブやタコなどの漁船が所々で操業しており、それらにはたいてい数~数十羽のオオセグロカモメが群がっていました。しかし、それ以外の鳥はサッパリです。否、完全にいないわけではなく、エトロフウミスズメやコウミスズメの群れがぱらぱら飛び、ウミオウムやハシジロアビも観察できたのですがいずれも距離が遠く、「見た」という満足感とは程遠いものでした。例年、流氷が最南下するこの時期はエトロフウミスズメ属やウミガラス類が多数、時に船のすぐ近くでも見られるため、それを期待していただけに残念でした。間近に見られた外洋性の海鳥はハシブトウミガラスくらいで、この時期数~数十羽が毎回観察されるウミガラスやケイマフリの姿もありませんでした。先月までいなかった夏鳥のウトウが1羽だけ出現したのは、春の兆しといえるでしょう。
 そして戻って来た沿岸。秋~春には沖で鳥が少ない時もクロガモをはじめとした海ガモ類やアビ、カイツブリ類などで賑わうのですが、こちらも海鳥が非常に少なく、半信半疑のまま帰り着いた港周辺も特に海ガモ類の少ない状態でした。沖のウミスズメ類が海流や水温、湧昇などといった複雑な海洋構造と関連して当たり外れが大きいのはわかりますが、沿岸で主に貝類や無脊椎動物を食べている海ガモ類がこうも少ないのは一体どうしたことでしょう。広い海のどこかにいると信じたいものです。海ガモ類は狩猟や海洋汚染、混獲、繁殖地の環境改変などにより激減しているようで、コオリガモやクロガモは国際自然保護連合の鳥類レッドリストに近年入りました。これまでの経験からは信じられないくらいの沿岸の海鳥の少なさが、海洋版「沈黙の春」でないことを切に願っています。
 下船後はいつものように番屋でカニやタコなど、海の幸をたらふくいただきながら歓談し、適宜解散しました。帰りに十勝川下流域に立ち寄ってみたところ、数百羽のマガンやヒシクイ、オオハクチョウなどが雪の融け始めた畑に群れており、春の到来を告げていました。今回は釧路や静内からも遠路参加いただきました。参加・協力いただいた皆様、どうもお疲れ様でした。冒頭の写真はエトロフウミスズメの群れ。個体同士が非常に密接して飛ぶのが本種の特徴で、この中にも約30羽が写っています。数百~数千の大群になると、まるで黒い雲の塊のようで非常に見応えがあります。もっとも、最近ではそんな大群もなかなか見られなくなりました。全身黒いのも特徴ですが、写真からもわかるように晴天・順光下では個体によって下腹~下尾筒が淡色に見えます。

確認種:マガモ コガモ スズガモ シノリガモ ビロードキンクロ クロガモ カワアイサ ウミアイサ アカエリカイツブリ ミミカイツブリ アビ ハシジロアビ ヒメウ カモメ ワシカモメ シロカモメ セグロカモメ オオセグロカモメ ハシブトウミガラス ウミオウム コウミスズメ エトロフウミスズメ ウトウ トビ ハシボソガラス


ハシブトウミガラス
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早春の十勝沿岸
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*十勝沖調査は、NPO法人日本野鳥の会十勝支部が日本財団より助成を受けて、漂着アザラシの会、浦幌野鳥倶楽部との連携のもと行われているものです。


(2014年3月17日   千嶋 淳)


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