中国がWTO(世界貿易機構)にアメリカの今回の関税引き上げは怪しからんと提訴したとのことです。
これを聞いて、WTOに「正しい判断をしてほしい」と本気で頼んでいるのか、それにしてもよく「WTO頼み」に踏み切ったものだとびっくりしました。
中国はかつて、南シナ海の大部分を中国領だと主張していることについて、「その主張には正当性がない」とした、仲裁裁判所の判断を「紙屑だ」といって無視した国です。
今回アメリカの関税政策が、「妥当でない」という判断を得ようとして提訴したのでしょうが、もしアメリカに不利な判断が出た時、アメリカがそんなモノは「紙屑だ」といっても「そうですね」と納得するのでしょうか。
こうした矛盾は中国に限りません。ロシアはクリミア併合のついての国連の決議に反論して無視を続けていますが、今回アメリカがミサイルの実験をしたことについて中国とともに緊急の安全保障理事会の開催を要請し、アメリカの態度を批判しました。
こうした現状、主要国が自国の都合によっては国連や国連機関の決定や裁定を無視し、また別の都合については国連や国連機関を利用して自分たちの正当性を主張しようとするという点については、国連設立を主導し、国連本部を自国に置いたアメリカも全く同様です。
有名なエルサレムへのアメリカ大使館移転などは、国連決議を全く無視しての行動ですが、北朝鮮への制裁については、国連決議を世界中に守らせると躍起になったり、最近は北朝鮮のミサイル発射を(アメリカまではとどかいないからでしょうか)全く気にしていないような態度だったりで、国連無視と、国連頼みを使い分けています。
こうした国々が国連の中枢の安全舗装理事会を構成しているわけですから、現状では国連がまともに機能することはほとんど望み薄です。
しかし考えてみれば、これから創られる長い人類社会の歴史を考えてみても、世界をリードしようという大国が、こんなことをしていたのでは人類社会の正常な、安定的発展は望み薄でしょう。
最近の世界情勢の混乱は、こうしたご都合主義の横行に対して、本来人類社会の在り方を示すべき国連が無力であることの結果でもあるのです。
ならば、誰かが、世界の国々は本気で国連とその判断を大事にしようと言い続ける必要があるでしょう。
そんな発言は現状では全く無力かもしれません。しかし誰かが、そして、次第により多くの国々が、声を大きくしてそう発言することが何時かは世界を、人類社会の在り方を変えていくのではないでしょうか。
第二次大戦後生まれ変わり、国連中心主義を標榜し、平和憲法を持ち、人畜無害で、この70余年、世界経済社会の発展に貢献することだけを生真面目に実践してきた日本は、その役を果たすのに適任ではないかと考える所ですが、どうでしょうか。