tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

最低賃金と生活保護

2012年07月14日 12時24分11秒 | 社会
最低賃金と生活保護
 御承知のように最低賃金とは企業はこれより安い賃金で人を働かせてはいけないというもので、生活保護は、働かない(働けない)で受け取る生活のための最低費用という事でしょう。
 
 時給換算で、最低賃金が生活保護費を下回るという問題は従来からあるのですが、そういう県が11県に増えたというのが最近の報道です。
 最低賃金は全県一律で、生活保護費は県内通常6区分で金額が違いますし、社会保険料などは生活保護の場合は免除されるといったこともあるので、本当はもっと詰めた議論が必要なのでしょうが、ここでは今回の報道機関のものの言い方が従来と微妙に違うという点に気が付いたので取り上げてみました。

 従来から、マスコミの多くは、「働いているのに、生活保護より低い収入というのはおかしい。当然最低賃金を引き上げるべきだ。」といったものが殆どでした。しかし今回は、生活保護が少し甘すぎるのではないかといった、今までと逆のニュアンスが、報道の中に垣間見えるという感じを受けた方も多いのではないでしょうか。

 誰もが(本人も)不正受給だと認めるような事件もあったりしたせいもあるのかもしれませんが、同じ省庁(厚労省)の管轄でもなかなか調整がついていない問題です。

 もともと最低賃金というのは、毎年、政労使三者の審議会で市場賃金を参考に決めます。厚労省主導、中立、労働の意向が強く反映され、いつも一般賃金より上ずって決まるようですが、それでも、市場で決まる賃金と全く乖離するものではありません。
 しかし、生活保護費は、いわばマーケットバスケットで、理論的に決まります。

 マーケットで決まるものと、制度で決まるものでは当然動きに差が出ます。マーケットで決まるものは(人知を超えた)柔軟性があります。制度は人間の頭の中で決まりますから、頭が固ければ硬直的です。

 今回の微妙な変化というのは、最低賃金が、高く決めすぎると、企業がいなくなり(海外移転)雇用そのものがなくなる、という日本経済の限界にぶつかる中で、制度の方は、官僚の頭の中で、誤った環境認識から勝手に膨らんできた結果という事に、マスコミが漸くいくらか気づき始めたという事なのでしょう。

 マスコミにしてみれば、「弱者の味方」という正義感は大事かも知れません。しかし常に合理性という判断基準も、併せ持つ必要がありそうです。
 同じことが官僚の最賃行政、生活保護行政についてもいえるのかも知れません。


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