tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「持続可能性」のベースはバランスでは?

2018年12月04日 21時30分26秒 | 社会
「持続可能性」のベースはバランスでは?
 このブログの基本テーマは付加価値分析をベースにした経済・経営の問題です。しかし、ここ2回取り上げて来た「持続可能性」という問題を考えますと、社会における多くの現象には、共通して考えられる点が沢山あるような気がしてきます。

 そんな視点で「持続可能性」を確保するための必要条件、あるいは「持続可能性」を阻害する要因など考えてみますと、そこには「バランス」という視点、感覚、状態といった問題が大きく関係しているように思われます。

 人間の体は生物の中でも最も精緻なものでしょうが、健康診断でも正常値をはみ出す所が見付かると、正常値に戻すように指導されます。経営診断でも、経済政策でも全く同じで、重要な比率を時系列に比較して、異常値が出れば危険と判断されることになります。

 人間の体や企業経営や一国経済が正常に動いていれば、重要な比率は安定していてそのまま健全な「持続可能」な状態と判断されるのが一般的でしょう。

 アメリカの経常収支や貿易収支が万年赤字というのは経済のバランスが失われているからで、赤字補てんのために外国からカネを入れなければなりません。人間なら輸血ですが、先ずそれを金融工学を使ったマネーゲームでやろうとし、結果はリーマンショックでした。

 今回はトランプさんが保護貿易政策で対応しようとしていますが、製造業の体力が落ちているのを保護しても、却って製造業の体力を弱めてしまうでしょう。
 農業と、先端産業と、軍需産業が強くても、産業構造全体のバランスが取れていないのでしょう。これは対症療法(輸血や保護)では治りません。

 日本でもバランスの悪い点がいくつかあります。経済成長のペースが低いのに、国の借金だけが増えていくというバランスの悪さ、経済成長 (低いですが) しても、それより伸びない個人消費、その裏で増える個人貯蓄。これもバランスが悪いですね。
 こうしたバランス悪化の状態がいつまでも続けられるわけけはありませんから、これでは財政も経済成長も「持続可能性」がないという事になるのでしょう。

 これらの背後にはゼロ・マイナス金利という「お金の貸借関係のバランス」を無視した金融政策が長く続いていることがあるようです。
 そんなことがいつまでも続けられることはない、というのは「壊れたバランス」が持続可能性を阻害しているという事なのでしょう。
 ところで、千数百年前から「和を以て貴しとなす」といい、「和の国」である日本人は、「和=バランス」には独特のきめ細かい、まさに「バランス感覚」を持っているはずです。
 それを生かせば、政治や経済のバランスを壊している部分、言い換えれば「こんなことは長くは続けられませんよ」という「持続可能性」の判断が容易にできるのではないでしょうか。

 バランスを欠いた状態は、日本では昔から言われる「地震 雷 火事 親父」、今はそれに台風や集中豪雨を加えましょうか、そういったものへの緊急避難として已むを得ない場合もあります。
 しかしそれはあくまで「バランスを取り戻すため」の短期的な「非常時」への対応で、早く正常状態の「バランス回復」をして、「持続可能」な形を整えなければならないのです。

 世の中のいろいろな事を見るのに、日本人の研ぎ澄まされた「バランス感覚」を十分に活用することが、ますます必要な世の中になったようです。

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