公的年金の所得代替率が50%を切らないというのが政府の方針という事で公的年金の財政収支試算が5年ごとに行われています。
今年がその年に当たるという事で、先日厚労省から社会保障審議会の年金部会の検証結果が発表になりました。
結果は4つのケースのシミュレーションの最悪の条件設定のケース(一人当たらいゼロ成)経済)以外は、50%以上の確保が可能という事で、まあ良かったという事になったようです。
多様な条件を組み合わせてのシミュレーションですから、結果はそれなりのものになるとおもっていますが、最初から気になっていたのは「ケースの設定」のしかたでした。
2024年年金試算の主な前提(伸び、利回り:%)
資料:厚労省
岸田さんが、今後6年の経済計画を発表した際GDPの実質成長率を1%以上としていたので、このブログでも,それではちょっと低すぎるのではないですか。
もう少し国民に夢を与えるような数字を政府として出してくれないと、と書きましたが、今回の年金収支試算でも表題に書きました「諸前提」があまりにも、これからの日本経済、国民の努力を過小評価するような数字になっているので、試算結果はともかく、前提条件について、国民が「さて頑張るぞ!」という気になるようなケースも出してほしいと思ってしまいます。
という事で、政府が財政検証のために設定した諸条件の主要部分を表にしてみました。ここでは、総体的な判断基準のベースとして実質経済成長率を持ってきていますが、政府の試算では「全要素生産性」を持ってきています。
労働生産性のベースは人数ですが、全要素生産性というのは定義もいろいろあって、人間のやる気だとか、働きやすい環境とか、経営がうまいまずいとか、政府の政策の良し悪しもいれなければなりません。票の成長率の下2段はマイナスですが、全要素生産性ではプラスになっています。
勘ぐれば政府がいろいろ面倒見たが、労働力の働きがそれに応えなかったと見ているのでしょうか。前提の中で、情けないと思うのは、高成長実現ケースのGDP成長率がわずか1.6%だという事です。
成長型でも1.1%、日本人の勤勉さを持ってしても高成長が1%だというのはいかにも情けないですね。
せめて最低を1%としても成長率で2%ケース、3%ケースぐらいに置かないと、これからの日本経済は円高の時代、アベノミクスの失敗の10年から立ち直って、せめて主要国平均プラスなにがしかの水準の経済成長を達成するという意気込みでものを考える必要があるのではないでしょうか。
物価も経済成長が低ければ低いとなっていますが、これからの世界経済の中では物価は国内事情より国際経済との関係で動くでしょう。
円レートについては何も触れていないようですが、プラザ合意のよう経済外交の失敗はもう起こさないという自信があるのでしょうか。実質賃金については実質経済成長率より高めになっていますが、長期に亘ってそういう事が可能とは考えられません。
日本人は実質経済成長率の示す範囲の中で生活をしているのですから、そしてその中で社会保障費などはシェアが増えていく可性が大きいでしょう。年金についてはマクロ経済スライドがつけられても、医療費などではコロナの場合に見るように、今後もいろいろなことが起きるでしょう。
実質運用利益率については、GPIFの腕が問われているのでしょうが、日本経済の中でGPIFの実質利回りが賃金よりも高いという事は、この利回りは海外で稼ぐという事でしょうか。
国際投機資本と張り合うことは容易ではないような気がします。1%程度の実質経済成長率の中で、出来る事は限られています。
政府担当者はこれで所得代替率50%をクリアなどと国民を安心させようというのかもしれませんが、国民、つまりはGDP,国民所得の中で分け合わなければならないということは解っています。
せめて、国民の頑張りに頼らなければならない日本です。国民に安心を押し売りするより、国民に「頑張ってください。よろしくお願いします」と頼んだほうが真面目な態度ではないかと思うところです。