tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日米のインフレ目標2%と政策金利

2024年03月18日 16時45分27秒 | 経済

今春闘の妥結結果が、昨年より一段と高くなることがほぼ確実にな状況です。「今春闘の結果を見てゼロ金利脱出を検討する」というのは植田日銀総裁ですが、その日銀の政策決定会合が今日と明日です。

明日の午後には、日銀の意向は明らかになるでしょう。さて、10年来のゼロ・マイナス金利という異常状態がどうなるかいよいよ大詰めです。

このブログでは、その予想をする意図は全くありません。考えてみたいと思っていますのは、明日・明後日とアメリカのFRBの同様の会合FOMCが行われ、アメリカでは5.25%~5.50%とインフレ対策で引き上げた金利を下げるかどうかが議論になっているという日米逆の状況がどんな風に進展すれば、お互いに上手く行くのか、日本が下から狙い、アメリカが上から狙うインフレ目標の「2%」というのが適切なのか、といった問題です。

日米が同じインフレ目標というのには当初から違和感を持っていましたが、先ず、両国の実態をベースに考えてみたいと思います。

日米のインフレの実態を少し長期に見たのが下のグラフです。 

    日米インフレ率の長期推移        資料:各国統計                       

1980年、共に石油危機後の安定経済の模索の時期ですが、アメリカは深刻なスタグフレーションからの脱出、日本は第二次石油危機克服の最中でしょうか、日本のインフレはアメリカのほぼ半分、その後も上がり・下がりの動きは似ていますが、日本のインフレ率は圧倒的に低いです。特に、1986年以降は「プラザ合意」による円高で、物価が上げられるはずもなく、僅かにバブルのときの3%程度の上昇だけです(アメリカは5~6%)。

欧米主要国がスタグフレーションを克服し、労働組合は力を失い、世界中が「インフレのない時代に入った」と言われた1990年台後半から2020年までに、日本ではインフレがゼロ・マイナスの年が10回以上ありましたが、アメリカではリーマンショックの翌年1回だけです。2021年原油価格が上がると忽ち6~8%のインフレ(ヨーロッパは10%越え)です。

こうした日米のインフレの歴史を見れば、日米の差は歴然です。

この2国が同じインフレ目標2%を掲げるというのは矢張り無理があるようです。この違いを生む最大の原因は企業経営というものについての考え方、そこから生まれる労使関係の違いでしょう。

問題はその違いを無視して同じ目標を掲げるとどんなことが起こるかです。アメリカが2%に抑え込むと景気の失速が起きる可能性が出て来るのではないでしょか。日本は2%以下のインフレで、健全な安定成長は可能でしょうが、余りそれにこだわると、また「円高にして頂かないと」と言われる恐れが増してくるのではないでしょうか。

金利差の変化は、当然に為替レート調整に繋がり、為替レートの変化は、マネー経済だけでなく実体経済にも大きな影響がありますから、特に日銀にとっては八方に目配りをしなければならない難しい仕事だと思っています。