tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

輸入補助金の効果と経済行動

2024年03月06日 12時16分36秒 | 経済

前回は昨日発表された東京都区部の消費者物価指数の対前年同月比が1月の1.8%から2月は2.5%に上昇したという報道について実態を見ました。

物価の実態は沈静傾向が続いているのですが、政府の補助金などによる物価の下げがあった場合、「対前年同月」という統計の表示では、その分消費者物価は下がりますが、1年経過したところでその分が「上がる」という「計算上の」数字が出るので気を付ける必要があるという事を書きました。

勿論、マスコミではその分の説明はなされていますが、グラフを見ただけといった場合は「物価が上がったのか」と勘違いするので、念のためという事です。

今回は同じ「補助金による政府の負担軽減策についてですが、もう少し本質的な問題を考えてみたいと思います。

原油の輸入価格が高騰してガソリンの価格が上がって大変という事で、レギュラーガソリンが1リッター170円を越えたら元売りに補助金をだし、それ以上上がらないようにするという話を思い出す方は多いと思います。

電気代、ガス代についても昨年2月から政府は電力・ガス会社に補助金を出して電気料金、ガス料金の上昇を抑えるという国民の負担軽減策を取りました。結果、消費者物価は1%弱の下落となり、国民負担は軽減されました。

こうした政府の施策は、「国民に寄り添う」という言葉と共に行われているようですが、財源は結局赤字国債で、国民からの借金、将来の国民負担という事になります。

原油などのエネルギー価格高騰の中で、石油元売り企業が史上最高の利益を出したり、このところガス会社の株が大幅に上昇するといったこともあり、こうした「国民に寄り添う政策」がほんとうに国民のためになっているのか疑問という意見もあるようです。

輸入物価上昇については、何時も指摘していますが、輸入物価の上昇は、国民がみんなで背負うべきものなのです。国民全体が頑張って対応するしかないのです。

特にエネルギー資源といった問題につてはいかに省エネ技術を進めるか、再生可能エネルギーの低コスト化を実現するか、如何に安定した貯蔵法(特に電力)を考えるかといった問題は喫緊の課題なのです。

赤字国債でエネルギーの価格を下げて、それで国民のためになっていると考える政府は本当に「国民のために役割を果している」のでしょうか、それとも当面「ぬるま湯」を提供して、国民の問題意識や日本の技術進歩を遅らせているだけなのでしょうか。

嘗てのオイルショックの時、その後もエネルギー価格の上昇を予測した無資源国日本は徹底した省エネルギーのための技術開発を進め、世界に先駆けてエネルギー係数がマイナス、つまり、経済成長は実現したが、エネルギー消費は減少したという経済状態を作り上げた実績があると記憶しています。

日本経済の復活のためには国民全体のこうした気概と努力が大切なのではないでしょうか。