tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

平均消費性向の長期推移を見る

2024年03月14日 15時17分36秒 | 経済

今春闘の集中回答日が過ぎました。大手企業の殆どが満額回答、満額以上という所まであって、日本の経営者は、可能でさえあれば、出来るだけ従業員の働きに報いたいと考えると言われたかつての日本的経営、日本的労使関係の片鱗が垣間見えたような気がしました。

恐らく今年の最終結果は、これまでの予想をかなり上回ると思いますが、日銀の植田総裁が、「春闘の結果によって(ゼロ金利脱出の金融政策を)判断する」という場合の判断基準である、賃金上昇を伴う2%インフレが見えてくるのではないでしょうか。

主要企業の結果を追いかける中小企業も、公取の「賃上げの価格転嫁の指針」もあり、また労働組合の存在価値の証明を賭けて、久方ぶりに賃上げストの声も聞こえてきます。

分配で対立、生産性向上で協力というあるべき労使関係が健全な形で働き始めることを期待するところです。

ここで考えておかなければならないのが、賃上げの結果を日本経済の健全な成長に確り生かすという問題でしょう。

賃上げで消費が増える、消費が増えれば投資・消費のバランスの取れた経済活動が復活すると考えますが、一つ問題があります。それは「消費性向」という問題です。

このブログでは、総務省の家計調査で毎月調べられている「二人以上勤労者世帯」の「平均消費性向」を追いかけています。

ご承知のように「消費性向」とは可処分所得(手取り収入)の何%を消費支出しているかという数字で、残りは貯蓄ですから、「消費性向+貯蓄性向=100%」となります。

日本の大部分の家庭は二人以上勤労者世帯で、生活の安定を重視しているこの世帯の消費性向の平均が総務省の「家計調査」で調べられているのです。

そして、何故この数字をこのブログがしつこく追っているかの理由は、長期不況の中で、政府の年金不安、老後不安、将来不安などの宣伝が重なって、日本の勤労者家計の平均消費性向は傾向的に落ちて来ているのです。

  二人以上勤労者世帯の平均消費性向の長期推移

        資料:総務省「家計調査」

石油ショック(1973年)前は高度成長時代で、賃金は毎年上る安心感からでしょうか、平均消費性向は80%前後ありました。その後も賃金はバブル崩壊まで上がりましたが、バブル後は殆ど賃上げのない時代になり、年金財政不安、老後不安、少子高齢化、人口減少など、将来不安が政府の政策にも色濃く反映する時代になり。最後の留めはコロナ禍で、この間を通じて「平均消費性向」は傾向的に下がり、家計は金を使わず将来のために貯蓄するという行動が一般化したようです

バブル明けで回復基調ではありますが、65%に達しません。

平均消費性向の2ポイントの上昇でGDPは1ポイント増えます。という事は、消費性向が上がれば賃上げにプラスした経済効果があるという事です。貯蓄に回ってしまえば、賃上げ効果はそれだけ減殺されるという事です。

問題は、消費性向を高めるためには何が必要かですが、過去の推移からみれば、日本の将来は明るいというイメージを国民が持たなければならないのでしょう。

春闘賃上げを如何に明るい日本の将来につなげていくか、労使の頑張りに政府が応えなければならないでしょう。

そこで必要なのは、嘘を言わない政府、信頼できる政府、「当面の自分の保身」ではなく「将来の国民の自信」を創出する清廉且つ毅然たる政治ではないでしょうか。

上のグラフを眺めながら、日本の政治や外交の失敗、倫理的堕落と同じように国民の不安と「消費性向の低下」進んでいるような気がしてなりません。