tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

生産性の低さと労働力不足

2018年08月14日 15時25分05秒 | 労働
生産性の低さと労働力不足
 日本生産性本部の資料によれば、日本の生産性はOECD加盟国36カ国の内で21位だそうです。
 就業者1人当たりのGDPがアメリカの3分の2程度だという計算もありまして、それをそのまま解釈すれば、日本人がアメリカ並みの生産性を上げれば、今の就業人口は3分の2で足り、後は失業という事になります。

 何か日本の生産性はまだまだ低く、先進国として胸を張れないような気もしてくるような数字です。
 日本製品の品質の良さ、サービスきめ細かさ、などなど考えてみますと、どうもこういう数字を鵜呑みにして良いのかという感じもしますが、それはそれとして、最近の人手不足感は些か異常めいた感じもします。

 安倍さんは、有効求人倍率が未曽有の高さだと自讃しますが、この種の統計は業務統計で、統計としての信用は高くありません。人手不足のときは、本当に欲しい人数だけ職安に届けるか、少し水増ししておくかなど、思惑もあるようです。
 
 外国人労働者をもっと入れ易くといった動きもあるようですが、技能実習制度なども、本来、日本の都合よりも、外国の希望にこたえるためのものと考えるのが筋でしょう。
 同時に、もう一つ考えなければならないのは、従業員1人当たりの生産性を上げて少ない人数で済ませるように考えることです。

 ブラック企業などという言葉が一般的になるほど「従業員が嫌がるような仕事のさせ方」の企業が多いようでは、生産性など上がるはずはありません。
 人事管理、人間関係論、行動科学など、人間と仕事の問題は歴史的にも最重要な研究の分野ですが、最近の企業ではこうした問題よりも、先ず頭数をそろえることの方が大事と思われているようです。

 もともと仕事の現場でいかに効率を上げるという問題は日本企業の得意技でしたが、それには、部下に仕事をさせる上司が「人を動かす」要諦を理解していなければなりません。
 それにはOJT、Off-JTを組み合わせた従業員の教育訓練が必須で、特に管理監督職の訓練は「鍵」です。

 しかし統計で見ますと、 企業の教育訓練費は絞りに絞られ、最近の収益向上の中でも減っているようです。

 多くの企業が、頭数だけに狂奔しているといった状況が、統計上も見えているような気がします。



 この図で見ますとリーマンショックを境に、実質経済成長率と就業者の関係が変わってきているように見えます。経済成長率(青)が就業者増加率を上回った分が生産性向上です。リーマンショック後は青線と赤線が交錯しています。

 忙しければ人を増やせばいい(それも非正規で)という思考方法が、垣間見えるようなグラフです。
 従業員に良い仕事の仕方を教え、ひいては自己啓発につなげるよう育成し、それを後輩や部下が伝承し、効率良く楽しんで仕事をするような職場を作り上げるというのが日本企業の伝統だったような気がするのですが。日本企業も変わってしまったのでしょうか。
 改めて、統計からはいろいろな事が見えてくるような気がします。