tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

平成という時代:リーマンショックの前と後、3

2018年08月01日 15時32分39秒 | 経済
平成という時代:リーマンショックの前と後、3
 円レートが$1=¥120に戻ったのですから、日本経済の国際環境としては、リーマンショック前に戻ったことになりますが、その後の日本経済の展開は何か「いまひとつ」といった感じです。

 企業も消費者も、経営者も労働組合も、どういうわけか積極さを欠いているように思われます。
 最大の問題は、景気回復が言われ、企業収益が改善しても、企業は相変わらず非正規従業員を多用し、正規化もなかなか進みません。
 労働組合も春闘の賃上げ要求の引き上げには慎重で、代わって政府が無責任な賃上げ奨励をするといったおかしな状態です。

 それでも賃金はじりじりとは上がっているのですが、消費者(家計)は財布の紐を締めたままで、消費性向は下がりっ放しで、この消費不振が経済活性化の足枷になっています。
 日銀が2年で達成できるといったインフレ目標は、 5年たっても1%に届かない状態(生鮮食品とエネルギーを除く総合指数)です。企業も家計も、現在の好況に対して何か本気で信用していないように思われます。

 この状況と「いざなぎ越え」の時の状況とを、具体的な例で比較してみますと、企業や家計の意識が何か違うような気がしています。
 「いざなぎ越え」の時は、景気認識としては、まだまだ不況という感じが強かったのですが、企業も家計も、「これから不況を克服して前進するぞ」という気持ちが強かったように感じられます。

 例えば、春闘賃上げ率は2003年から2008年まで1.63%から1.99%までコンスタントに上昇を続けていますし、 企業の教育訓練費の支出を見ますと明らかに支出増が見られます。
 これに対して2013年以降の景気回復の中では、13年の1.8&%から14年、15年と2.19%、2.38%と上げましたが、その後は17年の2.11%へ下げて来ています。
 企業の教育訓練費は、企業収益好調にも拘らず減少傾向のようです。

 一方、家計の方を見ますとリーマンショック前、 平均消費性向に上昇の動きがみられましたが、今回の景気回復過程では逆に低下がみられ、消費不振が経済にブレーキをかけている状態です。

 実は、こうした違いがどこから来るのかがずっと気にかかっていました。簡潔な表現で言えば、
 「いざなぎ越え」のときは、景気回復の実感はないといわれましたが、経済主体である企業や家計は経済の微妙な好転にまともに反応していました。
しかし、今回の景気回復過程では景気の回復は急激で、好況の実感は強いのですが、企業や家計は何か好調の経済を信頼せず、疑心暗鬼で「何か起きたら」と将来への不安に備えることに執心するという状態ではないでしょうか。

 さらに言えば、いわゆる日本的経営についても、「いざなぎ越え」のとき迄は「優れた経営手法」という意識が一般的でしたが、現状は「日本的経営は失敗だった、欧米流を学べ」といった感じでしょうか。
 「働き方改革」自体が、明確に欧米流が優れているという意識で出来ています。この変化はかなり激しいように感じられるのです。(以下次回)