tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

資本蓄積と経済発展:2つの道筋(3)

2018年08月26日 11時21分26秒 | 経済
資本蓄積と経済発展:2つの道筋(3)
 前回、資本蓄積が進むと、その蓄積した資本をさらに増やすために何を考えるかという点で、現在の世の中には大きく2つの道があるという事を見て来ました。

 この2つの道筋は、端的に言ってしまえば、
① その資本を使って生産(GDP=付加価値)を増やし、社会を豊かで快適なものにする中で、そこから分け前をもらうという道筋、正常な投資活動
② その資本を使って金融取引(マネーゲーム)をやり、手間のかかる生産活動などは省略して直接カネでカネを稼ぐという道筋、ギャンブル化した経済活動、投機の世界
の2つに分かれます。
 
そして問題は、前回も書きましたように、どちらで稼いでも、「懐に入れば同じカネ」という事で、しかも、資金量が多く腕が良ければ、往々にして投機の方が儲けが大きいことです。
 
 というわけで世界で最もお金持ちのアメリカがマネーゲームを正式な経済活動とするために、多様なシステムのいわゆる「デファクト・スタンダード」を作り、金融工学を発展させて、世界のカネを集めようとしたわけです。

 結果、何が起きるのでしょうか。アメリカの産業資本主義は次第にマネー資本主義が主流になり、実体経済は衰弱して、競争力を失くしてしまいました。
マネーゲームで世界中からカネを集めて何とか資金繰りをつける「経常収支万年赤字国」となったのです。

トランプ大統領支持で有名になった「ラストベルト(錆びついた産業地帯)」がその象徴で、かつて世界に君臨したアメリカの鉄鋼産業も自動車産業も競争力を失くし、今やアメリカは農業国、産油国で、競争力のない部分は日本のトヨタやホンダを招き入れて補ったり、その上、力ずくの関税戦争を仕掛けたり、マーケット価格の無い兵器(日本では防衛装備品、オスプレイやイージス・アショアなど)を押し売りして稼いだりという惨状です。

 このことは「 金融資本主義の行方」で紹介した童話が解り易い説明をしてくれています。

 ところで日本は、今日では珍しく、 おカネの出自を識別する文化を持った国なのです。
投機やギャンブルで稼いだカネは「あぶく銭」「浮利」「悪銭」などと言い「悪銭身に付かず」などと言います。

 一方まともな生産活動で稼いだカネは「額に汗したカネ」と呼び、由緒正しい立派な金だと認識するのです。

 リーマンショックで「マネー資本主義」が批判され、実体経済を発展させる 健全な産業活動への投資への回帰が言われました(当時NHKの特集番組は大きな反響を呼びました)が、アベノミクスになってから、年金資金を株で運用していくら儲けたとか( GPIFの活動)や、国会で 強行採決 をし、ギャンブル依存症対策付きのカジノ誘致に熱を上げるなど、まともな日本人としては考えられないようなことが多くなっているので、ついついこんなことを書いてしまったというのが本音です。