tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

大卒就活ルール:大問題の日本、問題にならない欧米

2016年09月13日 11時25分24秒 | 就活
大卒就活ルール:大問題の日本、問題にならない欧米
 経団連が来年度の大学卒の就職活動日程について、今年と同じにすると正式発表したことで、就活ルール問題をマスコミも取り上げてります。

 この問題は、古くは文部省・労働省が大学団体、日経連と話し合い就職選考に関するルール、いわゆる 就職協定を決めてから、好不況を繰り返す環境変化の中で、期日の問題や順守体制の問題などで多くの点で紆余曲折を経て、協定が倫理憲章になったり現経団連の就活ルールになったりしてきたものです。

 欧米の人が聞いたら多分不思議がるようなこの問題が、日本では数十年にわたり、全国の大学と経済界の大問題で、マスコミを賑わし、政府も介入するような社会的な関心事になるのはなぜでしょうか。

 直接的に言えば、学生は3月に卒業したら4月1日から会社に出勤するのがベストな状態と考えていますし、企業は出来るだけフレッシュで優れた人材を毎年欲しいと思っていますし、大学は卒業したが就職できないようでは学生募集に影響すると考えますし、政府も学卒の就職率が悪いと選挙の得票率に関わると思うからでしょう。

 しかし、その根幹にあるのは、企業が人を採用するときの「考え方」という事になるのではないでしょうか。

 欧米のように、採用は、欠員が出来たとき、あるいは業務を拡張するとき、その仕事のできる人材を、その都度採用するというのであれば、6月解禁、8月解禁などと日にちを決める必要は全くありません。

 つまり、就活ルール問題発生の原因は、「企業の4月1日、新卒一括採用」という採用方針にあるのです。
 「うちは通年採用をやっています」という大企業もあります。しかし、その企業も当然「新卒一括採用」をやっています。

 これまでも書いてきていますが、この問題は「企業とは何か」という認識における、それぞれの社会の文化的背景によるということが出来るでしょう。

 端的に言えば、欧米では企業は職務の集合体です。そしてそれぞれの職務に適切な人間を当てはめて企業目的を遂行するという文化です。
 これに対して、 日本の場合は、企業というのは「人間集団」で、その人間が職務を分担し企業目的を遂行するという文化です。

 最も解り易く言えば、欧米方式の採用は日本でもあります。それはパート、アルバイト、派遣などの非正規従業員の採用です。先に職務があって、賃金は職務給で決まっていて、その職務をする人がいないからその職務が出来る人を採るのです。欧米では、極端に言えば社長までこの方式です。

 これなら、就活ルールは必要ありません。しかし日本では、就活ルールが、政府、大学、学生、財界、もちろん個別企業を巻き込む大問題です。
 この様子を見ると、やっぱり「 日本的経営」「日本的職業観」といったものの「根」、「人間中心の経営」は日本人の心の中にきちんと受け入れられているのだなと考えざるを得ません。

 安倍政権の掲げる「働き方改革」「同一労働・同一賃金」なども、こうした基本的なものとの整合性を考えないと決してうまく行かないだろうと思っています。