司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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株主総会から取締役会への権限の委任

2010-09-27 12:35:03 | 会社法(改正商法等)
 株主総会から取締役会への権限の委任はどこまで許されるか?

 (株主総会の権限)
第295条 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
3 この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。


 会社法第295条第2項及び第3項の規定によれば,会社法が株主総会の専権事項と定めたものについては,取締役会に委任できないが,定款の定めにより株主総会の権限としているものについては,取締役会に委任することができる。

 そして,会社法が株主総会の専権事項と定めたものについて,取締役会にまったく委任できないかというと,会社法の立案担当者は,「株主総会が決議をした上で,その決議の効力の発生を他の機関や第三者の承認にかからしめることまでを否定するものではない」との見解を示している(相澤哲編著「立案担当者による新・会社法の解説」(商事法務)77頁)。

 また,会社法第361条における取締役の報酬等の決定に関して,条文上,定款の定め又は株主総会の決議を要するとされているが,株主総会が総額又は上限額を定めれば,具体的支給額については取締役会に一任することができるというのは,判例及び実務慣行として定着したものである。

 要は,当該委任が,権限の委譲といえる程度か否か,あるいは,権限を保持したままで,細目の決定のみを委ねたものといえるか否か,ということであろう。

 コメント欄でご質問を受けた「例えば定款変更など,追加する予定の目的を株主総会で決めて,その中から一年以内に取締役会で選択した事業目的のみ定款に反映されるなどは可能か」については,定款変更の内容の決定を委ねるものであり,権限の委譲といえるであろうから,不可と考える。

 実務的には,新株予約権の問題等,柔軟な対応が望まれる場面も多いが,基本的な考え方としては,上記のとおりであろう。
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