司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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取締役の任期が1年の株式会社における任期短縮規定の必要性

2012-07-30 11:21:04 | 会社法(改正商法等)
 会社法第459条第1項では,剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めを置くことができるための条件として,「取締役の任期の末日が選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの」を除外していることから,当該定款の定めをおく場合には,「取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」と定款で定めるのが通例である。

 また,委員会設置会社にあっては,会社法第332条第3項の規定により,原則が「取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」ものとされている。

 このような株式会社においても,増員又は補欠として選任された取締役についての任期の短縮規定が必要であると思われるが,例えば,全株懇モデルが「実務上不要と考えられるので削除」したことから,設けていない例が多いようである。確かに,上場企業においては,決算期後,定時株主総会までの間に,敢えて臨時株主総会を開催して,増員又は補欠として取締役を選任することは極めて稀であり,補欠として選任する必要がある場合には,「一時取締役の職務を行うべき者」(会社法第346条第2項)の選任申立てをするであろうから,「実務上不要と考えられる」と言えなくもない。

 ところで,委員会設置会社の執行役の任期は,原則として「執行役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結後最初に招集される取締役会の終結の時までとする」(会社法第402条第7項)とされている。選任機関である取締役会の構成メンバーである取締役の任期と平仄をとるためである。

 執行役は,選任機関が取締役会であることから,取締役の場合と異なり,決算期後,定時株主総会までの間に,増員又は補欠として選任することに特段の障害はない。そして,上述のとおり,選任機関である取締役会の構成メンバーである取締役が交替する際には,執行役全員が改選されるべきなのであるから,定款によって、増員又は補欠として選任された執行役についての任期の短縮規定(会社法第402条第7項ただし書)を設けることは,十分合理性があり,立法趣旨にも適うものである。

 しかし,委員会設置会社の中には,取締役の任期に関して,増員又は補欠として選任された取締役についての任期の短縮規定を設けていないことから,これと同様に,増員又は補欠として選任された執行役についての任期の短縮規定を設けていない例が散見されるようである。このような会社において,決算期後,定時株主総会までの間に,増員又は補欠としての執行役が選任されたときは,当該執行役は,取締役の任期満了と同時期に任期満了とならない(任期満了は,1年後。)ことになってしまう。

 もとより,決算期後,定時株主総会までの間に,増員又は補欠としての執行役を選任することがなければ,何の問題もないとも言えるが,「実務上の必要性」の観点からは,任期短縮規定を設けておくに越したことはないであろう。
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