司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

会社法判例(2)~見せ金による払込み

2015-01-30 14:00:26 | 会社法(改正商法等)
最高裁昭和38年12月6日第2小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53696

【判示事項】
いわゆる見せ金による株式払込の効力。
【裁判要旨】
当初から真実の株式払込として会社資金を確保する意図なく、一時的借入金を以て単に払込の外形を整え、株式会社成立の手続後直ちに右払込金を払い戻してこれを借入先に返済した場合は、有効な株式払込がなされたものとはいえない。

 どうでしょうね。「見せ金」にせよ,「預合い」にせよ,払込みを有効と認めた上で,株式会社から「発起人であった者」に対して貸付けがされ,「発起人であった者」が当初の借入先に返済をした,という法律構成を採る方が実情に沿うように思うのだが。

 平成26年改正会社法により,払込み等の仮装に関する規律の見直しがされ,発起人の支払義務(第52条の2第1項),設立時取締役の支払義務(同条第2項本文)が定められたほか,発起人は,支払義務を履行した後でなければ,株主としての権利を行使することができない(同条第4項)とされた。

 改正法によれば,設立自体は,一応有効とした上で,払込みを仮装した発起人の支払義務を引き続き認めることとし,支払がされるまでは,株主としての権利を行使することができない,と整理されている。

 しかし,上記のとおり,払込みを有効とした上で,「発起人であった者」は,株式会社に対して借入金を返済すべき債務を負い,取締役は,その返済が不能の場合には任務懈怠責任(第423条第1項)を負う,という整理をする方が実体に合致する場合が多いように思われる。

 また,新会社法第52条の2第4項の規定は,同法第36条第3項との兼合いで,多分に矛盾のあるところである。

 立案担当者の解説においては,「出資の履行が仮装された場合の出資の効力については・・・引き続き解釈論に委ねられる」(旬刊商事法務2014年9月25日号「平成26年改正会社法の解説〔Ⅳ〕」10頁)とされており,学界においても意見は分かれているようである。

 平成17年改正前商法下と異なり,会社法においては,発起設立の場合には,登記申請書の添付書面として払込金融機関の払込金保管証明書が不要であり,通帳のコピーで足りるため,他の目的で口座に振り込まれた金員に関して「払込みがあった」と詐術を用いて設立の登記を申請することができてしまうという現状にあるが,無効とすべきは,そのように払込みが不存在である場合に限定されるべきではないだろうか。
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