司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

規制改革の動き「会社法の改正」

2024-06-04 18:34:50 | 会社法(改正商法等)
第19回規制改革推進会議
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/240531/agenda.html

 規制改革会議が最終答申をまとめている。

※ 99頁
(3)海外活力の取り込み・内外人材活用
(ⅰ) 株式報酬の発行環境を改善する会社法制・金融商品取引法制の見直し
【ア:引き続き検討し、令和6年度中に法制審議会への諮問等を行い、速やかに結論を得て措置、
イ:(a①~③)引き続き検討し、令和6年度上期中に結論を得て速やかに措置、
(a④・b)措置済み、
ウ:措置済み】

<基本的考え方>
 株式報酬は、業績等と連動して報酬額が増減する、ストックオプションと異なり株式そのものを付与するため株価が下がっても上昇するまで保有していれば恩恵を受けることができるなどの特徴を有することから、働き手にとっては働きがいのインセンティブとなり、また、企業にとっては人材確保及び中長期的な企業価値向上の有用な手段となるものであり、我が国企業において導入ニーズが高まっている。
 他方で、会社法制及び金融商品取引法制の規制によって企業はストックオプションを含む株式報酬を発行しにくいとの指摘がある。そこで、企業が優秀な人材を確保しやすくなるよう、以下の措置を講ずるべきである。

<実施事項>
ア 従業員等に対する株式報酬の無償交付を可能とする会社法の見直し
 法務省は、会社法上、株式そのものを付与する株式報酬の無償交付は上場会社の取締役又は執行役の場合のみに限られ、従業員又は子会社役職員(以下「従業員等」という。)には無償交付することが許されない現行法制について、企業が優秀な人材を円滑に確保しやすくする観点から、従業員等に対する無償交付が可能となるよう、会社法の改正を検討し、法制審議会への諮問等を行い、結論を得次第、法案を国会に提出する。
 なお、株式報酬の無償交付に当たっての既存株主への配慮については、自身への報酬について不当に有利な額とするおそれがある役員報酬と異なり、従業員報酬は経営判断の範疇と整理し得るとの意見等を踏まえ、株主総会決議を不要とすることも含め検討する。

イ 株式報酬の発行円滑化に向けた金融商品取引法制の見直し
a 金融庁は、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)上、企業が1億円以上の有価証券を発行する際にも有価証券届出書の提出を不要とする特例制度(金融商品取引法施行令(昭和40年政令第321号)第2条の12。以下「特例」という。)に関し、コーポレートガバナンス強化及び人材確保に資するよう、その活用範囲拡大、利便性向上によって株式報酬の発行を円滑化するため、以下を内容とする同施行令の改正等を検討し、結論を得次第、必要な措置を行う。
① 特例の活用が可能となる株式報酬について、現行の譲渡制限付株式(RS)、ストックオプションに加え、これらと同等の経済的意義がある譲渡制限付株式ユニット(RSU)、パフォーマンスシェアユニット(PSU)、信託型株式報酬、従業員株式所有制度といった株式報酬類型を新設する。
② 特例の活用が可能となる付与対象者の範囲について、現行、発行企業と発行企業の完全子会社の役職員に限定されているところ、戦略的な企業経営の実態も考慮し、完全子会社ではない子会社の役職員にも拡張する。
③ RSに関し、特例の活用が可能となる、交付を受けることとなる日の属する事業年度経過後3月(外国会社にあっては6月)を超える期間(以下「所定期間」という。)譲渡が禁止される旨の制限という要件について、所定期間の合理性の有無を検証し見直しを行う。
④ RSに関し、交付対象者の死亡等によって譲渡制限が解除されるものであっても、特例の要件を充足することの明確化を検討し、結論を得次第、「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正を行う。

b 金融庁は、企業が、在任者・在職者に対して、報酬目的の株式を第三者割当の方法で発行する場合、有価証券届出書等の開示書類の「第三者割当の場合の特記事項」に、氏名、住所、現在の職業及び個人氏名に紐付けた株式保有数等のプライバシー情報の記載は不要である一方、退任者・退職者の場合、記載が必要(企業内容等の開示に関する内閣府令(昭和48年大蔵省令第5号)第19条第2項第1号ヲ)とされていることについて、退任者・退職者も、在任者・在職者の場合と同様、プライバシー情報の開示を不要とするため、同内閣府令の改正等を検討し、結論を得次第、必要な措置を行う。

ウ ストックオプションプールの実現に向けた産業競争力強化法の見直し
 経済産業省は、スタートアップが優秀な人材を確保しやすくする観点から、ストックオプションを柔軟かつ機動的に発行可能な環境を整備するため、会社法の特例として、以下を内容とする産業競争力強化法の改正案を国会に提出する。
① 権利行使価額や権利行使期間の決定を株主総会から取締役会へ委任できることとする。
② 株主総会から取締役会への委任の有効期限(現行1年)を撤廃する。



※ 103頁
(4)スタートアップの資金調達
(ⅰ) 非上場株式の発行・流通の活性化
【アa,エ:令和6年検討開始、令和7年度措置、
アb~d,イa~d,ウ:令和6年度検討、結論を得次第速やかに措置】

<基本的考え方>
 我が国のスタートアップ等の企業について、ユニコーンやグローバル企業への成長促進や、地域経済再生への貢献等の観点から、適切な投資家保護を確保しつつ、非上場企業についても非上場株式の発行及び流通を活性化することを通じて、円滑な資金調達の途を確保する必要がある。
 以上の考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。

<実施事項>
ア 発行市場(公募)の活性化
a  金融庁は、事業者が株式による資金調達を行う際に過大な手続コストが掛かるという指摘があることを踏まえ、b,cにおける募集の在り方について検討を行うに当たっては、事業者負担に関する実態調査を行い、コストを分析し、公表する。

b 金融庁は、現行の有価証券届出書の届出免除基準について、スタートアップの具体的な資金ニーズ、投資家保護や事業者負担の実態等を踏まえつつ、基準の引上げを含め制度の在り方について検討し、結論を得る。

c 金融庁は、現行の金融商品取引法第5号第2項に基づく少額募集について、金融庁が現在検討している開示の簡素化を早期に実施するとともに、例えば、少額募集の上限を20億円程度まで引き上げ、1億円から5億円未満、5億円から10億円未満、10億円から20億円未満の金額帯で開示を簡素化する案等、投資家保護の要請に応えつつ、段階的かつ合理的な開示制度となるよう見直しを検討し、結論を得る。

d 金融庁は、株式投資型クラウドファンディング(以下「ECF」という。)について、発行者と投資家との間にファンドを介在させることで株主の一元化を図る、いわゆるシンジケート型の仕組みを採りやすくすることを可能とし、もって、スタートアップ等における資金調達を円滑にする観点から、ECF事業者が顧客やマーケットのニーズに合わせて想定しているビジネスモデルに鑑み、単一株式での運用や投資運用に関する判断が限定的である等の特徴があることを勘案して、この場合に必要な人的構成等に係る登録審査の在り方がどういうものかや、投資運用業の例外的な取扱いをすることがあり得るかを含め、投資家保護の視点に配慮しつつ、ECF事業者が利用しやすい制度となるよう検討し、結論を得る。あわせて、クラウドファンディングに係る自主規制が全体として整合性が確保されるよう検討する。

イ 発行市場(私募)の活性化
a 金融庁は、日本証券業協会と連携し、非上場株式市場を活性化させる観点から、日本証券業協会が定める非上場株式の取扱いに係る自主規制について、発行企業の資金調達の効率化と情報開示を通じた投資家保護の強化に留意しつつ、証券会社による非上場株式の勧誘の在り方を検討し、結論を得る。
 その際、金融庁は、日本証券業協会と連携し、事業者等と議論する場を設け、新たな視点を持った構成員を入れて議論する。議論の際には、参加者の同意が得られる場合には、その議事の公開や議事録を公表するなど透明性の確保に留意する。

b 金融庁は、スタートアップ等が株式による資金調達をしやすくする観点から、投資家保護のための規制が事業者の情報発信や勧誘活動を過大に制約していないか等を検証し、スタートアップの具体的な資金ニーズ、投資家保護や事業者負担の実態等を踏まえつつ、例えば、特定投資家私募時に広範囲に情報提供を認める案や、少人数私募における人数要件(49名以下)の緩和や人数計算を勧誘者基準から取得者基準に変更する案等、広く私募の在り方について検討し、結論を得る。

c 金融庁は、インターネット利用、ピッチイベント等具体的な場面における少人数私募制度に関する考え方を明確化し、少人数私募制度の活用の仕方について改めて整理する。

d 金融庁は、スタートアップ・エコシステムを進化させる観点から、IPОやМ&Aでエグジットした起業家等について、スタートアップに関する実体験に基づく知見を有するとともに一定の資産を保有しているかどうか等を勘案した上で、投資家保護に留意しつつ、特定投資家の要件のうちの「特定の知識経験を有する者」を活用できることを周知することや、その対象範囲の拡大を含めて検討することを通じて、特定投資家の裾野拡大に向けた取組を行う。



※ 107頁
イ 株式対価M&Aの活性化に向けた会社法の見直し
【令和6年度検討、同年度中に法制審議会への諮問等を行い、速やかに結論を得て措置】

<基本的考え方>
 M&Aにおける対価として、現金ではなく、買収者の株式も利用することで、スタートアップ等が買収者として、その成長力を担保にして、手元の現金に依存するよりも効率的に大規模な事業再編を行うことが可能となる。また、逆に、スタートアップ等が他社に買収された後も株式の保有を通じて当該他社の経営に参画するといったシナジーが期待できるなど、スタートアップのエグジットを多様化できる可能性がある。
 他方で、現行の会社法に規定された株式対価M&Aの一類型である株式交付は、外国会社を買収する場合には活用できないなど活用範囲が狭い、手続負担が過剰となっている点で使い勝手が悪いといった指摘があり、制度を見直す必要がある。このため、以下の措置を講ずるべきである。

<実施事項>
 法務省は、株式交付について活用範囲拡大、手続の簡素化を通じてスタートアップ等による活用を促進する以下の内容等の株式対価M&Aの活性化に向けた会社法の改正を検討し、法制審議会への諮問等を行い、結論を得次第、法案を国会に提出する。
① 買収会社が上場会社である場合、当該上場会社の株式流通市場における株式売却の機会が担保されていることを踏まえ、当該買収会社の反対株主の買収会社に対する株式買取請求権を撤廃する。
② 現行法上、株式交付は、制度利用可否を一律に判断する観点から、国内株式会社を買収する場合のみに利用が認められているところ、スタートアップ等の積極的な海外展開ニーズが高まっていることを踏まえ、外国会社を買収する場合にも利用可能とする。
③ 現行法上、株式交付は、一度の制度利用で買収会社が買収対象会社を子会社化する場合のみに利用が認められているところ、既に子会社である株式会社の株式を追加取得する場合や連結子会社化する場合にも利用可能とする。
④ 現行法上、株式交付は、買収対価が株式のみである場合には買収会社において債権者保護手続が不要となっているところ、株式と現金を組み合わせた混合対価の場合にも、必ずしも過大な財産流出が生じないことを踏まえ、同手続を撤廃する。
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