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司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

債権法の改正と会社法への影響

2014-08-15 15:08:51 | 会社法(改正商法等)
 「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案の第二次案」によれば,商法第514条が削除され,法定利率は,3%(ただし,変動制)に一本化される見込みである。

 すると,現行会社法第119条第4項,第172条第2項(改正後は,同条第4項),改正後会社法第179条の8第2項,第182条の5第4項の各規定(裁判所の決定した価格に対する取得日後の年6%の利率により算定した利息をも支払わなければならない)についても,整備法によって改正されることになるのであろう。

 何やら,わかりづらいですね。

【要綱仮案の第2次案】
第9 法定利率
1 変動制による法定利率
 民法第404条の規律を次のように改めるものとする。
(1)利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、当該利息が生じた最初の時点における法定利率による。
(2)法定利率は、3%とする。
(3)(2)にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年ごとに、3年を一期として(4)の規定により変更される。
(4)各期の法定利率は、この(4)により法定利率に変更があった期のうち直近のもの(当該変更がない場合にあっては、改正法の施行時の期。以下この(4)において「直近変更期」という。)の基準割合と当期の基準割合との差に相当する割合(当該割合に1%未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変更期の法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
(5)(4)の基準割合とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の[6年前の年の5月から前年の4月まで]の各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(当該割合に0.1%未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示する割合をいう。
(注)この改正に伴い、商法第514条を削除するものとする。
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監査等委員である取締役の兼任禁止

2014-08-15 14:24:02 | 会社法(改正商法等)
改正会社法
第331条第3項 監査等委員である取締役は,監査等委員会設置会社若しくはその子会社の業務執行取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは,その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。

 したがって,監査等委員である取締役についても,兼任禁止に触れる者が監査役に選任された場合と同様の問題が生ずる。

 江頭「株式会社法(第6版)」にも言及はないが,同書の監査役の兼任禁止に関する解説(513頁)を参考にすると,次のとおりである。

 兼任禁止に触れる者が監査等委員である取締役に選任された場合には,従前の地位を辞任して監査等委員である取締役に就任したとみなされ,同人が事実上従前の地位を継続したとしても,監査等委員である取締役の任務懈怠となるに過ぎない(最判平成元年9月19日判時第1354号149頁)。ただし,ある者が監査等委員である取締役を務めるA社が同人が業務執行取締役等であるB社を子会社にした等,監査等委員である取締役が後発的に兼任禁止に触れる地位に就いたときは,B社の取締役を辞任せずにした監査等は,無効であると解される。

cf. 最高裁平成元年9月19日第3小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62368

 改正会社法第331条第3項の「業務執行取締役」は,同法第2条第15号イにあるとおり,「株式会社の第363条第1項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役」をいうから,監査等委員である取締役の行為が「業務を執行した」に該当して,後発的に「業務執行取締役」に該当し,兼任禁止に触れてしまうことも可能性としてはあり得る。

 このような場合,法令又は定款に定める監査等委員である取締役の員数又はそのうちの社外取締役の過半数要件を満たさずになされた監査等は,資格要件を欠く者によりなされたという手続的瑕疵を帯びる(上掲江頭515頁参照)ことから無効,ということになろうか。

【追記】
 「社外取締役」は,あくまで取締役であって,そのうち「社外性」の要件を満たすものに過ぎないから,「業務を執行した」に該当しても,「社外性」を喪失するだけで,取締役の地位には影響しない。

 「監査等委員である取締役」は,そもそも業務を執行することがあり得ないものである。したがって,上記の「業務を執行した」云々は,基本的にはあり得ない話であろう。「監査等委員である取締役」は,「社外性」を喪失するだけでは,その地位に影響はないが,兼任禁止に触れた場合には,退任事由にはならないまでも,その状態が解消されない限り,その職務を行うことができない。
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「社外取締役及び社外監査役の要件に関する経過措置」(2)

2014-08-15 11:49:14 | 会社法(改正商法等)
 旬刊商事法務2014年8月5・15日合併号から,「平成26年改正会社法の解説」の連載が始まった。

 また,同号には,「座談会 改正会社法の意義の今後の課題(上)」も掲載されている。

 さて,座談会記事中,社外取締役の要件に関して,「施行時に社外監査役はいるけれども社外取締役を置いていない会社が,施行後新たに社外取締役を選任する場合には,旧要件ではなく,改正後の要件を満たした社外取締役を選任する必要がある」(坂本参事官)と述べられている。

 この点は,以前の記事のとおりである。

「監査役会設置会社等で,社外監査役は置いているが,社外取締役は置いていない株式会社も相当数あると思われるが,このような株式会社にあっては,取締役の「社外性」については,施行日後,直ちに新法の基準が適用され,監査役の「社外性」については,平成28年6月総会までは「なお従前の例による」ということになる。」

cf. 平成26年7月24日付け「改正会社法における「社外取締役及び社外監査役の要件に関する経過措置」」

 葉玉さんの解説では,取締役の「社外性」と監査役の「社外性」についても混在させない(したがって,上記の場合,取締役の「社外性」についても,監査役と同様に旧法基準。)のではないか,と述べられていたそうであるが,落着であろうか。
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