Altered Notes

Something New.

超高齢社会に想う

2019-02-09 18:50:00 | 社会・政治
現代日本に於いて65歳以上の高齢者が人口に占める割合は平成元年には12%だったのだが、平成30年には28%に達しており、日本は既に「超高齢社会」に突入していると言える。

こうなると一種の弱者である高齢者が心穏やかに晩年の毎日を過ごすことができる事が大切になってくる筈だが、実際には逆の状況が起きていて、高齢者が穏やかに生活できないばかりか、高齢者があたかも社会のお荷物になっているように思わせる社会になっている一面もあるのだ。

そのような空気を読み取った高齢者が

「私なんかが長生きしてごめんよ。私のせいであなた方に負担をかけているよね」

と、現役世代に対して謝罪をしなければならない気持ちにさせるような社会、それが現代日本なのである。

もちろんこれは根本的におかしなことである。
高齢者にはこんな惨めな気持ちにならなければいけない筋合いはない。

本来は、人間が一生懸命生きてきたその最後に幸せな晩年を過ごせないことが社会現象となっている…それが問題なのに、高齢者が生き続けていること自体が社会問題となっているかのように(高齢者に)思わせてしまう事がおかしいのだ。そして現役世代からも政府(国家)からも働けない高齢者はさっさと死ね、と言われているかのような風潮がこの国には確かに感じられる。

この背景には社会の無理解と認識不足、そして想像力の欠如がある。

現役世代からは年金保険料等の福祉分の負担がきつくなっていることで高齢世代に対する恨みの感情が存在している。また、政府の立場では人口減(税収減)の社会において「生涯現役」をスローガンに死ぬまで働き続けることを推奨し、従って年金の支払い開始を少しでも遅くして支払額も僅少にする方向に動いている。それら全体が高齢者に対して「おまえらはお荷物だ」という冷たいメッセージにもなっているのだし、高齢者の世界に重く苦しい空気をもたらす元凶となっているのだ。

ついでに書くと、東京大学の伊藤元重教授(経済学)は政府に対して「死亡消費税」を提言している。これはなかなかお金を使わない(普段の生活で消費税を支払う機会があまりない)高齢者に対して、死んだら税金をたっぷり払わせる(*1)、という悪魔のような税制案である。そもそも死ぬ時にまで消費税を支払わせるという発想は飛躍が凄まじい。立案者の心がとても冷たく人間の心を持っていない事の証左と言えよう。これはとんでもなく非人間的な発想である。こうした悪魔のようなプランの存在はこの国の高齢者福祉が暗い影に覆われている実態をより強烈に感じさせるものである。

お金といえば、国民は介護保険の保険料は必ず負担せねばならないが、介護保険サービスを実際に利用するにはさらに(サービス毎の)利用料を払わなければならない。これが決して安くはない金額であり、これが払えなくて介護サービスが利用できない高齢者も少なくない。保険料だけは我々からしっかり徴収しておきながらサービスの利用に大きな負担(高いハードル)を強いるのは弱者切り捨てであり、やはりこの国の姿勢(高齢者は早く死ね)をそこに見出さざるを得ない。


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(*1)
「死亡時の遺産に消費税的な税金をかける」という発想。しかし、そもそも消費税の納税対象者は事業者であり消費者個人ではないのでこのプランは根本からおかしいと言わざるを得ない。要するに何が何でも税金をぶん取ってやるという卑しい精神が透けて見える嫌らしい発想なのである。