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Something New.

日産 カルロス・ゴーン逮捕の背景にあるもの

2018-11-21 22:37:30 | 国際
2018年11月19日に日産自動車のカルロス・ゴーン会長が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕されたが、なぜ今突然にこのような動きが生じたのか、について国際政治学者の藤井厳喜氏が解説しており、重要な情報と示唆が含まれることから、ここに抄録という形で掲載させていただくことにする。


1.ゴーン会長の犯罪行為が明らかになった背景

米国のFATCA(ファトカ)という法律(*1)があり、一つはこれに基づいて各国と税務情報の交換をやっている、ということがある。もう一つはOECDの枠内で各国が脱税防止の目的で情報交換をしていることがあり、これらの仕組みが役立ったのではないか、と思われる。


2.影の主役はアメリカ・トランプ政権か

今回の動きは日産のクーデターではないか、とか様々な裏事情が噂されているが、実はアメリカに依る謀略ではないか、という推測が可能である。

日産自動車は今年の2月に中国の東風汽車集団にEV開発の目的で1兆円の投資をすると発表している。そして中国市場に入れ込んで2022年までに40車種以上を投入する予定らしい。一方、中国共産党はEVに肩入れしてEV分野で世界のイニシアチブを取ろうと画策している。それに一挙に乗っていこうとするのが日産の動きである。それで生産する自動車全体の1割をEVにする、などとゴーン会長は10月にも発表している。こういうことに対してアメリカが大きく反発したのではないか、と思われる。

現在、中国で売れている車はフォルクスワーゲンが一番で、二番目が現地で生産しているGMである。従ってある意味で人質を取られているような状況ではある。

米政府は中国に投資している米企業に「投資をを引き上げて戻ってこいよ」と呼びかけているのだが、そんな時期に「将来の自動車市場は中国にあり」のような姿勢でビジネスを展開されては困るということだろう。

そして、自動車産業で中国にコミットすると電子技術、テクノロジーの大事な部分が中国に筒抜けになって望まない技術移転になってしまう。それでいいのか、ということがあったのではないか、という推測が可能である。

安倍総理とトランプ大統領は9/26に会談してそこで「対中包囲網を作っていく」と約束している。市場経済の論理に反するような態度を取る国とは闘う、という趣旨の事を言ったのである。これは中国を念頭に置いているが、その中国に協力するのはいかがなものか、ということで「待った」がかけられたと見ている。

今回の逮捕では特捜が動いている。これは非常に政治的に高いレベルから動いていると推測されるところである。

もう一つの事実として、現在、アメリカとフランスの関係が芳しくない。先日もフランスのマクロン大統領が「NATOはやめて欧州軍を創設する」と発言している。そして、ルノーはフランスの国策会社であり、国が最大の株主となっている。
カルロス・ゴーンはルノーのトップでもあるが、フランスの方はゴーンを罷免しない(したくない)意向のようである。今は取り敢えずNo.2のボロレ氏(COO)を暫定トップにしてゴーンCEO解任は見送ったようである。これはゴーン会長はマクロン政権とも仲が良い事を示唆する事実であろう。
今回の背景にはこうした米仏関係の対立も関係しているようである。


3.アメリカからの警告

今回は日産が標的になったが、今回の件は実はホンダやトヨタに対する一種の警告の意味があるのではないか、という見方がある。両社とも同じように電気自動車開発を重視しており、トヨタの場合はEVに対して1千億の投資をすると表明している。自動車産業は基幹産業でもあると同時にハイテク技術はそのまま軍事産業としての色合いも濃い。例えば自動運転の技術などはすぐに軍事方面に応用可能である。これが中国に漏れる事はあってはならないだろう。アメリカとしては「日本はそういうことをやるな」という意味の警告も含まれているのではないか、という読みも十分に可能なのである。


今回のゴーン会長逮捕は総合的に見て、このような経緯があっての事態であると推定されるのである。







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(*1)
米国の税法である外国口座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act)の略称。FATCA(ファトカ)は、米国の税金を逃れるために海外(米国以外)の金融機関の口座に資産などを隠すことを防止するために制定された。