goo blog サービス終了のお知らせ 

週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

年越し。

2014年12月31日 | ★江戸っ子エッセイ★



 早いもので大晦日でがんす

 荷風大人が通った尾張屋で天セイロ。

 大きな海老を切って出してくれる。これがツマミになるんだよね。



 麦酒で喉を潤したら、すぐにぬる燗でしょ。

 ここは大関の瓶をそのまま燗してくれる。これが率直でいい。

 忙しない年の瀬も、肌に近い燗酒なら人の気持ちに寄り添ってくれる。

 ああ、旨い。

 

 板山葵に何本も頼んでしまう。

 ワサビを多目にのせると、一年を経た何物かがこぼれてきた。

 今年もいろいろあった。

 それももう終わる。



 家人のインフルやらなんやらで、出版恒例の年末進行からこの方カラダも心も休む暇がない。

 ようやく30日になって、整理をはじめた。

 この原稿の束が同人に入ってから4年分のもの。

 こんなに読んで語り合ってきたんだ。

 タイトルを見るだけで、当時の熱い合評が過る。

 少しは身になったのだろうか。



 師走に入って増田俊也【七帝柔道記】を読んだ。

 書評家のあの人が薦めていた一冊。

 なるほど、京大に北大、旧帝大の柔道部が中心に据えられた小説。

 世の中にはまだまだ読み応えのあるおもろい小説があるんやね。

 書き尽くされてしまったなんて、素人の浅はかさだな。

 晒す、その命題を突き尽きられた年末だが、この著作を手に取るとそれがよくわかった。

 何も考えずエンディングまで滑走する読書をすると、まだ書ける余地があるのでは、と思える。



 蕎麦のあと、ニューオーリンズのJAZZを聴きにいった。

 山崎のロックに、ディキシーランドジャズが合う。

 世界に認められたスコッチは、マッサンの時代の苦労が実った証。

 エジンバラの車窓で飲んだスコッチを思い出す。

 7年ぶりに再会した同期と、男と女の業について語らった。

 深く、普遍的な話し。

 

 ルイアームストロングの魂の叫びとともに、和服姿の妙齢のおばあちゃんが踊っている。

 いい夜だ。

 What a fantastic night ♪



 年越し蕎麦第二弾。

 二級酒を冷やでやって海老の尻尾を齧れば本望さ。

 紅白を観ていた甲斐があった。

 サザンのLIVEの生中継。

 東京 Victoryがかかる。

  友よ、Forever young

  みんな頑張って

  TOKYO 、The world is one!! (サザンオールスターズ 桑田圭祐作詞作曲)

 やったね。

 いい年を迎えられそうだ。

 ブログ愛読の皆様、一年の間ご贔屓くださりありがとうございました。

 どうか良いお年をお迎えくださいませ。

 新年もどうぞよろしゅうお願い申し上げます

 
 【何もせず何かしたよな大晦日】哲露


懐かしの学び舎。

2014年12月09日 | ★江戸っ子エッセイ★



 ここは、東京の西、武蔵小金井の駅舎

 同級生の実家があったりするんで、実際に住処としてる人には申し訳ないけど、馴染みのない人も多いのではないだろうか。

 実は学生時代、この駅に三年間も通ったんだ。

 片道一時間半でっせ、よく通ったわ。今じゃ通えない、と思う(笑)

 ホームに降り立ってびっくり。

 だって駅前のロータリーは完全整備され、駅自体も豪奢なガラス張り、堅牢な構想マンションが建っている。

 これなら、住む人も便利やろな。

 30年という時の流れを痛感する変わりようだ。

 そりゃそうだよな。 アラサーの従兄弟も驚いていたもの。

 おいら、もうおっさんだぜ、だっせ。



 全そ連のメンバーと合流する前に、母校を見てみたかった。

 せっかく、西東京まで来たんだもんね。

 だから、集合時間より二時間早く来て、この土地を散策したんだ。

 そしたら、この山桜に出会った。

 やっぱり吉宗公だ。

 隅田川の墨堤の桜もそうやし、飛鳥山の桜もそうやった。

 この玉川上水沿いの桜も吉宗公のご威光あってのものだった。

 暴れん坊将軍って、つくづく桜が好きだったのね。

 その山桜が、見事に色づく紅葉を魅せてくれた。

 時代物を書くものとして感慨深い。



 これが懐かしの学び舎。

 年数を経た割に、綺麗やった。

 親に反発してた多感な頃。友達が持ってきた中附の資料見て即決した。

 だって、金八先生世代。

 学生服に、頭髪検査、あらゆることを制限されて育った。

 ここ、学食はあるし、私服やし、サンダル履きでOKなのよ!

 手元にモノクロのアルバムがある。

 男子校だし、教師も男ばっかしやった。しかも、ヤーサンばりの強面のお人ばかり。 

 時効だろうけど、革靴で殴られ頭を陥没しとった生徒もおった。

 荒くれ者の生徒も多かったから、どっかで平衡が取れていたのかな。現代なら大問題になっているんだろうな。

 いまとなってはいいのかどうかもわからん。

 それでも、自由やった。

 ゲーセンに寄って、学生証取り上げられたりしたけど。

 そういう時代だった。



 綺麗に人工芝が入っている。

 がんじがらめの区立中学からの脱却が目的だった。

 もちろん、親からの脱皮も。

 モノクロがカラーに、女子禁制が男女共学に変わった。

 すべてに変わった。

 偏差値73ないと入れない。もうわしの学力では入れんわな。



 変わらないのはこれ、高校生の頃からホモやな、と思っていた像。

 FBに投稿したら、知人女性から腰にあてた手の位置を突っ込まれた。

 そりゃそうだ。

 ホモ推奨校かと思うぜよ。同性愛の方、深い意味はないっす、ごめん。



 グラウンドに女子がおる。

 それだけで隔世の感だね。

 私はノーマルな男。女好き。もう枯れてるけど。 



 右手には体育館と野球グラウンド。

 何気に野球は強かったように思う。

 それとHP見ると吃驚、まだやっているらしい。

 課題図書のこと。

 体育教師と見紛うような、大高先生が推薦しとった。

 卒業までの100冊看破。

 みんな嫌がっていたな。

 反して私は、自分では決して選ばない本を読めるのが、なにより楽しみでもあった。

 件の大高先生。三者面談の進路指導の際に、うちのおかんにこう言った。

 ○○君(私の本名)は文才がある。だから、その道に進ませたほうがいい。

 こんな台詞いう教師あるか。

 だから、いまでも忘れたことはない。

 人生で二度目だもの、物書きに向いていると言われたことは。。

 その後、大高先生は中大の教授になられたと聞いたが、大学時代に教えを乞うたことはない。



 正門でなく、駅から歩き組はこの裏口から入った。

 きっとそれは今でも変わらんのやろな。

 だけど斜めに近道した通学途中の公園はもうなかった。



 このあとで、駅で優女さんと待ち合わせしてから、小金井公園に向かう。

 たくさんの思い出が詰まる武蔵小金井だが、新たな発見もあった。

 ジョンレノンのPVが浮かぶような広大な紅葉を魅せる公園。

 あんなこと、こんなこと、空想に耽った図書館の思い出。

 原点なんて、そんな軽いこというつもりもない。

 そんな時代があって、今があるんだよな。

 今年もあと22日や。

 あ、思い出した。年賀状やらないと。



 
【師も走りどさくさ紛れも一票を】哲露


 縁結びの神様のそば、今戸橋からのツリー。

 大川の柳のしなだれが色っぽい。

 柳って、関東にしかないって何かで読んだ。

 今度の週末は選挙だね。

 皆さん、悔いのないように、年末までかっ飛ばそうぜ

  


動物たちに会って。

2014年11月08日 | ★江戸っ子エッセイ★



 秋晴れの休日、久しぶりに上野の動物園に行く

 上野公園もそうだが、動物園も案外混んでいて驚く。

 外国人の方たちもやたら目に付く。

 大陸の人も結構、ここは万国平和だ。

 やはりみんな野生の動物に興味があるのね。



 息子たちが幼い頃は、それなりに遊びに訪れていた。

 子どもたちに本物の動物たちを見せてあげるには最適な施設だもの。
 
 学校の遠足で、アフリカやインドへ連れていくには遠過ぎるからね。

 この動物たち、人口の場所で生まれ、育ったものたちも多い。
 
 まさに、人間に観察されるために生きているのだ。

 安っぽい賛否を述べるつもりはない。これはこれで一定の価値があるのだろう。もちろん人間の側に。。

 

 僕が小さなうちから人気者であるパンダはやっぱり行列が出来ている。

 ちょうど笹を食べるところがみられた。

 可愛い顔してるけど、自然界で出会うと怖いだろうな。なんといっても熊だもんね。

 賢いゴリラに、うんちを投げられたことがある。

 昔はガラス越しでなかった。

 人に近いと言われる類人猿だから、四六時中見られていることに苛立っているんだろう。



 百獣の王は気品と風格たっぷり。

 サバンナでは何もしない雄より、働きものの雌に共感を抱いてしまう。俺は雄だけども。。

 この日は雄が見られなかった。

 子どもの頃は、虎とライオンがどっちが強いかなんて、不毛で幼稚な議論をした。住んでいる場所が違うから戦う必要もないわけだ。



 象もそうだが、サイやカバの圧倒的な存在感にはただひれ伏すしかない。

 プロレスもカラダの大きさにアドバンテージがあるからね。

 動物たちがもし思考というものを持つならどう思うのだろう、と私はいらんことを考える。

 野生と違って、敵がいない、餌に不自由しない、それを最良とするのか。

 はたまた、自由に駆け回ることのできない束縛、群れからの離別、好みの雄雌と交配できない不条理を嘆くのか。

 水族館でも同様な視点で、観察してしまう自分はアホなんやろか。

 梟の洞察深い視線、全長1.2m、片足でじっと動かないハシビロコウの諦念、シマウマの彩色の美しさ、猿山のボスの杞憂、北極の地から亜熱帯に連れてこられたシロクマの怠さ。

 平和と引き換えの、不自由にも一遍の価値があるなら、自由ゆえの尊厳が生き物として当然の権利ではないのか。



 1639(寛永16)年に再建された五重塔が立っている。

 これ、今回気付きました、って遅いやろ。

 重要文化財が上野動物園内にあるなんて知らんかった。

 荘厳な佇まいは、ここだけ異質の空気を放っていた。



 モノレールが下る方面に、不忍池が一望できる。

 天上の蓮が池一面を覆っている。

 むかし、北あかり(ジャガイモ)を売りにきていたおじさんが言っていたっけ。西郷さんの銅像、有名な不忍池はさぞ立派なもんだろうと想像して上京したら、こんなちっちゃい沼だったのか、と。

 そう、北海道の大地を知っている方からみたら、彼の地の水たまりのようだな、と思ったもんだ。

 育った環境の違いや、ちょいと視点を変えると、同じ万物も別の見え方になるから、難しくも面白い。

 いちばん最初に書いた小説は、象が出てくる現代の夢物語。合評で全否定されたモノだが、同人の方から面白かったよ、とメールもらった。

 自分が書きたいモノ、それすなわち、自分だけのオリジナルなんだな。

 たまには、いつも行かない場所にいくと、刺激スイッチが入るでやんすよ。

 先週は鼻ッ風邪を引いた。

 毎朝熱を測ると、35度2分。低体温、爬虫類なみの海光でござる。

 来週10日、そして22日は酉の市。

 皆さんも、流行っているので、ご用心くださいまし


 【かじかむ手灯り恋しい酉の市】哲露

 


  


フットサル始めた!

2014年10月12日 | ★江戸っ子エッセイ★



 俳句の仲間に誘われて、ついに始めたフットサル

 下町の老舗の先にある倉庫ビルの屋上にそのコートはある。

 秋空が眺められる抜群の眺望。

 初参加はとりあえずの、ランニングシューズで。

 これが滑る、すべる。

 止まらないもんだから、気負って走って、対戦相手の若者にぶつかってしまう。

 人工芝がスタンダードのフットサルでは、やはり専用シューズは必須なのだ。

 それは、ランニングだろうが、バスケだろうが同じだね。


【シュート決め麦酒も旨い夜長かな】哲露


 

 10km,20km 走るのはわけないカラダにはなったものの、競技が変わるとそうはいかない。

 STOP & GO の繰り返しは、最年長という肉体の限界を嫌という程再確認させてくれる。

 チーム内で自由に交代するシステムだから、しんどいとすぐにキーパー役についた。

 ハーフ8分、ひと試合16分。休憩は3~5分程度。

 交代要因はいないから、常にフィールドに立っている感じ。

 ペナルティーエリア外からのシュート、男子は禁止。だから断然得点は難しい。

 それでも徐々に慣れて、なんとか2本シュートを決めた。

 やっぱりうれしい!

 20代の女子が練習するたびに、本番でうまくなる。

 若いということは、それだけで才能なんだな。



 フットサルの後は、 近所の中華屋へ。

 庶民的な価格なのに、円卓まである。

 家族連れなどであっという間に満員だ。



 ゴーヤの酢の物は限りなく苦く、疲れたカラダに効いてくる。

 甘く弾力のある餃子の皮に、しっとりの肉汁と野菜の優しさが包まれて、何とも幸せな気分に。

 そして、冷えた生ビールがなんとも美味しい!

 競技では遅れをとったおっさんも、飲み会ではフォワード役になれるのだ。

 環境のまったく違う、若者と女子との会話はそれだけで十分に刺激的だった。



 あったかい胡瓜はどうだの、酢豚にパイナップルはどうだの、どうでもいい話題がアルコールのつまみには最適なんだ。

 いつもは一人でのランニング。学生時代の少林寺拳法も個人競技だった。

 こうして、仲間と連帯を持ってカラダを動かして飲む酒はことさら旨く感じるものなんだな。

 この歳になって、こんな体験ができることがHAPPYで素敵なことだとつくづく思う!

 友人の恋狼さんに、ありがとう。



 チャリンコで行ける下町だから、帰りもチャリンコ。

 ペダルを漕ぐと、夜風が気持ちいい。

 地元に戻ると、大正期を彷彿とさせる東武ビルが燦然と輝いている。



 横を向けば、メジャースポットの神谷バー。

 大学生の頃、地元の友人と背伸びをして、電気ブランを飲みにいった。

 あれから、どれだけ成長しただろう。

 それと引き換えに、大切な何かを忘れてしまってないか。



 必須アイテム、トレシューを買った。

 いつでも参戦可能。

 だけど、今は本郷の大会前。

 読み込みが終わったら、参加できるかな。

 書きたいものもたくさんある。

 来週までに考えよう。

 体育の日をまえに、永代橋まで走った。

 先週は台風で走れなかったもんね。

 明日もまた大型が接近する。

 今日も分科会のメンバーの作品を読んでから、走ろっと。

 読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋、そして食の秋。

 皆さん、お風邪など召しませぬよう、ご用心

  


風の移ろい。

2014年10月04日 | ★江戸っ子エッセイ★



 秋の風が吹いたと思うと、台風によるのか、30℃越えの蒸し暑さがふたたび訪れる

 とはいえ、散策、ランニング、サイクリングには最適といえるシーズンになった。

 SNSで拾った情報もあり、チャリンコで亀戸に向かう。

 わが街から北十間川を行くと、ご覧のような巨塔が仰げる。

 首が痛くなるほどの、現代のバベルの塔。

 アニメのロデムに憧れた幼き自分を思い出す。



 亀戸中央公園へ近付くと、散策中とおぼしき人の波。

 区の施設にチャリンコを止め、公園に踏み入れる。

 デング熱の蚊が、代々木公園から亀戸へ変更させたからだ。

 不穏と不安はあちこちに点在している。

 警備する警察官の方もご苦労様。

 署名を求めるたくさんのボランティア。

 その一人から本日のデモの案内をもらう。



 澤地久枝さん、落合恵子さんらが順番にスピーチしている。

 壇上をみつめる群衆。

 東北支援の露天などが回りを囲む。

 のどかな公園に、これだけの人が集まるのは異様といえば異様。

 みな、東北の大震災から三年半が経ち、あの当時に感じた風が忘れ去られることに抗う思いだろう。

 苦しみは終わらないどころが、年月とともに深刻さを増している。

 それをどこ吹く風と、偽政者は肩で風を切る。



 着々と進められる再稼働への動き。

 脱原発の機運は独裁に押し戻されている。

 大江健三郎さんの演説に熱が帯びる。



 さようなら、原発。

 いつになったら、悲しみの元は絶たれるのだろうか。

 制御できない火を扱うほど愚かなことはない。

 人間の傲慢を戒めるのもまた人間だ。




 【東北の尊厳いずこ天高し】哲露


 巨塔を作ることができるのもまた人間の英智。

 出来るなら、人々が手を取り合って笑顔で暮らせる世であって欲しい。

 秋の北十間川。

 大川に向かう川風が、平和を運ぶことを祈る。

 悲しみ、苦しみの上の豪奢ほど貧しいものはないのだから


新宿で祝う!

2014年09月28日 | ★江戸っ子エッセイ★



 先週末のこと

 このブログでも紹介した河童の会の松井ラフさんの初出版記念パーティーがあった。

 よく飲み歩いた歌舞伎町に、新宿二丁目、三丁目。

 そのごく近くでお祝い会が行われた。(しょんべん横町とゴールデン街を忘れた)



 イタ飯(古い?)ELSAの地下二階。

 御著「白い自転車追いかけて」にちなんだ、鍵型のアクセサリーがプレゼントされ微笑む松井さん。

 誰よりも誠実で、努力家で、お優しいことを漆原先生、井上先生といった児童文学界の大御所のスピーチから知る。

 やはりここでも、継続の力を思い知るのだ。

 いま、乗りに乗ってる作家森川成美氏が司会を勤めるという豪華さ。

 花束は集英社未来文庫優秀賞の近江屋氏。

 なんとも贅沢なお祝いだ。



 年初の初詣の飲み会にしか参加してない不埒な私だが、今年からお仲間の末席に加えてくだすった。

 その懐の深い女将さん、高橋うらら氏が、会を締まりあるものにしていた。

 さすがです。


 
 PHP研究所の編集者は、私と同じサラリーマンの、で切れ者。

 お顔はマズいと思い、花束と、粋な帰りのお車代を出すダンディと紹介しておこう。



 同人季節風の秋の大会が近い。

 締め切り直前に余裕の皆さんが羨ましい。

 飲みたい気持ち満点の吞助だが、ここは我慢して執筆のために帰る。

 飲み足りない私を待っていてくれた行灯たち。

 

 浅草寺の境内では、灯籠会の灯りが人々の秋を祝福してくれる。

 同人に入会して五年目になる。

 果たして、進歩しているのやら、禿げていってるのやら。

 白髪は抜いたら薄くなるのよ、と日曜版に連載の漫画家のエッセイで知った。

 もう毛抜きで抜くのは止めよう。

 残り時間は迫っている。

 抜いてる時間はないということだ。


【月明かりほろ酔い気分も手酌酒】哲露


 

 この日曜日を利用して、大会作を12名分プリントした。

 果てのない推敲も昨夜まで。

 編集者の端くれだもの、締め切りだけは厳守。これ決まりよ。

 分科会の皆さん、海光の小説は金曜には間違いなく届きます。

 さて、次へ向かおうかの。

 珍しく白ワインを飲んでいる。

 豚のハツと黄色、オレンジ色のパプリカ、アスパラを入れた、特製ペペロンチーノを作ったからだ。

 パスタが食いたかったのよ。

 更新に焦った、酔っぱらいの戯れ言。

 アジア大会では、福島が二位を取った。

 文学界のアスリートを目指し、私はまた書き続ける

  

  


和牛喰らい、異国感ず!

2014年09月20日 | ★江戸っ子エッセイ★



 日増しに要求の多くなる仕事に加え、この夏は猛暑の中、肉体労働も強いられた

 風の抜けないオフィス構造なのに、省エネ名目でエアコンまで制限される。

 気がつけば、敦盛の詩に近付いたお年頃。

 人生五十年、下天のうちと比べるべくもない。

 おっさんは夏の入り口から夏バテ気味。そこへ来て、急激な秋風を受け、メンタル的にもだだ下がり。

 肉を喰らわば元気が出ると、上野の陽山道へ気の合う先輩と仲間と出掛けた。


【アメ横で異国と肉を食む秋や】哲露




 このお店のお肉は、すべて和牛だ。

 ファーストフードのお肉は偽装、不手際、悪辣の時代。和牛とは素敵すぎる。

 まずは牛タン塩と、生ビール!

 巻頭の写真は、和牛三昧セット3,657円也。

 カルビ、ロース、肩ロースと見事な霜降りだ。

 サンチュに青唐辛子を巻くと、いくらでも麦酒が進んでまう。



 若い仲間が焼いてくれる。いつもは私が焼く係り。素敵なパフォーマンスです、Sやん。

 上野といえば、コリアン街が定番だったわが青春。

 おやじになるとこんな役得もあるのね。

 煙も見事なまでに吸い上げてくれるシステム。空調の効かないオフィスの紫煙に辟易している我が身にはありがたい。



 箸休めのキムチ盛りもナムルもいい仕事がしてある。

 天候不順で関東は野菜が高騰しているからね。

 ああ、ありがたや、ありがたや。



 私の我が儘で、赤身のハラミを注文。

 う、うめえ!

 おじさんの胃には、霜降りより赤身なのだ。

 されど、さすがに大和の国の牛肉。

 噛めば噛むほどに、豊かな牧草の甘みがジュワッと口中に溢れる。

 もう少し食いたい。だがその適度が身体に優しいんだ。



 気になる和牛しゃぶしゃぶ、なんてえのもある。

 その昔、新宿のノーパンしゃぶしゃぶなんてのを接待に使っていた。

 パワフルで、ふざけた時代。過ぎ去りし望郷を感じる歳にもなった。

 愉快な時間はあっという間。飲み足りない仲間と上野のHUBへ。

 太っ腹の先輩が赤ワインとピッツァ、フィッシュ&チップスを御馳走してくれた。

 84.6%という素晴らしい投票率の結果、英国に留まったスコットランド。

 目の前のツマミに、

 ディーゼル機関車インターシティで向かった、エジンバラの荒涼と静謐を思い出した。

 スコットランド人の若者と寝台で飲み明かしたスコッチは無名だが、生涯忘れられぬ味。

 やっぱり、たまにはがっつりと肉を喰らわないとダメね。

 サンキュー、T兄、Sやん。ちょっぴり元気になった気がする。

 今宵は、松井ラフさんの初出版のお祝い。

 とっととブログを更新し、本郷の原稿を仕上げないと。

 新宿の雑踏まであと半日。

 やらねば!

 
 


彼岸前に。

2014年09月15日 | ★江戸っ子エッセイ★



 次の週末20日から彼岸の入り

 秋の彼岸を、のちの彼岸とも言うらしい。

 本当に月日の巡りが早い。

 夏が好きな私。

 家族でエアコンを嫌うため、こと創作に関しては向いてないようで、さすがにはかどる季節になった。

 まさに、芸術、文化の秋到来。

 だが、やはり一抹の淋しさがある。

 今年も、夏は確実に去り、また季節が巡るのだ。

 20代まで、未来は永遠に続くもんだと思っていた。

 森絵都も、益田ミリもそんなこと言っていたっけ?

 能天気な私は30代になり、ようやく自分にとっての未来が有限であることに気付く。ああ、なんたること。

 40代はまさにジェットコースターに乗っているよう。

 先輩に聞く。

 50代、さらに巡りは加速する感覚だそうだ。恐ろしいことだ。

 池波正太郎の言葉を思い出す。

 人は生まれながらにして、死に向かっている。

 なるほど、ゴールに近付くほどに、その真実に向き合うようにできているのだな。

 この日曜は目映いばかりの秋の空。

 朝起きて閃く!

 そうだ、墓参りに行こう。父から言われていたことだけど。。

 江戸川を越える車窓から、入道雲が見えた。

 去り行く夏と、秋の風を同時に感じる。

 地元浅草から上野、日暮里とお寺と墓に囲まれているのだが、我がご先祖は遠くにいらっしゃる。

 おひーさまと言われた、祖母が建てた墓。

 彼岸前に同じことを考える人は多いようで、快速電車と平行する一般道は上下とも渋滞していた。

 電車&ランで正解だ。

 長男と軽装で走る。

 そこで着いたお墓の姿がこれ。

 ふんだんな雨と猛暑が雑草を繁茂させた。

 ビフォー ↓



 栄養がいいのか、いつも以上に根が深い。

 人の執念と怨念もまた深い。

 無口なお墓に向き合うと雄弁に何者かが語る。

 地の底まで伸びたような根っこ、掘っていると、得体の知れない黒い虫、白い蛆がわんさかと涌いてくる。

 黒いの、白いのが太陽を浴びて干涸びる前に、蟻の軍隊が襲ってきた。

 虫が大嫌いな長男がぎゃーぎゃー言いながら、そんでも頑張った。

 で、アフター ↓



 3時間の格闘だ。

 墓石の合間から伸びる雑草やススキを根こそぎ掘った。



 お牛さんに牧草だよと差し上げたいくらい積もった雑草の山。

 ゴミ捨てまでも3往復。

 見上げると、皮肉のような好天。

 日焼けも亡き人への供養だろう。

 あっちっち。

 ライターで火傷しそうになって火をつけた。

 お線香の煙がむくむくと上っていく。

 天上のご先祖様に、家族の近況を報告した。




 【面影を苅るも生やすも彼岸花】哲露


 高台にあるお墓。

 こうして眺めると、案外素晴らしい景観なのだな。

 長時間しゃがんで作業したせいで腰が痛い。

 手を洗い、お墓のある高台から坂を下る。

 リラックスしてRUNをして、躰をほぐしていく。

 近くの高校の運動場の広さに感動する長男。

 彼は今日のこと、憶えているのだろうか。

 大学へ入ればもっと快適な環境が待っているのだよ、とその背中にそっと呟く。

 お腹が空いたというので、冷やし茄子蕎麦というのを啜った。

 茄子があと一人分という。私はもりそば。

 食欲すら失せた私には、冷水が一番のご馳走だ。

 帰りの電車、母からのメールで、センター模試があったことに気付く。

 前日は財布を落とした。

 おじいさん、おばあちゃん、ご先祖さま。

 みんな元気で頑張って生きています。

 ボクはおばあちゃんがいたあの町を書いてるよ。

 どうかおいらたちを見捨てず、見守ってくださいまし。

 合掌


なんとなく西加奈子。

2014年09月09日 | ★江戸っ子エッセイ★

 その昔(青春時代は昔)、なんとなくクリスタルというタイトルの小説があった

 長野県知事で衆議院議員にもなった田中康夫氏の作品である。

 当時、純文学では、村上龍、林真理子、小池真理子、森瑶子、少し後に、田口ランディ、鷺沢萌、野沢尚、鎌田敏夫、家田荘子、中山可穂藤堂志津子、北川悦吏子といった気鋭がなんともパワフルで読んでいた。今回のブログ、脈絡はまったく関係ないが、 なんとなく西加奈子をよく読んでいるという話し。

 きいろい象は、たぶん、随分まえに読んだんだけど、もう一度おさらい。

 読むとああ、そうだった、となるが、新鮮な印象はきっと彼女のポテンシャルが高い証拠だろう。

 テヘラン生まれというのがそもそも小説的だし、関西弁というのもズルいなあと思う。



 とおもったら、 この中の掌編に、ナオコーラを題材にしたものがあった。

 小説家を志望する主人公がナオコーラを羨み、理不尽な嫉妬をする。

 これがおもろい。

 ラストは近年文芸誌で読んだ掌編にも通ずるオチがあった。

 う~~、正直、メッチャおもろい。




 【十五夜の涙こぼるる三崎坂】哲露


 円卓に出てくる こっこ こと 琴子が可愛い。

 じいさんの石太も助演男優賞ものだし、友達もキャラが立っている。

 だいたい潰れた中華食堂の円卓があるアパートの一室って、どんなんだ。

 そういえば、我が家も新婚から円卓だ。

 西加奈子は、あおいでデビュー、さくら、うつくしい人、白いしるし、ふくわらい~最新作の舞台。

 綿谷りさが天才なら、この人はなんなん?

 溢れる才能、このジャンルを読んで、時代小説を書いているおれもなんなん?

 でも、なんとなく、創作の力をもらっている。

 お気づきの方もいらっしゃると思う。

 そう今月はブログにする写真もなく、この二週間の読書遍歴を書いてごまかしてます。

 この夏まで、封建の資料本ばかり読んでいて、正味つかれた。

 いろんな部位の肉、ありとあらゆる野菜、南国のフルーツ、濃いアルコールが血肉となって邂逅し、昇華していく、そんなことを寝ても覚めても、考えておるばかものだ。

 先輩の作品を読んで、他人事だとどうしてこんな判るのや、と苦悩する。もちろん、独りよがりの読み手だが、編集者としての目線がその小説を一瞥して評価を下している。足すべきところ、引くべきところがよく見えるのだ。これが己の小説だと、そうはいかない。

 三崎坂に雨粒の音が静かに響く。十五夜も台無し。けだし、明日は月の軌道により地球に近付いてのスーパームーン。

 ま、そんなわけで、性懲りもなく書いています



 




夏休み。

2014年09月03日 | ★江戸っ子エッセイ★



 伊豆に行ってきた

 ようやっと取れた夏休み。

 三日続きのお休みがこんなに精神、肉体ともに楽になろうとは。

 いよいよ私も老いのはじまりかいな。




 東京駅から東海道をまっつぐに。

 目的地は伊東だが、なぜか宇佐美で降りてのランチタイム。

 ここでいったん降りたほうが電車賃も安い。不思議やね。

 若かりし頃、コバルトブルーのクーペで通った波乗りポイント。

 その国道135号線沿いにある定食屋が狙い。



 こじんまりした店内からオーシャンビュー。ヒューヒュー。

 お洒落でなくとも、海辺の食事はアドレナリンが上がる。

 潮風が吹く食堂っていい。



 名物の地魚丼がなくて、ちょっと残念。

 朝一からやっているだけに仕方ないか。

 しらす丼にも惹かれるわい。


 
 巻頭の写真は私が注文した刺身定食。

 まかつおやイナダ、マグロ、イカなど分厚くデカい刺身にきのこたんまり茶碗蒸しが贅沢な昼ご飯。

 息子の鯵叩き定食は、頭付きで鮮度抜群。生姜が効かせ、さっぱりと伊豆を食らう。



 バナナマン日村も食べたんだ。

 さきに放送した志村けんさんたちとの村つながりの番組が面白かった。

 息子は宿で、日村さんが熱唱した 俺ら東京さ行くだ♪ を熱唱する。

 You tubeで、「日村 俺ら東京さ行くだ」で検索できる。

 https://www.youtube.com/watch?v=-PH19-FI8_c  ← 要チェケラ!



 会社で仕事してた時は、炎天下の汗だく。

 夏休みに入った途端、小雨ほどほど曇り。

 それでも今年の初海。

 めげずに水着に着替える。



 気合いだろ、気合い!

 やはり、宇佐美は絶好のポイント。

 いい波が立っている。

 足先に震えるのは最初だけ。

 水に入れば、まだウェットなしでも平気だった。

 息子と波に乗り遊ぶ。



 祝 日本ジオパーク認定。

 そんなこと知らんかった。

 伊豆半島もがんばっているのね。

 宇佐美からタクッたので、写真は帰りに撮ったもの。

 伊東温泉の芸者さん、行きにみたほうがテンションが上がったな。


 
 温泉に浸かり、黒ラベル。

 マッサージをしてまた黒ラベル。食事前に飲み過ぎた。

 晩餐には、地元の酒、花の舞本醸造と寒造りのぬる燗で、至福のひと時。

 ああ、生きててえがった。



 震災対応で出版健保の宿がリニューアル。

 行ってみたら、まさかの新築だ。

 名物の大きなヤシの木も、卓球台も、優しいおじさんもおばさんもいなくなり淋しい。

 いいことは、新しい木材や畳の匂い。

 広くなったバリアフリーの部屋。

 以前より洗練されたお料理の数々。



 珈琲サービスの時間が増えたこと。

 窓からの絶景はそのまんま。

 されど、息子はまえの宿がいいとか。

 将棋もなくなったし。

 そう思う。



 うちの近所はアニマルジム。

 だから二日目も気合い。

 伊東名物江戸屋でサンドウィッチをしこたま買い込み、オレンジビーチに向かう。

 ビーチバレーとサンドアート。

 少数の若者たちとともに海から上がると、これも気合の冷水シャワー。

 そのあと、息子の嫌がる伊東町の散策。

 漁港から松川を遡る。

 有形文化財の東海館は風格たっぷり。

 しだれ柳がよく似合う。



 ベンチにバッタがいた。

 息子が発見。

 本当に葉っぱみたいだ。

 昔通ったサーフショップも覗き、久しぶりに海の町を堪能する。

 小雨は降ったり止んだり。

 でも傘はささない。

 夏の雨はだいすきだから。



 三日目の朝も雨。

 でも朝食を済ましたら、太陽が顔をだした。

 くやじぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい。



 宿では楽しみにしていた金目はでなかったので、金目と小鯵の押し寿司弁当を買う。

 旅のお供は当然黒ラベル。

 あっという間の夏季休暇。

 でも旅はいい。

 だいぶ、リフレッシュした。

 おかげで、何か月ぶりかな。

 一日中執筆できた。

 やれやれ


 【ガタゴトと車窓の流れ夏がゆき】哲露


ツクツクボウシと、夏の酒。

2014年08月24日 | ★江戸っ子エッセイ★




 夏真っ盛りでんな

 このところ、職場飲みが続いている。

 強制退去的に切られた派遣社員Hさんは、さらに別の派遣先で首切りにあったが、その発端となった正社員の仕事ぶりがわるく、再び声がかかった。しかも正社員で。これだから、世も捨てたもんじゃないのだ。

 その就職祝いを兼ねて、池袋のもつ焼き屋で飲む。

 久しぶりに見る彼女は、溌剌とした印象そのままの笑顔であった。こういう酒はうれしい。

 神様も、ヒトも見ているのだ。




 先週は新卒から勤務していた後輩Mが去り、その送別ということで大塚りらくで飲んだ。

 「卒業おめでとう」「いい会社だったらよろしくね」

 お決まりのはなむけの言葉がいつもながらの微妙ではあるが。

 もう彼のプリッとしたお尻が見られないのかと思うと、微かながら淋しい。



 まだまだ夏だというのに、こういうときに秋の風を感じる。

 思えば、私も過去転職したのはこの季節だった。 

 そして、週末はあの頃と同じ阿波踊りが町を練る。




 ラガーをしこたま飲んだ後、冷酒に、黒霧をロックで飲んだ。

 普段、話さない本音のトークはそれなりに面白かった。

 それにしても、よく飲んだ。



 二次会、いつもの中華でもロックで飲む。

 胡瓜の豆板醤和えに、糸豆腐を食っては飲む。

 もうすでに、話しの内容なんか誰も憶えちゃいない。

 終電前に帰ったが、案の定、翌日はやる気なし男。

 朝食、昼食を家族分こさえ、家中に叩きをかけて掃除した。

 たっぷり汗を流した後、淹れたてのコーヒーをアイスで飲む。

 それでもカラダ中が火照っているので、隅田プールにプカプカと浮かぶ。

 日本選手の活躍が眩しい世界水泳。

 かつての選手は300mで、エネルギーが切れた。

 波乗りのパドリング、己の筋力に自信をなくす夕べなり。



 魚や一丁という居酒屋がある。

 社会人一年目に、北海道へ教師として永住する覚悟で渡った友人が連れてってくれた懐かしの店だ。

 本場の石狩鍋を初めて食った。それももう二十年まえ。

 北海道のチェーン店なのに、新宿、銀座、気付いたらオフィスの町にも出来ていた。

 北の家族の居抜き、これもまた時代なり。





 イカソーメンに、コーンバターとベタな北海道を食う。

 糞暑い真夏に、職場の編集部はビルをまるごとの大移動。

 楽しいはずの宴が、愚痴100%の飲みになっちまった。

 せっかくの思い出の居酒屋も、これじゃあ悪酔いしますわ。

 発散も必要だが、最小限にして愉快な話題がよいよね。

 土曜は町に打楽器の音が溢れていた。

 例年より早い、浅草サンバカーニバルだ。

 町内会では、吉野公園で子供フェスティバル。

 泥鰌掴み、的当て、花火。

 子供たちの歓声。

 生ビールを手にする大人たちの顔をふわりと優しくする。

 夏休みもラストウィークである。

 よい子、やんちゃな子。

 素敵な夏の思い出を


 
【ツクツクと蒸れる緑や水かぶり】哲露
 


三崎坂に眠る

2014年08月16日 | ★江戸っ子エッセイ★



 連日、中東の太陽と東南アジアの蒸し風呂を掛け合わせたような殺人的な猛暑が続く。

 一年中でこの季節が最も好きな私だが、さすがにこの時期の力仕事には参った。

 業者に頼らず、社員のみでのビル移動に、汗まみれの埃まみれ。ひとっ風呂浴びなきゃ、ビールすら飲む気も起きやしねえ。

 それも旧盆に入り、ようやくのひと休み。

 定時+1hの残業、珍しく明るいうちに自転車に飛び乗った。

 朝の通勤帯、山手線はガラガラだが、帰る夕刻は東京見物のヒトで案外の混みよう。 

 お盆の都内は至極快適で、チャリ通にはもってこい。家から会社まで三つの山越え。

 運動でかいた汗も、坂を下る風に吹き飛ばされる。心地よい。

 

 駒込から谷中へ抜ける団子坂を下ると不忍通りにぶつかる。そこを越えると、三崎坂だ。

 春先には谷中一帯に桜の花が咲き誇り、初夏には紫陽花が目に鮮やか。

 その坂の中程に、全生庵がある。

 幕末、明治の名人円朝が眠る。 



 通りかかると、ちょうど円朝まつり。怪談を得意とした師匠の幽霊画が八月いっぱい展示されているとか。

 禅、剣、書の達人、山岡鉄舟もここに永眠している。

 西郷隆盛と勝海舟の会談により、回避された江戸炎上。

 遠路敵陣に飛び込んだ鉄舟の行動力と交渉力、そして胆力なくしてはあり得なかった。

 西郷をして、金もいらぬ欲もいらぬ、命すら惜しくない誠に始末に負えない男、と言わしめたとか。

 まさにこの男が江戸を救ったのだと思っている。


【寺町に蝉降りしきる終戦日】哲露




 鉄舟の由縁か、座禅の禅寺として有名で、中曽根元首相から勧められた安倍首相も訪れる。

 青年実業家の友人と行こうと約束しているが、いまは、テレビでも話題になるほどで、予約が随分先まで取れないとも聴く。

 ブームが好きなわが同胞。落ち着いた頃にいったほうがよさそうだ。



 本日はこれから、この寺で寄席も催される。

 夏の雨が煙ってきた。

 世界から絶えない争いの根に、達人も涙しているのかもしれない。

 昨日、水戸藩邸のあった富坂を下ってお茶の水へ行くと、街宣車と大勢の機動隊が町を封鎖していた。

 物々しい有様を見て、どこにいても、いつ如何なる時でも、心静かに平和を願うほうがよっぽど好ましいと思う。

 目指す方法は違えど、家族を失いたくない想いは万国万民共通の願いと信じたい。

 さて、ローストビーフが焼き上がった。肉汁を入れたソースも出来た。

 小説も料理のように着実に仕上がるといいのだが。

 コツコツとやるしかないのだな。 

 へいへい、凡凡なり

 偉大なる先達に、合掌


  


新吉原二調鼓

2014年08月09日 | ★江戸っ子エッセイ★




【涼やかに太鼓の音色水を打ち】哲露


 山谷堀に、蝉しぐれが鳴りやまない

 いよいよ旧盆に入ろうかというのに、盛夏とはこのことか。

 新暦になっても、無理に旧暦の行事を当てはめるからおかしな感じがするのは私だけ?

 40℃近い暑さなのに立秋と呼ばれる暦のなか、今週仙台では七夕祭りが行われた。これぞ皮膚感覚で、織姫と彦星が一年に一度の愛を確かめる季節に合ったものはないではないか。ちなみに、浅草では先月のはじめに七夕祭りがあった。

 この地ではこの日から盆踊り大会やみちびき祭りが盛んだ。浴衣姿も花火大会からかなり見受けられる。年季の入った先輩の和服も素敵だが、この季節、若い人の浴衣姿もまたいい。

 浴衣にPORTERのバッグを斜め掛けするのはご愛嬌でござる。彼女の手前気張ったお兄ちゃんを、微笑ましく見守ってくりょ。

 

 レトロモダンな外装に戻った東武浅草地下街で先輩らと待ち合わせる。

 昭和の焼きそばと酎ハイの横で、素朴で有名なタイ料理屋が立て込んでいた。

 先輩らと仲見世を横ぎり、地元の角打ちへご案内。

 リーズナブルな値段で飲めるお店でまずは一杯。

  

 久しぶりの会津桐の下駄をカラコロと、炎暑の石畳を往く。

 ドアーを開ければ、そこは冷房のオアシス。

 扇子をパタパタと仰ぎながら、まずはローカル生ビールをぐびりッ!なのだ。

 喉が潤った頃、そろそろお時間。またしてもカラコロと浅草寺へ向かい、地元御用達のあんですマトバへ。あんぱん世代の先輩ら、嬉々とお土産を選んでいる。こういう衝動買いもまた浅草散策の愉しみである。

 観音裏を進み、アニマル浜口、京子親子の道場の前を通る。

 和のお稽古やJAZZなど様々な催しを開く【花の辻】はその並びだ。

 先輩らと記念撮影をパチリッ!



 中学の同級生であり、立教大学の教壇に立つ、安原さんがまずは挨拶を。

 和の伝導師、望月太左衛さんは打ち水のようなスキッとした声で会を取り仕切ってくださった。

 お次は新吉原伝統の二調鼓の芸を、唯一継承する二三松さんの登場だ。

 

 大小の太鼓をセットするのも、芸子のたしなみだったとか。

 みなこ姐さんと組んで、お座敷に出ていた二三松さん。半玉の頃はさぞ旦那衆に可愛がられたことだろうな。

 背筋がしゃんと、立ち姿が美しい。

 この後、私たち観客も二調鼓を打たせてもらったが、姿勢が悪いと良い音が出ないのだそうだ。

 私は幾度か音を確かめることができた。手首のスナップを効かせ、凛と鳴る音色には恍惚となる妙味がある。旦那、病みつきになりまっせ。

 当時はこの準備中におしゃべりしていることが、若い半玉さんたちの愉しみのひとつだったらしい。それをのんびりと眺める旦那衆にも余裕があったのだろう。

 休みなしに立ち働く昔のヒトは、些細なことを遊びにし、そんな僅かな息抜き時間が貴重だった。 

 最後は生ビールで懇親会。二三松こと、吉田さんのお話が聞けて実り多い会だ。

 

 柳通りへ戻り、さくまを通って、馬道へ出る。

 先輩たちを連れていきたかった縄のれんの丸太ごうしにお邪魔する。

 夕刻の早い時間だから、席は選び放題。

 

 富士のミネラル水で割った麦焼酎をたのむ。

 生鰹の刺身、夏の薬味がたっぷりと入ったぬたや糠漬けでさっぱりとご相伴。

 ここのメイン、おでんを頼むと、名物のご主人が女将さんと喧嘩している。

 お客本位のご主人の人の良さが透けて見えて嬉しかった。


 

 仕入れた氷も見事で、女将さんとご主人が交互にお代わりを入れてくれる。今日三度目の酒宴もホイホイ進むわい。

 積もる話しはあっちに飛び、こっちへ流れ、あっとうい間に日が暮れてしまった。

 五重塔に灯が点る頃、ほろ酔い気分で、浅草駅へ。

 神田結びから貝の口へ結び直した白帯もこなれ、着流し風に裾がめくれている。

 ああ、なんとも気持ちい宵の口だこと。

 先輩らを駅で見送った後、カラコロと紙洗橋へ帰る足取りも軽かった。

zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz

 
 
 この猛暑に会社はまさかの引っ越し。腰を痛め、身体はぼろぼろなり。

 そんな残業帰り、谷中の三崎坂を登り、古巣の上野中学校から寛永寺の墓を横目にチャリでいく。

 月夜をぼんやりと眺め、坂を下ったケーキ屋で息子のバースデーケーキを購入。 

 もう14歳。

 子供の若さに、老いを感じるのも幾度か。

 焦っても、いいことなどない。

 できるときにやる。

 結局これしかないのだな。

 皆さんも、いい夏休みを

  


隅田川の花火

2014年08月02日 | ★江戸っ子エッセイ★

 


 7月最後の土曜日

 夏の風物詩、隅田川の花火に興じたのだ。

 昨年は突然のゲリラ豪雨に、えっ! とまさかの中止にがっかりした。

 昭和53年の大川に復活してはじめての取りやめだった。

 私が産まれる前、昭和36年まで両国の川開きと封建時代と同じ呼び名だったようだ。

 その伝統の花火が空を焦がし、見上げる人々を魅了する。

 

 夏至が過ぎて陽は短くなっているものの、開始直後の暮れ六つ頃はまだ明るい。

 枝豆にビールを用意した。夕空を眺めていると、夏の空は徐々に背景が黒に包まれ、火花が浮き出すように映えていく。

 町に、た~まや、か~ぎや~と旧い花火師たちを称える声が響いている。

 
 


 テレビ東京で恒例の放送。地元に配られた花火コンテストの名前を調べていると面白い。こんなにゆったりと観賞したのはいつ以来だろう。

 ハート、ピカチュー、ピース様々な形の花火が夜空を飾る。きっとこれを見ている小さな子供たちの記憶に刻まれていくのだろうな。

 それにしても不思議。どうしてこんな形が造れるのだろう? 伝統を受け継いだ花火師の技に唸るばかり。

 往時は両国橋に溢れんばかりの人だかり、涼風を求めて屋根舟、屋形舟が大川を埋め尽くしたようだ。

 お江戸に夏が来た瞬間である。

 


「弾け飛ぶ七色の音に胸こがす」哲露

 
 はや、7月も終わり、8月に入る。

 今年まだ海に入っていない。

 取材に明け暮れた20代、釣りとカヤックに通った。波乗りにハマった30代。海からこんなに遠ざかってしまうとは思わなかった。

 子育ても佳境か、ピークか、まだ先があるのか。

 粋を気取って真白い帯を新調した。

 今日は、これから浴衣を身につけ、奥観音の花の辻へ、中学時代の友人が主催する二調鼓を聴きにいく。

 新吉原唯一の継承者が奏でてくれる。

 留守にするので、家族分のおにぎりも握った。

 会津桐の下駄を鳴らして、いざ出陣なり。

 さて、今日はどんな酒を飲もう

 
  


河童の願い。

2014年07月12日 | ★江戸っ子エッセイ★


       合羽橋本通り商店街

 毎年文月に入ると、はじまるイベントがある

 言わずと知れた、入谷鬼子母神の朝顔市と合羽橋の七夕祭りである。

 あ~、浅草に夏が来たって感じ。

 国際通りから昭和通りにかけての長い本通り、七夕幟が本家に負けじと壮観にたなびくのだ。

 さあ、内輪に浴衣に、ベビーパウダーを鼻につけて、夏祭りに出掛けよう。


「夕涼み河童の祭り下駄鳴りて」哲露




 封建時代、度々の洪水に立ち上がった合羽屋喜八が埋葬された曹源寺がある。

 同人の河童の会の面々とここ2年つづけて参拝している。

 そう、ここは河童大明神の見守る河童の町なのだ。

 かつての新堀川を越えて様々な店が連なる。

 下町風はもちろん、珍しい各国の露店も見物。

 色とりどりの大道芸が世相に疲れた人々を笑顔に戻している。




 女の子たちの可愛らしいフラに癒され、起き上がり河童にパンチする男の子に微笑む。

 これ、ちっちゃい頃よくやったなぁ。

 こんな単純なもんが楽しかったんだよね。昔も今も子供の遊びは単純がいちばん。

 何もなければ、子供は安上がりの想像力で楽しめる。



 懐かしいポン菓子の大音響に吃驚し、きびだんごのおじさんに少年の目が輝く。

 妹の的当てをそっと覗くお兄ちゃんは、まるで昔の自分を見ているようだ。 

 コロッケを買い、唐揚げを食い、冷えたビールを飲む。

 梅雨の干ぬ間の午後、こんな幸せはない。



 夕刻になり、叩き売りが増えた。

 三丁目の夕陽よろしく、JAZZをつま弾くおっさんたちがカッコいい。

 料理も酒も余ってはならじと売り子の声がひびく。

 歩きながら、あっちこっちと目移りしてしまうわ。 




 兄ちゃんの熱心さに、おもわず、釣られて買ってしまった。

 残り三個のソフトクリーム。

 兄ちゃん、冷ゃっこくて旨かったよ!



 バイオリン弾きもいたし、こんな芸術も見られるのは、上野の森が近いから。

 そう私の学んだ上野中学のお隣は、芸大なのだ。

 いろんな才能がある。

 それに気づき、活かすも殺すも自分次第。

 羨ましいことに、若者にはチャンスと時間がたくさんある。

 思う存分やって欲しい。



 震災と政府間のいざこざもあり遠のいていた観光客も戻ってきた。

 私が書いている横で、欧州のどっかから来たとおぼしき外国人数人が短冊に記している。

 七夕の願い、理解しているのだろうか。

 その真剣さ、微笑ましいことこの上ない。

 こうした文化の交流と、人間同士の友好が平和につながることを祈った。



 東京スカイツリーがずっと眺められる河童ストリート。 

 妖か忍術か、お面が一瞬に変わる大道芸に拍手が起きていた。

 一年中祭りのある浅草においても、このイベントは至極愉しい部類に入る。

 続けて行われたほおずき市は台風に祟られたが、売り子のお客も逞しい。

 台風の隙間に、橙とオレンジの鮮やかなほおずきがジャンジャン売れていた。

 来週の足立の花火は同人の大切なイベントで見れない。だが月末には隅田川の花火がある。

 夏はこれから。

 台風一過のあとの二重の虹が幻想的だったそうな。

 さて、一番海は何時いこうか。

 そんなことをつらつらと考えるのも、夏の愉しみのひとつであるな