goo blog サービス終了のお知らせ 

週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

ヴィンセントが教えてくれたこと

2015年10月24日 | ★江戸っ子エッセイ★



【秋の夜の孤独の心通わせて】哲露

 
 若い頃に観た、パラダイス・アーミーは衝撃的だった

 わたしのなかで初めて出会った、アメリカの本物のコメディアン。

 ゴーストバスターズも笑えた。マシュマロマンが怖いなんて、ダンエイクロイドとのコンビは最高。

 ジョンベルーシ亡き後、よきパートナーに巡り合えてよかったと思った。

 それが、ビルマーレーだ。

 大好きだったアメリカンドラマ、チャーリーズエンジェルの映画版のボスレー役は、いい味だしていた。

 そして、ロスト・イン・トラストレーション!

 渋みを増した演技は、俳優としても円熟を迎えたことを感じさせた。

 笑いの神が、己と世の退廃を臆面もなく演じる勇気がすごい。



 

 そして、この「ヴィンセントが教えてくれたこと」。

 ヴィンセントは、口汚く、酒浸りのベトナムの帰還兵の成れの果て。

 町の住民たちは煙たがり、匙を投げるほどの無法ぶりである。

 その嫌われ者の隣へ引っ越ししてきた少年。 

 果てしてどうなることやら。

 娼婦でヴィンセントに関わるナオミワッツがまたいい。

 久しぶりにコメディアンとしてのセンスを感じさせてもらった。

 もちろん、演技者としては突き抜けた達人の域でもある。

 鑑賞後、諦念とほっこりを混ぜた感覚を味わえた。

 この秋のオススメがまた一本加わった。





 火災から再建後、初めて来訪。

 佇まいがそれこそ味の、かんだやぶである。

 風の抜ける小上がりは健在だが、昼時にいったので野暮は承知。





 秋の風物詩、牡蠣そばを食す。

 鰹と牡蠣、海の滋養をいただく。

 おつゆまでしっかりと。

 さて、本日から東大前、本郷の古宿で、文学の合宿だ。

 100名ほどの作家が世界中から集まる。

 今年は誰が笑い、誰が泣く。

 楽しく、厳しい小説のお勉強漬けである。

 そろそろ出かけるとしよう。

 皆さん、いい週末を 
 


水かけ祭り

2015年08月23日 | ★江戸っ子エッセイ★




 ついに行ってきた! 深川の水掛け祭り

 近いわりに、夏のこの時期に行ったことがなかった。

 富岡八幡宮の祭礼は、江戸三大祭りの一つと言われる。

 暑い季節にぴったりのお水まみれがいい。

 お神輿、担ぎ手、ちびっ子、みんな道々でお水をかけられている。

 見ていても気持ちよさそう。




 
 本家、一ノ宮のこのデカいこと!

 なんと4.6トンあるという。

 あまりの大きさにため息がでるが、その大きさゆえ毎年出すことができないのが悩みらしい。

 そのために作られた二ノ宮がかつての水郷の町を練り歩く。

 その二ノ宮も三社の宮神輿くらいに大きんだけど。
 




【照ら照らと燃える神輿に水掛けて】哲露 


 放水があちこちで始まる。

 半纏も担ぎ棒もカメラもすべてが水を浴びる。

 日に当たるお神輿に虹が出そう。

 これが見たかったのよ。

 晴れて念願叶った。
 




 
 太鼓を打つ人、和服で唄う人、焼く人、食べる人、飲む人、担ぐ人。

 それぞれに祭りを楽しんでいる自由さがいい。

 深川はあさりの町。

 浅蜊で炊いた深川飯はあまりにも有名だが、串でも売っていた。

 ビールのつまみにがぶり!
 



 
 三社祭を見慣れた浅草っ子には珍しい棒が見える。

 縦に六本渡された担ぎ棒。

 長さも長いし、サイドも二本あるので、たくさんの人が担げる。

 わっしょい、わっしょい!

 整然とした担ぎ手たち。

 鳥居をくぐるのだが、見事綺麗に一発で決まる。

 三社祭じゃありえない。

 品がいいのか、息が合っているのか。

 同じ下町でも、その土地によって、人柄も変わるんだね。

 喧嘩は江戸の華というければ、平和主義者のおいらはこの祭りに見習いたちと思った。

 2年前に観た、相州節を唄いながら、海へ入る茅ヶ崎の浜降祭もよかった。

 伝統の祭りって、やっぱりいいね

 来週の浅草はサンバカーニバル。

 花火大会の復活したすぐ後、昭和56年から継続している。

 まだ子供だったおいらは、こんなに続くと思わなかったよ。

 処暑は寂しいけど、まだまだ夏は続くのだ

 


すみだがわ。

2015年08月08日 | ★江戸っ子エッセイ★



 
 炎暑が続く日本列島

 140年の観測史上いまだかつてなかった連続8日の真夏日だとか。

 それでも暦の上では立秋。

 だがどんなに暑くても、わたしは夏が大好き。

 Tシャツ、短パン、軽装で過ごせるし、

 海に入ろうが、シャワーを浴びようが、髪がすぐに乾く。

 夕涼みの小上がり、汗をかく瓶ビール、なんて素敵なんだ。

 夏に向かって生きてる私は、秋という言葉を目にするだけで淋しくなってしまう。

 朝方、アサヒビールのビルにスカイツリーが映る。

 黄金に染まるツリー、何ともいえず美しい!

 蝉時雨の嵐の中、隅田川を走る。


 


【清洲橋水面流るる夏の涼】 哲露

 
 小名木川に鎮座するのは、かの芭蕉公。

 朝と夕と、なんと台座の向きが変わる。 

 遊び心溢れる趣向、知ってました?

 芭蕉記念館もこのすぐそばにある。

 翁は川を見ながら、何を想っているのか。


 


 そのすぐ横に正木稲荷。

 おできの神さんなんて珍しいこと。

 芭蕉庵があった名残とか。

 ご立派な稲荷なり。


 



 して、こちらは芭蕉稲荷大明神。

 お狐さまと蛙さんがおりやす。

 まったく上達しないのだが、芭蕉公をいつも心のそばに置いて詠んでいる。

 すみだがわ 蛙飛び出す 屋形船

 お粗末。






 そして、今年もっとも熱いのは、この話題。

 戦時中の思想を取り戻すべく動き続ける、ある種凄い連中がいたもんだ。

 デモや声を上げる市井の人々や若者を上から目線で威嚇する偽政者たち。

 自由にモノ申すことができる国でい続けるために、微力ながら私もできることを行動したいと思う。

 偉い人たち、市井の声に蓋をしちゃあお仕舞いよ。



 


 酷暑の中、ひるまず声をあげ続ける人々。

 黙っていられない。

 黙っていたら、後世、子供や孫の代に言い訳ができない。 

 みなさん、そんな心持ちなんだろう。

 流される日々だが、いまこそよく考えて毎日を生きたい。





 吾妻橋アサヒビールの隣に立つ、勝海舟。

 お江戸を火の海にしないため、西郷隆盛との会談で争いを避けたのはあまりにも有名。

 前段で山岡鉄舟の命を顧みない行動もあった。

 勝さんの指差す先に、きっと明るい未来がある。

 隅田川のランニングコースには、こんな史跡がた~くさんあるのだ。






 人形町で食べた京粕漬けの魚久。

 ここは西郷さんが晩年暮らした屋敷跡だとか。

 みなみマグロの粕漬けもさることながら、魚沼産のコシヒカリがつやつやとした甘さと旨さが絶品だった。

 人は何故、マッチョな思想に走るのか。

 拳を振り上げ、玉を込め、ミサイルで威嚇する。

 その先の愚挙を学ぶのが歴史ではないのか。

 ヒトの制御不能なモノはいらないよ。

 大切なヒトと、平和に、笑顔で美味しいモノを食べられる幸せ。

 わたしはそれだけを望む

  


暑中お見舞い申し上げます⭐︎

2015年08月02日 | ★江戸っ子エッセイ★




【水を打つうちわの風が酒のアテ】哲露


 夏本番、8月に入った

 旧暦の名残で、この月を葉月と呼ぶ。

 南から大風が来ることから、南風月(はえづき)が語源とも言われるらしい。

 西瓜、ビーサン、江戸風鈴の音、浴衣、うちわ、汗のかいたビール瓶、水打ち、麦茶、夕立ち、甘酒。

 夏を連想する風物詩は数多ある。

 されど私のなかでは大川の花火がいちばん象徴的。

 今年は適度に風も吹いて煙も流れるラッキーなコンディション。

 夕暮れから暮れ八つ。

 隅田川を見下ろす夜空に華が咲く。




 
 隅田川花火の日の早朝ランニング。

 第一会場桜橋では、スカイツリーを背に、打ち上げ場の設営をしている。

 ここらは夕方には通行止めになってしまう。



 
 隅田グラウンド、リバーサイド競技場は、燃えかすが飛んでくる。

 だから、翌日のお掃除のためにシートを引いていく。

 あっしはランの後、この裏手にある屋外プールに飛び込む。

 そのプールを見ながら、設営の方がつぶやく。

 「ああ、プールに入りながら仕事できたら最高だな」

 まったく、苦労さまですな。

 この方々あっての花火。感謝しなくちゃいけねえ。




 
 夕焼けがでる。

 美しいグラデが気分を盛り立てる。

 枝豆、冷製サラダで、ビールを飲む。

 ああ、正しいお江戸の夏がきた。

 空砲の度にベランダへ出るが、まだかいな。

 テレ東の放送で確認しながら、行ったり来たり、花火が待ち遠しい。





 ついに上がった。

 大輪の華にあちらこちらで歓声が上がり、嬌声が響く。

 明るいうちの花火もいいもんだ。






 享保17年(1732年)の大飢饉、疫病で大勢の民が亡くなった。

 翌年、時の将軍吉宗は、犠牲になった民の慰霊と悪霊退散を祈念し、水神祭を行った。

 その際に、両国の料理屋が公許を得て花火を打ち上げたのが大川両国の花火の始まり。

 何事も始まりがあり、終わりがある。

 昭和53年に復活して、隅田川花火となる。

 当時小学生だった私は、夏のたびに花火を観て育った。

 バブル全盛の頃には、友達、知人を誘い、屋上で大宴会を開いた。

 いつまで続くだろうか。

 折しも、きな臭いことが叫ばれる昨今。

 平和な花火の燃えかすが、孫の代まで続くことを祈りたい。

 珍しく仕事に出る前の朝と帰宅後の晩と、執筆してた。

 浅草の民の優しさと強さ、悲しみと切なさを書いている。

 きっと、これからも。。

 そんなわけで二週間ぶりの更新でした、すみません。

 大好きな夏。

 皆さんにも楽しい思い出を作って欲しい。

 どうか水分補給をして、ご自愛くださいませ
 


三社祭の日。

2015年05月19日 | ★江戸っ子エッセイ★




【お祭りや酒飲み担ぎ空笑う】哲露

 
 今年の冬は長かったわ

 ってことで、待ちに待った三社祭。

 5月16日の朝、浅草神社の氏子町内の渡御が始まる。

 オイラが羽織るは、象三町会の半纏。

 ゾウサンじゃないよ、キサカタ三丁目と読むのさ。

 今年は順で、三年ぶりに一之宮が担げる。うれしいわ。

 神輿が100基以上集まる浅草寺裏手。

 その前列に神輿を構えることができるのだ。 

 訳もなく、うふふに浸ってしまう。

 町内神輿が誇らしい瞬間だ。




 待機中は、パピコでエネルギー補給!

 この間に、どんだけ酒を呑んでしまうか!?それがその後の担ぎっぷりを左右するのだ。

 五重塔は今日も鎮座する。

 雨模様の空も晴れ渡った。

 さぁ、いざ発進だ。

 浅草神社を参拝し、境内を一周する。

 ここが結構長い道のりやんす。

 喉が空っから。

 で、ビールなんだわ!




 一休みした後は、提灯が灯り、夜神輿が始まる。

 ある種夜這いも祭りの伝統。血の濃さを薄める人の知恵でもあった。

 灯りに血が騒ぐのは、私だけじゃないやろ。



 夕方からスタートする連合渡御。

 朝顔市の浅間神社脇が、うちらの町会を含む連合のクライマックス。

 神輿が集まり、拍子木の乾いた音が響くと、神輿が一斉に上がるんだ。

 何年体験しても、鳥肌が立つ瞬間だわ!




 祭り囃子が鳴り響くと、落ち着いていられないのが江戸っ子の性分なのだ!

 子供たちはこの日のために、日々練習してきた。

 子供の真摯に、オトナたちも頭を下げねばなるまい。 

 高らかな笛の音は、東京にいても望郷の念を思い起こす。

 オレも木笛を吹きたい。



 天狗さまのお通りだ。

 代々木のデングは怖いけど、この天狗様はお優しいはず。。

 しかし、お暑いやろな。




 日が変わって、日曜日。

 本社神輿の宮出しがあり、三基の神輿が浅草の町を巡る。

 今年の象三は、一之宮が担げる。

 こんな嬉しく、誇らしいことはない。

 サラシを巻いた本社神輿が来ると、半纏姿の誰もが興奮し、尋常ではいられない。

 殺到する氏子たちを見ながら、神輿のセンターへ入り、お手伝いを仰せつかった。

 御神輿の誘導も大切な祭り事なのだ。




 知り合いにもらい、ビールを立て続けに飲んだ。

 それでも酔わないのは、宮入りに参加するためか。

 橋向こうの連中が騒いでいた。

 まさに、仁義なき戦い。

 火事と喧嘩は江戸の華とは言うものの、オイラは元来の平和主義。

 喧嘩を避け、境内で宮入を見学する。

 それでも、やっぱり、感動するわけさ。




 最後は青年部のご褒美で、鳳凰の尻尾から蔵に入る。

 老舗宮本の男衆が、早速神輿を解体し、整備している。

 これが男、職人の仕事でやんす。

 祭りはいい。

 三社はいい。

 朝から晩まで担いで、ビールを飲み続けた週末。

 また何もせずに終わった週末ってことだわ

 

  


天下祭り!ご遷座400年!

2015年05月10日 | ★江戸っ子エッセイ★




【やげん堀天下一やと五月晴れ】哲露


 立夏過ぎ、公園の緑が眩しいほどの陽射しに輝いている

 1月のひと月サボったつけで溜まった脂肪を、一気に絞ろうと、GWから9日間で約100km走った。

 それでもまだまだ体重は落ちぬもの。

 体脂肪だけが1%落ちた。

 やはりここが正念場。気を抜かず、頑張ろう。

 創作は半年ぶりに再開。あれやこれや書きたいことがたくさんある。

 ひとつ一つ書いていくしかあるまい。

 そんな今日は、30度を越えるRUNの最中、嬉しいことに遭遇した。




 やげん通りで、神田明神の町会神輿に出逢った。

 以前の日本橋薬研掘町の掘割近く、江戸にからしや徳右衛門という薬種問屋があった。

 この掘割の形が薬研という、薬を潰す道具に似ていてそう呼ばれたそうな。

 ここを舞台に書いた時代物は昨年の本郷の分科会に出した。

 七味唐辛子はこの徳右衛門さんが考案し、将軍様も愛用されたとか。

 それから京都の七味家(山椒の香り豊か)、善光寺の唐辛子(躰が温まるよう生姜入り)へとそれぞれ独自の味に発展していく。

 私は京都清水坂の七味家の風味が好きで、やげん堀の大辛に山椒を多目に調合してもらっている。

 あれもいつか改稿しなければならないな。

 「ワッショイ!ワッショイ!」

 担ぎ手の旺盛な掛け声は、下町の市井に生きる人々の活力そのものだ。




 わが同人のエース、いとうみく氏の【空へ】も祭りが題材の一つになっている。

 児童文芸家協会賞を受賞した作品。

 主人公のお父ちゃんが大の祭り好きなのだ。 

 ああ、日本橋の鉢巻き巻いた担ぎ手の笑顔を見ていたら、無性に担ぎたくなってきた。

 封建の頃、江戸城内に神田神輿の行列が練り込んだ。

 時の将軍様や御台所様がご覧になられたことから、【天下祭り】と人々は呼ぶ。

 今年はなんとご遷座400年の記念の年に当たるという。

 今夜遅くまで町会神輿は練り歩く。

 お近くの方は今からでも間に合いまっせ。

 ビール片手にどうぞお越しやす。



 浅草寺の裏手には、来週三社祭の氏子町会神輿が集結する。

 そこに建てられていたのが、平成中村座だ。

 それもGW明けに早速解体されていた。

 両国橋の広小路では、露天の桟敷で舞台も行われていたらしい。

 身近でさぞ迫力と臨場感のあったことだろう。

 勘三郎さんの意志は受け継がれている。



 浅草神社では、三社祭の本社神輿が今年初のお目見え。

 私の担ぐ町会では、三年ぶりに一之宮が廻ってくる。

 次男も、サッカーの練習の後、ぶっ飛んで帰ってくると息巻く。

 ピーヒョロとかん高い木笛が響けば、江戸っ子は血が騒ぐもの。

 来週が楽しみ!!



 先週、久しぶりに歌舞伎町を歩く。

 なんとTOHOビルにの上に、ゴジラが出現!!

 迫力はあるが、ゴジラってこんな大きさだっけ?

 放射能の落としだね。

 アメリカでも原発の事故があったらしい。

 人類はそれでも危険より金を選ぶのか。

 文芸、芸術の世界だけでも、平和を提唱していきたいものだ。

 江戸の町は、来月まで神様を担いで練り歩く。

 市井の人々の祈りは、やはり平和なのだよ


鴨川の夕べ

2015年05月02日 | ★江戸っ子エッセイ★


    鴨川(三条から)

 京都の北山へ日帰り取材

 この町を訪れるのは、七年ぶり。

 初夏の陽光に、都の川面が輝いている。



 朝八時、東京駅でいそいそと深川めしを買い込む。

 なんといっても浅蜊は旬だもんね。

 10分おきに出発するのぞみのホームは慌ただしい。



 文芸春秋の書評欄と芥川受賞の穴を読む。

 江戸前のハゼの甘辛い歯ごたえ。

 穴子の身はぎっしりふんわり。

 浅蜊の佃煮は、生姜を効かせた上品な味わいだ。

 本来の深川めしとはちがうが、

 汁が滴らない弁当のシャリのほうが断然いい。

 文庫本にいく前に、もう京都についてしまう。




 地下鉄に乗り込む前に、古都の大気を吸い込んだ。

 ああ、戻ってきた。

 烏丸線に乗り、四条を越えるとすぐに北山駅。

 タクシーに乗るも、まだ知るヒトぞ知る穴場の美術館の説明に時間がかかる。

 細い道、登り下りをクネクネ。

 ここが武人であり茶人であった古田織部を偲ぶことができる【古田織部美術館】。

 500点にも及ぶ茶道具やら武具が閲覧できる。

 利休の弟子であり、本阿弥光悦の師匠でがんす。

 このご仁を抜きに、戦国絵巻のカルチャーは語れないらしい。



 聚楽第の名残か、金粉の装飾がみえる。

 往時はさぞ絢爛だったろう。

 IT やSNSに囲まれた現代人の想像力は陳腐だ。



 熊の毛で覆った兜。

 甲冑も凝りに凝ったり。

 個性を主張するものとして、武人それぞれに趣向を凝らしたということか。

 新しく建てている茶室も本邦初公開で撮影が許された。

 日本一窓が多く、解放感が溢れる造り。



 これは庭園にある茶室。

 丸窓に特徴がある。

 窓の先には、屋形船が浮かぶ。

 春の花見、秋の紅葉は見事だとか。

 行楽で混み合う喧噪から離れて、穴場のスポットだ。

 気になる方は次号の歴史人をご覧あれ。




 本格的に茶を点ててくれた。

 茶器、温度、抹茶の甘さが鼻に抜け、渋味に舌が歓喜する。

 茶菓子は、おどい餅というらしい。

 甘過ぎずモチモチとした食感に、黒豆と上質のきな粉が絶妙なバランスで調和する。

 都会のあれやこれやを忘れるほど、ゆったりのったりした時の流れだ。


          本能寺本堂

 取材も無事に終了。

 一人別れて、本能寺へ。

 矢に追われ、火に包まれた本堂は再建されたものが鎮座する。



 戦国の知性と狂気、信長公が祀られる。

 人生五十年下天のうちに比ぶれば夢幻のごとくなり。

 敦盛の詩を頭の中で唱和しながら、合掌。



 悠久の流れ、鴨川では納涼床の準備が始まっていた。

 京の人々が、カップルやらサラリーマンやら、外国人やらのんびりと時を過ごしている。

 内勤から解放された男は、つかの間の暇を心に刻む。

 烏丸御池から三条、川沿いを歩く。





 先斗町の路地が懐かしい。

 京都の夕刻でいちばん好きな場所かもしれない。



 この季節は鴨川をどりだす。

 床で豆腐を含み、松竹梅を飲って、をどりを観る。

 なんと贅沢な遊びやろ。



 一見さんでも入れる店がある。

 おっかない京都の店も、グローバルの波に、外様でも愉しめるようになった。

 ああ、なんで日帰りなんや。

 生きていればまた来ようぞ。



 かつては街道から運んだものか、小浜の焼き鯖。

 黄金の脂が照かっている。

 こりゃ不味いはずがない。



 錦市場では、必ず雑魚山椒を買う。

 京野菜の漬物と、これが私の京都の味。

 酒にも、炊きたての白米にも合う。




【虫集る河原にをどる先斗町】哲露

 
 先斗町では飲めないので、鮭とばやらちくわを買い、のぞみに飛び乗った。

 これが庶民の憩い。

 屁の突っ張りの贅沢や。

 極上のエンターテイメントを読み、恵比寿を飲めば、そこは極楽浄土なり。

 仕事とはいえ、小さな旅。

 出張帰りの至福が、身に沁みる車窓。

 生きている実感に包まれている。

 本日からゴールデンウィーク。

 皆さん、それぞれに充実したお休みを


 


豪奢な食事。

2015年03月21日 | ★江戸っ子エッセイ★



 如月に部署異動してからというもの、すっかり行動範囲が変わった

 まさしく、チェ~ンジ!!

 このところ、豪華なランチばかりで体脂肪と体重が増えている。ヤバッ!

 写真は銀座の裏路地、知るヒトぞ知る店菊川。

 元新宿の大手百貨店の外商マンの先輩にゴチになる。

 こんな贅沢してバチがあたるんやないか。

 神様、仏様。真面目にお仕事頑張りやす! 

 静かなランチタイム。

 二階の和洋折衷のテーブル席。

 閑静な室内で、大人しい紳士が連れた奥様と娘さんと会話した。

 こんな風情だからこそ、生まれる出会いもある。

 家族で昼間の銀ブラランチ。

 なんて素敵な光景だろう。 



 別の日は、新橋でライバルだった版元の先輩とランチ。

 復帰祝いだと焼き肉をゴチになる。

 ああ、ありがたや。

 散り散りの版元と代理店の旧い仲間との春の幹事を頼まれた。

 ガッテンですぜ、K兄。



 変わり果てた渋谷の街でも、長い付き合いの広告マンと昼飯。

 サラダバー、ドリンク付きの火鍋。

 仕事もプランベートも、毎日が楽しい。

 経営者の厭味もここまでは届かないわけだ。

 この自由な時間が永く続けばいい。



 これは上野アメ横のアーグラー。

 前職の版元の頃から20年近く通う、インドカレーの老舗だ。

 部署が変わっても会いたいと言ってくれる代理店マンUさん。

 5段階中の4の辛さが人生の深淵を教えてくれる。

 やっぱりここのサグチキンとナンは絶品だわ。

 それにしても、30代前半まで軽く平らげた量が重く感じる。

 胃の容量からじじいになっているのか。



 オヤジの街、新橋の旧い駅前ビルにある立ち飲み屋。

 先輩が連れて来たかったと言っていた店。

 ビールも抜きで、いきなり純米酒。

 小粋なツマミと、三種の酒で1,000円とはリーズナブル。

 そういえば、雑誌に紹介していたヤツでやんすね。
 


 風味、味わいの違う、吟醸と純米に酔う。

 空腹の胃に、贅沢な時間だ。

 このまま銀座八丁目に流れ、やはり旧いビルの地下街へ。

 ここはおいらが先輩をお連れした。

 半世紀続ければ、それはすでに骨董だ。

 女将さんの笑顔も、立ち振る舞いも国宝級。





 夜の銀座へ出勤前の若いお姐さんが食事をとっている。

 一種味なツマミと言ってよかろう。

 ガス灯の街の夜は豪奢なもんだ。




【縄のれんふわりと薫る猫の恋】哲露

 
 つづけて外苑前の夜。

 出版界に長く君臨する兄貴との会合。

 外回りになって、やっと仕事するチャンスがきた。

 会社では無頼で通っている兄貴。やはりカッコいい。

 男は見た目より色気だ。

 キビナゴを、琥珀が霞む純米の燗で流し込む。

 そしてブリの焼き物があればほかには何もいらない。

 兄貴は見た目もチャーミング。誤解なきよう。
 


 博覧強記の業界通と語らう夜は、この瞬間にも思い出となる。

 花見会の約束を交わしたが、後日ブッキングがあった、哲っちゃん、ゴメンとのメール。

 沖縄に移住計画を立てている兄貴。

 そんな兄貴の家で、いつか古酒を傾けるのもわるくない。

 怒濤の日々が続くが、再会したRUNの成果が少しずつ出てきた。

 バリバリ仕事して、食べて飲めるってのは男っぷりが上がるというもの。そんなわけないか。

 決して高級でない食事だが、大切なヒトとの会合は僕の宝物。

 日常を真摯に生きることこそ文学に通じる、そう信じて今宵も飲むのだ。

 染井吉野が待っている。

 明日の小説のために、夕暮れの一杯は欠かせない


ポークに酔った夜!?

2015年03月08日 | ★江戸っ子エッセイ★



 仕事のリズムが外回りに戻り変わった

 いや、元に戻ったということか。

 両国にある第一ホテルで、取引先とランチと洒落込むのも、その特権の一つ。

 前菜のハムも野菜もこだわった自然食。

 

 これは大塚人参のスープ。

 大塚っていっても、山梨県の緑豊かな土地のこと。

 添加物も生クリームも入らないのに、甘くてスムージー。

 大地の恵みをそのままいただく。



 そして、これが話題のヘルシーな豚肉、ノンメタポークだ。

 これが目当てで訪れたわけだが。

 脂肪が少ないのに、赤身はとても柔らかくジューシー。

 フォークで押すと、肉汁が溢れてくる。

 千葉大学とさる企業が共同開発した発酵飼料で育った豚からとれる。

 糞の臭いを抑えるために与えたところ、抗生剤も投入せず、健康でビタミンB1の豊富な豚が出来たらしい。

 タレをかけずとも、塩胡椒だけで十分。

 噛むほどに甘い黄金の汁の香りが鼻孔を抜ける。

 ご飯もパンも進むが、ああ、赤が飲みたい。

 ランチなので我慢したわ。



 野生のベリー、マンゴーとエスプレッソのアイスも絶品だ。

 こんな贅沢、バチが当たるんとちゃうか。



 同じ週末。

 今度はそのポークをしゃぶしゃぶでいただいた。

 いろいろと選べるお出汁だが、豚肉を味わうために、シンプルな昆布出汁と鶏ガラ出汁にした。

 サッと湯を潜らせるだけで、ふっくらとした食感だ。

 舌が肉のまる味を受け止め喜んでいる。



 脂っぽさがないのに、甘みはしっかりと残る。

 乳酸菌、納豆菌、麹菌、発酵する食材は生き物の腸に届いて、健康な肉体を作るという証明なんだろな。

 この発酵飼料は、牛にも魚にも野菜にも応用できるらしい。

 現在は鳥で試験中とか。

 私のチームがお手伝いすることで、世に広まれば、人のためにもなる。

 これは夢のある話しだ。

 いざ明るく前向きになれる材料があるってのはハッピーだね。

 世情を嘆いても、簡単には変わらない。

 身近なところから元気を発信していこう。

 仲間と気炎を上げ、ポークに酔った夜の風は優しかった。
 



 食にまつわる仕事が目の前にある関係で、幕張の食の祭典Foodexにお邪魔した。

 しばらくぶりの海浜幕張駅は、イベントで通った昔とは景観が一変していた。

 まったく、6年ぶりに歩くと、街の変貌にはビックリさせられる。

 日本各地の食、世界各国の食を目と舌で堪能。

 脂ののったブリやチョコレートコーティングされた黒にんにく。

 イタリアのチャンピオンがカットする極上の生ハム。

 樽から注ぐマコンビラージュに、カベルネ、とろりとした舌触りのラム酒、本場ベルギー、ドイツのビール。

 得体の知れないペルーのクソ甘いリゾット風、南国のバナナ、高級なふりかけ。

 中国茶に、スペインのイケメンが淹れるエスプレッソ。

 もう胃の中が、すでに東京オリンピックの前哨戦だ。

 しかし、リーゼントの決まったスペニッシュのウィンクには、おっさんもやられたね。



 おじいちゃんと孫娘のコンビが実演するタイ料理は、料理の鉄人さながらの臨場感。

 この可愛い女性が、20分の間に、トムヤムクン、話題のマッサムカレー、Fried ヌードルの三品を作る。

 真ん中のお姉さんは実況中継。

 マッサムカレーは辛くないのに香ばしい、不思議な新感覚カレー。

 このトムヤムクンのスープが旨かった。

 旨かったと伝えたら、お土産にペーストをくれた。

 コップクン クラップ!



 こんな人もいた。

 街は驚きと発見に満ちている。

 そう実感した2月のひと月だった。

 春は近いな


【髪を切り風の温さに春感ず】哲露

 

 

 



 

  


春の、ふしぎ日和。

2015年02月15日 | ★江戸っ子エッセイ★


    【ふしぎ日和】
    すこし不思議文庫
発行:インターグロー 発売:主婦の友
   2015年2月20日初刊

 同人誌【季節風】という連に所属している

 この同人限定の応募、選考の末、今月第一刷りが書店に並んだ。

 読者対象が20代の女性ということで、どんな話しが集まったのだろうと興味津々だった。

 なるほど、文学の基底の通り、この短編集に収められたのはどこにでもある日常である。

 ただ、タイトルに現れているように日々のなかのちょっぴり不思議な体験がテーマになっている。

 児童文学を志す同人たちの描くオトナの文学。

 すべてに、どこかほっこりとする温かみがあった。

 澄み切った青い空に吹く寒風の中でも、日向に差す小春日はいつの時代も健在だ。

 世間の風の冷たさを知るからこそ、この日だまりの暖かさが一段と強く感じられるのだ。



 あさのあつこ、土山優、八束澄子と季節風きっての書き手が選んだ物語が六作。

 この季節にぴったりの本。

 井嶋敦子、工藤純子、田沢五月、森川成美、村田和文、吉田純子。

 おそらく、それぞれに体験し、取材した日常が元になった味わいのあるふしぎなお話し。

 毎日の忙しさの中で忘れかけたあの不思議な感覚を、きっと貴方も思い出すかもしれない。

 どの掌編もオススメだ。

 神保町の三省堂の二階に、この明るい表紙の文庫が並んでいる。

 書店巡りがまた楽しみになった。 





【かじかんだこゝろも笑う日だまりや】哲露


 外回りが出来るようになって、昼飯の楽しみが復活した。

 神田を歩き、新橋銀座を徘徊し、赤坂を懐かしみ原宿から渋谷周辺を闊歩している。

 広告代理店に務める先輩オススメの定食屋は明治通り沿いにある。

 サバ味噌といい、メンチカツといい丁寧な仕事がされている。

 付け合わせの千切りと、大振りのシバ漬けを噛めばそれがつぶさに判る。

 ご飯お代わり自由、これで800円税込み。

 一品50円のオプションも多彩。

 今度は夜、一杯引っ掻けに来たい。

 カラダも精神も少しずつ元気になっている。

 春は近い。

 さて、今年はどこで花見をしようか

 

  


春立ちて。

2015年02月08日 | ★江戸っ子エッセイ★



 外出禁止令が解けたのだ

 平日昼間に青空の下を闊歩できるのは、どんなに開放的で清々しいことだろう。

 本郷に10年来の旧友が独立した会社を訪ね、その足で神田まで歩いた。

 やはり見たかったんだよ、かんだやぶが。

 火災の後をまったく感じさせない堅牢な造りになっていた。




【春寄せて香る花持ち心急く】哲露


 佇まいは残したようだが、中身はどうだろう。

 この日は一杯やる時間がなかったけど、みられただけでホッとする。

 利便の進化より、小体を懐かしむのはじじいの証拠か。

 奥の小上がり、風が抜ける涼し気なお姐さんの声。そんな愉悦の中で呑む燗酒のなんと旨いこと。

 靖国通りに出ると、7年前に別れた先輩とすれ違った。

 堅物で鳴らした先輩、素朴な実直を学んだ。

   外回りの初日、なんという奇遇。

 いや、これはご縁だな。

 人と人の出会いは偶然のようでご縁があること。

 これも吉原のお稲荷さんのお引き合わせか。

 

 これは長友佑都選手の新しい体幹本第二弾の宣伝。

 プロアマ2種類のチューブが入っている。

 ムックの60万部に続き、書籍第一弾が50万部を突破した代物だ。

 インテル所属の長友選手のサイン入りユニフォームが誇らしい。

 努力なくして痩せません。

 アメリカンの昼間8時間好きなもの食べていいダイエットが真実であれば楽だがそうもいくまい。

 摂取カロリーより、消費カロリーが上回れば痩せる、それだけシンプルな世界だ。

 箱根駅伝で圧倒的な記録で優勝した青山学院は、体幹のトレーニングがもたらしたものらしい。

 おいらもカラダだけでなく、鋼のような精神の体幹を鍛えたい。

 まだ修行中の身だが、本業も修行のし直しである。

 物書きに戻れるのはもうしばらく先になりそう。

 それでも心の春を待つのだ。

 がんばんべ


はや如月。

2015年02月01日 | ★江戸っ子エッセイ★



 友人知人があちこちで漏らすように、月日の流れが異様に早い

 年末から家人と交代の病で、家事に育児に仕事、家族と同僚の心のケアなどで物思いに耽る間もない。

 そしてお江戸の空っ風も向かい風で一向に前に進めない。

 飲みすらも行けず、本もまともに読めず、同人から送られた原稿をただ読み感想を伝えるだけで終えた睦月。

 それでも大川の水はたゆたい江戸湾に注ぐ。

 気がつけば雪も舞う厳寒の如月。 

 ああ、ときは無情なり。



 潮風を塞き止める汐留の高層ビル群。

 夏は炙熱のSL広場も、冬ばかりは色とりどりの電飾で都会人の疲れた心を優しく照らしてくれる。

 十年来通う中華屋は、レンガ通りにある。

 自慢の麻婆豆腐は花山椒がたっぷりの優れもの。

 淀んだ心にピリリと沁みる。

 

 大きな甕から掬う老酒を燗で頂く。

 この一杯。

 懐が冷え、景気の振るわない出版界に身を置く我らの荒んだ精神をじんわりと温めてくれる。

 自然と笑顔になるね。

 しかし、いったい、何本飲んだことやら。





 何でも旨くて安いのがこの店。

 写真にはぜんぶ撮り切れないが、どれもが老酒によく合う。

 週刊浅草と謳いながら、一月のブログは三度しか更新できなかった。

 すみません。

 先週は後にする仕事を先回りしてフル活動だった。

 明日から古巣の部署に異動する。

 運んだ段ボールも開けず、Outlookの移動も明日からである。

 六年ぶりの浦島太郎はどこへ向かえるだろう?

 まずは、業界の旧い友人を訪ね、盃を交わし現況を理解することに務めようと思う。

 そして、小説。

 自称物書きは、師走から書きたい気持ちだけが蓄積し、諦めと焦燥を繰り返してきた。

 春の予感に沈殿した創作の澱を溶かし、温め、そしてシャッフルして、忘れかけた文字を一文字ずつ思い出し、マス目を埋めたい。

 ブログも頑張らねば。

 1/12が過ぎた如月の心境なり


【ぼかり浮く月さえ飛ばす仇の風】哲露

  

 

 
  


山王初詣。

2015年01月21日 | ★江戸っ子エッセイ★



 デッカくて立派な鳥居でしょ

 毎年初詣には都内の馴染みの神社仏閣を参拝してる。

 ここ赤坂の日枝神社は芸能人の挙式も多い割と派手目な神社だが、その歴史は案外古い。江戸城に入る山王祭はあまりにも有名だ。

 小高い山に立つ。いつしか階段右手に最新式のエスカレーターがついた。利便を追及した挙句の無粋だ。

 病み上がりのいまの私にはこの電動がちょうどいいから全く皮肉なものだ。

 ちょっと前まではこんな豪奢で荘厳な造りではなく、ただ歴史を感じさせる質実剛健が好ましかった。 

 隣接するキャピトル東急(旧ヒルトン)は、ビートルズが宿泊した由緒あるホテル。

 その地下、ジョンたちが記者会見した紅真珠の間で披露宴を行った。ギター片手に友達と演奏したのは若気の至り。思い出すほどに懐かしくも恥ずかしい。 

 そのホテルも黒く暗いだけの無機質な政治家御用達、お忍びそのものに変質してしまった。 

 小ガモを連れた鴨が優雅に泳いでいた池の見えるラウンジが頭に浮かぶ。

 あの小泉さん(元首相)の通ったバーバーはどうなったんやろ? 

 


 さすがに新年明けて三週目だけに混雑はない。

 25年前、若い私はこの奥社を紋付袴で歩いた。

 痩せていた私は腹にタオルをぎゅーぎゅーに詰められたものだ。

 この日も、若いカップルが高島田と袴で笑っていた。

 おめでたいことに遭遇するのはわるくない、新年だしね。

 彼も彼女もタオルだろうか、それとも必要ないのかな。

 幸せが長く続く事を祈る。

 
 


 申年の私にぴったりの御猿さんが守ってくれる。

 だからお守りもお猿さん。

 浅草神社、乃木神社からここにたどり着いた。

 こここそおいらの神社じゃないかと思ったものだ。

 今年も家族のお守りをいただき、二礼二拍手一礼。 

 古いお札などを納め、病苦災厄とともに焼いてもらおう。



 さざれ石。

 石灰質の岩は、国歌に読まれることになる。

 歌詞にある、千代に八千代にさざれ~ってヤツだ。

 国歌発祥と云われる岐阜県春日村で採れたものらしい。

 苔のむす姿がめでたいとのこと。

 お正月の石にふさわしい岩。

 対の岩に、伊勢の夫婦岩を思い出す。

 25年通って初めて気付いたわい。


【千代の石苔の一念冬ごもり】 哲露




 病み上がりもやっと正常時に近付いた。

 でも 、二週間経った今でも咳が時折出るのだ。

 しつこいウィルスだが、歳もあんだろうな。

 烏骨鶏だかチャボらしき目出度い鳥はいなかった。

 疲弊してランニングすら覚束ないが、いまは体力を蓄える時と大人しく生きている。

 ああ、書きたいなぁ。

 それでは皆さん、おやすみなさいまし 


同人松弥龍さんのお祝い☆

2015年01月12日 | ★江戸っ子エッセイ★



 昨年のことを云っても鬼は笑わんだろうな

 師走のとある週末、松弥龍さんの初出版のお祝い会があった。

 同人【季節風】の先輩格でもある彼女。

 一見控えめだが、豪傑ぞろいの同人にあっても負けない芯の強さがある。 

 どなたかのスピーチにあった。

 年に一回、恒例の合宿道場。

 あさのあつこ代表の分科会は幻のような高倍率を誇る。

 そこには同じようにチャレンジして破れるもの、諦めるもの様々な裏のドラマがある。

 松さんは、何日も前から更新される時間帯に、パソコンの前に陣取って待ち構えているという。

 なんという執念。

 これが何としても物書きとして世に出るのだ、という熱い思い。

 この一念には正直脱帽だ。 

 松さん、おめでとう。


  【ぼくとお兄ちゃんのビックリ大作戦】
    著:まつみりゅう 画:荒木祐美
 第4回森三郎童話賞最優秀作品(刈谷市主催)

 作家として世に出るのに、何か文学賞を受賞してデビューというのが最も望ましい。

 苦しい時期を耐えたことは無駄にならず、小説を書けなかった一年がある種ここに結実したんだと思う。

 処女作に作家のすべてがある、とはよく云われる。

 図書館で主に配られるというこの本。

 松さんらしさが表れた児童書だが、彼女の本領はまさしくこれからだと信じる。

 もちろん、彼女も判っているはず。

 同人の集まりの帰り。彼女とお互いの作品の事、先の事(デビューの事)を話した夜があった。

 松さん、よかったね。

 新年明けて、松弥龍の新たな活躍が楽しみな年でもある。



 【季節風】の聖地、中野で先輩方が選んだイタリアンは無制限の量で饗された。

 ワインもピッツァも食べ過ぎてしまう。

 松さんの話しに、お店のお兄さんもウルルとなっていた。

 絵を描かれた荒木さんもこれがデビュー作だという。

 みんな楽しく酔っていた。

 素敵なお祝い会だ。


【ブルブルと部屋の暗がり見つめる夜】哲露


 次々とデビューし、活躍する同人の先人たち。

 そんな中でも、焦らず、気負わず、自分のペースで小説を書いていくしか道はないのだ。

 仕事と家人の病などで睡眠時間が減り体力を低下させ、じつにしつこい風邪に見舞われた。

 肺炎かと思うほど咳も酷く、苦しい五日間だったが、流感が陰性だったのが唯一の救いだ。

 今日になり、ようやく平熱の35度台前半をキープ。

 歳なんだろうが、つくづく健康なカラダが愛しいと思った。

 皆さんもどうかご用心を。

 暖かくなるまでに、体力とともに、少しずつ筆のほうも温めていきたいな



金の花びら。

2015年01月02日 | ★江戸っ子エッセイ★



 明けましておめでとうございます。

 ご愛読の皆さま、本年もどうぞよろしくお願い申し上げますm(__)m

 【花びらの浮かぶ水辺の温もりや】哲露

 と、堅苦しい挨拶はここまでにして、この写真は元旦早朝6時51分の様子。

 熱田宮で初詣したあと、

 日の出の時刻に大川にかかる桜橋に行ったが、ご覧の通り、東の空に雲がかかっていたのだ。

 お日様が顔を出すにはまだ時がかかりそうだ。

 長男と初RUN。スピードを上げて海へ向かう。

 芭蕉公、大鴨、子鴨に新年の挨拶をして隅田川大橋で折り返す。

 気温も冷えているが、強い北風が体温を奪っていく。

 走るほどに上がる代謝といい勝負だ。

 

 両国橋の大きな擬宝珠。

 その向こう、ご来光が天に伸びる。

 2015年がスタートする、初日の出。

 大川を飛ぶ清冽な大気を吸い込んで、心のうちに新年を祝う。 


 

 浅草寺前はすでにこんだけの人込み。

 各国の市井の人々が、推古天皇の時代の古刹を拝観していく。

 穏やかな朝だ。

 参道は走れないので、裏道を走って抜ける。

 

 冷えきったカラダを、温かい湯船にひたす。

 じんわりと熱い血が蘇ってきた。

 鳥と三つ葉の雑煮、今年は椎茸を入れた。

 飲んだあとの汁物は五臓六腑に沁み入る。

 おせちと並ぶ、晦日に焼いたローストポークが大好評だ。

 豚は腹に溜まるから、食べ過ぎに注意ね、という言葉も消されるほどの食欲。

 若さは、食い気だ。



 暮れに、転勤中の広島から戻った友人に会った。

 特製ゴールド賀茂鶴という酒をもらう。

 すきやばし次郎で、オバマ大統領に安倍首相が供したという大吟醸。

 手に入り難い逸品を、ありがたく賞味した。

 桜の花を象った金粉がステキ。

 お正月から得した気分。

 H、ありがとね。

 

 正月恒例の初映画。

 チャウシンチーの西遊記は都心ではやっていない。

 話題の仏モノ【サンバ】を観に行く。 

 アフリカセネガルから出稼ぎにきた青年サンバをオマールシーが演じる。

 国外退去を命じられてもひたむきに生きようとするサンバ。

 移民強力ボランティアのアリスを、シャルロット・ゲンズブールが好演。

 キャリアで負ったうつ病をリハビリ中の彼女は、そんなサンバの笑顔と佇まいに興味を抱く。

 セネガルの話しは、絲山秋子が【北緯14度】に書いた。 

 貧しさ、食べ物へのこだわり、ユーモアと笑顔、伝統の打楽器に魅了された。

 この映画でもそれはかわらない。

 聡明で繊細な女性をとらえるセネガル。

 私は随分とカルチャーと思想が違うのだな、と思う。

 文化の違い、考え方の違い、感性の違い、違うものを認め合う寛容が描かれている。

 人の不幸の上に成り立つ幸せには、切ないほどの逞しさが必要だ。

 侘び寂び、鎖国の民にも、見えざるモノが突きつけられている現実がここにある。



 日比谷、銀座も閑散としている。

 高級ブランドのショーウインドーだけが輝く。

 映画のように格差が叫ばれて久しい。

 だから言い訳もうんざりだ。

 やるべきことがはっきりとしたのだから、目指すものにひたむきになろうよ。

 この道の先に、きっと明るい未来がある。

 そう信じて、新年も上を向いて歩いていく