週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

東海道珍道中なり。

2014年03月30日 | ☆文学のこと☆

 
   「東海道中膝栗毛」
  越水利江子 著 十々夜 画 
  岩崎書店 2014.2.28初版 


 19世紀初頭、時代を越える傑作が誕生した

 十返舎一九の滑稽本である。

 神田八丁堀のぼんぼん、栃面屋の若旦那、弥次郎兵衛と、居候の喜多八のご存知珍道中の旅模様が生き生きと描かれた作品。

 それもそのはず、一九は取材の旅に明け暮れていたという。 電車も車もない時代のこと。取材そのものが血肉の旅となったはずだ。

 この古典を、越水利江子がどう料理したものか、昨年来から気になっていた。



 原典には滑稽本ならではの遊郭や色里、大人の恋の道が魅力たっぷりに書かれている。男色や艶っぽい話は児童文学にそのまま載せられないのだ。

 はたして、色黒毛むくじゃらの弥次さんはスラッとした男前、気っ風のいい若旦那に、芝居役者の北さんは旅回りで機転の利くツアーコンダクターであり、男を手玉にとる女形の美少年となった。

 時代小説を子供向きに書くテクニックは様々あると思うが、作者は遊里のことにも触れ、原典の魅力である艶も残し、まさに正統の弥次喜多を子供たちが読めるように編曲した。

 章ごとに挟まれる歌も絶妙だし、笑いを誘う話芸の数々はさすがに西の方である。地名や考証、お得意とする時代、舞台でないだけにこの翻訳には相当なご苦労があったと察する。

 楽しみもつかの間、ひたすら勉強させてもらった。



 無限に広がる青空とおっきな白い雲の下、二度と帰らない青春を憶う。

 あー、あっしもこんな爽快で痛快な旅に出てみてえもんでござる。

 越水さん、ごちそうさんでした


       隅田川端築山より


 「道中の行く手導く春燈」哲露

 
 染井吉野がひらいた。

 夜桜が見守る中、平成の提灯が燦然と輝く。

 彼岸も開けた。

 来週は待ちに待った、花見舟の吟行である。

 どうか晴れますように
 

  

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お江戸の出版事情。

2014年03月22日 | ☆文学のこと☆


   「蔦重の教え」
 著:車浮代 飛鳥新社刊

 新聞の書評に出てから気になっていた

 仕事の話があって編集長と話していたら、その横に置いてあるではないか。

 どうやら献本らしい。

 「借りていいすか?」と訊ねると、「資料になるかな」編集長は快諾してくれた。

 飛鳥新社からは、「夢を叶えるゾウ」という人生のハウツー本がベストセラーとなっている。ドラマ化もされたからご記憶の方も多かろう。

 これには続編もでて、息子は読書感想に選んだ。

 私の惚れた人物が登場する。

 しかも舞台は新吉原だ。




 「お歯黒に溺れて掴む春の蛇」哲露

 
 タイムスリップしたリストラ対象の中年のおっさんはお定まりともいえるが、車氏はまさにハウツー小説の勘どころを押さえている。安上がりな序盤は章を追うごとに気持ちよく滑走を始める。 時代物巧者の技と、「夢ゾウ」のノウハウを絶妙に取り入れることを助言した編集者がいたことが想像できた。

 終盤のまとめで、少々長い講釈になるのが気になるが、江戸物を好む読者と、夢ゾウの笑いのペーソスを好む読者にはうってつけの新作だ。

 蔦屋重三郎は言わば我々出版と広告の基本のきを地でいったパイオニアである。

 志水燕十、朋誠堂喜三二、太田南畝、 恋川春町、勝川春章、朱楽管江ら巨匠を狂歌で誘う。

 歌麿を褒めそやし叱咤し世に売り出す、名編集者であり名プロデューサーとして蔦重がお江戸日本橋と吉原を跋扈する。北斎、写楽の大胆な解釈もまた見物だ。 

 私が駆けて遊んだ五十間通りを、主人公が同様に駆け抜ける。

 車氏の筆は、ひとの営みと男女の感情の起伏を現在と対比させながら、往時の版元の知恵と生き様を風物、風俗を交えて面白く、ときに切なく描いている。

 情けと愛情を心得、寛容と刹那の哀切を肌で感じ、短い生涯を真摯に、まっつぐに生きた時代はわずか200年前に歴然とあった。

 日本人が地に足をつけて空を見上げた息遣いを感じられる、このような書き物が広く読まれ、新作がつづくことを願う。



 昭和35年に、役所がこんな本を上梓していた。

 劣化激しい箱はポロポロと風化して崩れてしまったが、本郷の古書店で手に入れたひと時代前の勤勉と集積に春の陽射しが優しい。

 あれもこれも書きたいものだらけ。

 途方もない作業だが、一作ひと作紡ぐしか方法がないことがようやく判った段階。

 道は果てしないけれど、好きこそモノの上手なれ。

 そう信じて、休日の青空の下、macに向かうのである


  

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大川に春が来た♪

2014年03月16日 | ★江戸っ子エッセイ★


          大寒桜


 「薄紅や卒業までの背丈見ゆ」哲露

 
 大寒桜の蕾がひらいた

 たゆたう流れ。空を見上げれば、雲も染みも何もない紺碧が広がっている。

 胸いっぱいに大気を吸い込む。

 花粉もPM2.5も全開で、平成の世はうかうかと深呼吸もできやしねえが、それでもこの蒼い空には心が躍る。

 

 寒桜の花が川沿いの公園に、艶やかなピンク色を染めている。

 カメラを構える人、犬の散歩中立ち止まる人、人も犬もユリカモメの顔もほころぶ。

 ようやく長く凍える灰色のトンネルを抜けた。

 朝陽も眩しい、浅草に春が来たのだ。

  

 カラダが軽い。

 永代橋まで走った。隅田川東岸を行くと芭蕉が見下ろす小名木川に出る。

 若い女性、カップル、拙者と同じおじさん。カラフルに纏うランナーが多い。

 およそ健康的な人の営みに、ホッと胸を撫でおろす。

 西岸を戻って、かつても火除け地、両国広小路の喧噪を思い浮かべる。

 大川の風を切りながら、自分だけの小説世界が広がっていく。

 これから暑いだろう夏に向けて、やっと自分の季節が来たと思うと嬉しさであふれる。

 敦盛の節に近づいた。

 人生五十年、下天の内をくらぶれば夢幻のごとくなり。

 幸若舞は踊れまいが、いっそ太極拳でも舞おうか。


      ソメイヨシノの芽

 染井吉野の芽が膨らみはじめた。

 仲間と酒を酌み交わす恒例の行事もあと三週間後。

 アラフィフでの結婚、男子の出産、児童文学の入賞と仲間の吉報がつづく。

 ソワソワとした気持ちのなか、私は自分のペースで、オリジナルの小説世界を書き綴っていく。

 春の陽光とともに、スイッチが入った。

 とかく生きにくい浮世でございますが、せいぜい風物を愛でて飄といきやしょう


  

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大根マラソン

2014年03月09日 | ★江戸っ子エッセイ★


        三浦海岸にて

 先週予告してしまったのでご報告

 4年ぶりに戻ってきた三浦海岸。

 名物の三浦大根が記念撮影よろしく鎮座している。

 この時期の三浦の天候は相変わらずで、どんよりと肌寒い。

 関東の山では雪の予報も出ているほど。

 日中の気温も5.7℃までしか上がらず、氷雨による湿度は83.4%。北北東の風7.4mにプラスした海風がランナーと観客をなぶる。

 

 ハーフマラソンは昨年1月国立の新宿ハーフ以来。

 絞り切れていない体重に不安を憶えながら入念にストレッチ。

 千葉真子さんの元気な声とともにスタート!

 80mの高低差が続く三浦海岸から城ヶ島へのアップダウン。

 21.1kmのこの大会の締め切りは140分。結構厳しいのだ。


 

 坂道を登ると、大根畑が広がる。

 雨のなか、沿道の応援は温かい。

 子供たちの声に応え、冷えた体を鼓舞して走る。

 4年前の記憶以上に厳しい登り下りに、10km過ぎて腿は上がらず 、ふくらはぎはパンパンに張ってきた。

 やっぱりしんどいレースだ。

 海から吹き上げる強風、ひょうが交じった雨が横殴りに体に当たる。

 最後の登りをスパートもできない。

 そのままフィニッシュ!

 ワーストタイの1h54min、どうにか2時間を切れてホッとする。


    シーパラダイスのペンギン君

 ゴールの海岸に、たくさんの物産、露天が並ぶ。

 湯気の立つ料理に釣られ、走り終えたランナーたちが我先にと並ぶ。

 かじかんだ手で記録証をもらい、大根と記念Tシャツをもらった。

 動いている間はさほど気にならなかったが、寒風に体が固まる。

 金沢八景シーパラダイスのペンギン君にはちょうど良い気候なのかもしれないな。

 
     マグロ大根

 ほうとう鍋、まぐろラーメン、わかめスープ、美味しい料理がたくさん出店していた。

 だが、私の食欲は低温と疲労で減退している。

 小学校の体育館で着替え、ようやく人心地ついた。

 駅前にあった露天、三崎名産のマグロと煮込んだ大根が芯から温めてくれる。

 通りにオープンしたばかりのベーカリーがイーストのいい香りを立てていた。

 それらを買い込んで、ビールと一緒に京急で三崎へ。

 混雑を避け始発で引き返す作戦だ。


         河津さくら


「波しぶき凍てつく頬に花便り」哲露

 
 三浦海岸の駅前。

 河津桜の濃い紅色が目に鮮やかだ。

 ちょうどさくら祭りの時期だという。

 車窓から線路沿いに続く、桜並木。

 今年初の花見が、達成感と疲労感の心に沁みる。

 一緒に走った先輩が1分先にゴール。50歳を越えてなお進化する肉体に感嘆。

 仕事で走れなかった友人と、近いうちに慰労会が開こうと思う。

 それにしても雪にならなくてよかった。

 この調子でソメイヨシノは咲くのだろうか。

 封建から楽しまれる墨堤の桜。

 大川の花見を思い浮かべ、華やぎの春を願う今日この頃である

 

  

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薬研堀不動尊。

2014年03月01日 | ★江戸っ子エッセイ★

 
                           佃島

 久しぶりに佃島まで走った

 ここから見える大川端に老舗の佃煮屋があり、由緒ある住吉神社が鎮座する。

 ここまで往復すると約20km。

 3/2の三浦国際市民マラソンはハーフ(21.1km)だからちょうど良いプラクティスなのだ。


      佃大橋からの眺め

 聖路加タワーがみえる。

 かつて電通が入っていたビルはお昼時に行くと、眺望のいいランチタイムがとれる。

 ポンポン船の佃の渡しは隅田川で最後の渡しであった。

 大川はこの島を境に分かれ江戸湾へ注ぐ。

 
    やげん掘不動尊

 今書いている小説に薬研掘が登場する。

 堀端から産まれた薬種で作られた薬研掘の七味唐辛子はここが発祥と言われる。

 スペインから伝来した唐辛子。寛永2年(1625年)のこと、からしや徳右衛門が漢方薬だった唐辛子に、山椒や麻の実、芥子の実、黒ごま、陳皮を調合して作った。当時は蕎麦の薬味のほか、風邪薬としても重宝されたようだ。

 京都の七味家、善光寺の七味もここから伝わったらしい。西の都からの下りものの多かった時代の数少ない江戸産の薬味だ。けだし、土地ごとに調合する薬草が違いそれぞれの地の味わいを楽しめる。

 私は山椒が効いて、青のりと紫蘇の入った香り高い京都の七味家もお気に入り。地元の薬研掘の焙煎と乾燥の唐辛子の大辛に山椒を多目に入れてもらう。これを蕎麦にのせると、じつにいい香りなのだ。これが我が家の味。

 ちなみに、善光寺は寒所だからか、けしの実の代わりに生姜が入る。 さぞ、温まることだろう。

 階段を登って作品の成功を願いお参りした。

 
    弘法大師の像

 こじんまりしたお堂の左手に順路がある。

 川崎大師別院の薬研掘不動院は、古くから目黒、目白と並んで江戸三大不動と呼ばれだ。

 境内を入ると、お遍路姿の弘法大師が毅然と見守る。

 

 講談発祥の碑もある。

 ここは両国広小路が近い。江戸縁の諸芸が盛んだった名残であろう。

 

 順天堂発祥の地の碑。

 学祖、佐藤泰然が天保9年(1838年)に和蘭医学塾を開講した地。

 

 梵字発祥の碑まであった。

 近くにあったが知らなかった。足を惜しまず訪ねると面白い発見があるものだ。

 

 歳の市は江戸の頃からその年の納めの大事な行事だ。

 コンビニやスーパーが元旦から開いている現代の合理主義に、年の節目に感じる心の変容や切り替えが出来なくなった。私たちは大切な何かを失くしてしまった。

 またしても、明日は雪の予報。

 海沿いの町はさすがに大雪はないだろうが、冷たい雨になることは避けられまい。

 一年以上のブランクでのぞむハーフマラソン大会。

 三浦大根がお土産につく。

 三崎名物のマグロ料理、三浦半島の地の青魚を楽しみに走ろう。

 一週間の酒抜きの真価を試したい。

 寒暖のみぎり、皆さんも体調にご用心あれ

  

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