【赤い身を梅雨のひぬまに手で喰らい】哲露
いつかのアフタヌーンの酒
クラフトビールに後輩はゲンナリし、家の発泡酒のほうが美味いと力を込める。
だが私自身は濃厚な苦味が好きなタチ。
原宿、キャットストリートのアメリカンダイナー。
異国の味わいを、夕刻前の時間に供するのは、なんと至福で贅沢なことだ。
420mlで900円ってのはちとお高いけどね。
ボイルしてスパイスを効かせて炒めたエビは、噛み応えたっぷりの旨さ。
別の夜も訪れ、エスプレッソに浸けたビーフをもらう。
ビールも、タレも、オリジナル4種類の味わいが楽しめる。
気づいたら、男女の外国人に囲まれていた。
彼らからしたら私たちも異邦人。
これからの日本、居ながらにして異国だ。
昼下がりの陽に、夏の夕暮れに、しばしヘタレのリーマンたちは羽を休める。
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【田口ランディ氏のダイアローグに参加す!】
明大リバティタワー
別の日、久しぶりに、明大の学食で蕎麦を食した。
この眺めを、500円以下で楽しめる学食はほかにあるまい。
私の隠れ家として、ときに利用している。
そして、この明大のリバティータワーで先ごろ勉強会があった。
作家、田口ランディ氏が主催するダイアローグ。
参加するのは、3回目。
20代の頃、よく読んだ彼女が仏教にハマっているのは知っていた。
ちょっとおっかなびっくり、知的好奇心、怖いもの見たさですわ。
原発について、2010年から市民を集めてのダイアローグ研究会を開いてきたという。
今回は、イタリア人ジャーナリストのピオ・デミリオ氏がパネリスト。
欧米人で誰よりも早く震災後の福島に入った愚直で勇敢なジャーナリストだ。
ヨーロッパで放映された警戒区域の映像も見ることができた。
日本のメジャーなメディアでは、流れることのない貴重でショッキングなドキュメンタリー映像だ。
ランディ氏曰く、2011年3.11以降は、急激に参加者が増えたが、最近は減る一方だという。
熱しやすく冷めやすい、日本人の気質ゆえだろう。ここでも。。
震災の歴史の多いわが国では、それを肯定も否定もできまい。
だが、私は知りたい。
相馬市長の桜井氏の英断も語られた。
偽政者を祀り、マッチョな啓蒙に毒された地上波と大新聞では決して知ることのできないエピソードがたくさん聞けた。
極左のジャーナリストと原発に長く携わってきた教授のディスカッションはそれだけで参加した意義があったというもの。
ピオ氏がいう。
日本の大マスコミにはジャーナリストがいない。
だから、肝心の核心が報道されないのだ。
福島3.11のその後の現実を、そのまま伝えるメディアは日本のどこにある。
イタリアでは、医者や弁護士と同じように、ジャーナリストの国家資格がある。
だから、NHKや読売や朝日のような大マスコミを首になろうが自ら辞めようが、次の日に堂々と個人で名乗って国会でもどこでもへ取材に行けるという。
これには驚いた。
真のジャーナリズムを根付かせるために、とても貴重な話しではないか。
権力、暴君と向き合うには、このくらいの仕組みが必要なのだ。
時の権力者たちは、自分たちに異を唱えるマスコミを断つために、金脈を断つべきと経団連に働きかけるなどという勉強会を開く。
知ることを放棄したら、負けだ。
市井の民、小市民にできる最大の力の行使は、知的好奇心と口コミの継続なのだから。
いちばん心に響いた話し、本気で目指してみるのもいい。
ピオ氏曰く、一部のネット、所謂小さなメディアでは気骨のあるジャーナリストも多くいる。
希望はある。
IT 、SNSの革命があったからこそだ。
紙の文化に恩恵を受けてきた私も、その利便は否定しまい。
時代は進んでいる。
トーハン、日販に次ぐ、栗田出版販売が民事再生法を申請した。
ショッキングなニュースだが、予想されたことでもある。
小さな町の書店と社員さんの行く末を案じる。
だが、時代は進む。
いまは自らやれることに、真摯に取り組むしかない。
あらゆる逆風にも屈せず、とにかく前に進もう。
光はいつの時代もある