週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

柴又吟行(矢切の渡し~野菊の墓編)

2013年11月29日 | ★全国蕎麦屋飲み好き連★

   
           車寅次郎こと渥美清の像


 「河川敷寅に金八スカイツリ」 鶴輪


 久しぶりの吟行である

 秋晴れというより、小春日和といった感の土曜日は凛とした空気に包まれている。

 お馴染み、寅さん像で待ち合わせ。

 ここでも人気の寅さんは、ご年配方からカメラ責めにあっている。

 雨にも風にも負けず、男はつらいよ、なのだ。

 
 

 駅前の出店を冷やかし、帝釈橋を越える。

 緩やかな陽射しのなか、風情たっぷりの参道を行く。

 なんともはや、いい休日だ。
 

  
 

 こちらが「男はつらいよ」の舞台になった団子高木屋さん。

 よもぎの利いた苦味が餡と合うのだね。

 この場で食うのもいいし、お土産にもぴったりだ。


  

 蕎麦屋まで待ちきれないと、作家は揚げ餅を頬張る。

 甘塩っぱくモチモチとした食感が癖になるとか。

 お腹が溜まっては、ビールの味が落ちると、私と呑み助の先輩らは我慢。

 でも、軒に連なる買い食いは日本人のDNAでもあって、ちょっぴり羨ましい。


  
         帝釈天 

 和尚姿の笠智衆さんがふらりと現れそうな趣だ。

 重厚な木造の門をくぐって、帝釈天に参る。

手水場にいらっしゃるのが、これも有名なお蛇さま。

これぞ、金運。

ああ、ありがたや、ありがたや。



 想像もつかないような年月を経たお松さまがお出迎えなり。

 手を合わせ、名所の庭と彫り物を見学し、お寺を抜ける。

 土手の先に見ゆるそこは、豊富な水を湛える江戸川。

 
 
              矢切の渡し 

 

 「名作の出来る所以や墨田川」 酔徹 (天)


 完全武装がアホらしくなるほどの陽気に、顔もホクホク。

ギィーコ!ギィーコ!

和舟を漕ぐ音が広々とした波間にひびく。

 花見に似合う陽光が眩しい。風もなく、ゆるりとした波にいい按配だ。 

鬼平もこんな気分で大川を渡ったのだろうか。

 

 この日の吟行のお目当ての一つは、野菊の墓。

 そう、1906年1月、雑誌「ホトトギス」に発表された伊藤左千夫の小説である。

 劇場版は、山口百恵さんと、松田聖子さん主演のものが記憶に浮かぶ。

 私が生まれるより以前にも「野菊の如き君なりき」というタイトルで二本撮られている。

 年代により、映像のイメージが違うと思う。

 皆さんの目には、どんなモノクロームが浮かぶのだろうか。
 

 
               野菊のこみち

 
                矢切ネギ畑 

矢切り葱というネギを筆頭に、キャベツやらワケギなど広大な畑が広がっている。

そんな農道が、野菊のこみちと名付けられていた。

土の柔らかさと、長閑な風に吹かれていると、ここが都会にほど近いというのを忘れてしまう。

少々遠回りしたが、これぞ大人の遠足。

童心に戻って、凸凹道をえっちらおっちら、野菊の丘を目指す。

なんてことない日常に愛おしさを胸に刻む行軍となった。

ああ、野菊や~、矢切ネギや~、お民さ~ん♪

しょうもない端唄の一つも出ようというもの。

耕作のご苦労を肌で感じ、日頃口にできるありがたさを吸い込んだ。
 




                        野菊の墓の文学碑

 丘の上には、小さな掘っ立てと碑がある。

 伊藤左千夫の生家や墓の写真も展示してあった。

 本作を書きながら、小説家自らが泣いたという。

 それが名作といわれる所以であろうか。


 
                   野菊 

坂道で、優女さんが偶然みつけた野菊。

文学の神様が心と目に宿ったかな。
 

  

帰路は舗装路で。

土手の見事な枝垂れ柳に、吉原の見返りを想う。

いつかこんな風情を戻せたらいい。





 「柴又や来てみたけれど吾亦紅」 優女 (地)

 
 江戸川のたゆたう流れに任せ、われ何想う。

 前編は、優女さんの逸句で〆よう。

 蕎麦処、やぶ忠の句会、後編につづく

 
 
 

ポール・マッカートニー Live in Dome

2013年11月22日 | ★映画★

   
              東京ドーム

 ヤァ!ヤァ!ヤァ!

 ポールがやってきた。

 十ん年来の友人Mから回ってきた。恐るべしさすがD社。プレミアチケットを握って、この日ばかりは残業なんか知らんぷりで飛び出す。

 イギリス流にサンドウィッチとフライ、そしてビール!

 ライブ前、アイドリングもバッチリだ♪

 22番ゲートから逸る気持ちをそのまま、バックネット裏、前から5番目の席につく。


 

 久しぶりに大物の出番を待つ。

 ステージが遠い、されどドーム。

 隣には妙齢大きな眸の女性が一人で意気揚々と出だしから立ち上がった!

 われわれも、その気合のオーラに絆され、濃い目の角ハイボールで乾杯!

 伴奏が高まる、いよいよスタートだ!


 
             ポール・マッカートニー登場

 
     「伝説の歌は浮き世に秋の月」 哲露


 のっけからビートルズの楽曲ではじまる。

 すっげえ!徐々に気が昂ぶってきた。


01.Eight Days a Week

02.Save us

03.All My Loving

 私がよく口ずさむメロディが流れる。

 バック演奏なしで、黒い鳥が歌われる。


15.Blackbird


 これにやられた!

 ポール、71歳。

 めちゃくちゃカッコいいでないかい。

 keyも若い頃のまま、音楽に年齢は関係ないとはいえ、素直に感動する。


25.Something

 ジョージのコンサートもここドームだった。あの時は、クラプトンが半分くらい歌っていた。

 ジョージに捧げる曲。

 乾いたウクレレの旋律が響く。

 この夜、私がいちばん痺れた瞬間ッ!
 

 

 アンコールがなんと二回あった。

 71歳(←しつこいッ)

 だけど、実際、まさに命懸けのLiveだ!

 ピンシャンと伸びた姿勢は現役そのもの。ふさふさの髪も健在。

 純粋に粋で、カッコいいジェントルマン!

 四方に散る真白い照明が輝き、日本人に馴染みの深いあの名曲がはじまった。


35.Yesterday

 もはや、言葉がないよ。




28.Back in the U.S.S.R.

29.Let It Be

30.Live and Let Die

31.Hey Jude

 生きているうちに、ポールの生唄で、Back in the U.S.S.R.が聴けると思ってなかった。

 多摩校舎に通った、セピア調の日々が蘇ってくる。

 過ぎ去った友、新たに出会った友。様々な想いが掠める。

 思い出は懐古だが、いまこの時、ポール・マッカートニーはそこにいる。

 ご縁で回ってきたチケット

 当初の気持ちが軽かっただけに、ゆり戻しで感動が深かった。
 

 アウトゼアー・ツアー♪

 大観衆を飽きさせず、MCも自分でこなし3時間弱に及んだコンサート。

 金持ちミュージシャンの道楽でも愉楽でもない。

 当たり前だけど、ポールは本気だった。

 たしかに、29.Let It Beは辛そうだったけど、31.Hey Judeは聴かせてくれた。

 器もジャンルも違えど、勇気とエネルギーをいっぱいもらったよ。





 興奮冷めやらぬわれわれは、ふらふらと夜の町へ。

 水道橋駅裏の静かな店の暖簾をくぐる。

 昭和33年創業の老舗。


06.Paperback Writer

 ライブ6番目の楽曲。

 おもえば、小説家の唄じゃないか。

 江戸の器、ぬる燗が喉元を通ると、ポールの生声を聴けた悦楽がじんわりと沁みてゆく。

 行ってよかった。

 声をかけてくれたMに心から感謝。

 ポールが私の背中を押してくれた
  


芸を残す。

2013年11月15日 | ★江戸っ子エッセイ★

  


   「三味の音や 柳もしとり 島田哉」 海光

 
 新文芸座に行ってきた

 リニューアルした館は、ホント清潔感溢れ、音響や設備も最新のものだった。

 そこへ乗り込んだのが、同期の安原眞琴監督。

 この日は、ここで、吉原最後の芸者「四代目みな子姐さん」が映写される。

 すでに、渋谷の小劇場で観ているしDVDも持っているが、大きなスクリーンで観られるのは嬉しい。

  

 上映前に落語が三席。

 来年真打ちに上がる風車さん、菊之丞師匠が座を盛り上げる。

 柳家権太楼師匠が出てくると、会場にドンと重みが増した。

 紫綬褒章まで極めた芸の深さに、追っかけしたいくらい痺れる。

 掛け値なしの面白さだ!


  

 
 味わい深い、文芸座の座長とおぼしき御仁が紹介する。

 安原監督と、作家「村松友視」さんのトークがあった。

 彼女は立教大学で、若者に旧き日本の文化を伝えるべく教鞭をとっている。

 市井が楽しんできた芸事を、様式を日々探求し、記録に残したいという思いがこの映像を撮るそもそもの発動らしい。

 高校生に芸者、という一見PTAから目くじら立てられるような組み合わせは、彼女ならではの柔軟の発想による。ITに囲まれた現代っ子が85歳の「みな子姐さん」の言動と芸に、自然とほころぶ笑顔がいい。

 彼女、中学時代は私と同じ中学で生徒会長を務めていた。

 知らずに観にいった渋谷の劇場から一ヵ月後。

 たまたま偶然に開かれた、30年ぶりの同窓会でばったり出くわす。

 びっくらこいたよ!

 これが先輩作家、越水利江子師匠のおっしゃっていた、呼び込むということなのだろう。

 江戸から続く、全国の遊郭を取材している彼女とは、これからも接点がありそうだ。


  

 村松友視さん、渋かった。

 著書「私プロレスの味方です」 はプロレスサークルにいた私のバイブルだ。

 その初版を出した版元を受けたこともある。懐かしい青春。

 同じ中央公論に勤務していたK大兄に連れてってもらった吉祥寺のジャズバーにやはり本が置いてあった。村松さんの馴染みということだ。

 そういえば、K兄も落語好き。

 いろんな人が、いろんなもので繋がってくる。


【宣伝】

 芸歴80年を誇る粋なお姐さんのドキュメンタリー映画
 「最後の吉原芸者みな子姐さん」の京都で初上映!


 初日に京都・島原遊廓の司太夫を迎え、東西の廓芸者のワークショップを開催するという。

 西にお住まいのお方、新春に相応しい芸でござる。これを見逃す手はない。

 1月25・26日。初日2000円。2日1000円。

     
             DVDも絶賛発売中

 〈問い合わせ〉 http://www.makotooffice.net/ FAX 03-3823-6115 




 短い秋なれど、ご縁をもたらしてくれた秋に感謝する。

 今宵浅草は二の酉で染まる。

 みな子姐さんに教わった、吉原一本締めで締めよう。

 ひぃ、ふー、みぃ、よー、いつ、むー、なな!パン!

 お後がよろしいようで

  


酉の市。

2013年11月08日 | ★江戸っ子エッセイ★

   
                            竜泉町 鷲神社

 酉の市が始った

 熊手を担ぐひとを見ると、もう年の瀬か、と時の早さを痛感する。 

 今年はいわゆる三の酉で、言い伝えによると、火事が多いということになっている。

 科学という言葉もなく闇が深かった時代、なにより火災を恐れた江戸の民から自然に発生した戒めじゃないだろうか。 

 火消しが走り回っても、猛火の勢いは容易には止められない。一度起こると、本丸も焼け、死傷者が千万単位に及んだことを明暦が証明している。乾燥した空っ風のなか、薪火と炭しか暖房機がないのだから、仕方のないことであった。

    
   
 景気上向きというが、それは大手資本と団塊の富裕層など一部なのだろう。

 中小の経営者は、アベノミクスより大振りの熊手に縋るのが現実である。

 大小様々に衣裳された熊手に囲まれ、威勢の良い三本締めに一服の清涼がある。

 家族と、馴染みのおばちゃんが焼くベビーカステラ屋に出直そうとしたら、小雨が降ってきた。

 この時期の雨は冷たい。

 湯上りに風邪を引いてはと諦めた、次男の残念そうな顔。

    

 
 「焼き待ちて木枯らしびゅうと合わす襟」 海光



 次の日、清洲橋まで走った帰り、仲見世に寄り、人形焼を買った。

 昔懐かしい浅草寺の鳩、五重塔、雷門を模ったつぶ餡のほうを二袋。

 iPhone5S-Gに代えて、ダウンロードしたRUNアプリのGPSで計るとイメージ通りの距離だった。

 何でもできてしまうスマホって凄いのか、怖いのか。

 論議されている秘密のこと。

 力のあるものが人の秘密を知り、暴挙に出ること、そしてその全てを隠せるなんて、これこそホラーではないのか。

 長生きしてもいいことないように思えてくるが、未来ある子供たちを思うと、そうも言ってられまい。

 自分にできること。

 それには文学に希望を託すしかない。

 次の二の酉は11/15(金)、三の酉は11/27(水)でござる。

 人形焼やカステラを食って笑って。

 そんな他愛ない小さな幸せがいつまでも続くことを願う