週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

別れの流儀

2015年05月31日 | 呑み屋探訪(銀座、新橋、築地界隈)


              ヒメアジサイ

          すみだの花火

           甘茶

         ジョウガサキ

        ヤマアジサイ

 大川、山谷掘と紫陽花がいっぱいである

 紫とブルーベリーのグラデーションが町を夏色に染める。

 紫陽花の花言葉は、その色の七変化から移り気、浮気、ほらふき、高慢などなど。。

 一方で、辛抱強い愛情、元気な女性とある。

 物書きの気質に似てないか。心当たりない書き手の方ご容赦を。

 さて昨日から、観音裏ではお富士さんの植木市も始まった。

 さつきや、観葉植物、盆栽、江戸風鈴、瓜やら唐辛子やらの苗が売られている。

 道行く人の足を止める露天からは甘い匂いと、肉や粉を焼く煙があがる。

 お江戸は夏の熱気で溢れている。




【紫の花火に騒ぐ夏の虫】哲露


 梅雨は目前だが、30度を超す夏の放射に町も人も元気を取り戻している気がする。

 今年の冬は長かったからね。

 早速夕方、寝しなに蚊の洗礼を受けている。これも夏ならではの風情。

 デング熱に備え、大量に入った虫除けスプレーが売れているという。

 政はいつだって庶民の願いとかけ離れていく。

 歴史を学ばない威勢のいい偽政者がどの時代も現れるのだ。

 万物を照らす陽射し、お天道様の強い胆力に、身も心もゆだねたい。



 有楽町に、華やかりし時代から営む老舗、小洞天がある。

 昼メシが外食に戻って、懐かしい気分で駅前の階段を下った。

 ラッキーなことにこの曜日限定の台南担々麺があったので、セットで注文。

 白い布のテーブルクロス、大きな急須は変わらない。

 次から次へお客さんがひっきりなしだが、広い地下には席がたくさんある。



 肉が詰まった巨大な焼売は、単品で追加もできる。

 ニラがたっぷりと入り、汁を覆う豆もやしの食感が絶妙だ。

 一味の辛さと相まって、ザーサイご飯がすすむ。

 20代で出版業界に飛び込んだときに、先輩が連れてってくれた店。

 創業は1944年。

 いつ来ても変わらない味があるってのはホッとする。

 ◇小洞天(http://www.shodoten.com)



 不忍池の蓮が水面を覆う。

 藍染川が注いだ水辺は、いまでも市井の憩いの場。

 水鳥たちはどこで泳ぐ。

 ベンチで珈琲を飲む。

 風が抜けて、生きていると実感する。

 突っ走るのもいいが、寄り道もいい。



 四ッ谷しんみち通り。

 版元の先輩たちとよく集う店がある。

 その名も鬼平。

 久しぶりに行ったら、なんとジプシーキングスがかかっていた。

 金曜日、その先輩のひとりが会社から去った。

 いまの版元に入って、もっとも親しくしてもらった。

 いちばん深く話し、いちばん長く飲んだ。

 先輩が来るまで、彼の大好きな谷中生姜と枝豆でビールを飲る。

 LINEをもらい、急遽しんみち通りで落ち合ったのだ。

 出会いがあるということは、いずれ別れもあるという言葉を思い出す。

 大兄の顔が清清としている。

 いつでも会えるよ、と彼は言うが、これまでのようにはいくまい。

 捨てる者あれば拾う神あり。

 何かを捨てれば、新しい運も入ってくる。

 残される者に別れは切ないだけだが、去る者には心機一転、新たな船出という神々しさがある。

 先輩にとっては、このタイミングがよかったのだ。

 冒頭に述べた紫陽花の花言葉に続きがある。

 仲良し、友情、家族団らん、平和、団結。

 これから大兄の進む道が穏やかで、輝かしいことを祈る。

 オトナになっても、やっぱり別れは苦手だ。

 紫陽花の季節に、ひとつの時代が終わった。

 淋しいなぁ

 


おいしい葡萄の旅。

2015年05月24日 | ★映画★



 5月23日サタデーナイト

 夏の陽気にほだされ、行って来ました、TOKYO DOME!

 ブドウって書ける? 恥ずかしながら、私は書けない。

 サザンオールスターズのニューアルバムが【葡萄】

 ってことにちなみ、2015年のツアーは【おいしい葡萄の旅】という。





 昨夜はドーム初日。

 紫の水玉、紫色の文字、ワインボトルを捩ったTシャツやタオルが水道橋の駅からいっぱい。

 そ、そしてファンの年齢層が恐ろしく高い!

 そりゃそうや。うちらより上の方もいらっしゃるんだから。

 茅ヶ崎はもっと若い娘と兄ちゃんもいたのにな。



 やっぱ買っちゃうわ。

 タオルはサッカーの試合でいけない二男へのお土産だす。


【蛍舞うドームのなかの麦高し】哲露

 
 ドームはビールが高い。

 小コップ一杯800円だもん。

 30分並んで、悔しいから、角ハイにしといた。なんのこっちゃ。




 
 アリーナ、しかも予想以上に前のほうの席でうれしい。ポールのときは遠かったから。

 サザンのLIVEは、おととしの夏の茅ヶ崎球場以来。

 潮騒を感じながらの海辺のLIVEは最高だったが、ドームは家からの近さがありがたい。

 宮崎出身の松田弘は、ジャイアンツのキャップをかぶり、ホームと言った。

 まさに、栄光の男の舞台だもんね。

 弘さん、原監督にそっくりで、会場中が大爆笑!

 原由子がステージ中央でダンスするパフォーマンスも。

 彼女がキーボードを離れるLIVEは初めてじゃないか。

 そして、桑田の話題はSNSと、ドローン!

 ドローン!

 LIVEに行った人にしかわからんネタでごめん。




 茅ヶ崎と同じく、入り口でリストバンドを渡される。

 LIVEも中盤を過ぎた頃、曲とともに無数の灯りがドーム内に覆う。

 後ろを振り向いたら、ゾワッと鳥肌もん。

 人工の蛍、めっちゃ感動やわ!

 Happy Birthday,栞のテーマ、あなただけを、Soul Bonber、マチルダBabyと往年の名曲がつづく。

 青春番外地、道、に至っては、桑田が精と魂をすべて吐き出した熱唱!

 昭和世代は歌謡曲を流す歌番組がそれなりにあった。

 桑田の作る歌詞は、難解で複雑、シンプルにエロく、卓越した活字の組み合わせはセンス抜群で先鋭的!

 その早口な言葉の放射で、時代の空気を置き換えていく。

 同時代に生きる僕らの気持ちをそのまま、サウンドと相まって本当に心地よい。

 還暦(毛ガニさんは還暦とか)近くになって制作したアルバムがオリコン一位になるのも頷けるわ。

 だが、実際曲だけ聴いていると、何を言っているのかわからない時がままある。

 おろらく、日本人の歌手で歌詞のテロップが流れたのはサザンオールスターズからだろう。

 桑田の作る詩が、この夜も流れ続ける。

 天才的な歌詞とはよく言われることだが、この詩を書くために彼は血のにじむような研鑽をしてるんだろう。

 凡人には思いつかない言葉や文字の組み合わせの巧みに唸るしかない。 

 陳腐で稚拙な羅列しかできない私も、いつしかこんな言葉を紡げるのだろうか。

 37年という月日そのものが、魔法のような歌詞になって通り過ぎ、楽曲が心とカラダにリフレインする。




 アリーナからスタンドを埋め尽くすリストバンドの灯り。

 ラストにかかる曲は、【蛍】

 サザンファンの喜びと熱気から発する、無償で無数の蛍が舞う!

 めっちゃ綺麗やね。

 目の前のちっちゃな女の子も睡魔に打ち勝ち、大きく手を振っている。

 夏のワンピースに、無邪気な仕草がカワイイ!

 歳をとったリアルファンのおじちゃん、おばちゃんは少しずつヘバってきた。

 座る方もちらほら。

 関口和之は淡々と演奏。

 毎週土曜日の朝、流れる彼のラジオは心地よい。




 マンピーのかぶり物がなかったのと、天国オンザビーチがかからなかったのが少しの心残り。

 愛媛から宮城、全国を回り、桑田もメンバーも披露が溜まっているんだろな。

 息をつかせぬパワフルな連打の構成だが、顔にそれが現れていた。 

 ドーム初日で緊張していたのもあったようだ。

 メンバーの方々は、ゆっくり休めたかな。きっと今夜も盛り上がるだろう。



 サザンオールスターズと同時代に生きられる幸運に感謝。

 いつまでも彼らとともに老いたいものだ。

 そのためにお互いに元気でいないと、ね。

 サザン最高♪

 次は夏の屋外LIVEがええな~


三社祭の日。

2015年05月19日 | ★江戸っ子エッセイ★




【お祭りや酒飲み担ぎ空笑う】哲露

 
 今年の冬は長かったわ

 ってことで、待ちに待った三社祭。

 5月16日の朝、浅草神社の氏子町内の渡御が始まる。

 オイラが羽織るは、象三町会の半纏。

 ゾウサンじゃないよ、キサカタ三丁目と読むのさ。

 今年は順で、三年ぶりに一之宮が担げる。うれしいわ。

 神輿が100基以上集まる浅草寺裏手。

 その前列に神輿を構えることができるのだ。 

 訳もなく、うふふに浸ってしまう。

 町内神輿が誇らしい瞬間だ。




 待機中は、パピコでエネルギー補給!

 この間に、どんだけ酒を呑んでしまうか!?それがその後の担ぎっぷりを左右するのだ。

 五重塔は今日も鎮座する。

 雨模様の空も晴れ渡った。

 さぁ、いざ発進だ。

 浅草神社を参拝し、境内を一周する。

 ここが結構長い道のりやんす。

 喉が空っから。

 で、ビールなんだわ!




 一休みした後は、提灯が灯り、夜神輿が始まる。

 ある種夜這いも祭りの伝統。血の濃さを薄める人の知恵でもあった。

 灯りに血が騒ぐのは、私だけじゃないやろ。



 夕方からスタートする連合渡御。

 朝顔市の浅間神社脇が、うちらの町会を含む連合のクライマックス。

 神輿が集まり、拍子木の乾いた音が響くと、神輿が一斉に上がるんだ。

 何年体験しても、鳥肌が立つ瞬間だわ!




 祭り囃子が鳴り響くと、落ち着いていられないのが江戸っ子の性分なのだ!

 子供たちはこの日のために、日々練習してきた。

 子供の真摯に、オトナたちも頭を下げねばなるまい。 

 高らかな笛の音は、東京にいても望郷の念を思い起こす。

 オレも木笛を吹きたい。



 天狗さまのお通りだ。

 代々木のデングは怖いけど、この天狗様はお優しいはず。。

 しかし、お暑いやろな。




 日が変わって、日曜日。

 本社神輿の宮出しがあり、三基の神輿が浅草の町を巡る。

 今年の象三は、一之宮が担げる。

 こんな嬉しく、誇らしいことはない。

 サラシを巻いた本社神輿が来ると、半纏姿の誰もが興奮し、尋常ではいられない。

 殺到する氏子たちを見ながら、神輿のセンターへ入り、お手伝いを仰せつかった。

 御神輿の誘導も大切な祭り事なのだ。




 知り合いにもらい、ビールを立て続けに飲んだ。

 それでも酔わないのは、宮入りに参加するためか。

 橋向こうの連中が騒いでいた。

 まさに、仁義なき戦い。

 火事と喧嘩は江戸の華とは言うものの、オイラは元来の平和主義。

 喧嘩を避け、境内で宮入を見学する。

 それでも、やっぱり、感動するわけさ。




 最後は青年部のご褒美で、鳳凰の尻尾から蔵に入る。

 老舗宮本の男衆が、早速神輿を解体し、整備している。

 これが男、職人の仕事でやんす。

 祭りはいい。

 三社はいい。

 朝から晩まで担いで、ビールを飲み続けた週末。

 また何もせずに終わった週末ってことだわ

 

  


天下祭り!ご遷座400年!

2015年05月10日 | ★江戸っ子エッセイ★




【やげん堀天下一やと五月晴れ】哲露


 立夏過ぎ、公園の緑が眩しいほどの陽射しに輝いている

 1月のひと月サボったつけで溜まった脂肪を、一気に絞ろうと、GWから9日間で約100km走った。

 それでもまだまだ体重は落ちぬもの。

 体脂肪だけが1%落ちた。

 やはりここが正念場。気を抜かず、頑張ろう。

 創作は半年ぶりに再開。あれやこれや書きたいことがたくさんある。

 ひとつ一つ書いていくしかあるまい。

 そんな今日は、30度を越えるRUNの最中、嬉しいことに遭遇した。




 やげん通りで、神田明神の町会神輿に出逢った。

 以前の日本橋薬研掘町の掘割近く、江戸にからしや徳右衛門という薬種問屋があった。

 この掘割の形が薬研という、薬を潰す道具に似ていてそう呼ばれたそうな。

 ここを舞台に書いた時代物は昨年の本郷の分科会に出した。

 七味唐辛子はこの徳右衛門さんが考案し、将軍様も愛用されたとか。

 それから京都の七味家(山椒の香り豊か)、善光寺の唐辛子(躰が温まるよう生姜入り)へとそれぞれ独自の味に発展していく。

 私は京都清水坂の七味家の風味が好きで、やげん堀の大辛に山椒を多目に調合してもらっている。

 あれもいつか改稿しなければならないな。

 「ワッショイ!ワッショイ!」

 担ぎ手の旺盛な掛け声は、下町の市井に生きる人々の活力そのものだ。




 わが同人のエース、いとうみく氏の【空へ】も祭りが題材の一つになっている。

 児童文芸家協会賞を受賞した作品。

 主人公のお父ちゃんが大の祭り好きなのだ。 

 ああ、日本橋の鉢巻き巻いた担ぎ手の笑顔を見ていたら、無性に担ぎたくなってきた。

 封建の頃、江戸城内に神田神輿の行列が練り込んだ。

 時の将軍様や御台所様がご覧になられたことから、【天下祭り】と人々は呼ぶ。

 今年はなんとご遷座400年の記念の年に当たるという。

 今夜遅くまで町会神輿は練り歩く。

 お近くの方は今からでも間に合いまっせ。

 ビール片手にどうぞお越しやす。



 浅草寺の裏手には、来週三社祭の氏子町会神輿が集結する。

 そこに建てられていたのが、平成中村座だ。

 それもGW明けに早速解体されていた。

 両国橋の広小路では、露天の桟敷で舞台も行われていたらしい。

 身近でさぞ迫力と臨場感のあったことだろう。

 勘三郎さんの意志は受け継がれている。



 浅草神社では、三社祭の本社神輿が今年初のお目見え。

 私の担ぐ町会では、三年ぶりに一之宮が廻ってくる。

 次男も、サッカーの練習の後、ぶっ飛んで帰ってくると息巻く。

 ピーヒョロとかん高い木笛が響けば、江戸っ子は血が騒ぐもの。

 来週が楽しみ!!



 先週、久しぶりに歌舞伎町を歩く。

 なんとTOHOビルにの上に、ゴジラが出現!!

 迫力はあるが、ゴジラってこんな大きさだっけ?

 放射能の落としだね。

 アメリカでも原発の事故があったらしい。

 人類はそれでも危険より金を選ぶのか。

 文芸、芸術の世界だけでも、平和を提唱していきたいものだ。

 江戸の町は、来月まで神様を担いで練り歩く。

 市井の人々の祈りは、やはり平和なのだよ


鴨川の夕べ

2015年05月02日 | ★江戸っ子エッセイ★


    鴨川(三条から)

 京都の北山へ日帰り取材

 この町を訪れるのは、七年ぶり。

 初夏の陽光に、都の川面が輝いている。



 朝八時、東京駅でいそいそと深川めしを買い込む。

 なんといっても浅蜊は旬だもんね。

 10分おきに出発するのぞみのホームは慌ただしい。



 文芸春秋の書評欄と芥川受賞の穴を読む。

 江戸前のハゼの甘辛い歯ごたえ。

 穴子の身はぎっしりふんわり。

 浅蜊の佃煮は、生姜を効かせた上品な味わいだ。

 本来の深川めしとはちがうが、

 汁が滴らない弁当のシャリのほうが断然いい。

 文庫本にいく前に、もう京都についてしまう。




 地下鉄に乗り込む前に、古都の大気を吸い込んだ。

 ああ、戻ってきた。

 烏丸線に乗り、四条を越えるとすぐに北山駅。

 タクシーに乗るも、まだ知るヒトぞ知る穴場の美術館の説明に時間がかかる。

 細い道、登り下りをクネクネ。

 ここが武人であり茶人であった古田織部を偲ぶことができる【古田織部美術館】。

 500点にも及ぶ茶道具やら武具が閲覧できる。

 利休の弟子であり、本阿弥光悦の師匠でがんす。

 このご仁を抜きに、戦国絵巻のカルチャーは語れないらしい。



 聚楽第の名残か、金粉の装飾がみえる。

 往時はさぞ絢爛だったろう。

 IT やSNSに囲まれた現代人の想像力は陳腐だ。



 熊の毛で覆った兜。

 甲冑も凝りに凝ったり。

 個性を主張するものとして、武人それぞれに趣向を凝らしたということか。

 新しく建てている茶室も本邦初公開で撮影が許された。

 日本一窓が多く、解放感が溢れる造り。



 これは庭園にある茶室。

 丸窓に特徴がある。

 窓の先には、屋形船が浮かぶ。

 春の花見、秋の紅葉は見事だとか。

 行楽で混み合う喧噪から離れて、穴場のスポットだ。

 気になる方は次号の歴史人をご覧あれ。




 本格的に茶を点ててくれた。

 茶器、温度、抹茶の甘さが鼻に抜け、渋味に舌が歓喜する。

 茶菓子は、おどい餅というらしい。

 甘過ぎずモチモチとした食感に、黒豆と上質のきな粉が絶妙なバランスで調和する。

 都会のあれやこれやを忘れるほど、ゆったりのったりした時の流れだ。


          本能寺本堂

 取材も無事に終了。

 一人別れて、本能寺へ。

 矢に追われ、火に包まれた本堂は再建されたものが鎮座する。



 戦国の知性と狂気、信長公が祀られる。

 人生五十年下天のうちに比ぶれば夢幻のごとくなり。

 敦盛の詩を頭の中で唱和しながら、合掌。



 悠久の流れ、鴨川では納涼床の準備が始まっていた。

 京の人々が、カップルやらサラリーマンやら、外国人やらのんびりと時を過ごしている。

 内勤から解放された男は、つかの間の暇を心に刻む。

 烏丸御池から三条、川沿いを歩く。





 先斗町の路地が懐かしい。

 京都の夕刻でいちばん好きな場所かもしれない。



 この季節は鴨川をどりだす。

 床で豆腐を含み、松竹梅を飲って、をどりを観る。

 なんと贅沢な遊びやろ。



 一見さんでも入れる店がある。

 おっかない京都の店も、グローバルの波に、外様でも愉しめるようになった。

 ああ、なんで日帰りなんや。

 生きていればまた来ようぞ。



 かつては街道から運んだものか、小浜の焼き鯖。

 黄金の脂が照かっている。

 こりゃ不味いはずがない。



 錦市場では、必ず雑魚山椒を買う。

 京野菜の漬物と、これが私の京都の味。

 酒にも、炊きたての白米にも合う。




【虫集る河原にをどる先斗町】哲露

 
 先斗町では飲めないので、鮭とばやらちくわを買い、のぞみに飛び乗った。

 これが庶民の憩い。

 屁の突っ張りの贅沢や。

 極上のエンターテイメントを読み、恵比寿を飲めば、そこは極楽浄土なり。

 仕事とはいえ、小さな旅。

 出張帰りの至福が、身に沁みる車窓。

 生きている実感に包まれている。

 本日からゴールデンウィーク。

 皆さん、それぞれに充実したお休みを