週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

赤坂砂場にて。

2015年12月30日 | 呑み屋探訪(赤坂、六本木界隈)


         特製菊正宗と浅蜊


【格子の陽甘い天種に燗ほろろ】哲露


 本年仕事納めの日、青山の商談帰りに赤坂へ

 腕時計は昼のピークを過ぎたあたりを指している。

 歌謡曲にある一ツ木通り。

 ランチを目指す人、納会の店を探す御仁、OLやサラリーマンの諸氏が赤坂の町をうろうろと人の波。

 僕は自然と木造の老舗に足が向く。

 ここだ、ここだ。



           赤坂砂場


 木の香り。

 格子に射す陽だまりと影。

 懐かしい佇まい。

 10年前のこと。

 僕にとって掛け替えのない大兄と初めて飲んだ老舗。

 昼だけど、迷わずぬる燗を発注。

 動きに無駄のない仲居さんが、浅蜊とともにつけてくれる。

 自分のペースで呑める贅沢な時間。

 ひとり酒を薦めてくれたのも大兄だった。

 ああ、至極。
 
 柔らかい甘露の酒精がじんわりと身体の内から温める。

 1年の間に溜まった澱とコリがゆったりとほぐれていく。





 天ぷらせいろには三つ葉がたくさん入る。

 蕎麦の水切りも見事。

 擦りたてのわさびをのせ、七味をのせ、それぞれに趣向を味わう。

 テーブルにはマダムの集団、OLさん、同僚カップル、

 小上がりには、いわくつきの男女もいれば、男の子に卵焼きを頼む家族連れもいる。

 おつかれさん。

 淫靡、嬌声、駆け引き、微笑ましさの渦巻く中、僕はひとり仕事納めの儀式で、悦に入る。

 やっぱり、いい店だ。

 今年も残すところ大晦日のみ。

 塾帰りの息子が遅いから、僕が鴨せいろの係なのだ。

 世間はどんな年越しを過ごすのか。

 それぞれの家にきっとドラマがあるんだろうな。
  
 皆さん、1年間のご愛読をどうもありがとう。

 新年も細々と続けて参る所存。

 どうかこれからもご贔屓に。

 良いお年をお迎えくださいませ 

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ボヴァリー夫人とパン屋をみて。

2015年12月20日 | ★映画★



 
 気持ちの張りが切れた年の瀬に、早稲田へ出向く

 喫茶店でカレーうどんを啜り、仏映画の二本立てに飛び込む。

 ギュスターヴ・フローベールのボヴァリー夫人をパロディー化した作品である。

 田舎に飽きて結婚したものの、その夫との平凡な暮らしにも膿み、

 やがて不倫と借金による苦悩から自殺する女性の話しだ。





【枯葉踏むそばかす顔にパン焦がし】哲露


 パリで学術系の編集を長く勤めた後、故郷に帰り家業のパン屋を継いだマルタン。

 彼の家の空き家に、イギリスから若い夫婦が越してくる。

 文学だけが退屈しのぎのマルタンは、新しい住人である女がジュマ・ボヴァリーという名であることに驚く。

 奔放なジュマは、マルタンの焼くパンに魅了され親しくなる。

 犬の散歩で会うたびに妖艶さを増していくジュマをみて、マルタンの妄想はいよいよ膨らんでいく。

 そこへギリシャ神話のアポロンのような青年が現れる。

 夫チャーリーとの倦怠が、ジュマと青年を急速に近づけていく。

 マルタンは自分の目で古典の小説が現実と同化していくのを感じ、とんでもない行動に出る。

 ジュマの妖しい美しさより、このマルタンの飄々とした表情が面白い。

 ノルマンディーの優しい風景とフランスパンの香りが、この映画をうまく味付けしている。 

 ユーモアのあるラストも風刺が効いていた。

 たまには仏映画もいいもんだ。 

 ボヴァリー夫人とパン屋 http://www.boverytopanya.com






 例年より暖かい。

 歳の市の羽子板市に訪れる人々の表情が柔らかいのもその陽気のせいであろうか。

 話題をさらった五郎丸選手の羽子板もお目見えしていた。


 


 浅草六区のドンキの前に、まるごとにっぽん館が建った。

 この羽子板市に合わせてオープン。 

 新しいものを吸収する貪欲と寛容が浅草らしさとはいえ、せめて現代の凌雲閣のような捻りが欲しいとこだ。

 気持ちの騒つくことが続くが、正月くらいは平穏でいたいもの。

 今週はクリスマス。

 ほんとうに時間の経過がはやい。

 あと数日だ、がんばりまひょ 

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映画の日、Re:LIFE(リライフ)を観て。

2015年12月06日 | ★江戸っ子エッセイ★




【黄金の葉心に書きつあのヒトを
】哲露


 
 今年もあと僅か。ついに師走に入った

 本当に嫌なことだらけの世の中だが、僕には映画という強い味方がある。

 2015年最後の映画の日。

 日比谷のシャンテにて「Re:LIFE(リライフ)」を観た。

 ラブコメの帝王ヒューグラントの新境地とあるが、果たして………。

 物語はアメリカの片田舎ビンガムトン。

 全米でもっとも青空が見られない土地だという。

 オスカー受賞の脚本家キースマイケルは、長いスランプゆえ業界で時代遅れの烙印を押されている。

 自宅の電気も止まり行き詰まったキースは、不本意ながらこの街に大学のシナリオコースの客員教授として訪れる。

 着任早々、ファーストフードで出会った生徒と一夜を共にしてしまう。

 歓迎パーティーでは、酔っ払って女性教授を挑発し怒らせる。

 作品も読まず生徒をルックスで選んでおきながら授業は休講。

 まったくやる気ゼロの問題講師だ。

 しかし、キースは、いつしかこの学校で出会う生徒や教師のひたむきさと屈折した純情に感化されていく。

 生徒と触れ合うたびに、少しずつ気持ちに変化が現れる。

 この一見何もない街の空気感がいい。

 大都会にない無意味な時間の共有がこの街の宝なんだ。

 生徒ひとり一人の作品に刺激を受けたキースは次第に真摯な熱を込めた助言をはじめる。
 
 中年になったヒューグラントの肩の力の抜けた演技は秀逸だ。 

 「書きたい理由が大切だ」

 「自分の言葉で誠実に書くことが必要だ」

 シングルマザーマリサトメイに誘われた遊園地。

 トワイライントゾーンの、道に迷う中年男の物語。

 それが撮影されたメリーゴーランドがなんともロマンチック。

 スランプ真っ最中のオスカー脚本家は果たしてどうなるのか。

 一年のうち、たった数日あるという晴れ渡ったキャンパスの芝生が眩しかった。

 ほっこり心に火が灯った感覚を味わえる。

 慌ただしい師走に、オススメの一作だ。





 外苑の銀杏並木はいまが見頃。

 大勢の人々がスマホのシャッターを切っていた。

 車は渋滞。

 マリオを乗せたカートが道行く人の足を止めている。

 広く、焼けた夕焼け空に、乾いた風が心地いい。





 上野駅構内に、大きなクリスマスツリーが点灯した。

 ジングルベルの鐘が、心に鳴り響く季節。

 ゆとりのない、現実という濁流に溺れる日々。

 それでも時間だけは誰しも平等なのだ。

 今日こそは年賀状をやらないとな。

 一つずる、少しずつ進まないと。

 まもなく羽子板市。

 みなさんも、いい締めくくりができますように 

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