週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

日本で一番悪い奴ら

2016年04月24日 | ★映画★


 綾野剛のイメージをぶち壊す体当たりの演技を見て、彼に対する印象ががらりと変わった

 発端は「覚醒剤130キロ、大麻2トン、拳銃100丁」と帯巻きされた講談社文庫、

 北海道警察の元警部稲葉圭昭が書いた「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」だ。

 現役の警部として道警史上初めて覚醒剤使用で逮捕されたツワモノだ。

 その後、懲戒免職、覚醒剤取締法違反、銃刀法違反で懲役、9年の刑期を満了する。

 柔道で鍛えた体で、S(=スパイ)たちを手なずけ、すすきのでのし上がり警察内の点数を稼ぎまくる。

 でっちあげ、やらせ逮捕、おとり捜査、拳銃の購入、麻薬の密輸などなど。

 拳銃(チャカ)を挙げるために、歪んだ正義がはびこっていく。

 事件が生々しいゆえ、撮影は北海道で行えず、三重県四日市の桑名で敢行されたという。

 当初、映画化は不可能といわれた所以だ。

 Sの一人、黒岩役の中村獅童とのコンビが面白い。

 ところで、題名の悪い奴らだが、

 モデルの著者は刑務所に入ったとはいえ、本当に悪い奴らはいつも高見にいる。

 沈黙の組織の怖ろしいこと。

 子供の頃は、大人は警察は先生はみんな聖人君子の偉い人間だと思っていたよ。

 ところが現実はどうだ。

 地上波のドラマに骨太を求められなくなって久しい。

 だが日本映画、まだまだ捨てたもんじゃない。

 それにしても、獅童はともかく、綾野のやくざ紛いの衣装は、まるで浅草やくざそのもの。

 それがまた格好いいから憎いね。

 昭和ノリたるジーを感じさせる作品は、6月25日から全国一斉ロードショー。



【はなみずきリアルな悪は上を向く】哲露






 
 さてはて、流感後、気力体力がガタ落ちだわさ。

 次男の入学式の帰路、精をつけるために立ち寄る。

 勝海舟や龍馬も通ったといわれる老舗、やっ古だ。

 日本の鰻は何年ぶりだろう。

 甘すぎず、濃すぎず、あっさりといただけれるタレは俺好み。

 ステンドガラスの大正モダンの様式はじつに落ち着く。

 老舗だがランチは庶民派だ。

 気っ風のいい女将さんから笑顔の祝いももらった。

 さて、次回も日本映画を推しやす


東京零年

2016年04月10日 | ☆文学のこと☆


    【東京零年】
    著:赤川次郎 
   2015/8/10 新潮社


【自由だと知らぬ仏を山笑う】哲露
 
 久しぶりの赤川次郎

 小学生の頃、よく読んでいた作家だ。

 中学に上がり、スノッビーな同級から「赤川次郎なんて読んでいるの!?」と、心の底から揶揄された。

 多感な年頃、実際面白かったのだが、たしかにどの作も似たり寄ったりで、変化に欠け、飽きていたこともあった。

 そこからベストセラー大衆作家として敬遠してきたままこの歳に至る。

 自分では決して手を出さないジャンルの本に気づくから、

 同級生が嫌がった高校のオオタカ先生の課題図書も嫌いでなかったし(誰にも言ったことないが)、

 日曜の書評欄が好きである。

 そこに意外なことに、赤川次郎の新作が載っていた。

 2011年の震災以降、被災地を歩いたり、記事や番組をチェックしたり、

 反原発のデモに行ったりと自分なりに意識が変化した。

 書評欄の中で、赤川次郎はこれまで書いてきたことの意味を問い、反省し、この作品を書いたとあった。

 国家と権力者が奢り、行き着いた先の恐ろしいまでの管理社会を描いている。

 ジョージオーウェル「1984」の現代版といったところか。

 このフィクションを読んでいて、物語と達観できない妙にリアルな想像力が怖い。

 改めて、文章の技法もさすがと思った。

 書かない物書きがバカにするほど恥ずかしい無知はないと思い知らされた。

 国家統制、そこには力に絡め取られたものの終焉が暗示されている。

 B型の流感の惚けた頭にも読みやすい文体。

 この世へのアンチテーゼとして、必読の一作である