三線と琉球笛
「琉球の調べにほこり泡と消え」 哲露
大兄たちとふたたび日暮しの里へ
石垣島出身のあさとさんの快復を待って、満を持しての再訪だ。
冬の旬を喰らうため、日暮里駅を谷中銀座へ向かう。
日暮里のメジャー、川むらに入る。
一年分の労を、辛口の酒と牡蠣で癒そうということだ。
きのこの煮こごり
クレソンの胡麻和え
ウニ入り玉子焼き
アナゴの天婦羅
呑んべの好みで頼む、煮こごり、クレソン、穴子、玉子焼きの数々。
丁寧な仕事に、有名店の気概を感じる。
大兄たちの豊穣なる薀蓄が耳に響き、旭川の純米が舌に優しくのる。
旭川の木綿屋。
豆腐のような名だが、べたつかず、媚びず、件のお燗が次々と空いてゆく。
年の瀬には、燗酒が合う。
名物牡蠣そば
川むらの牡蠣。
私のココロに浮かぶ冬の風物詩の一つだ。
片栗を塗しソテーした牡蠣が、プリッと口に滑る。
皮を含む磨かれた蕎麦は、喉越しと香りが秀逸。
「ウッ! 冷てぇ!」
呑み始めた矢先、お隣のビールがかかった。
上着とズボンに冷えたアルコールが臭う。
料理の手際が鮮やかな分、給仕の姐さんの至らなさに、がっかりだ。
有名店ゆえの慢心か、接客の落ち度に唖然とした。
会計、帰りにもひと言もなかった。
至極残念なことだ。
納めの日だ。
悪霊を祓うべく初音小路で口直し。
この一角だけ、映画のセットのようでしょ?
馴染みのあさとさんへ。
ご近所だから蕎麦屋で先客の出るのを待ってお邪魔する。
狭い店に入った瞬間、南風を顔に浴びた。
ただいまッ!
石垣島から空輸した甕の古酒(クース)をたのむ。
40度の酒精が、疲弊したココロに沁みてゆく。
右手のビジョンに映る透明な海水が、わが手の小さなグラスに溶け込んてゆく。
揚げ出し豆腐、甘めのロースとビーフ、南瓜がつまみだ。
女将の顔に帯状発疹の痕が生々しい。
揚げ出しを口にいれる。
あさとさんの真心がこもっていた。
おばあが元気になってよかったよ。
私の本名と同じK氏は6年、三線を習っているという。
歌声と音曲が南の島の憂愁をさそう。
雰囲気のある美喉が聴こえる。
新潟産の雪肌、S嬢だ。
草露さんの再三のリクエストに、K氏、S嬢が応えてくれる。
南国の音が溢れる空間に身をゆだねていると、ぐったりと萎えた魂が鼓舞された。
琉球の生演奏のなか、敬愛する大兄たちとの他愛ない寛ぎの時間。
なんと贅沢な年の瀬だろう。
トラブル続きの師走だが、どうにか年内に書店の棚に並んだ。
そして、翌日兄弟誌がまたもやのトラブル。
すべてが店仕舞いした日曜日の深夜まで輪転機が回る。
なんとも忙しかった、仕事に呪われた師走がようやく終えようとしている。
みなさん、一年間のご愛読、どうもありがとうございました。
昨夜、久しぶりに再会したいとこが独立して幸先のいいスタートを切ったようだ。
長男の受験の受難はつづくが、
新年こそはと、創作の実り多きことを祈る。
みなさんも、実り多きよいお年をお迎えあれ。
2014年もどうぞよろしくお願いいたします