週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

三日月と串揚げ!-根津-

2012年01月29日 | 呑み屋探訪(日暮里、根津界隈)

       
          大振りの牡蠣、甘いポロネギ、茄子の串揚げ

 その昔千駄木、根津、上野にかけて、日比谷入江の奥名残で、不忍池に流れ込む藍染川が流れていた

 現在、蛇道として、台東区と文京区を隔てるクネクネとした細い道に変貌している。熱帯魚や小料理、蕎麦屋、菊人形、駄菓子屋と休日には、外国人や若い女性客がカメラ片手に引きも切らない。

 そんな藍染川の流れの畔に、往時の面影を残す旧館が残っている。

 それが、串揚げ屋「はん亭」なのだ。

       

 随分と前から行きたかった。ご縁とは不思議なもんだ。同人がこの社長と昵懇の仲だという。

 二階と三階の間にある、個室に案内され、名店のコースが始まった。

         
                   突き出し三種

 この時期に金目。それも燻製ときた。寒空の下駆けつけたわっちたち。熱燗に合わないはずがない。

       
            八丁に近い肉味噌、岩塩、定番ソース

 基本、この三種のタレでいただく。

        
            ワカサギ、レンコン、ホタテの串揚げ
       
            海老、谷中生姜、黒豆白玉の串揚げ

 ひき肉を混ぜた辛い味噌はそのままいただける。まさに酒の友。素材が新鮮で、それぞれに趣向を凝らしてあるので、あっしはほとんど塩でいただいた。

      
                       突き合わせの野菜

 大根、胡瓜、人参ともに、瑞々しい畑の味。キャベツは生なのに、その甘さが噛むほどに広がる。これもまた店主のこだわりだろう。

           
               しんじょと菜の炊き合わせ

 あっしの付き合う仲間は名うての酒豪揃い。熱燗を六本、喉が渇いたとビールを数本、そして、串揚げに合うとばかり、辛口のシャルドネを冷やしてもらう。たちまち、無くなるから目も当てられない。愉快な時間の証拠かな。

      
                 サービスのデザート

 温かい蒸したプリンはクリーミーで、寒天の歯ざわり、冷たさと絶妙の相性だ。大粒の豆がそれを整える。試作中だという、デザートをオーナーがサービスしてくれたのだ。これも同人あってのこと。どうもご馳走さんでやした。

            
                   中二階の個室

      
                旧館の全景だろうか

 酔った勢いとは怖ろしいもの。タクシーを薦めたが、件の蛇道を散歩しながら、かつての藍染川をみなで歩いた。小粋な店を眺めつつ、体が冷えたところで、夕焼けだんだんに差し掛かった。

             

 谷中の初音小路で、馴染みの「あさと」さんへ。石垣島が大好物の同人たちを一度お連れしたかったのだ。

       
                    43度の古酒

 石垣島から空輸するいつもの甕の古酒をいただく。ミミガーと胡瓜がさっぱりと合うのだ。クルミの入った佃煮はママの創作。豆腐よう、海ぶどうと南の海をつまみに、文学、食、航空問題など、話題は尽きない。

             

 三味の調べに、沖縄の映像が心和ませてくれた。ママ手製のもずく汁に、身も温まる。

 何より、愉しい会話と笑顔が至福のつまみなのだな。

 良き仲間と出会えたことに感謝。皆さん、付き合ってくれてありがとう。

       

 はん亭で落ち合う前に、久しぶりに根津神社へ参拝に行った。

 閑散とした境内に、ぽかりと浮かぶ三日月。

 廓や瓦屋根の商家で賑わったかつての根津花街の夜が想像できた


         「廓まち なみだと笑い 三日月夜」
                           海光


 

      

 ◇根津「はん亭」◇

 文京区根津2-12-15
 03-3828-1440
 http://www.hantei.co.jp/


新春句会! -牛鍋「米久」にて-

2012年01月27日 | ★全国蕎麦屋飲み好き連★

                   
            
                         「米久」の牛鍋

         「寒燈の 淡き光や 冬銀河」 博乱 (天賞)

 吟行のつづき

 寒風のなか吟行を終えて、全その一行は六区通りからひさご通りへ入る。文明開化の味老舗「米久」で牛鍋なぞ突こうという算段。たまには蕎麦屋でなく、番外もいいもんだ。


              
   
 
 
さすがに言葉の名手、前回から加わった文芸の達人博乱さんが天賞を受賞。おめでとうございやす。

             天賞贈呈

            
 氷雨のなか、着物姿でお出ましになった江戸嬢に賞品を手渡される博乱さん。いやあ、うらやましいこって。。

 天賞は、浮世絵ハガキを飾れる掛け軸。こいつぁ、欲しかった。

 続いて、実力派の優女さんと草露さんの受賞句。優女さんは同数の上での、決選投票。いずれ劣らぬ名句でござった。地賞は、ヒノキの酒器。人賞は、歌舞伎の絵柄が本の形で捲れる江戸手ぬぐい。。

 
      「寄席はねて 浅草六区 寒のあめ」 優女 (地賞)

         「笑いとは 心の呼吸 冬時雨」 草露 (人賞)

 
たびたび訪れたことのある米久だが、二階座敷は初めて。

 一階の中庭の眺めもいいが、太鼓の音の響く中、レトロな階段を昇って軒提灯をみながらの牛鍋もオツですなあ。

 ビールより熱燗が進むのは、やはりこの時期だからでしょう。適度に脂肪と赤身のバランスのとれたお肉は、あっしの好み。接待で使った某高級牛鍋屋よりこっちがいい。皆さんの舌にはどう感じたのだろう。


          


        「可可可可可 八十路は私も 春ばばあ」 弾前

 
井原西鶴の句に、近いものがあった。さすがに言葉の魔術師、弾前殿ですな。

                   江戸嬢の艶姿
            

           「寒風の 集う浅草 俳句出ず」 鶴輪

          「睦月雨 寒さに縮む 五重の塔」 酔徹

 
いつも通る五重の塔も、氷雨のなか皆さんと身を寄せ合って通った気持ちがよく表現されていた。あっしはこの句に一票。


           「初雪の 白き舞台に 春待ち舞」 天女

          「雪原に 芽吹く命と 春を待つ」 江戸嬢


 雪と賭けまして、春を待ちわびる心。氷雨降りしきるこの夜に、春が待ち遠しいという願いがよく伝わる。

 牛鍋に小腹を満たし、お次は心の潤いとばかり、六区裏のHUBへ向かう。

 大先輩たちが奏でる、ディキシーランドJAZZに旧きよき時代に思いを馳せ、スコッチにワインがすすむ。

  
  
          
 
新春に観た聴いた、歌舞伎「三人吉三巴白浪」、小菊姐さんの三味線の音色に惚れたあっしはこんな句を詠んだ。いつか習ってみたい、江戸情緒でござる

        
        
        「姐さんの バチの音鳴り 牛鍋や」 
海光

 


浅草六区を吟行!

2012年01月26日 | ★全国蕎麦屋飲み好き連★

             
                        浅草演芸ホール

 ご存じ「浅草演芸ホール」である

 氷雨降る、1月21日(土)いつもの俳句仲間と吟行に繰り出した。繰り出すといっても、あっしのお膝元。朝一に、賞品の追加を仲見世と裏観音で買い足して、演芸ホールに向かう。

       
            

 昼の部は11時半~16時半まで。いつ入場しても退場しても同じ料金なのだ。今日日、伝統芸を2500円で見放題なんて、贅沢じゃないすか。

             大入り
             8〇歳の純子師匠

             小菊師匠

 粋曲あり、三味線あり、漫才あり、マジックあり、曲芸あり、大人の愉しみが満載だ。

 落語では、大店の酒飲みの旦那と若旦那のやり取りに大爆笑!純子師匠のお元気な踊りとトークに浮世を忘れ、小菊師匠の色っぽさに、酔った心持ちである。

 先週の歌舞伎に続いて、久しぶりの落語の題目に、江戸が残っているんだな、と再確認できた。江戸物を書くにあたり、月一で落語を聴き、歌舞伎を観にくる価値はあるなと思う。

 やっぱり、平成中村座がやっているうちに、いくべきなのだろう。

                   林家ぺー&パー子師匠

 このお二人も健在。それにしても、ピンクがこれほど似合う芸人はそうはおりやせんぜ。

 この日は観音温泉に入るつもりが、凍てつく寒さに湯冷めしてはと、遠慮した。

 初音小路やもつ煮ストリート、観音裏の見番などを散策し、句会会場の「米久」に足をはこぶ。

                   六区裏のコリアン街
               偽小判(それなりに!?)
              カツラ(怖くねえ!?)
              最新鋭?の手裏剣

 芸に江戸、町に昭和が香るわが浅草は、ごった煮の面白さがあちこちに垣間見れる。偽物の小判に、居合い刀、忍者が使うまっすぐな刀に、手裏剣。同人のひでじぃ様が見たら涎ものでっせ。

 さあて、次回はいよいよ、新春句会の天賞からご披露しやす。

 乞うご期待を。。 

                  

 


芭蕉を訪ねる!

2012年01月24日 | ☆文学のこと☆

                         松尾芭蕉像

 芭蕉記念館のことに触れよう

 あっしのランニングコースに、深川の土手沿いがある。護岸された川っぺりだが、塗装された道には芭蕉公の句の碑が並ぶ。たしか芭蕉記念館のそばに、翁が座っているはず。どこにいるのだろうと不思議だった。この日はこの答えを見るつもりで記念館を訪れた。

      

 ここは芭蕉が庵を結んだ縁の地なのだ。大川に沿った万年橋通りにあるその建物はすぐに見つかった。木造の萱であしらえた門を潜ると、小さいが趣のある庭がある。これも小さな滝が流れ、しばし山水の気分に浸った。

                

                     

        「陽だまりに 春を追いつつ 今日も鍋」
                                    海光


               

               

                    
                          芭蕉公が鎮座する祠

 記念館に入る。こじんまりとした中、翁の足跡を辿ることができるのだ。

 よくぞまあ、あの時代の感覚でははるかに広かった日本を西から東まで歩いたもんだ。

                新大橋と万年橋(嘉永3年) 
                芭蕉庵類焼(寛政5年)     
                井原西鶴

 住吉大社の神前で、なんと23500句を詠んだという記録があるらしい。ほんまですかい、西鶴殿!?

                芭蕉病床の図(寛政5年)
                採茶庵(文政5年)
               
                落柿舎(京都)

                芭蕉生家(三重県伊賀)

 これだけの健脚、そして各国で大名に歓待された翁は、果たして忍者だったのか。嘘か誠か、生家は伊賀にあると云われる。

                陶像(天保6年)
                芭蕉遺愛の石

 たかが五七五、されど五七五。。

 この深遠なる俳句の世界は、一度嵌まったら抜け出せない魅惑の扉である。

 最後は本歌取りで、一句。
                
           

        「初雪や 膝小僧に 傷こさえ」
                          
海光

 初雪に2度も転けたあっしでやんす

                


国立で闘えるということ!

2012年01月22日 | ★江戸っ子エッセイ★

           
                     全国高校サッカー選手権決勝

 1月9日成人式の日。

 2012年初めての国立競技場へ向かう。この日は、伝統ある第90回の高校サッカー選手権大会の決勝。

 対戦するは、市立船橋高校vs四日市中央工業高校。従兄弟がくれたチケットで、息子たち二人引き連れて、愉しみな毎年の恒例行事だ。

        代々木門
         試合開始

 前半いきなりコーナーから四日市が先制した。エンジンのかからないこの時間帯に取られた失点がこの試合の全体の流れを左右するとは…。

 後半に入って、攻めても攻めても、船橋は点が取れない。

 そして、アディショナルタイム。しかも残り2分。直前に選手交代したことで、やはり試合が動いた。まさかの同点弾。四日市の選手にはわるいが、いやあ盛り上がったこと。

         延長戦

 ついに延長戦に入る。 四日市も攻めようとするが、こうなると溜まっていた分、水を得た魚のごとく、船橋の動きが抜群だった。

        

 アイルランドの酒精を飲んでも体は冷えっぱなし。でも試合はHOTだった。

 結果は、市立船橋の逆転勝利。見事な勝ちっぷりだった。四日市も頑張った。アディショナルタイムに入ったときは、勝利を考えたんじゃないかな。そのきの揺みとはいうまい。敗者の悔し涙にかける言葉は部外者のあっしにはないのだから…。

        

 試合後、互いを湛えあう。

 綺麗ごとかもしれないが、この場に立てることが凄いんだ。

 勝負は時の運。でも、こうなってみると、5度目の優勝を飾った伝統校船橋の底力を感じずにはいられない。

       
       

 市立船橋の選手、関係者の皆さん、優勝おめでとうございます。大逆転勝利、体も心も燃えました。

       
       

 最後まで観客が帰らなかったのは、劇的な大逆転勝利の展開もあるが、両校の激しい鬩ぎ合いだろう。

 両校の選手に、拍手を贈りたい。

       
                  準優勝四日市の選手



 競技場に全国で勝ち上がってきたチームの熱き言葉が書かれたボールが飾られている。

 2011年予選のあった年は、特別な年でもあった。様々な思いがこもったボールに、観客の人々の視線が集まっていた。


      「吐く息の 白さ纏った 高校生」
                     海光
 


初めまして光源氏殿!

2012年01月20日 | ☆文学のこと☆

           
                「源氏物語」
          作:紫式部 文:越水利江子 画:Izumi
           2011年11月15日初版 発行:角川書店

 わが同人の大姐越水氏の意欲作である

 あの古典「源氏物語」を子どもが読めるように、一度揉み砕き、さらに己の手法で掻き集め築く気の遠くなる作業なのだ。

 数々の歴史物を扱った児童書を世に送り出している名手であるから、どんな形で源氏を書かれるのだろうと、興味は深かった。

 子どもたちが手に取りやすく、読みやすいように紡ぐ魔法の杖のような筆力を持つ大姐。

 だが相手はあの大古典。千年もの間読みつがれ、また幾多の作家がその訳に手を染めているほどの魅力ある物語。それだけに、児童書として書くのはさらに難しいと察せられる。

 正直、この物語には長い間心が動かないで生きてきた。この度、越水氏が文を起こしてくれたことで、まさに、初めてこの古典に触れることができたのだ。

 原作にはない、青砥こと水鬼が文字通り水先案内人になって、古典に不慣れな読者を優しく導いてくれる。素晴らしい発想力だ。

 若かりし樋口一葉が転写し続けたという、この古典の調べの一端にようやく触れることができた。

 日本人が千年語りつないできた物語。まさにいちばん最初に出会う「源氏物語」であった。

 何度も挫折してきた大人の読者にもオススメの一冊である

       「千年の 夢語らいで 息白し」
                     海光


温故知新! -新春歌舞伎-

2012年01月17日 | ★江戸っ子エッセイ★

           

 1月15日(日)初めて国立劇場に入る

            

 初めての新春歌舞伎を鑑賞しようというもの。

                

 題目は「三人吉三巴白浪」と「奴凧廓春風」。

 どっちも見たことのない通し狂言と舞踊。愉しみでござる。

      

 着くやいなや、二階食堂十八番にて、あぜくら弁当をそそくさと平らげ、いざ大劇場へ。

      

           「初春や 笑う舞台に 黒子あり」
                          海光


 永谷園の茶漬け色した歌舞伎の幕が気分を盛り上げてくれる。

 まもなく開演と聞いて、あっしも1階1等A席に着座する。花道のすぐ近くだった。1500名を超えるお客たちが席に納まった。

 安政7年(1860年)の江戸市村座の初芝居が初演。

 幕末から明治初期にかけて活躍した歌舞伎作者「河竹黙阿弥」の代表作である。

 黙阿弥が得意であった白浪(盗賊の活躍を書いた演劇)という前触れだけで、素で鑑賞する。

 序幕は江戸大川端の庚申塚の場から始まった。「月も朧に白魚の…」という名セリフの響きに、かつての大川の話を聞いて育ったあっとして叙情をそそられる。
 
 松本幸四郎演じる「和尚吉三」は、散々の悪事をしてきた親子ともどもの生臭坊主。

 市川染五郎演じる「お坊吉三」は、さる幕臣の嫡男で将軍家から賜った名刀「庚申丸」を紛失したことを元に父を切腹で亡くし、御家断絶という境遇から御家再興を願って生きてきた。そこは所詮世の常、生きるために悪事に染まっていった。

 中村福助演じる「お嬢吉三」もまた江戸の底辺に生きるものを代表したような生き様を声音を分けて、好演している。

 この同じ名を語る3人の吉三が、お嬢の盗んだ百両の金の円で義兄弟の盃を交わす。これが、百両と庚申丸という名刀が人の手から手へ渡る数奇な運命の始まりであった。

 読書は文字から、落語は耳から、歌舞伎は三味や太鼓の音と演じる役者のセリフや衣装、立ち振る舞いから、お江戸を旅できるのだ。

 お坊こと、染五郎が辻籠から出てきて、大刀を帯に通す仕草に遠き江戸が身近に感じられる。まるで誠の武士がそこにいるかのような錯覚に陥る場面である。堂に入っている。

        
        

 「奴凧廓春風」は、明治26年(1893年)歌舞伎座の初芝居。黙阿弥の絶筆となった。

 いずれ立ち向かわなければいけない新吉原の廓が舞台だけに、ご縁を感じずにはいられない。

 それにしても、松本幸四郎の堂々たる姿に、男ながら惚れてしまう。弟の2代目中村吉右衛門の鬼平の貫禄そのままと云っては叱られるだろうか。やはり血は争えないのだなあと思った。

 急速に消え行く江戸の佇まい。その面影は書物だけでなく、こうした伝統芸能に生き続けているのだと再確認できた。

 まさに「故きを温ねて、新しきを知る」。孔子の云う通りですな。

 こいつあ、春から縁起がよござんす。

 大川端で、江戸猿若の歌舞伎を再演した平成中村座が開演されている。

 江戸好きな皆さんに、ぜひオススメしやす



ロボットと人間の話!

2012年01月14日 | ★映画★

             
                 「リアル スティール」ポスター

 先にご紹介した「幕末太陽傳」に続いて、お正月に観た映画をもう1本取り上げる

 その題名は「リアル スティール」

 主演はチャーリーケントン役のヒュージャックマン。「X-MENシリーズ」のご存じモミアゲスタイル、ウルヴァリン役でブレイクしたイケメンである。その男前ぶりは、2008年「ピープル誌」で最もセクシーな男に選ばれるほどだが、2004年にブロードウェイミュージカルで、トニー賞ミュージカル主演男優賞を獲った演技派でもあるのだ。

 あっしは、その後の作品でも、中世の礼節と気位の高い騎士が現代に舞い降りる「ニューヨークの恋人」、アシュレイジャッドとの駆け引きが最高の「恋する遺伝子」、ドラキュラと狼男という西洋人の古典を最上級のエンターテインメントにした「ヴァンヘルシングなどが大好きだ。

 彼はオーストラリア人特有の野生味はもちろんのこと、エレガントなヨーロピアンのテイストも纏っている。演技のために鍛え上げた体も見事ながら、意思の強さを感じさせるマスクから零れる不敵で、ユーモア溢れる表情に、男惚れしている。

 今回の作品は近未来の話。

 人間の格闘に飽きた民衆のさらなる欲望を満たそうと、業界がロボットを戦わせるという設定。機械で人々の渇きを癒そうとしても土台人間は人間同士なのだよという、ありきたりな話ではある。

 ただ、配役がよかった。

 ネタバレするので詳細は避けるが、息子役のダコタ・ゴヨと恋人!?役のエヴァンジェリン・リリーが見つめるなか、ヒュー・ジャックマンが息子のロボットとともに、戦う姿に、グッときてしまった。

 ロボットの話で釣ってはいたが、実は至極ヒューマンドラマであったのだ。

 思えば「クレイマークレイマー」といい、「チャンプ」といい、父と子を題材にした作品にあっしは弱かったのである。

 今頃気付くなよ、ってか。

 とにかく、男の子を持つお父さんには、親子で観ることをオススメしやす


絶品辛甘!紅白スープ!

2012年01月12日 | 呑み屋探訪(赤坂、六本木界隈)

       
                  希須林「坦々麺」四辛


       「紅白に 舌鼓かな 初ラーメン」
                       海光


 赤坂に初詣したついでに、二男の所望もあり、昼飯に名店「希須林」の暖簾をくぐった

 歳をとり、とんとラーメン屋から遠ざかっている。どうしても油っこいものより、さっぱりしたものに…。寄る年波ということか。

 それでも、たまにはがっつりも食いたくなる。そんな味が赤坂にあるのだ。

 1年半ぶりの再訪である。外装となかの作りが変わっていた。前回は冷房の壊れた夏に伺った。亜熱帯の東京の気候のなか、食べるほうも大変だが、作るほうの気合が凄かった。なにしろ、酷暑のなか、中華鍋をふるい続けるのだから…。

 はたして、味はどうだろう?

 券売機は同じだ。パーコーは売り切れだが、冷やし坦々麺があるのが不思議に思えた。冬なのに、である。

 みんなは三辛、あっしは四辛のチケットを買って、兄さんに渡す。

 おしぼりは冷温どちらも選べる。必須の紙エプロンを着けて、準備完了だ。

 並んだときから作り始めているので、席につくとほどなくして、久しぶりの坦々麺とご対面した。駄洒落ではござらん。

 表層に浮く辛い油の層の下に、白濁した極上の胡麻のペーストが隠れている。上澄みだけ啜ると、大変なことになるのだ。お食べになる際は、ご用心されたし。

 胡麻の甘香と一味の辛が太い麺に絡みつく。

 乾燥エビが、しゃきとした炒め野菜が、紅白のスープと混濁して、舌をすべり、食道で交ざり、胃で跳躍する。

 やはり。 

 「 …うん!」 

 !と唸る。

 気になった水餃子も頼んだ。

         
                    「希須林」の水餃子

 玉ねぎに酢を混ぜた酸味あるペーストが青菜にのって出てきた。手作りなのか、皮が分厚く、黄金の肉汁を包んでいる。皮の小麦が甘く味わえる餃子は、掛け値なしに旨いのである。

         
                    「希須林」のザーサイ

 ザーサイは入れ放題。黒胡麻を合えた逸品は、やはり手作りだろう。出来合いのような濃さで誤魔化すことがなく、野菜本来が堪能できるよう淡い味付けである。ランチサービスのライスにのっけると、何杯でも入ってしまう魔法の漬物なのだ。

 そもそも中国家庭料理店の系列であり、そこでも味わえるが、坦々麺専門で売る赤坂は、値もこなれ、麺に集中することができる環境なのだ。

 坦々麺では、間違いなく名店。接客も抜群。

 あっしのなかで只今一番のオススメなのである

      

 ◆赤坂「希須林」◇

 東京都港区赤坂3-7-9
 03-5573-4119
 http://homepage2.nifty.com/kisurin/index.htm
 


  2012年TOTAL RUN 107km    1月12日現在   


赤坂に詣でる!

2012年01月10日 | ★江戸っ子エッセイ★

          
                       山王日枝神社

 1月7日(土)赤坂に出かけた。結婚の儀式から20年欠かさず、続けてきた恒例の初詣である

 その間、溜池山王駅ができ、山王の名のごとく、山の上の神殿へ長いエレベーターが設置されたりした。隣のキャピトル東急は歴史ある旧ヒルトンの趣を捨て、エントランスの風格も消え、味気ないオフィスビルの上に納められてしまった。これも時代と云って片付けていいものか、あっしのなかでは整理することができず落ち着かない。

 とはいえ、日枝神社を詣でると、20代前半の初心に返ることができる。

 徳川家光公以来の由緒ある神殿には、厳かな気持ちにさせる歴史があるのだ。

                

 こちらの山王祭りは、江戸城に入御した御神輿を代々持つ。往時は歴代の将軍様が上覧拝礼し「天下祭り」として栄えた。

 江戸三大祭りの筆頭と云われ、はたまた京の祇園祭り、大坂の天満祭りと並んで、日本の三大祭りのひとつなのである。

 浅草の祭りと開催が重なるので生で見たことはないが、一度は担いでみたいものだ。

      
                     神使「御神猿」の夫婦猿

 あっしは申年生まれ。日枝神社はご覧のように、神の使いのお猿様がいらっしゃる。猿は古くから「まさる」(魔が去る)と云われ、厄除魔厄の信仰を受け、守護神と崇められているようだ。初めて参拝した時から、せいぜい肖ろうというものなのである。


        「山上の お猿に参り 事始め 」
                        海光

                

 大山咋神(おほやまくひのかみ)さま、お猿様、今年もどうぞよろしゅうお願い仕ります


  2012年TOTAL RUN 92km    1月10日現在   


宿場町の匂いがプンプン!(幕末太陽傳)

2012年01月06日 | ★映画★

                     
                       居残り佐平次(フランキー堺)


             「女郎宿 居残る才も 初春まで」
                           海光

 お正月の恒例行事のひとつ、新春映画を2つ鑑賞した

 その1つが「幕末太陽傳」。日活の製作再開3周年作品であり、創立100周年に選ばれた記念作品である。

 監督は孤高、川島雄三。この作品のメガホンを最後に日活と袂を別ったのに、この度の選択に不思議なご縁を感じる。だが、そのおかげで、逸品に出会えた。日活の英断に感謝せねばなるまい。

 あっしの職場から刊行された藤本義一「無条件幸福論」には、数奇な師弟だった川島とのいきさつが書かれている。珍しく共感することの多い新書であったことを付け加えておく。

       
            女郎おそめ役(左幸子)         女郎こはる役(南田洋子)
 
 主役の佐平次の講釈といい、立ち回りといい、じつに痛快なこと。

 主演した喜劇俳優、フランキー堺は天才ですな。

 左幸子演ずるおそめは小憎らしいほどの美貌で観客を魅了するが、こはる役の南田洋子に完全に食われていた。妖艶でさばさばと快活な遊女の本質を見事に演じていたと思う。

 立っているだけで絵になる裕次郎演じる高杉に至っては、寝そべっているシーンが多かった。日活のスターである彼が、フランキー堺に主役の座を譲り、脇役に徹したのも、彼の演技力を考えての川島の妙案だろう。二谷英明のギタギタした感じもよい。ほかに、若衆喜助こと岡田真澄、小沢昭一、山岡久乃、金子信雄、菅井きん、小林旭、西村晃、役者が揃っている。

 昨年2度歩いた東海道とその第1の宿場町、品川宿がじつによく描かれている。

 旧い関東をうまく表現した雪の降りしきる街道を、鈴が森の御仕置場まで、痩せた馬に裸同然で乗せられ、また陰鬱に警護し、付き従う囚人たちの哀れなシーンが今でも目に焼きついている。

 幕末の宿場町なぞもちろん見たことなどないが、史実から思い浮かべる映像の本物加減!?に、誤解を恐れず云えば、心を奪われてしまった。


                        鈴が森のお仕置場

 この看板に下に、実際に使われた、火あぶりの台石と磔の台石が置かれている。

 小説家岡本綺堂も書いた、八百屋お七もここで焼かれたと云われる。17年ほど前、地下鉄に毒を巻きたくさんの犠牲者を出し、今もなお苦しめている教祖もどきがこの時代に生きていたらと思ってしまう。

             



 駅伝の見学のついでに、鈴が森の御仕置場にいってみた。昼日中だからよいものを、薄ら寒い、得体の知れない不穏がそこかしこに纏っていた。

 思わず、付き合ってくれた家族とともに、お賽銭を投げ入れ、手を合わせる。お寺で子どもたちがみかんとお菓子をもらった。



 子どもたちがこの処刑場に生るみかんじゃないよな、と心配していた。

 初春の陽だまりに実る果実の樹に、隔世の思いを抱く。


               
                   高杉晋作役(石原裕次郎)
      

 名作「幕末太陽傳」。恐らくこれから何度も観返すことになるだろう。ご興味ある方には間違いなく、お薦めの1作である


お正月のお約束 -2-

2012年01月05日 | ★江戸っ子エッセイ★

                        中大の井口選手
                        デッドヒートの7位争い

 毎年恒例になったお約束の箱根駅伝

 2012年も第一京浜の鈴が森まで山王の家から線路をくぐって繰り出す。

 箱根往路は東洋大学のぶっちぎりで幕を開けた。山ノ神柏原も区間新記録の本領を発揮。1位が当然という空気のなか、昨年までの不調をエネルギーに変えて、魅せつけた力強い走りに感動した。

 復路の鈴が森地点でも、やはり東洋が8分差をつけて独走状態だった。

 わが母校は7位争い。最後は2秒差で8位に後退。それでもギリギリのシード権確保は常連校の強みなのか。

 我々は晴れ舞台の結果しか見ないものだが、この日までの研鑽が結実するのだ。一発勝負は体調管理も肝要だが、運を左右するのも引き込むのも、己にかかってくる。それもまた人生なのだ。

 レベルの差は歴然だが、仲間と走った駅伝を回想する。

 箱根の選手たちの走りに、今年こそというパワー源を注入された。もちろん、創作のほうだが…。

              ぶっちぎりの東洋 
              誰も後姿を追えない

 先頭が通過してから、日差しもずれたこともあり、体が冷えるまで後続は来なかった。

 記録ラッシュの東洋の駅伝に幕は閉じたのである。

 東洋大学の選手の皆さん、親御さん、関係者の皆さん、おめでとうございます。

             

 読売の回し者ではないが、こちらも配られていた恒例の旗を振って応援した。

 選手たちのひたむきな姿に己を省みて身が締まる。


              「山越えて 届ける思い 冬の鴨」
                            海光

 じつに清々しいお正月の三が日である

 


お正月のお約束 -1-

2012年01月04日 | ★江戸っ子エッセイ★

        
                     我が家の雑煮

 やはりお正月は季節を感じる食べものに興じたい

 2012年もいつもの食卓を囲える幸せを実感している。

 我が家の雑煮は、北海道の昆布と地元鳥専門店竹松の地鶏を使用し、丁寧に出汁をとったもの。具材は鶏と三つ葉のみ。このシンプルなスープが香ばしい焼き餅を引き立たせるのである。

 江戸っ子はたくさんの具を一度に入れるのを好まない。シンプルイズベスト。歳を重ねるごとに、生活も身の回りも、酒も食も、女も友もエトセトラ…。削ぎ落として、シンプルが肝要なのである。あれやこれや手を出す時間も、興じる時間も残り少ない、はずだ。ふんだんな肉や野菜を漉したコンソメスープのような創作を書きたいもの。

 それにしても無駄な時間が多い。それも万人に共通することだと判っているのだが…。これからはせいぜい、好きなことだけに集中したいということなのかもしれない。

 とはいえ、土地の習慣、土地の食、酒は云うに待たない。前段は、あくまでもあっしの日常生活での話である。ほうとう鍋もけんちん汁もはたまたブイヤベースも嫌いでない。郷にいえば郷に従え。わかってまんがな。

    
           
                   

 あっしは生まれも育ちも浅草村の新吉原であるが、関東風の甘い味付けが嫌いだ。素材の味が残る薄味こそが食の王道だと信じて止まないのである。とはいえ、味についてとやかく云うのは野暮の極み。黙って好きなものを食すだけですな。

 晩年はそれでいいのではないか、と心からそうありたいと願うのである


      「正月や 走れどカロリー 追いつかず」
                          
 海光

 
2012年TOTAL RUN 32km    1月4日現在   


明けましておめでとうございます!

2012年01月02日 | ★江戸っ子エッセイ★

          仲見世通り

          雷門(風神雷神)

 謹賀新年

 2012年が明けた。

 何はともはれ、新年を祝おうではないか

          熱田神社

 除夜の鐘が鳴りおわる、暁九つ(子の刻)に家族揃って初詣をした

 氏神さまは、元亀~永禄年間(1551-1558年)頃創建と云われ、正保2年(1645年)に元鳥越から移転された熱田神社。

 かがり火が焚かれ、甘酒が配られるなか、日頃閑散とした氏神様を参拝しようと町内に住むご近所の氏子さんがたくさん並んでいる。若かりし頃サラリーマンをしていたという人のよい神主さまに新年のご挨拶を済ませ、いざパンパン。

              

 弘化4年(1847年)、江戸小石川に住む刀工が奉納した大太刀「陰陽丸」が納められている。安政5年(1858年)に江戸にコレラ病が流行した折は、この陰陽丸が町内を回って疫病を祓ったという。由緒ある大太刀。神主さまに特別に見せてもらったことが自慢だ。

 新年の願いは届いただろうか。こころに響く神の声。己の言動が問われている。

          

 仲見世に平成中村座の歌舞伎役者の名がつらなる。

                
          宝蔵門
          金龍山浅草寺本堂
                浅草神社
         三社神輿本社

 大震災で取りやめとなった三社祭も今年は開催されるようだ。

 威勢のいい担ぎ手の声、活気ある観衆、大いに酒を食らって日の本に元気と勇気を発信しようではないか。お正月のいまから5月が愉しみだ。

               

 三社祭は、5月18日(金)-20日(日)の予定。

        
                  駒形橋から墨堤を眺める
              
                   スカイツリーもいよいよ

 天に届くような634mのスカイツリーのお膝元に、上野の西郷隆盛と無血開城を決行した勇敢な賢者は立っている。

 墨堤で凛とした姿勢で、天を指す勝海舟公は何を見ているのか。

 江戸の町を焼いてはいかんと、市井の民と家々を守った幕末の猛者たちは現代の政事を行う輩をどう見ているのだろう。

 あっしも、皆さんも、市井の民の言動こそが明日へつながる未来なのだ。

 皆様に幸多い年でありますよう心より御祈り申し上げる。

 2012年もご贔屓に、よろしゅう


           「新しき 心の衣 お正月」
                      海光

               

 ローマの詩人であり、喜劇作家は云う。

 「他の世代のために樹を植えよ!」
                   
カエキリウス・スタティウス(~BC168年頃)


2011年TOTAL RUN  2203.5km    12月31日走納 
  *2000kmした。継続が大切だなあ。

2012年TOTAL RUN  18km    1月2日現在  
  *今年は今日から走り始めでやす。がんば、自分