週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

三崎坂に眠る

2014年08月16日 | ★江戸っ子エッセイ★



 連日、中東の太陽と東南アジアの蒸し風呂を掛け合わせたような殺人的な猛暑が続く。

 一年中でこの季節が最も好きな私だが、さすがにこの時期の力仕事には参った。

 業者に頼らず、社員のみでのビル移動に、汗まみれの埃まみれ。ひとっ風呂浴びなきゃ、ビールすら飲む気も起きやしねえ。

 それも旧盆に入り、ようやくのひと休み。

 定時+1hの残業、珍しく明るいうちに自転車に飛び乗った。

 朝の通勤帯、山手線はガラガラだが、帰る夕刻は東京見物のヒトで案外の混みよう。 

 お盆の都内は至極快適で、チャリ通にはもってこい。家から会社まで三つの山越え。

 運動でかいた汗も、坂を下る風に吹き飛ばされる。心地よい。

 

 駒込から谷中へ抜ける団子坂を下ると不忍通りにぶつかる。そこを越えると、三崎坂だ。

 春先には谷中一帯に桜の花が咲き誇り、初夏には紫陽花が目に鮮やか。

 その坂の中程に、全生庵がある。

 幕末、明治の名人円朝が眠る。 



 通りかかると、ちょうど円朝まつり。怪談を得意とした師匠の幽霊画が八月いっぱい展示されているとか。

 禅、剣、書の達人、山岡鉄舟もここに永眠している。

 西郷隆盛と勝海舟の会談により、回避された江戸炎上。

 遠路敵陣に飛び込んだ鉄舟の行動力と交渉力、そして胆力なくしてはあり得なかった。

 西郷をして、金もいらぬ欲もいらぬ、命すら惜しくない誠に始末に負えない男、と言わしめたとか。

 まさにこの男が江戸を救ったのだと思っている。


【寺町に蝉降りしきる終戦日】哲露




 鉄舟の由縁か、座禅の禅寺として有名で、中曽根元首相から勧められた安倍首相も訪れる。

 青年実業家の友人と行こうと約束しているが、いまは、テレビでも話題になるほどで、予約が随分先まで取れないとも聴く。

 ブームが好きなわが同胞。落ち着いた頃にいったほうがよさそうだ。



 本日はこれから、この寺で寄席も催される。

 夏の雨が煙ってきた。

 世界から絶えない争いの根に、達人も涙しているのかもしれない。

 昨日、水戸藩邸のあった富坂を下ってお茶の水へ行くと、街宣車と大勢の機動隊が町を封鎖していた。

 物々しい有様を見て、どこにいても、いつ如何なる時でも、心静かに平和を願うほうがよっぽど好ましいと思う。

 目指す方法は違えど、家族を失いたくない想いは万国万民共通の願いと信じたい。

 さて、ローストビーフが焼き上がった。肉汁を入れたソースも出来た。

 小説も料理のように着実に仕上がるといいのだが。

 コツコツとやるしかないのだな。 

 へいへい、凡凡なり

 偉大なる先達に、合掌


  



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