ニクバエ科のホンシュウホソニクバエGoniophyto honshuensis Rohdendorf,1962
2008.11.20に撮影していたハエがホンシュウホソニクバエ♂と同定できていたので紹介する。同定者はF氏である。
撮影地は三重県津市の田中川干潟,広いヨシ原の端,漂着物の上である。
ニクバエ科は♂交尾器さえ調べれば,同定は容易いと人に聞いていたが,このホンシュウホソニクバエの場合,♂交尾器を引っ張り出しておかなくても同定可能のようである。
なお,この個体は胸背の3本の黒縦線が少し不明瞭である。
『新訂原色昆虫大図鑑Ⅲ』によると,ホンシュウホソニクバエは「体長7~8㎜。小形で細長いニクバエである。本州以南琉球にまで見られ,海岸付近の湿地帯に多い。海岸の波打ち際の砂上で見出されることもある。幼虫は動物死体に発生する。」
『新版日本の有害節足動物』によると,「体長5.0~8.0㎜。体は細長く,黒色で金色の粉でおおわれている。胸背に3本の黒縦線がある。腹背は,市松模様でなく,各腹節の後縁に黒色の帯がある。雄の生殖背板は,6+7節が融合し,融合部に辺縁剛毛がある。河口の湿地,海岸からあまり離れていない湖沼で,葦などの茎に静止しているのが観察できる。成虫は,魚などの死体に集まり,幼虫は動物死体から発生する。本州から南西諸島までと,中国およびロシアの一部に分布している。」
ネット検索すると,2011年1月現在ホンシュウホソニクバエとして紹介している生態写真のほとんどは誤同定のようである。ヤドリバエ科のナガハリバエの仲間を本種と間違えていることが多いようだ。
とある掲示板で,アノニモミイア氏が「ニクバエ科とヤドリバエ科を区別する科の検索形質は、胸部背面の後方にある小楯板という部分の後ろの縁が張り出していて、その下に上から見ると隠れている下小楯板と呼ばれている部分が、横に土手状に盛り上がるか(ヤドリバエ科)、否か(ニクバエ科、クロバエ科など)です。」と解説されている。
知見を持った誰かがきちんと正してくれないと,いつまでも誤同定の連鎖が続くことになる。
アノニモミイア氏の解説以降,ネット上にヤドリバエ科ナガハリバエの一種と紹介している生態写真が増えたような気がする。
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