ホリカワクシヒゲガガンボ Pselliophora bifascipennis Brunetti, 1911
学名はCatalogue of the Craneflies of the Worldに拠ったが、数年前から Ctenophora (Pselliophora) bifascipennis (Brunetti, 1911) と紹介している人も居るが、調べた図鑑類にはこの種が載っていなかった。属名がどこかで変更されたようである。
夏の夜、私の部屋に侵入してきたガガンボは蛍光灯の周りをしばらく飛び回った後、パソコンやカーテンに止まった。翅長は約14ミリ。
このガガンボはお尻を持ち上げて、さほどふらつきもせず飛ぶ。翅を広げて飛んでいるようには見えなくて、ヘリコプターが飛んでいるような印象を持っている。こんな飛び方をするガガンボが他に居るのかどうか知らないが、子供時分から見ているような記憶がある。
探した図鑑には載っていなかったので、ネット検索した。翅脈の斑紋と触角が特徴的なところからホリカワクシヒゲガガンボの♂と思える。
ある画像掲示板でDipterophilus と名乗る人が「ベッコウガガンボに近縁のホリカワクシヒゲガガンボ」について次のようにコメントしていた。
「幼虫は腐葉土中などに生息しており,暖地に多い種で,市街地などにも時々現われます.この仲間はみな櫛歯状の触角に特徴があります.雌では腹の先が細く尖った産卵器に変化していて,これを使って腐葉土中に産卵します.幼虫は腐葉土を食べて生長します.クシヒゲガガンボ類の多くは朽木に穿孔して,これを食べます.」
体色には変異があるようで、脚の色まで赤っぽい個体も居るようだ。きっと美しいに違いないから会いたいと思う。
Catalogue of the Craneflies of the Worldによると、分布は「Russia: FE (Primorskiy kray); North Korea, South Korea, Japan (Honshu, Kyushu), China (east);; China (as far south as Guangdong).」 なお、FEは極東、Guangdongは広東省。
また、科はガガンボ科 Tipulidae、亜科は クシヒゲガガンボ亜科Ctenophorinae としている。
なお、『日本産水生昆虫―科・属・種への検索』ではPselliophora属及びクシヒゲガガンボ属Ctenophoraともにガガンボ亜科Tipulinaeとしていて、クシヒゲガガンボ亜科なんて載せていない。同書によると、触角の鞭小節を属検索のポイントとしており、4本の突起がほぼ同じ長さだとPselliophora属、先端近くの2本の突起が基部の2本より短いものをCtenophora属としている。
2009.8.25
追記
松村松年が1916年に,長崎の堀川佐市氏から送られてきた標本をもとに記載した新日本千虫図解巻之二には,和名をホリカワクシヒゲガガンボ,学名をDictenidia Horikawae Mats.とし,「翅は暗色不透明,翅底の4分の1,中央にてやや横帯をなせる3紋列ならびに後縁の中央にある1紋は鼈甲様の黄色」などとある.当時の分布は九州長崎とし,「稀なるが如し」と結んでいる.
Ctenophora (Pselliophora) bifascipennis (Brunetti, 1911)という学名は,1989年発行の日本産昆虫総目録に載っています.
on lineでは"日本産昆虫目録データベース"のHPで検索すると出てきます.
昆虫総目録の改訂版では,Pselliophora bifascipennisに変わる予定です.
亜科の件については,研究者によってガガンボ科をいくつの亜科に分けるか意見が異なっており,統一見解は難しいようです.
学名に関して,いろいろ教えていただきありがとうございます.
"日本産昆虫目録データベース"のHPでは,和名で検索しても出てこなかったので載っていないのかと思っておりました.Ctenophoraで検索すると学名が出てきましたが,和名は出ていませんでした.
昆虫総目録の改訂版は手に入れなくっちゃ.