田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

キョウチクトウアブラムシ

2007-12-15 | 田中川
キョウチクトウアブラムシ
里山の麓を散策していてガガイモの袋果に気づいた。近寄って眺めていると、ガガイモの蔓に黄色いキョウチクトウアブラムシが着いていた。
有翅型の個体もいた。この時期の有翅型は雄虫と思われる。
アブラムシ亜科
2007.12.7

キョウチクトウアブラムシ

キョウチクトウアブラムシ

トビイロツノゼミ

2007-11-05 | 田中川
トビイロツノゼミ
里山の山道を散策した。
ベニバナボロギクのつぼみの傍に体長5ミリほどのトビイロツノゼミが同じ姿勢でじっとしていた。
胸部背面に一対の突起がある。耳のように見えるが、場所は背中。
目の位置がやけに低く感じられる。
成虫の出現月は5~9月というから、この子もそう長くは生きていないだろう。
ヨコバイ亜目ツノゼミ科
2007.11.4
トビイロツノゼミ

トビイロツノゼミ

トビイロツノゼミ

セミの仲間 ハマベアワフキ

2007-10-28 | 田中川
ハマベアワフキ
堤防西の休耕田にヨシが茂っている。
そのヨシにハマベアワフキが群がっていた。
来月には成虫の姿が見られなくなる。だから、10月はカップルが多いのだ。
アワフキムシの仲間の幼虫は自らの排泄物を泡立てて、その泡状の巣で暮らす。泡巣は界面活性剤の水溶液で出来ているため、普通の昆虫はこの中では呼吸が出来ない。
幼虫も成虫も草の汁をエサとしている。イネ科植物によくいる。

カメムシ目(半翅目) ヨコバイ亜目 アワフキムシ科
セミやウンカも同じヨコバイ亜目

2007.10.23
ハマベアワフキ

ハマベアワフキ
休耕田に群生しているシロバナサクラタデでも見かけた。

ヒトハリザトウムシ越冬準備

2007-10-27 | 田中川
ヒトハリザトウムシ
ハマガニを探しに、ハマボウの古木周辺で大きめの流木を動かすなど調べていて、ヒトハリザトウムシがもうこの辺りに分散して小集団を作っているのを見つけた。冬の冷たい西風は堤防とアイアシ群落そして流木や干潟に捨てられた粗大ごみなどによって忍ぶことが出来る。
夏場に大集団を作っていたコンクリートトンネルには一匹もいなかった。
この日出会った彼らの中に、歩脚が欠けている複数の個体を確認した。本来は8本の歩脚。

この干潟から数キロ離れた砂浜でもヒトハリザトウムシを見つけている。砂浜の一部を石垣で囲んで陸地化し、防砂のために松の木を密植させている。その石垣が砂浜に続く海食崖を偲ばせる。自然海岸ではないが、ヒトハリザトウムシの喜びそうな環境となっていた。

腹部第2背板上に1本の短い棘がある。カワザトウムシ科フシザトウムシ亜科

2007.10.23

ヒトハリザトウムシ

ヒトハリザトウムシ

ヒトハリザトウムシ

ヒトハリザトウムシ

追記
「日本国内で海岸や河川感潮域の水際に生息が期待されるザトウムシは本種のみである.他の同定のポイントは1)腹部背甲第2背板中央に短めだがふつうはっきりした1棘があること(これは幼体には見られない.本種以外に同様の1棘をもつ種としてアカサビザトウムシやオオナガザトウムシなど数種あるが,これらは海岸に出現することはきわめて少ない),2)第2歩脚の腿節に少なくとも1個の偽関節をもつ(これは本種を含むフシザトウムシ亜科に共通の特徴で,幼体でもみられる)」
鶴崎展巨 (2008) 道湖・大橋川におけるヒトハリザトウムシ(ザトウムシ目カワザトウムシ科)の生息記録.すかしば,(56):29-31.

新日本動物図鑑(中)という昭和40年頃の図鑑には,学名は異なるもののヒトハリザトウムシは「体長5~6mm.脚Ⅰ36,Ⅱ69,Ⅲ39,Ⅳ50mm.からだの皮膚は堅く,背表面は一様に小さな球状の果粒におおわれている.つねに第2背板のまん中に1本の比較的短かいとげがある.まれに第1または第3背板にも付属的なとげがある.雄では付節の腹面に密に配列した歯がある.第2腿節にのみ1~2個の小結節がある.腹部の背面には暗褐色の帯状斑がある.ふつう海岸の岩かげなどに群生する.」などとある.
 

傷だらけのツマグロオオヨコバイ

2007-10-24 | 田中川
ツマグロオオヨコバイ
近所の畑をうろついていたら、傷だらけのツマグロオオヨコバイと出会った。
健気に生きている姿に感動した。いろんな植物の汁を吸って生活している。
寿命は約8ヶ月で、成虫で越冬するという。
このツマグロオオヨコバイは傷だらけのまま冬を迎えようというのか。
ヨコバイ科ヨコバイ亜科
2007.10.22
ツマグロオオヨコバイ

カルエボシ

2007-10-01 | 田中川
カルエボシ
近くの海岸には流木やロープ、発泡スチロールなどに付着したカルエボシが時々漂着する。彼らはいつも群生している。
この日見つけた群れは、まだ生きていた。蔓脚(まんきゃく又はつるあし)を出して、長く伸ばした柄を動かしている。海水につかると蔓脚を広げるが、海水が引いていくと蔓脚を引っ込めてしまう。
蔓脚類の中の有柄類で、エボシガイ科
頭頂部は2枚の背板、2枚の盾板、1枚の細長い峰板の計5枚の板からなる。各板は白色だが、時々半透明の板を持った群れも見ている。板には多数の溝がある。
頭頂部の先端にある背板が尖っているのがカルエボシの特徴である。
近縁種のエボシガイは背板に丸みがあり、カルエボシよりも大型で頭状部が4センチ内外もあり、また柄部も長い。
いろんな図鑑やホームページで紹介されているもので、両種を混同していると思われるものが多数ある。私は、三重県内では第一人者の方にお尋ねして、カルエボシの特徴を教えてもらった。近縁種とは厄介なものだ。
2007.9.24
カルエボシ

セイタカアワダチソウのアブラムシを食べる幼虫たち

2007-07-20 | 田中川
海岸堤防際の水路の土手に群生するセイタカアワダチソウ。その茎葉に赤色のセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシがたくさん居る。このアブラムシを食べていた3種類の幼虫たちを紹介したい。
2007.6.26

ヤマトクサカゲロウ幼虫
ヤマトクサカゲロウのタイプAの幼虫。
頭部や胸部背面の斑紋の大きさにかなりの個体変異があるようだ。
タイプBとは幼虫の斑紋ばかりでなく、成虫の鳴き声も違うようで、雌雄のコミュニケーションも両タイプ間ではうまくいかないらしく、別種の可能性が高いようである。
脈翅目クサカゲロウ科

ヒメカゲロウsp幼虫
脈翅目 ヒメカゲロウ科Micromus属の一種の幼虫

ヒメカゲロウsp幼虫
脈翅目 ヒメカゲロウ科Micromus属の一種の幼虫
右の個体が上の写真と同一。
左の個体が下の写真と同一。

ヒメカゲロウsp幼虫
脈翅目 ヒメカゲロウ科Micromus属の一種の幼虫

ヒメカメノコテントウ幼虫
ヒメカメノコテントウの幼虫

ヒメカメノコテントウ幼虫
ヒメカメノコテントウの幼虫

コガシラアワフキのカップル

2007-07-12 | 田中川
コガシラアワフキ
田中川をさかのぼり、鈴鹿市に入ったあたりでは川幅はもう2メートルも無い。
川岸に大きなアカメガシワの木がある。その葉裏に2匹の黒い虫を見つけた。
体をくっつけあったまま、少し回転するように動いた。恋人同士みたいに仲の良いカップルだなあと思った。どうやら交尾しているようだとは後で気づいた。真上からしか見ていなかったので、この時は気づかなかった。

コガシラアワフキ科 コガシラアワフキ
体色変化があるアワフキムシで、全身が赤褐色から黒色までといろいろ。
翅端部は丸みがあって、この2匹のように赤く縁取りが見られる個体もある。
林に近い草むらなどに居る普通種とのことだが、これまでに出会った記憶は無い。
2007.6.26

コガシラアワフキ

ヨスジヒシウンカ

2007-06-29 | 田中川
ヨスジヒシウンカ
ヒシウンカ科 ヨスジヒシウンカ Reptalus quadricinctus (Matsumura)
水田近くの草むらで見つけた。
蛾かとも思ったが、セミに似ているなあという印象。ウンカらしいと感じてから、種名にたどりつくまでが手間取った。
頭部と翅の部分を除くと、残る形(前胸背板)がひし形となる、それがヒシウンカ科の特徴のようだ。
2007.6.28

トノサマガエル♂

2007-06-27 | 田中川
トノサマガエル♂
田中川の源流近くまで出かけた。河口から10キロもないんだけど。
久しぶりでトノサマガエルを見つけた。♂だ。雌は色彩や模様が違う。
背中側隆起の間のストライプが認められるのでナゴヤダルマガエルでもない。
それにしても、海岸近くの我が家周辺では見かけなくなったなあ。

波打ち際にハマスナホリガニ

2007-06-23 | 田中川
ハマスナホリガニ
干潮の波打ち際で貝堀りを楽しんでいた小学生が見つけた。岐阜県から総合学習として一泊研修で来ていた子供たちだ。
砂の上に置いて観察しようとしたが、あっという間に砂の中へ潜っていく。アミメキンセンガニも潜るのが得意だが、どだい比べ物にならないスピードだ。体の後ろから潜っていく。
異尾類 スナホリガニ科 ハマスナホリガニ
波打ち際の浅い所に生息しているようだ。
甲の前縁部の突起が中央にひとつしかないという特徴からスナホリガニ(突起が二つある)とは区別できる。
第1胸脚は棒状で、ハサミはない。この個体は右の第1胸脚が欠損している。
これまでハマスナホリガニは打ち上げ個体すら見たことが無かった。
2007.6.20

ハマスナホリガニ

ハマスナホリガニ

ハマスナホリガニ
抱卵していた。


「干潟の図鑑」正誤表

2007-05-19 | 田中川
四月、全国45箇所の干潟と干潟の生き物を紹介する「干潟の図鑑」が発刊された。編者は日本自然保護協会、発行はポプラ社である。北海道から沖縄まで様々な干潟のうつくしい風景を見ることができるのはうれしいが、生物の誤同定と誤った生態の紹介が多い。小学校の先生から「干潟の図鑑」を総合学習の教材として子供たちに使わせたいと提案されたが、このままでは使えないとお断りした。子供たちに誤った知識を覚えてもらっては大変。取り急ぎ、自分が気づいたことをページ順に列記してみることにした。
編者は今のところ正誤表の発表は考えていないようだ。初版で約8千部は発行しているだろうから、多くの読者に誤った情報を与えてしまう。執筆者の一人として、放置しておけない。
正誤表は、随時加筆していくつもりである。皆さんにも意見を書き込んでいただきたい。
広く専門的な知識をお寄せください。
*************************************
表紙カバー ①シオマネキはハクセンシオマネキです。同じ写真が本文ではハクセンシオマネキとして紹介してあります。
 ③のウミニナはホソウミニナのように思えます。ウミニナの仲間という意味合いでウミニナとされているんでしょうか?
 ④「砂干潟」は、「ウェイブリップルと野鳥の摂食跡」又は「リップルマーク」のほうが適切ではないでしょうか。
 写真と対応する干潟の名称又はページ数を書いてもらってあるとありがたい。

P21 「チュウシャクシギ…泥の中を探って甲虫や昆虫…」甲虫ではなく甲殻類ではないでしょうか。泥の中にいる昆虫とは何ですか。種名を教えてください。

P22 「集団ごとにいっせいに同じ方向に向かって泥をはっているウミニナ」…間違いです。ウミニナ類は個体個体で行動しているので、集団を組んでの行動はしていません。

P23 「わー、つられちゃった!」ケフサイソガニはタカノケフサイソガニです。写真の、はさみ脚の付け根に房状の毛が生えている雄のカニには、腹部に全く点班が見られません。

アラレタマキビガイは、タマキビではないでしょうか? 「小石みたい」というキャプションとかくれんぼの写真に写っている丸い貝からイメージされるのはタマキビでしょう。水を嫌うアラレタマキビが干潟の中にごろごろ転がっているはずがないと思います。写真での同定に自信はありませんが。
カキはマガキのようです。種名が分かっているものは種名を使うようにしてほしいものです。
 「アラレタマキビとカキ」のように、この図鑑は全体的に種名と通称名とを混在して使っている傾向があります。
 「ウミニナのアート」 ウミニナに見えません。ホソウミニナでしょうか。ウミニナも混じっているかも知れないので、ウミニナ類とすれば問題がないかもしれません。

P24 「アマモやカモガヤなどの水草」 アマモは海草、カモガヤは牧草です。青森にはこんな水草があるんだろうか?

P25 セグロカモメと紹介されているのは全てウミネコです。

P28 「干潟に暮らすカニたちは、砂の中の有機質を食べて…」の記述は不正確です。砂の中のものを食べているカニたちもいますが、食べないカニたちもいます。写真のクロベンケイガニなど、砂を口に入れない種もあります。

P37 「マメコブシガニ。砂の中にいる小さな貝を食べる」との記述は正確なものなのでしょうか。腐肉に集まってくることは観察しておりますが、小さな貝とはどんなものを食べているのでしょうか。疑問です。
アサリ、ソトオリガイ、ホトトギスガイなどを食べているところを目撃しているとの生態学者からの教示により、疑問解消。

p39 ユリカモメは冬プランクトンなどを食べている。ユリカモメがあのくちばしでどのようにプランクトンを摂食するのか知りたいです。

P40 チゴガニのダンスが「オスがメスをさそっている」との記述は誤りのようです。最近の研究によれば、メスもダンスをしており、またオス同士に対する行為でもあるようです。

P42 「ハママツナ。11月中旬には、きれいな黄葉に色づく」…紅葉の誤りではないでしょうか。  
「干潟の泥や砂の中には、ゴカイやアサリやバカガイ…など二枚貝や巻貝もたくさんいます。」…ゴカイは貝ではありません。
「オオヨシキリもまけずにアシの葉にとまって」…とまるのは葉だけなのでしょうか。茎や穂先に止まることの方が多いように思います。ソングポストがアシの葉では不自然な気がしますが。

P44 「ウシガエルのオタマジャクシ」は間違いです。これは魚です。アシシロハゼのようです。

P45 「なくていい第一脚が大きくなるザリガニと違って」…なくていいという記述は不要だと思います。

P46 「コメツキガニの団子。穴からせっせとはこびだす」との記述は不正確です。巣穴から運び出した団子は、大きいものです。細かな小さな団子は摂食の後、食べかすの砂団子です。
 「…さまざまな水鳥 」は誤解を生む記述です。ハクセキレイやチョウゲンボウは水鳥でないと思います。

P48 「ニホンヨコエビ」って、こんなに小さいのかなあ? 

P49 「アシハラガニ。みんなそろってはさみを上げ下げして、カニのダンス」の記述は誤りです。アシハラガニはダンスをしません。揃ってハサミを上げ下げする習性はありません。
 ビンの中のカニはケフサイソガニ? アシハラガニではないでしょうか。

P50 チチブはアベハゼのようです。

P51 エイはアカエイではないでしょうか?
「砂のオブジェ」ではないので、「砂のオブジェ?」とでもすべきところでしょう。

P54 「すこし泥っぽい底質のすきなコメツキガニ」との記述は間違いです。コメツキガニは泥っぽいところは嫌いなはずです。
 「このカニがつくる砂だんごは大きく」との記述も正確ではありません。コメツキガニが食べかすを丸く千切って置く砂団子は大きくありません。大きいとしているのはコメツキガニが巣穴作りのために掘り出した砂の塊でしょう。2パターンの砂団子をいずれも砂団子としていることから誤解されやすいと思います。穴から掘り出した砂の塊も団子状になっているからといって「砂団子」と説明している資料を見たことがあります。これは一度専門家によって「砂団子」の定義を整理しなおしてほしいものです。

P73 クビキリギリス× クビキリギス○(編集時、種名を間違って印刷したそうです) 一部の事典にはクビキリギリスの種名が使われているようです。またネット検索でもクビキリギリスがたくさん出てきます。

P77 ハマガニ? アシハラガニです。
「砂だんごの大きさもちがう」との記述は誤解されます。大きなカニの周りにある砂の塊は、巣穴作りの作業によって穴から出されたものです。写真右下の細かい砂だんごは、食後の食べかすです。この二つをコメツキガニの個体差によるものと考えるのは間違いです。

P82 ヤマトオサガニ?オサガニではないでしょうか。
「クルマエビ。ふだんは砂にもぐってじっとしている」…ふだんでなく昼間ではないですか。

P86 P88 P94 カワサンショウガイ× カワザンショウガイ○
(編集時、種名を間違って印刷したそうです)

P90 マゴコロガイが寄生していたのはヨコヤアナジャコそれともアナジャコ? 本文と写真のコメントとが合致していません。

P92 「潮が引くと、砂干潟ではおなじみのハクセンシオマネキがはさみを上下させるウェービング…」というのは不適切だと思います。必ずしも潮が引くと行う行動ではなく、オスが行う行動で主に繁殖期に見られます。
 「海浜植物の群落にアシハラガニが、すみわける」というのは間違いだと思います。アシハラガニの主な生息地は泥地や塩性草原です。ここの干潟にはどんな海浜植物の群落があるのでしょうか?

P107 「産卵のために海にきたモクズガニ」とありますが、写真の個体はオスです。「繁殖のために海にきた…」とした方が良いと思います。

P108 カメノテの写真はピンボケです。見るたびにめまいがします。有料の本なんだから、もう少し気遣いがほしいと思います。

P120 塩降る写真と次の「ほら、でてきた」の写真と連続しているようなコメントになっていますが、関係無いんではないでしょうか。本文の記述と符合させるならば2枚目の写真はマテガイが姿を見せているものでなければならないでしょう。

P121 ケフサイソガニは誤同定です。このカニはカクベンケイガニです。

P122 カワアイガニではなくカワアイガイでしょう。

P123 ハマシギと紹介されているのはトウネンです。トウネンは越冬しない旅鳥です。

P126 静かに待っているとまた目の前に現れてダンスや…」ハクセンシオマネキがウェイビングを行うのはオス、主に繁殖期に見られる行動です。
 「ハクセンシオマネキより少し大きめの巣穴」アシハラガニの巣穴は個体によりますが、そのほとんどがハクセンシオマネキの巣穴よりずうっと大きいと思います。

P134 「マメコブシガニが2ひきで移動する」との記述は誤解を生みます。2匹で移動するのは交尾前及び交尾後行動であって、常にペアーで移動しているものではありません。ただし、交尾前及び交尾後行動は4~9月に干潟で良く見かけることがあります。

P150 「かつて日本全国でふつうに見られた」との記述は間違いではありませんか。ハクセンシオマネキは今も昔も地域限定でしょう。ちなみにツバサゴカイやニンジンイソギンチャクを、私はいまだに見たことがありません。
 「キンセンガニと追いかけっこ」との記述は不適切です。キンセンガニは、4対8本全ての歩脚がヘラ状の遊泳脚となっています。波打ち際では、砂の中に潜り込むだけです。追いかけっこを楽しむことは不可能ではないでしょうか。
 「ゴカイのなかまオフェリア。とっても小さい」の記述は疑問です。2種類はゴカイの仲間ではないと思います。スジホシムシやスジホシムシモドキあたりであろうと思われます。オフェリアではないでしょう。鉛筆との比較から「とっても小さい」ようには見えません。

P151 キンセンガニの写真は明るさの補正ができなかったんでしょうか? 甲の模様が真っ黒で見えません。模様の異なる類似種がいるんですが、これでは判別できません。

P154 ハマエンドウやハマヒルガオは、塩性植物と呼ばれることはないと思います。海浜植物の範疇に入ると思います。またアシについては耐塩性ではあるが塩性植物とするのは一般的ではないと思います。しかし、「塩性植物」の定義が今一分からないのです。
原稿では「塩生植物」としたのに「塩性植物」と直されたページもあるので、この本では「塩生植物」を使わずに、「塩性植物」に表記を統一して、幅広く植物群を捉えているのでは思われます。この本では「塩性植物」を「海岸植物」とほとんど同義語として扱っているようにさえ思われます。
「塩性植物」と「塩生植物」では定義が異なるのでしょうが、ネット検索をすると同一論文の中でも区別せず両方を使っているものも多くあります。それらは変換ミスによるものと思います。

P160 シオマネキの住処は「砂質の干潟」ではなく、「泥質の干潟」では。同ページのシオマネキの写真からも泥質であることが見て取れます。

P164 「ハクセンシオマネキのオスが脚を小刻みに動かしていると、巣の奥に隠れていたメスが…」の記述は私どもの観察例や、*(小野 1995)の記事とも符合しません。「メスは巣穴に逃げ込むが奥に入ることはない。オスはメスの巣穴に歩脚を入れて、メスに触れて先端(指節)を震わせメスを刺激する」のが正しいと思います。

P168 「スゴカイのストロー」はムギワラムシの棲菅のことだろうと思われる。スゴカイイソメの棲菅のことならば、ストローと呼ばないだろう。巣を作るゴカイという意味でこの著者はスゴカイと言っているのだろうが、一般的にスゴカイと言えばスゴカイイソメを思い浮かべるのではないだろうか。

P169  スゴカイのストローとして紹介している写真は、ムギワラムシの棲菅である。誤解を生じないように表現を訂正すべきである。スゴカイイソメやツバサゴカイの棲菅とは異なる点を明確にするべきだろう。
「大きなモクズガニ」モクズガニにしては小型だと思われる。   

P182 タイワンアシハラガニではありません。オオベンケイガニに見えます。沖縄には行ったことがないので確信はありませんが。

P183 シオマネキの写真は、シオマネキUca arcuataではなく、ヒメシオマネキとヤエヤマシオマネキではないでしょうか。シオマネキ属 Ucaという意味で、「シオマネキ」と表記するのは誤解を生みます。シオマネキの仲間とする方が良いと思います。

P186 マングローブの若木の近くで見つけたのはシオマネキUca arcuataの巣穴ではなく、シオマネキの仲間の巣穴ではありませんか。シオマネキUca arcuataとシオマネキ属 Ucaがごっちゃになって解りにくいと思います。

*参考文献 干潟のカニの自然誌・小野勇一著 平凡社

セイタカアワダチソウのアブラムシ

2007-05-15 | 田中川
セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ
草むらの中でしゃがみこんだ時にセイタカアワダチソウにいるアブラムシに気がついた。
アブラムシ亜科のセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ
アブラムシのほとんどの個体は翅を持たないが、寄主植物の栄養状態が悪くなると有翅型の個体が現れて、同じ種類の別の株へと移動していく。
有翅型のメスよりも無翅型のメスのほうが子虫を生む数が多いという。

2007.5.9

カニの写真展

2007-04-18 | 田中川
海の博物館ちらし
かねてから三重県内各地の干潟で、主にスナガニ科のカニたちを追いかけている締次美穂さんが鳥羽の「海の博物館」にてカニの生態写真展を開いている。
朝も昼も時には夜間も干潟の自然と生き物を見続け、記録している彼女。
毎日、干潟の生き物たちと一緒に暮らしている彼女。
そんな締次さんならではの生態写真ばかり36枚が展示されている。
ハサミ再生中のカニ、食事中のカニ、争うカニ、木登りするカニなどなど。
スナガニ科だけでなくイワガニ科のカニたちについても、興味深い日常生活が撮らえられている。
生態についての詳しい解説も別コーナーに用意されている。

海の博物館