麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

夏の路地

2008年08月11日 | 鑑賞
                     【文中敬称略】

 戦後生まれ最初の芥川賞作家・中上健次(1946-1992年)。最後の無頼派とも言われた氏の『岬』は、彼の自伝的な作品でもあり、前述の芥川受賞作でもある。

 その『岬』を元にした舞台を昨日観た。

  シンクロナイズ・プロデュース
  次への回路♯1『夏の路地』
  (台本・演出/久次米健太郎)
  8月5日(火)~10日(日)
  ベニサン・ピット

 非常にハイ・クオリティな舞台であった
 最小限に止められた美術、照明、音響。
 何しろ、舞台には四角い盆(*1)があるきりだ。
 色もベニサンのブラックボックスを生かした黒一色。
 時折、卓袱台や戸や障子が登場するくらいで、かわりに俳優が踏切や町の木々等々になり、警報や虫の音等々を発する。

 そんなシンプルな演出が「土と一体化する肉体労働こそ、その血という呪縛から解放される手段だと感じている路地という土地と、そこに流れる複雑な血と性が、彼を取り囲んでいる」
。。。と、当日リーフレットに書かれている中上の世界観を際立たせて見せた!

 若さの中に実父の血に対する敵意を静かにたぎらせる主人公・秋幸を演じた梁瀬満の物語を牽引する演技がまず良かったが、その母を演じた草光純太が秀逸だった。
 圧倒的な存在感の母を、男性ながら見事に演じ切った。体のさばきなどあえて「女性じょせい」しなかったことが逆に「強い母」を観客に突き刺すことに成功していた。

 誤解のないように言えば、2人が突出していたのではなく、出演者12人が21の役を巧みに演じ。。。複数の役の振り方にまた妙味があって、例えば光子の夫・安雄と、光子の新しい恋人を同一人物が演じるなど面白かった。。。素晴らしいアンサンブルを創り上げていたことが、この芝居の強みであった。


*1=回転する舞台。
   通常円形ですがこの作品では正方形でした。

         ※      ※      ※
 
 97年の旗揚げは、自前のアトリエ(川崎市)での『エンジェル ハイロゥ』。第2回公演『JIKEN-1(事件)』で早くも首都圏(川崎)-関西(大阪)の二都市公演。第7回『Kyo-ko』で外の劇場に打って出て(パンプルムス)、第12回公演『僕が、木漏れ日の道を歩くとき』でベニサンピットに進出・・・と確実に歩んできたシンクロナイズ・プロデュースは、本年1月、10周年記念公演となった第20回公演『約束』で再び東京-関西(兵庫)公演を実施。

 そして、この公演は「次への回路♯1」とクレジットされている。
 僕は初めての観劇で、ここにどのような変化があったのか解らないけれど、『夏の路地』一編を観た限りでも、この集団の力は十二分に感じることができた。

 今後、要注目だ
 

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