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Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ラブ&ドラッグ

2021-05-17 | 映画(ら行)





◼️「ラブ&ドラッグ/Love & Other Drugs」(2010年・アメリカ)

監督=エドワード・ズウィック
主演=ジェイク・ギレンホール アン・ハサウェイ オリヴァー・プラット

アン・ハサウェイが見たいだけの動機で観始めたら、ジェイク・ギレンホール演ずる口が達者なチャラ男の成功物語に話が変化して、さらに恋愛映画としての純度が極度に高まってくる後半にウルウルしてしまった😢。原作はノンフィクション「涙と笑いの奮闘記 全米セールスNo.1に輝いた〈バイアグラ〉セールスマン」。あのED治療薬大ヒットの裏側にこんなドラマがあったのか。予備知識皆無で純粋にラブコメディだと思ってたからいい意味で期待と違った。でも映画の主眼はあくまでもラブストーリー。

ヒロインは若年性パーキンソン病患者のマギー。彼女は病気のせいで深く異性と関わりを持つことを避けていた。お互いカラダの関係を楽しむはずだったのが、主人公ジェイミーにとってマギーの存在が大きな意味を持ってくる。アン・ハサウェイはお人形さんみたいな役柄ばかり観てたせいか、正直苦手だったのだが、等身大の役柄ではハッとする自然さと巧さがある人だと最近になって気に入ってきた。この映画でも綺麗。表情がいい。眉の角度に対してタレ目で、口角上がってる笑顔を見ると、観てるこっちも気づくと口角上がってたりする。彼女の映画をイメージすると笑顔が身につくかも?w

成長物語は映画を感動に導く方法のひとつだが、この映画に登場する人々は、みんな最初と最後で言動に変化がある。チャラ男だったジェイミーはマギーに一途になり、マギーは病気を理由に人との間に築いていた心の壁をブレイクする。二人をとりまく脇役も同様で、事業にしくじったジェイミーの弟の立ち直りも、ジェイミーの仕事上のパートナーも、映画の終わりには愛すべき存在になっている。



『ラブ&ドラッグ』予告編


コメント (2)
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ルパン三世 カリオストロの城

2020-11-21 | 映画(ら行)



◾️「ルパン三世 カリオストロの城/The Castle Of Cagliostro」(1979年・日本)

監督=宮崎駿
声の出演=山田康雄 小林清志 島本須美 井上真樹夫 増山江威子

言わずと知れた大傑作。これが公開された頃、「ルパン三世」はテレビの第2シリーズが放送されていて人気があった。その人気で劇場版の第2作が製作されたのが、この「カリオストロの城」。だけど当時は今のように評価された作品ではなかった。後の宮崎駿の活躍、日テレ系映画番組で放送されたことで次第に人気が高まってきた作品でもある。

初めて観たのは高校時代。テレビの映画番組だった。ハードなストーリーの劇場版第1作も好きだったけど、それ以上に録画を繰り返し見た。ちょうどその頃、「すげえアニメがある」と言って友達からビデオテープを借りたのが「風の谷のナウシカ」。まさに宮崎駿のルーツとして好きになった組である。

テレビシリーズよりも少し年齢が上のルパンが、若き日の因縁で再びカリオストロ公国の隠された謎に挑むお話。確かに違和感はあった。テレビシリーズでは、派手なクラシックカーを駆る大泥棒の華麗な活躍が楽しくて仕方なかったけれど、「カリオストロの城」では花嫁を救う物語が中心。大泥棒が人助け?そんなのルパンじゃない。

だけど、「カリオストロの城」にはこの作品でしか見られないヒロイズムと男の哀愁がある。繰り返し見ているけれど、回想シーンとラストシーンのもの寂しさ、銭形警部がいろんなしがらみに苦しめられる歯がゆさは、今の年齢で観るとズシリと響く。初めて観た時は、クラリスを抱きしめないルパンを、台詞のとおり生きる場所が自分とは違うからと思っていたけれど、それだけでなく若いクラリスの気持ちを受けとめられる男ではないんだな、と今では思う。ルパン自らが言うように「おじさん」なんだもの。おでこにキスが精一杯。「じゃーなー!」と別れた直後の表情の落差。あれは単なる別れの寂しさじゃないんだろう。

私事だけど、僕は自分から「おじさん」と名乗ることを拒み続けてきた。言ったら負けだと思ってた。でも「おじさん」世代になったからこそできることと言えることがある。それが人に響くことだってある。ルパン三世を見ながらそんなことを考えるなんて、昔はなかったよな。その「おじさん」ができることを貫いた大活躍こそが「カリオストロの城」。銭形警部のクライマックスの行動だってそう。そして大泥棒はクラリスの心を盗んでいきました。やっぱりルパンってすげえや。よーし、見習おう(何をだ)w

時計塔が崩れ去った後の場面で流れるインスト曲「回想のミステリアス・ジャーニー」が大好きで、ピアノ練習した。「おじさん」になった今でもきっと弾けるさ。



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レイニーデイ・イン・ニューヨーク

2020-07-11 | 映画(ら行)



◾️「レイニーデイ・イン・ニューヨーク/A Rainy Day In New York」(2018年・アメリカ)


監督=ウディ・アレン

主演=ティモシー・シャラメ エル・ファニング セレーナ・ゴメス ジュード・ロウ


「マンハッタンを案内してくれるのね」

そう言って微笑むエル・ファニング嬢。そう、彼女と銀幕のこっち側にいる僕らを案内してくれるのは、われらがアレン先生だ。ニューヨークにまつわる映画、とくればアレン先生かマーチン・スコセッシ。本作でもセントラルパークを中心に街並みと人間模様が描かれる。


学生新聞の記者であるアシュレーは、映画監督ローランドとのインタビューでマンハッタンへ。ニューヨーク出身の彼氏ギャツビーは、彼女に街を案内するデートプランを練っていた。ところが、インタビュー中に、撮影中の作品への不満から脚本家テッドとローランド監督にトラブルが発生。彼を追いかけるテッドとアシュレーだが、その二人も次々と騒動に巻き込まれる。一方、母主催のパーティから逃げるつもりだったギャツビーの身にも予想しなかった出来事が。


古巣ニューヨークに戻ったアレン先生の映画はやっぱり他とは違う。ここ数年の作品は男と女について考えさせてくれる秀作なんだけど、どこか重苦しくビターな味わいで、いわゆるロマコメの良作はしばらくなかった。「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」は、「ミッドナイト・イン・パリ」以来のロマコメの快作だと僕は思う(その間の「マジック・イン・ザ・ムーンライト」はどうも苦手)。


若手キャストを起用したフレッシュさもあるのだが、登場人物それぞれがアレン映画の登場人物らしい屈折したクセ者ばかり。ギャツビーは親に押し付けられた生き方に反発を感じているし、アシュレーはアルコールを口にして歯止めのきかない本性を露わにしてくる。業界人のローランドとテッド、さらに人気俳優フランシスコは世間知らずのアシュレーに癒されたり、励まされたり、さらには口説いたり…。そんな人間模様の面白さに僕らクスッと笑いながらも、自分に正直でいるって難しいんだよねとビターな気持ちを少し抱えながら、ロマンティックなラストシーンを迎える。うまい。ただの色恋沙汰で終わらせない。


ジャズのスタンダードナンバー、Everything happen to meを弾き語りするシャラメ君、ファッションも前髪垂らしたロン毛もカッコいい。若かったら絶対真似してるな、オレ。セレーナ・ゴメスと車の中でキスして、フロントガラスに雨が落ちる場面のゾクッとする美しさ。名作「マンハッタン」を思い出させる街並み。ビットリオ・ストラーロのカメラは素晴らしい。


iPhoneの着信音が響く今どき男女のお話なのに、フランク・シナトラも歌ったスタンダードナンバー歌ったり、「恋の手ほどき」のGigiでも歌う?、ビットリオ・デ・シーカと同格です…とか出てくるものがいちいち古くて通好み。確かに違和感…とも思うけど、シャラメ君は「ふさわしいもの」を教え込まれた結果なんだろうし、チャンはそんな通好みなミュージカルの知識がある都会育ち、アシュレーは台詞にもあるように映画オタクなんだろう。うん。


雨が降って、男女が惹かれあって…って、「マジック・イン・ザ・ムーンライト」や「ミッドナイト・イン・パリ」でも出てくるシチュエーションだけに、「またかい!」と映画館の暗闇でツッコミを入れた。まあ何にしても、雨降って、地固まる話です…?

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ラブ・アクチュアリー

2019-08-26 | 映画(ら行)


◼️「ラブ・アクチュアリー/Love Actually」(2003年・イギリス=アメリカ)

監督=リチャード・カーティス
主演=ヒュー・グラント コリン・ファース リーアム・ニースン エマ・トンプソン アラン・リックマン

英国ワーキングタイトル社の製作する映画、特にロマコメ路線は大好きな映画ばかりだ。それらの脚本を書いたのがリチャード・カーティス。彼が初めて監督した作品が「ラブ・アクチュアリー」である。世間の評価も高いし、ハズレではないと思えた。でも何故だか今まで観てなかった。クリスマス映画だから普通より甘味料過多の恋愛映画だろう、甘ったるくて食えるもんか、と思ってあの時からずっと避けてたのかもなぁ。やっと観る気になった。

結果。ヤバい。この映画から伝わるこの幸福感はなんだ。人が人を好きになることの高揚感、幸福感、切なさ、友情、いろんな気持ち。多くの登場人物の群像劇だが、これが映画のラストに奇跡的な一体感をもたらす。いわゆるグランドホテル形式で描かれるのは、様々な愛のかたち。英国首相の恋、部下に誘惑される会社社長とその妻、義理の父親が応援する少年の恋、言葉の壁、恋に突き進めない家庭の事情、老いたロックスターと長年連れ添ったマネージャー、スタンドイン俳優の裸で始まる恋、エトセトラ。

数々のエピソードが紡がれるが、中でもマークと友人ピーター、ピーターの花嫁ジュリエットをめぐるエピソードが心に残る。結婚式のビデオを見る場面と聖夜の無言の告白で、僕の涙腺は完全崩壊。ロマコメ映画で泣いたの何年振りだろ。ヒュー・グラントの恋の行方にはワクワクするし、コリン・ファースの告白にはドキドキさせられる。でも年齢的に近いからか、アラン・リックマンが見せる初老男の揺れる気持ちと、エマ・トンプソンがジョニ・ミッチェルを聴いて泣く場面も胸に迫るものがある。

そして何よりも音楽の素晴らしさ、抜群の選曲のセンス。Wet Wet WetのLove is all aroundをクリスマスソングにした替え歌(PVはロバート・パーマーのAddicted To Loveのパロディ?)、葬儀で流されるBCR、首相が踊り狂うポインターシスターズ、パーティで流れるノラ・ジョーンズ。僕はカーティス監督作の「パイレーツロック」が大っっ好きなのだが、「ラブ・アクチュアリー」でもこれまたいい場面でビーチボーイズが流れる。しかもこれまた大好きなGod Only Knowsやん(泣)。あー、あの年なんで映画館で観なかったのだろう。

お気に入りのコミック「木根さんの1人でキネマ」第2巻、「ラブ・アクチュアリー」の回もなかなか名編です。お試しを。




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レオン

2019-06-05 | 映画(ら行)
◾️「レオン/Leon」(1994年・フランス=アメリカ)
 
監督=リュック・ベッソン
主演=ジャン・レノ ナタリー・ポートマン ゲイリー・オールドマン ダニー・アイエロ
 
アルフレッド・ヒッチコックの「レベッカ」にしても、ピーター・ウィアーの「刑事ジョン・ブック/目撃者」にしても、非アメリカ人監督のハリウッド進出第1作は、不思議と共通したものがある。それは"異邦人の孤独"だ。リッュク・ベッソン監督がフランスを飛び出してアメリカを舞台に撮った「レオン」もまた然り。「レオン」で登場人物たちが抱える孤独は、他に頼るべきものがない状況に象徴されている。
 
殺し屋レオンは一匹狼で、仕事や世話を焼いてくれるイタリア系アメリカ人と、部屋の観葉植物にしか心を開かない。親を殺された少女は、まさに頼るべきものがないが、周囲の同年代とはかけ離れた感性の持ち主だということも孤独の一因となっている。ニューヨークという大都市で孤立している主人公二人が次第に心を通わせていく様子は、時に温かく描かれたりもするが、その姿には常に哀愁が寄り添う。それ故に
 
レオンが彼女を守るための、ラストの選択が感動的に映る。その物語の終わりに、ベッソン監督はスティングが悲しげに歌うShape of My Heartを流した。スティングもまた、Englishman In New Yorkで異邦人の孤独を表現した人だ。Shape of My Heartで歌われるのは、答えを求めてカードを見つめる孤独な男が、そこに自分の心の形を見出せないでいる姿。それはまさにレオンだ。日々の生活の中で、自分の居場所に疑問を抱いたり、居心地の悪さを感じている僕らも、レオンに自分を見る。そして心の内で涙するのだ。
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ROMA/ローマ

2019-05-11 | 映画(ら行)
◾️ROMA/ローマ/Roma」(2018年・アメリカ=メキシコ)
 
監督=アルフォンソ・キュアロン
主演=ヤリッツァ・アパリシオ マリーナ・デ・タビラ
 
キュアロン監督作を観るのは「トゥモロー・ワールド」「ゼロ・グラビティ」に次いで3本目。「ROMA」はNetflix用に製作された映画と聞くが、この映像はスクリーンで観ないのがもったいない。
 
その理由は、映像があまりにも雄弁だからだ。メキシコシティで住み込みで働くクレオ、雇い主の医者の妻ソフィアとその一家が主な登場人物。彼女らの生活の様子をカメラは一歩引いて客観的に見つめ続ける。感情が高ぶる場面にクローズアップもなければ、細かくカットも割らない、違う目線で見せることもない。そのくせカメラは長回し。劇伴音楽もなく、流れるのは生活音だけ。なのにスクリーンに惹きつけられる。自宅でテレビで見ていたら、おそらく投げ出していただろう、間違いなく。
 
冒頭タイルの床が映され、掃除をしているであろうブラシの音が聞こえる。そこに水が撒かれて、空の様子が洗剤の泡まじりに水面に映る。低く飛ぶ旅客機が映る。この数分だけで、空港近くに密集した街の様子は映されないのに感じられる。ここでもう心を掴まれる。
 
不自由なく暮らしていた一家だが、クレオは付き合っていた彼氏の子供を身ごもって、今後のことで悩み始める。彼女には保険もない。妊娠を伝えたら、スラムで暮らす彼氏には冷たくあしらわれてしまう。見えてくるメキシコの格差社会。一方、雇い主側のソフィアも夫婦仲がうまくいかなくなり、出張に行ったまま夫は戻ってこない。折しも、1970年頃のメキシコは、政府に抗議する学生たちのデモが衝突にしばしば発展していた。ベビーベッドを買いに家具屋を訪れたクレオとソフィアの母は、その騒動に巻き込まれてしまう。
 
人の心も社会も揺さぶられるような出来事が起こっているのに、カメラは近寄らない。カメラが寄るのは、壁にぶつかる車と彼氏のフリチン武術くらいだ。キュアロン監督作「トゥモロー・ワールド」のように暴動の中を走り抜けたりはしない。病院に担ぎ込まれたクレオの様子も、冷酷なまでの長回しで写し続ける。映画のクライマックス、クレオが心情を初めて口にする海辺の印象的なシーンは、僕らはその場でクレオや一家を見守っているような気持ちにさせる。モノクロームで、盛り上げるあざとい演出もないのに胸に迫るのだ。
 
的外れだったら申し訳ないが、「無防備都市」「揺れる大地」「自転車泥棒」に代表されるイタリアン・ネオリアリズム映画を、当時観た感覚って、これに近いものだったんじゃなかろうか。
 
家族の旅を終えて、メキシコシティに戻った一家を再びカメラは長回しで捉える。クレオは洗濯物を抱えて屋上への階段を上る。飛行機が低く飛ぶ空。映画冒頭と対になるこの場面、カメラは空を見上げている。深刻な経済格差がある現実。不幸があってもクレオもソフィアも生きていくことは同じ。穏やかな空の下で洗濯物を干せる日常という小さな幸せ。カメラが上を向いて空を写すだけのラストシーンに、多くの人が前向きな気持ちを味わったことだろう。それはヒロインが立ち上がるだけなのに感動的な「ゼロ・グラビティ」のラストシーンを思い出させる。これは劇場で集中して観て欲しい。



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レディ・エージェント/第三帝国を滅ぼした女たち

2019-01-03 | 映画(ら行)


◾️「レディ・エージェント/第三帝国を滅ぼした女たち/Les Femmes De L'Ombre」(2008年・フランス)

監督=ジャン・ポール・サロメ
主演=ソフィー・マルソー ジュリー・ドパルデュー デボラ・フランソワ マリー・ジラン


第二次世界大戦末期。連合国がノルマンディ上陸作戦を検討している頃、現地の調査を行ったイギリス兵がドイツ軍の病院に収容されていることが判明。看護婦でもあるスナイパー、ルイーズは、女性だけのチームで現地に乗り込み、救出する任務を下される。夫をドイツに殺されたばかりの彼女はこの任務を受け入る。メンバーは死刑囚の元娼婦ジャンヌ、爆発物の専門家ガエル、敏腕スパイでイタリア貴族の血を引くマリア、ナチス将校の元愛人だったスージー。慰問団を装って潜入し作戦に成功したが、彼女たちも知らない別の任務が隠されていた。それは彼女たちを過酷な状況に追い込んでいく…。

本作は実話の映画化。彼女たちの弱みにつけ込んで任務を押し付けてくる理不尽な軍のやり方に怒りを覚える。諜報活動の専門家でもない彼女たちが懸命に任務を遂行しようとする過酷な後半は重いムードで涙を誘われる。戦争がいかに悲惨なことなのかを思わざるを得ない。

「さよならモンペール」のマリー・ジランが演じたスージーは、まんまと軍に利用された立場。かつて愛した人に銃口を向ける切ない表情はたまらない。「タイピスト!」のデボラ・フランソワが演じるガエルは、ナチスに捕まって拷問にかけられる。彼女の最期は悲しくも神々しい美しさで強く心に残る。そして主役のソフィー・マルソーは、むかーしのムチムチした印象からアクション不向きと勝手に思われがちだが、ライフルを手にする彼女の凛とした表情にその思いは覆される。個人的にお気に入り女優のいい仕事。これが劇場未公開とはもったいない。

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ロスト・エモーション

2018-09-13 | 映画(ら行)

■「ロスト・エモーション/Equals」(2015年・アメリカ)

監督=ドレイク・ドレマス
主演=ニコラス・ホルト クリステン・スチュワート ジャッキー・ウィーヴァー ガイ・ピアース

絶望的な未来観を持つSF映画は70年代によく製作されていたが、
2000年代に入ってディストピアが描かれる近未来SF映画は確実に増えている。
リドリー・スコットが製作総指揮したこの「ロスト・エモーション」もそのひとつ。
この映画、特撮をほぼ用いずに冷ややかな印象の未来社会を表現してみせる。
その為に、ロケ地として選ばれたのが日本の特徴ある建物なのだ。
安藤忠雄設計の淡路夢舞台狭山池博物館を始め、独特な造形の建築物が舞台となっており、
セットやCGとは違い、ロケだからできるリアルな空気感が作品の緊張感を高めてくれる。
建築に興味がある人には是非オススメしたい映画。

地球の陸地の大部分が大戦争で失われた近未来。
わずかに生き残った人々は、感情を抑える遺伝子操作をして管理された共同体を形成していた。
感情を"発症"した者は治療、施設に送られて、最後は安楽死させられる。
雑誌を作成する部門に属するサイラスは、飛び降り自殺の現場に居合わせた女性ニアに興味を惹かれ、
次第に彼女へ抑えきれない気持ちを抱くことになる。
ニアも"闇発症者"であったことから親密な関係になり、
二人はこの共同体から脱出することを考えるようになるが・・・。

管理社会となった未来では人間の感情が抑えられるという設定は、別にSF作品では珍しいものではない。
白一色の衣装は、ロバート・ワイズ監督の「SFアンドロメダ…」や
ジョージ・ルーカス監督の「THX-1138」を思わせるし、
「華氏451」や「1984」、アニメの「ダーリン・イン・ザ・フランキス」を思い浮かべる方もあるだろう。
それでも「ロスト・エモーション」が他の映画とひと味違うのは、
舞台設定こそ似ているものの、突き詰めると普遍的なラブストーリーであることだ。
ラストのすれ違いなんて、まるで「ロミオとジュリエット」。

Equals | Official Trailer HD | A24


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リズと青い鳥

2018-08-05 | 映画(ら行)

■「リズと青い鳥」(2018年・日本)

監督=山田尚子
声の出演=種崎敦美 東山奈央 本田望結

仲良しの誰かと一緒にいられる心地よさ。
学生の頃、それはいつまでも続くと思っていた。
それぞれに選ぶ道があるのだから、そんなことないのに。
「あいつが行くならオレもそっちでいいかな」
そんな気持ちが進路決定を揺れ動かした経験、ないだろか。
「リズと青い鳥」について、
"男子には理解できない女子の連帯感"めいた感想をちょくちょく見かけるが、
これは男子も女子もなく誰もがあの頃感じてたことだと思うのだ。
そりゃまあ、「大好きのハグ」や「ハッピーアイスクリーム」は男子には無理だろうけどねWW

テレビアニメ「響け!ユーフォニアム」のスピンオフとして制作された本作。
オーボエ担当のみぞれとフルート担当の希美。
中学時代に希美が内気だったみぞれに声をかけてくれたことで友人になった二人。
高校最後の吹奏楽コンクール自由曲「リズと青い鳥」で、二人にはソロの掛け合いがある。
この曲の元となる童話には、青い鳥と少女の別れが描かれる。
卒業後の進路に揺れる二人の心、
希美を失いたくないみぞれの気持ちが童話の物語に重なり、演奏をかき乱す。
その葛藤と二人の成長が繊細な描写で描かれる。

テレビシリーズでも冴え渡っていた京都アニメーションの細やかな仕事。
山田尚子監督の手にかかるとどこにでもある日常の出来事が、とても愛おしい時間に変わる。
「けいおん!」「たまこまーけっと」もそうだったように。
みぞれと希美の気迫の込もった演奏をみせるクライマックス。
彼女たちの息遣いや足音までもが、気持ちを表現する見事な演出。
とにかく"音"で聴かせる作品だ。
演奏の良し悪しなんてわかんない・・・という人でも、
あの演奏シーンは"なんかすごい"とは感じられるのではなかろうか。

これまでの登場人物たちは脇役だけど、
みぞれと希美の個人的感情の物語をうまく彩る役割を果たしている。
特に3年生で副部長になったユーフォニアムの中川夏紀が、
やさぐれてた1期と違っていい存在感。
主役の二人を中学時代から知る立場として、ストーリーに深みを与えてくれる。
トランペットの高坂麗奈は、またも物語の火付け役でカッコいい。

元吹奏楽部の僕としては、同じトロンボーン担当の塚本くんを応援したい。
だって僕もユーフォの女子に恋していたから(笑)
そっちのスピンオフはないだろか。

『リズと青い鳥』ロングPV





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レディ・プレイヤー1

2018-04-22 | 映画(ら行)

■「レディ・プレイヤー1/Ready Player 1」(2018年・アメリカ)

監督=スティーブン・スピルバーグ
主演=タイ・シェリダン オリヴィア・クック ベン・メンデルソーン サイモン・ペッグ

スピルバーグ監督が、VRをネタに遊びまくったド派手なエンターテイメント作品
「レディ・プレーヤー1」を試写会で鑑賞。
ゲームやサブカルチャーをてんこ盛りにして若い客層に媚びたのだ・・・という邪推もできるのだけど、
「いやいや、オレにだってこんな映画撮れるんだよ」
というスピルバーグの余裕(ってか自慢?)だと僕には感じられた。
数々のアニメやゲームの引用は確かに楽しい。
メカゴジラ機竜やらRX78-2、「AKIRA」のバイク・・・ニッポン万歳WW

ただね。多くの人が楽しむVRゲームの中で起こった事件が
リアルを巻き込んだ騒動に発展する事情にどうも現実味がない。
似たような設定なら
生活の管理までコンピュータに頼った社会とその危うさを描いていた
「サマーウォーズ」の方がよっぽど説得力がある。
都合の良い展開も確かにあるしツッコミどころも満載。

だけどね、この映画には僕らを日々楽しませてくれるエンターテイメントへの愛と、
そんなエンタメを心の支えに毎日を不器用に生きている僕らへのメッセージがある。
ただのCG満載のお気楽映画にはしないからスピルバーグはやっぱりうまい。
映画ファンに向けてのお楽しみもある。
特にスタンリー・キューブリック監督作「シャイニング」の再現シーンの見事なこと!
デロリアンやマイケル・ジャクソンなど80年代カルチャーも楽しすぎる。
ジョン・ヒューズ監督作の名前が並ぶ粋な台詞、
そしてヴァン・ヘイレンで始まってツイステッド・シスター、
ホール&オーツで終わるサントラがもうたまらん♪

ここに盛り込まれた映画たちのルーツを
若い映画ファンが触れていくことにつながったら嬉しいな。

『レディ・プレイヤー1』日本版予告 (2018年)






コメント (3)
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